四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

新しいシリーズを始めます。80年代、ニューウェイヴの時代に一つの傾向としてあったのが、60年代サウンド、特にガール・グループやキューティズ的なモノへの回帰現象がありました。60年代というのは、ボク自身、生息はしていましたが、小さすぎたので、あまり原体験としての記憶ありません。60年代はポップス黄金時代・・・なんとなく60年代的なモノへの憧れは潜在的にあったのでしょう。ということで、ここで扱うのは60年代のポップではなく、60年代への憧れを込めた80年代以降のポップだと解釈してください。80年代以降、現在においてもその流れを汲んだ音楽は脈々と続いています。

シリーズの初めを飾るのは、Tracy Ullmanです。MTV(いや、当時日本で見ていたのは、Sony Music TV)の時代にニューウェイヴ系に混じって、彼女の曲は流れていました。この手のリヴァイヴァルものは、それほどテクノでもニューウェイヴでもないのですが、同じ部類のものとして受け止められていた感があります。YMOを聴きつつも大瀧詠一を聴く気分。初めて、彼女の「They Don't Know(夢みるトレイシー)」(1983年)を聴いた時、なんて素敵な曲なんだろうと素直に感じました。PVがさらに素敵さに拍車をかけます。60’sキューティな装いのTracy。Bay City Rollersネタなども出てきます。青春時代とその後のやさぐれた感じも、流石喜劇女優のTracyはばっちり演じてくれます。終盤のドライヴのシーンでは、な、な、なんと、Paul McCartneyが彼氏役として登場します。まだ、若いですね〜Paul。



当時は知らなかったのですが、これはKirsty McCollが1979年にリリースしたカヴァー曲。こちらも本国、英国ではそこそこヒットしました(7位)が、Tracyのカヴァーは英国(2位)だけでなく、ビルボードチャートでも8位と大健闘。Tracyの方が、ドリーミーでPhil Spectorサウンド化しています。でも、ちょっとやるせないKirstyのヴァージョンも大好きですけどね。

意外なのですが、この「They Don't Know」をカヴァーした日本人は、BaBe。彼女達のデビュー・シングルとしてMichael Fortunatiのカヴァー曲『Give Me Up』(1987年)にカップリングされています。邦題は、「夢みるトレイシー」ではおかしいので、「哀しみは朝の雫のように」となっています。

話はTracyに戻します。英国で「They Don't Know」の前にリリースされたデビュー・シングル『Breakaway(涙のブレイク・アウェイ)』も全英4位とヒット。オリジナルはIrma Thomasの『Wish Someone Would Care』(1964年)のカップリングという渋いセンス。その後、Beryl Marsden、Jackie DeShannonなどもカヴァーしており、60年代への憧憬が如実に表れた曲です。



歌手Tracyのキャリアは2枚のアルバム『You Broke My Heart in 17 Places(夢みるトレイシー)』『You Caught Me Out(ハ〜イ! トレイシー)』(1983年)のみで、その後、複数のベスト・アルバムがリリースされています。

夢みるトレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)夢みるトレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)
アーティスト:トレイシー・ウルマン
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2006-03-15
おすすめ度:4.5
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ハ~イ!トレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)ハ~イ!トレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)
アーティスト:トレイシー・ウルマン
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2006-03-15
おすすめ度:4.0
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現在も英国人独特のちょっと毒のあるキャラクターで女優として活躍し、最近はなりきりSusan Boyleとかやっています(似てる〜)。日本のTracy Ullmanって誰だろう? 清水ミチコや友近あたりですかね。

先生:今日は、ハルメンズと共に再発された『ピンクの心』(1981年)の野宮真貴さんについて話し合いましょう。後にPizzicato Fiveの一員として野宮真貴さんはガーリィ教の教祖ような存在になるのですが、ソロ・デビュー時代の野宮さんはとってもボーイッシュ。

ピンクの心+2ピンクの心+2
アーティスト:野宮真貴
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2010-10-20
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01. 女ともだち
02. モーター・ハミング
03. フラフープ・ルンバ
04. シャンプー
05. 原爆ロック
06. 船乗りジャンノ
07. 17才の口紅
08. 恋は水玉
09. 美少年
10. 絵本の中のクリスマス
11. ツイッギー・ツイッギー
12. ウサギと私
13. ピンクの心
14. レモンのキッス (1981ライブ)*
15. モーター・ハミング (1981ライブ)*
*ボーナストラック

ポールさんが好きなオリジナルのジャケの野宮さんは、アイドルっぽく写っています。でも、当時鉢巻きするのって流行っていたんですかね。スターボーも3人そろって鉢巻きでしたけど。あんまり周辺の一般人の間では見かけませんでした。

pinknokokoro


ポール:今回は再発にあたってジャケが変わってますけど、アナログの、ピンク色の帯も味があるんですよ。あ、ジャケの野宮さん、確かに言われてみればスターボーっぽい。でもどっちかって言うと、アイドル+鉢巻きって言うと、ジャニーズ系アイドルのイメージが強いですけどね。光GENJIとか。だいたいパロディーで80年代の男のアイドルをやるとなると、鉢巻きでモコモコ頭で笑顔でガッツポーズする、ていう印象がありますけど。

先生:確かに鉢巻きと言うのはジャニーズのイメージですね。マッチとか。
以前のライナーノーツからの受け売りですが、最初は“いぢわる少年団”というガールズバンドを結成して、それが“パズル”になって、EAST-WESTのレディース部門で準優勝したとか。

ポール:僕が持ってる『ピンクの心』のアナログは見本盤で、「野宮“ロマン”真貴プロフィール」っていう手書きのメモのコピーが入ってたんですよ。それによると、“いぢわる少年団”は野宮さんが18歳のときで、女の子ばかりの5人組のハード・ロック・バンドだとか。“パズル”は、“いぢわる少年団”からメンバーチェンジをして発展結成、と書かれてます。アルバムのクレジットで、コーラスの欄に「パズル」て書いてありますけど、これはパズルのメンバーということなんでしょうかね。さすがに音源は残ってないでしょうね。

先生:ハルメンズの「お散歩」ではリードヴォーカルをとっていますが、これがリードヴォーカルとしてはリリースデビューでしょうかね?

ポール:だと思います。ハルメンズの1stと、そのあと参加した“Skin”ってバンドでは、両方ともバック・コーラスですし。

先生:えっ、Skinのバックやっていたんですか!佐久間正英さんがプロデュースしたバンドですね。『満足できない』(1980年)というシングルは持っているのですが、これじゃないですね。
野宮さんは、このアルバムについて「自分のソロの中では、一番好き」ってコメントしています。同時にこのアルバムに関わった鈴木慶一さん(ずっとProduceだと思っていましたが、Directed byとクレジットされています)が「僕が関わった女の子のアルバムで2枚だけ気にいったのだがあるんだけど、それが『ピンクの心』と杏里の『悲しみの孔雀』なんだ」とコメント。相思相愛のアルバムです。

ポール:いいですね。「昔のことは言わないで」「恥ずかしい」とか言う人いますけど、それはこっちとしても悲しいですし。

先生:聴き直してみると、当然ムーンライダーズ色が強い(「女ともだち」「ピンクの心」)のですが、ハルメンズ色も負けず劣らず。ハルメンズ曲の「モーター・ハミング」は当然ですが、太田啓一(螢一)=上野耕治両氏の後のゲルニカコンビによる「原爆ロック」は、戸川純ちゃんが歌っても違和感がない曲です。

ポール:「美少年」を聴いたとき、「あー、これはライダーズっぽいなー」と思ったんですが、これ、松尾清憲さんの作曲だったんですね。GSと歌謡曲とパワーポップが一緒になったような、懐かしい曲調で好きですね。ちょっとタンゴ・ヨーロッパの「ダンスホールで待ちわびて」を思わせる感じもあったり。それにしても「原爆ロック」はビックリですよ。まんまゲルニカの音ですもん。「モーター・ハミング」は岡田徹さんのアレンジで、スカっぽいリズムだったりしてまた違った魅力がありますね。サビからAメロに戻るときの転調の浮遊感というか、思わず唸ってしまう感じが、たまらんチ会長です。

先生:佐藤奈々子さんが作詞作曲した「ツイッギー・ツイッギー」は、後にPizzicato Fiveの代表曲になります。このアルバムはプレゲルニカであり、プレピチカートでもある、日本のポップス史上重要な実験的なアルバムなんだと、勝手に思っています。

ポール:なるほど。僕は、ピチカートはノンスタンダード時代しか聴いてないんですよ〜。なので、初耳でした。たしかにツィッギーは、ピチカートにも通じる重要なアイコンのひとつと言っていいかもしれないですね。

先生:話は逸れますが、科学万博「EXPO '85」電力館テーマソングだった「すてきなラブ・パワー」は冨田勲氏の作品ですが、ヴォーカルは野宮真貴さんです。冨田作品としては最もポップな曲ではないでしょうか?

ポール:YouTubeで初めて聴きました。シンセは冨田さんらしく壮大でスペイシーな感じですが、こんな歌モノもあるんですね。意外。野宮さんのヴォーカルが、すごくアイドルっぽくていいなぁ。

最近のオランダの話題を一つ。Perfume界隈では既に報告されていることなので、ご存じの方もいるとは思いますが、オランダねたとしては美味しいので書きます。

megacoolオランダのDoenja & Kidsのよる「Heel de wereld is van mij」という曲があります。CD+DVD盤『Mega Cool & Super Vet』に収録されており、これ自体がリリースされたのは、割と最近で2010年の5月。YouTubeにPVが公開されたのは、2009年11月。タイトルの意味は「全世界は私のものです」。その昔、The Broad Bandが「Internet Killed The Video Star」というThe Bugglesの「Video Killed The Radio Star(ラジオスターの悲劇)」をWeb上で公開していましたが、遅咲きのインタネットをテーマにした歌のようです。国名がいっぱい出てきたり、Googleじゃなくて「Googel」というのがPVに出てきたり(笑)。



歌っている人が、Doenjaさんだと思いますが、公式サイトに行くと、子供向けのエンタメ専門のような感じです。

解説する必要もないくらい、これはPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」とサウンドが酷似しています。「これが正規のカヴァーなのかそうでないのか?」、また「それってどうなの?」と言う件については当事者にお任せしたいと思いますが、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」がオランダにまで影響を及ぼしたというのは面白い現象です。昔なら日本の曲が海外で認知されるのにはかなりの労力と時間がかかりました。今は、YouTubeなどで「全世界は私のもの」になるわけで・・・2 many dj'sとかがPerfumeをRadio Soulwaxにカッコよく入れてくれると嬉しいな〜と思う、今日この頃です。

MOってなんだと思われたかもしれませんが、これから説明します。80年代、オランダにニューウェイヴ・シーンが存在したのか調べてみたけど、いまいち分かりません。オランダのMecano(スペインのMecanoと同名のバンドですが、彼らの方が早かったと言っています)のメンバー、Tejo Boltenさんとやりとりした時、あったと言っていますから、あったのでしょう。

mo何故か、日本盤もリリースされているオランダのバンド、The MOというのがいます。現在、「テクノポップ対談」をしているポール・フランクさんに教えてもらったバンドなのですが、これが素晴らしくツボにハマります。The MOとしてファースト・アルバム『MO』(1981年)にBack Doorというレーベルからリリースされました。日本でも『タンゴ・ポップ』というタイトルでPolystarからリリースされました。最初、原題も「Tango Pop」だと思って、探してみましたが、何も出てこない。

The MOの『MO』というアルバムを探すのは、あまりにも語数が少なすぎて、ネットでは難題となります。タンゴ・ポップっていうタイトルですが、それほどタンゴっぽいわけでなく、たぶんバスーン奏者がいることから日本で、「じゃ、タンゴ・ポップで行きましょう」という軽いノリで決まったのだと思います。シングルとしてもリリースされた「Fred Astaire (Just A Summer Love Affair)」は、変てこなリズムなんだけど、癖になるひねくれポップ。



haha2セカンド『Ha Ha! The Sound Of Laughing(マジカル・ポップ)』(1983年)の時点では、The MOからMOになります。でも日本盤ではリンダ&MOとなります。これもたぶん、「MOだけだと、短すぎてインパクトないからリンダをつけよう」と軽いノリで、バンド名変えちゃったのでしょうか? いいのか、そんなことで? メンバーはドラムのHarm Bieger以外の3人は全て総入れ替え!

ここからはポール・フランクさんの発言を引用します。

曲を書いている人もヴォーカルも以前と違うのに、ほとんど同傾向のサウンド(歌声も近い雰囲気)とメロディーのセンス。なぜに。ファースト以上に転調ばかりのメロディー・ラインには、とにかく驚かされます。しかもポップ。特に「ADSR」(シンセ用語のAttack Decay Sustain Releaseのことでしょう)という曲や「Human Race Put On Display」という曲はすごく好きな曲。オススメです。


ひねくれポップの金字塔「ADSR」は名曲なのでぜひ聴いてほしいですが、「Cheese」(何故か邦題は「マジカル・ポップ」)も日本人好みのメロディーの胸キュン・チューン。

先生:では、予告通りNegiccoです。NegiccoについてはAll Aboutテクノポップの「'08年Post Perfume〜アイドル編」で書いたのですが、もう少し掘り下げてみましょう。NegiccoはCDデビューこそPerfumeに1年遅れましたが、地方アイドルの老舗ですね。

tetsu:もう8年目にもなるんですよねぇ。

先生:Wikipediaの「ローカルアイドル」の中部地方のリストに掲載されています。中国地方には、Bachicco!(ばちっ娘!)というのもいますね。 あと、レースクィーン集団でDegiccoというのもいましたね。

tetsu:先生勉強家です。わからないですし、覚える気にもならないです(笑)。けど、こういうの掘ってると楽しいですよね。時間を忘れます。

先生:Degiccoはたまたまフレンチ系のイベントで見る機会があったので、知りました。サエキけんぞうさんが詞を提供しています。
Negiccoはconnieさんが手掛けるようになって、テクノポップに接近し、オシャレ度が上がったと思います。 僕はNegiccoの存在は知っていたものの、実際音源を聴いたのは2008年の「My Beautiful Life」あたりからです。テクノポップ度も一番高いですし、曲としてもがんばって作っているなぁと。tetsuさんはどの時期からNegiccoに注目したんですか?

tetsu:一応、知ってはいましたが・・・私もあんまり変わらないです。PerfumeのGAMEツアー新潟で初めて見て、その後、「My Beautiful Life」が素晴らしすぎて、次のシングルの圧倒的なスタイルも良くって、思わずファンになっちゃいました。

先生: connieさんが手掛けた「ネギさま!Bravo☆ 」は、夏向けラテン風。実は、ラテン風アイドルポップは、テクノかどうかは別にして、一つのジャンルとして好きなんです。「スウィート・ソウル・ネギィー」は、キリンジの「スウィートソウル」っぽいタイトルですが(笑)、こちらもポップスとして完成度が高いです。

tetsu:両方共イイ曲です。「ネギさま」の方は、初披露がGyaoの収録で、ヌキ天という4週合格で全国デビューって番組なんですが、4週目の3回目行ってたんですが、全然テクノじゃないけど良曲で、ほんと全国デビューが決まった瞬間は感動的でした。





先生:割と最近ですが、2010年7月に、『プラスちっく☆スター』というシングルをリリースしています。タイトル曲の「プラスちっく☆スター」は、タイトルからはテクノポップ路線を感じさせますが、少しアイドルソング寄りになったと感じます。 クレジットを見ると、connieさんじゃないのですね。tetsuさん的にはこの変化はどう思われますか?

プラスちっく☆スタープラスちっく☆スター
アーティスト:Negicco
販売元:U’s MUSIC
発売日:2010-07-09
おすすめ度:5.0
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tetsu:やっぱNegiと言えば僕にとってはconnieさんというイメージが強いですから、ずっと変わるとするとショックかもしれないですが、今回全国デビューの為に、1枚だけって半分わかってますから、connieさんじゃなくても「そうなんだ、たまにはいいんじゃない?」って思っています。

先生:カップリングの「Go My Life」の方はいいのですが、「ねぎねぎROCK」は僕にはちょっと辛いかな。

tetsu:確かに音を聞いてるだけじゃ辛いかもしれないですね。割とライヴだと聞けるんですよ。彼女らほんとステージング上手いですよ。さすが8年目って感じですね。

先生:Negiccoもやはり新潟までライヴを見に行ったのですか?

tetsu:別の人のライヴのついでにですが、新潟では2回しか見たことないです。あとは東京ばっかりですね。しょっちゅう東京来てますしね。そういえば、また東京の浅草まつり湯でライヴあるって話です。他のライヴもいいんですけど、スーパー銭湯の座敷の宴会場で、昼間から、飲みながらくつろぎながらNegiccoのライヴがみれるっていうなかなか他にはない素晴らしいモノなので是非見に来て下さい。

先生:他にテクノな地方アイドルっているんですか?

tetsu:何をいってるんですか(笑)! テクノなアイドルは、東京だけだと割と少ないですよ。次いきますよ!!

先生:失礼いたしました(笑)。じゃ、新潟から南下してください。

tetsu:次は名古屋でしず風さんです。

スペインの次はどこにしようかなぁと考えていたんですが・・・オランダ王国にしましょう。オランダは1650万人くらいの人口。以前、よくヨーロッパ渡航の際、KLMに乗っていたので、アムステルダムは何度か行った事があります。オランダってHollandと言ったり、Nederlandと言ったり、Dutchと言ったり、呼び名が多いです。Dutchと言えば、「Double Dutch」。お笑いコンビの名前にもなっていますが、Malcolm McLarenの「Double Dutch」・・・これは二人のオランダ人ではなく、二本の縄を使った縄跳びの呼び名です。



話が妙な方向にそれましたので、戻します。オランダと言えば、古くは、「Venus」(1969年)や「Never Marry Railroad Man(悲しき鉄道員)」(1970年)等の世界的ヒットで知られるThe Shocking Blueが思い浮かびます。Ladytronの『Softcore Jukebox』というDJ Mixにも「Send Me A Postcard」が収録されていました。Shocking BlueなどのバンドはNederpopと呼ばれるらしいです。この「Venus」、意外にオランダ本国では最高位3位にしかならかなったのです。しかし、アメリカ、他の多くのヨーロッパ諸国では1位になっています。日本でもオリコン2位。



オリジナルの「Venus」のリミックスとしてお薦めなのが、『Soul Source REMIXED FEVERS』(2005年)に収録の福富幸宏さんによる「Venus (Yukihiro Fukutomi Remix)」です。

ソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズ
アーティスト:オムニバス
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2005-03-02
おすすめ度:3.0
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その後、1977年にLipstiqueのディスコ系カヴァー等がありますが、再ブレイクは約17年後。そして、「Venus」は、1986年にユーロビート路線に乗っかったBananaramaによってカヴァーされ、再び大ヒットしました。これは、彼女達が初めてStock Aitken Watermanと組んだ最初の作品でした。ユーロビートの影響下にあった日本でも、長山洋子、黒沢ひろみ、荻野目洋子などが、Shocking BlueというよりもBananaramaヴァージョンの「Venus」カヴァーをしました。



オランダの話からイギリスのBananaramaの話になってしまいました。Bananaramaは、その後Siobhan Fahey抜けて、一時新メンバーが加入していた時期があります。現在もKeren Woodward、Sarah Dallinの二人で活動しています。

前回は、スペインの渋谷系インディーポップ、La Casa Azulを紹介しましたが、今回もインディーポップ系。Souvenirというバンドです。ジャケには二人しか写っていないのですが、Patricia de la Fuente、J'aime Cristobal、Pablo Erreaからなる男女混合3人組のようです。彼らは不思議な事に、スペイン出身なのに、フランス語でほとんどの曲を歌っています。よって、フレンチテクノポップな雰囲気を醸し出しています。

結成して10年ほど経ち、『Points de Suspension』(2001年)、『Recto/verso』(2003年)、『Des Equilibres』(2005年)、『64』(2007年)、『Drums, Sex and Dance』(2009年)と現在まで5枚のフルアルバムをリリースしています。1stの『Points de Suspension』はほとんど話題にならなかったと思いますが、日本盤もリリースされています。最新作『Drums, Sex and Dance』は、テクノポップと言ってもいいサウンドですが、初期の作品はボサノバ的であったり、ギターポップ度も高いです。

Drums Sex & DanceDrums Sex & Dance
アーティスト:Souvenir
販売元:Jabalina
発売日:2009-03-24
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2曲目の「Ta machine」はタイトルからしてもテクノです。サウンドもKraftwerkっぽくもあり、同時にギターバンドとして生楽器との折衷具合がオツであります。



3曲目の「Monkey see monkey do」・・・ジャマイカ由来の言い廻しらしいですが、サル真似という意味でしょう。こちらは、ニューウェイヴ的なロケンロールなんですが、ピコピコもしていてカワイイ。

All Aboutで行ったアーバンギャルドのインタヴュー記事「アーバンギャルドの証明」の番外編Part 2です。

少女三部作の三作目『少女の証明』(これからも少女シリーズは続くのだろうか?)から「プリント・クラブ」のPVも公開されました。

少女の証明少女の証明
アーティスト:アーバンギャルド
販売元:前衛都市
発売日:2010-10-08
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では、アーバンギャルドの浜崎容子さん(akaよこたん)と松永天馬さんにハルメンズについて聞いてみましょう。

先生:この度は、ハルメンズの再発と同時にリリースされるサエキ×Boogie theマッハモータースの『21世紀さんsings ハルメンズ』に参加されましたが、どのようなきっかけで?

21世紀さんsingsハルメンズ21世紀さんsingsハルメンズ
アーティスト:サエキけんぞう&Boogie the マッハモータース
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2010-10-20
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浜崎:サエキさんご本人から直々にオファーをいただいたときは驚きました。メンバーが好きで影響受けているバンドさんから、まさかご指名いただけるとは。このような機会は滅多に無いと思い、喜んで受けさせていただきました。

松永:僕とサエキさんは僕が一ファンの時から細々面識はあったのですが、昨年「DRIVE TO 2010」のオファーを頂けた辺りからより親密にさせて頂いております。
ちなみに今回、僕はアルバム収録のライナーノーツを書かせていただきました。長年ハルメンズへと温めていた熱をぶちまけた内容となりました。

先生:松永さんがハルメンズ好きであると断定しています。(意識的か無意識かは別にして)アーバンの「リボン運動」はきっとハルメンズの「リズム運動」へのオマージュに違いないと・・・ ハルメンズとの出会いは?

松永:高校生の頃、ムーンライダーズなどの湾岸系から遡ってですね。
サエキさんは僕が中二の頃NHKで「ソリトン」という番組をやっていたので、既に存じ上げていました(余談ですが「ソリトン」は90年代に80年代の「YOU」的なサブカルチャー情報番組を目指したものだったらしいです。「ソリトン」シリーズをリアル中二病の時分に見てしまったことが、僕のその後の人格形成に少なからぬ影響を与えたことは言うまでもありません)

先生:当時テクノポップと呼ばれた人達の中では、異彩を放っていました。以前ZOLO系(ひねくれポップに近い)のバンドが好きな外国人の人にハルメンズを聴かせたら、感動していました(歌詞が分かったらもっと感動したかも)。

松永:ハルメンズのテクノポップは、いわゆる擬音で表されるような「ピコピコ」というよりは「ふにゃふにゃ」なんですよね(「ふにゃふにゃサイボーグ」って曲もありますね!)テクノポップ御三家のようにあからさまにソリッドではないし、尖った部分も何処となく弛緩している。この「ふにゃふにゃ」感がハルメンズ最大の特長であるように思います。
弛緩した未来観は当時の藤子不二雄的なSF世界というよりはレトロフューチャーな趣で、それも当時としては珍しかったのではと思います(過去未来折衷の様式は、上野耕路と戸川純、太田螢一で結成するゲルニカにも受け継がれていますね)。

先生:よこたんは2曲歌っていますね。「趣味の時代」は佐藤奈々子さんがコーラスで参加していた曲ですが、こちらのオリジナルは再度聴いてみたのですか?それとも意識しないために、そのままやってみたのですか?

浜崎:オリジナルも勿論拝聴いたしました。サエキさんからレコーディングの際に「伸び伸びといつものよこたんらしくやってくれ」と仰っていただいたので、オリジナルがどうとか関係なく全く新しい新曲のつもりで歌いました。「趣味の時代」はアーバンとの世界観とも近いものが合ったので楽しんでやれました。

松永:「趣味の時代」はいくつか頂いた候補の中から、僕が是非にとお願いしました。この男女ユニゾンによる狂気のテンションはアーバンギャルドにも通じる気がします。

先生:「ノスタル爺」はハルメンズの新曲なんですね! 今回のコラボの感想をぜひ聞かせてください。

浜崎:アーバンでやっているレコーディングの流れとは違ったものを経験でき、とても刺激的な体験でした。野宮真貴さんともお会いすることができ、夢のようなひと時でした。
「ノスタル爺」は未発表の新曲ということで、光栄でした。サエキさんのディレクションのもと、エキセントリックなニューウェイヴで凄く気に入っています。

先生:「ノスタル爺」は癖になる曲ですね。「ノスタルジィ〜♪」が頭の中でぐるぐるします。

松永:「ノスタル爺」は「時をかける老人」ともいえるような内容で、ミイラ化した「超高齢者」が多数発見される今の時代にピッタリな曲だと思います!

先生:「時をかける老人」・・・ウケます。
普通、老人とか爺とかはニューウェイヴの主人公にならないのですが、これがテーマとなるのがサエキマジックですね。最後にハルメンズで一番好きな曲は?

浜崎:やはり参加させて頂いた「趣味の時代」「ノスタル爺」は外せないですね。あとは「母子受精」とか。サエキさんの歌声が色っぽいです。

松永:全部いい!ですが「趣味の時代」「母子受精」の魅力は計り知れないです。母子受精された「街の落とし子」たちがゴムの都会を駆けるさまは、アーバンギャルドの原風景の一つでもあります。

All About テクノポップにて「BACK TO THE エイプリルズ」というエイプリルズのインタヴュー記事を昨日掲載しましたが、そこでも話題となったLa Casa Azulを紹介します。

Elefant Recordsからリリースされた『Modapop』(2003年)というスペインのインディーポップ系コンピレーションがあります。スペイン語で「Moda」は「ファッション」という意味ですから、おしゃれポップみたいな意味でしょう。ジャケからもスペインの渋谷系みたいな内容を期待した人もいるかと思います。全体的にはアコースティック、ギターポップ、エレクトロポップが混合していますが、渋谷系というのは大体当たっていると思います。その中で聴いた事がある名前はその時点では、Camera Obscuraくらいでした。その中で、特に渋谷系的だと思ったのが、La Casa Azul(「青い家」という意味)というバンド。60年代的で、ちょっとピコピコしていて、胸キュンで、とにかくカワイイのです。「Vamos a volar」なんかは、シティーポップを経由した渋谷系っていう感じです。

Modapop: Fantasia VeraniegasModapop: Fantasia Veraniegas
アーティスト:Various Artists
販売元:Elefant / Dln
発売日:2004-06-29
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La Casa Azulはバンドと言いましたが、実質上、プロデューサーと名乗っているGuille Milkywayのソロ・プロジェクトで、バンドメンバーはアンドロイドのような存在のようです。La Casa Azulの代表的なヒット曲として、絶対的におススメなのが、アルバム『La Revolucion Sexual』(2007年)にも収録されているタイトル曲「La Revolucion Sexual」。60年代的モチーフにしたテクノポップ x ギターポップmeetsユーロディスコに仕上げた名曲です。おバカなんだけれど、泣けるメロディーという変幻自在のポップは、日本人受けする事間違いなし。っていうか、怪しい日本語も出てきて、きっと日本のポップカルチャーが大好きなんでしょう。



Revolucion SexualRevolucion Sexual
アーティスト:La Casa Azul
販売元:Elefant Spain
発売日:2007-11-20
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日本のエイプリルズのアルバム『Back To The Future Music』(2009年)にも、La Casa Azulのカヴァー「La Nueva Yma Sumac」が、収録されています。オリジナルは前述の『La Revolucion Sexual』の1曲目です。僕はあまりのハマり具合に最初、エイプリルズのオリジナルだとばかり思っていました。La Casa Azulのアルバムを先ず買うのであれば、『La Nueva Yma Sumac』(2009年)をお薦めします。これには、「La Revolucion Sexual」のオリジナルに別ヴァージョン(日本語で歌ってるのもあり)、同じく「La Nueva Yma Sumac」のオリジナルにエイプリルズのヴァージョンなど、La Casa Azulの美味しいところが楽しめます。



La Nueva Yma SumacLa Nueva Yma Sumac
アーティスト:La Casa Azul
販売元:Elefant
発売日:2009-10-26
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All Aboutで行ったアーバンギャルドのインタヴュー記事「アーバンギャルの証明」の番外編として、松永天馬さんと浜崎容子(よこたん)さんに登場頂きました。

swaka

01.プラスティック・チェリー・ボム(kihirohito & アーバンギャルド)
02.水玉病(kihirohito ver.)
03.護法少女ソワカちゃん(アーバンギャルド ver.)
04.リボン運動(kihirohito ver.)
05.千々石ミゲル友の会のテーマ(アーバンギャルド ver.)
06.プラスティック・チェリー・ボム(kihirohito archetype ver.)

先生:kihirohitoさんとのコラボで『ソワカちゃんとアーバンギャルド』という6曲入りCD(DVDも付いてくるよ)を手売り発売していますが、凄く気にいりました。買っていない人は、ぜひ買うべきです。どうして、手売りのみなんですか?

ソワカちゃんとアーバンギャルド特設サイト

松永:元々コミケを中心に発売することを目的として制作したからです。コミケで販売されるコミックやCDは、いわゆる生産ラインに載らないような、限定的なフェティシズムに基づいたものが多くありますが、アーバンギャルドもいわゆる「コミケ・ブランド」のラインで制作をしてみようか、というのがこの企画のきっかけです。

コミケは終了しましたが、現在アーバンギャルドHPモバイル) にて通販を開始しました!

先生:初音ミクでカヴァーするという手法は既にかなり使われていますが、初音ミクをカヴァーする(「護法少女ソワカちゃん」)というのがアーバンらしいというか。アーバン・ヴァージョンは、Pizzicato Five X SPANK HAPPYみたいな(笑)。

松永:このアレンジ、アーバンギャルの皆さんにとっては、よくよく聴くと楽しい発見があるかもしれません。ソワカちゃんにも女の子の日があるということですね。

浜崎:少女はロボットですから。

先生:松永さんがkihirohitoさんにアプローチしたのですか?

松永:そうです。

先生:ソワカちゃんのどこに惹かれたのでしょうか? 宗教観(笑)?

松永:いえ「傷だらけのマリア」の一ヵ月後に本作をリリースするぐらい、いわゆる宗教観はゼロなのですが(笑)・・・ 「護法少女ソワカちゃん」シリーズの公開が始まって比較的すぐに発見し、熱烈なファンになりました。



ソワカちゃん、実際見てもらえると分かると思うのですが、80s〜00sあたりのサブカルチャーからの引用が凄くて。 このYouTube時代において引用やリミックスの過多はさして新しい表現でもないのですが、他の初音ミク作品が自明のように萌えに帰属した引用であるのに対し、kihirohitoさんの作品はちょっと、かなりオリジナルへの向きが違っていた。秋葉原ではなく中野に向かっていた?ところが気になりました。
ちなみにソワカちゃんの舞台は、コミケを中心にして起こったマサカド・インパクトによって人類の多くが死滅した世界です。愛読書はメカ沢新一先生の「はじまりの冷麺」。

浜崎:ソワカちゃんの最初の頃に天馬に教えられて知りました。
その筋の人がくすっと笑ってしまうようなアプローチが気に入ってます。

先生:会ったこともないのに友達になれそうな感じですね。
「プラスティック・チェリー・ボム」はkihirohitoさんが作詞作曲していますが、アーバンの曲として全く違和感がありませんね。詞の世界観も引用の多さ(笑)も共通しているし。アーバンがやるという想定のもとに作られたのでしょか?

松永:そのようです。しかしこのシンクロ率は、やはりkihirohitoさんと我々に少なからぬ共通言語があるということでしょう。「チェリー・ボム」とか「私のゲートを開いてよ」とか、色々想像してしまいます!(はあはあ)

浜崎:私も一応人間ですので、歌いながら悶々としちゃいました。むふん。

先生:いいぞ、よこたん!

松永:そうまあきらさんとkihirohitoさんが共作したというアニメーションPVも必見。こちらも引用過多です。



あ、あと付録のDVDには、松永天馬の秘蔵グロ映像を再編集した「千々石ミゲル友の会のテーマ」も収録しています…(おえっぷ)。

浜崎:美少女動画と思って開いたらグロ動画でしたってオチですね、わかります。

松永:二次元と三次元のコラボで四次元へと時をかける試み。是非ともお聴き下さい!

先生:今回はこのあたりで終わりとしましょう。次はハルメンズのお話を伺います。

先生:前回の予告通り、地方アイドルのひとつ、テクプリについて話し合いましょう。地方アイドルは、ローカルアイドルとか略してロコドルとか呼ばれるらしいですが、その呼称はどのくらい一般化しているのでしょうね。 ちなみにロコドルは、「NHKポップジャム」で2004年につんく♂氏が命名したようですね。

tetsu:ロコドルって言い方、一般的にはなったと思いますが、東京中心の考え方って感じがして、どうも好きにはなれないです。

先生:もともと、ロコってハワイ州で生まれ育った人達を指す言葉ですから、ハワイのアイドルみたい。アグネス・ラム(笑)。
地方アイドルを北から南下していくというのが、今回のテーマですが、北海道苫小牧市にTouchというアイドルがいるそうですが、彼女達はテクノアイドルではないのですかね? 「キラキラ海岸」という曲名からちょっと期待したんですけど。

tetsu:Touch・・・懐かしいですね。結構前から活動してたと思いますが、曲調は全然違いますよ。
あと北海道には、Creamっていうアイドルいたんですが、J-EUROというか90なパラパラな曲調なので今回は外しました。

先生:北に行きすぎますが、Creamってアイドルユニットがロシアにいたような記憶があります。上記の情報はWikipediaの「ロカールアイドル」から引っ張ってきたのですが、東北には結構な数の地方アイドルがリストされています。
でも、テクプリが載っていない・・・

tetsu:ただ、テクプリヲタが更新してないだけじゃないんですか(笑)。

先生:tetsuさん、更新さぼったらダメじゃないですか(笑)。
テクプリはテクノプリンセスの略なんでしょうか? 英語表記はt.c. princessとなっていますが・・・

tetsu:Tは「東北」「テクノ」、Cは「Cute」「Chance」「Challenge」の意味です。

先生:t.c.で「テク」って読むんだ! テクプリはデビュー時から5人組と認識していたのですが、最近の写真を見ると、4人しか映っていないようです。一人、脱退したのでしょうか?

tetsu:理由はよくわかりませんが、ついこの前にNATSUKIちゃんが抜けたようですね。僕も最後に見たのは5人です。このくらいの年齢の女の子達は受験や進路で引退すること多いです。

先生:初期のリリースの4曲はiTune Storeのみのリリースですね。「テディベアとパスワード」「渋谷Twinkle Planet」(以上、2009年11月)、「チョコレート☆ディスティニー」「ムーンライト・フラッシュ」(以上、2009年12月)の4作品がリリースされていますが、iTunes配信はさすがに複数買いはしていませんよね(笑)。

tetsu:さすがにそれはないです。発売してすぐ飛びついて買っちゃいましたが、複数買いはないです。楽曲プロデューサーがトベタ・バジュンだけあって、ローカルな臭いは一切しない。

先生:トベタ・バジュンさんのアルバム『青い蝶 』(2008年)って凄いゲストですね。坂本龍一さん、高橋幸宏さん、大貫妙子さん等錚々たるメンツ。しかもテクノポップ色が強い!
配信4曲の中では、「チョコレートディスコ」ではなく、「チョコレート☆ディスティニー」が一番印象に残りました。基本的に、僕は食べ物(飲み物)ソングが好きなんです。「ピンクのソーダ」もね。

chocolatedestiny


tetsu:えぇ〜!? どこかと誰かを足した様なタイトルはどうかと思います。曲は好きですが・・・

先生:堂々としていていいじゃないですか(笑)? 「ディスコ」に似ている言葉から「ディスティニー」しかないと考えて、このタイトルにしたと勝手に思っています。『FIRST DATE』というタイトルでデビューCDもリリースされましたね。ジャケとは違うのですが、公式サイトでのコスが、大阪のportableを思い起こさせます。

firstdate


tetsu:portable・・・懐かしいですねぇ・・・結局見れずじまいだったんですよね。噂は聞いてて、音も中田ヤスタカヲタっぽくてイイ思ってるうちに何時の間にか解散しちゃいましたよね。一度でいいから見たかったなぁ

先生:配信もされた「渋谷Twinkle Planet」はタイトルからも想起できる渋谷系を意識したような曲調。仙台なのに渋谷(笑)。仙台ということで、ご当地ソングのカヴァーもありますね。仙台城という別称もある青葉城をテーマにしたさとう宗幸の「青葉城恋歌」・・・

tetsu:なんなんでしょうねぇ。仙台での活動の難しさを感じてしまいますね。振り向いてくれなきゃ始まらないですから。

先生:で、tetsuさんはテクプリを見るために仙台まで遠征したのですか?

tetsu:まだ、一度もテクプリで仙台まで遠征したことないです。東京へ来たときに行くぐらいです。東京のアイドルイベントや石丸Soft本店でのリリイべに出てくれるので(笑)。
去年2回、今年1回見たくらいです。 また、東京へ来ることがあれば観に行きたいですね。

先生:じゃ、次は新潟のNegiccoということで。

先生:第1回のハルメンズに続いて、その母体となった8 1/2(ハッカ)について話しましょう。ハッカからは、上野耕路さんと泉水敏郎さんがハルメンズに加入していったわけですが、かなりメンバーチェンジがあったバンドです。後に野宮真貴さんとPortable Rockを結成する鈴木智文さんも後期ハッカに在籍していました。

ポール:実は8 1/2はかなり後追いなんですよ。恥ずかしいことに、映画「星くず兄弟の伝説」を見て、主演の久保田氏の存在感に圧倒されてファンになって、それから聴いたという感じなんです。だから、ハルメンズも戸川純さんも聴いた後ですでに知ってる曲がほとんどだったんで、「オリジナルはこんな感じだったのか」と確認しながら聴いたという感じです。

先生:泉水敏郎さんのWINKというバンドが母体となって、8 1/2に改名されましたが、これはフェリーニの映画のタイトルですね。

ポール:ずっと「ハチトニブンノイチ」と読んでましたよ。でも、フェリーニの映画の内容に衝撃を受けて、というより字面的に感覚で選んだんじゃないかな、と勝手に思ってますけど・・・記号っぽくてかっこいい。

先生:東京ロッカーズ系のコンピレーション『東京ニュー・ウェイヴ79'』には、「マネキン人形」「暗い所へ」「シティー・ボーイ」の3曲が収録されています。パンク系とされていますが、シークエンサーを使ったり、上野耕路さんのキーボードなど、独特の世界観を生み出していましたね。

東京ニュー・ウェイヴ79東京ニュー・ウェイヴ79
アーティスト:オムニバス
販売元:Pヴァインレコード
発売日:2002-01-25
おすすめ度:5.0
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07. マネキン人形(捏)
08. 暗い所へ(ハ)
09. シティー・ボーイ

ポール:「シティー・ボーイ」は、映画「ロッカーズ」でもやってますけど、個人的にはそっちの方が好きですね。まぁ映像のインパクトも含めてですけど。上野氏のグニョグニョなシンセがもう、最高。アルバムの方の3曲は録音もいいし、入門編としてオススメです。

先生:唯一のCDリリースとなる『メモアール』は、上野さんの母親の美容学校で録音されたものですから、音質は荒いですが、かえって初期衝動を感じます。現在、廃盤ですね。

ポール:CDの方は持ってないんですよ〜。買っときゃよかったな。いつか、ちゃんとした形で音源をまとめてCDでリリースしてほしいですよ。ブリッジかどこか、出してくれないかな…。

先生:ハルメンズで対談でも同じことをしましたが、ハッカの曲でハルメンズがやっていない曲も、後にゲルニカと戸川純ちゃんによって再録されています。「踊れない」はいかにも元ネタありって60年代的曲なんですが、戸川純ヴァージョンの方がお馴染みでしょう。

メモアールメモアール
アーティスト:8 1/2
販売元:テイチク
発売日:1995-11-22
おすすめ度:4.5
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01. 少年たち(ハ)
02. ジュリーのお願い
03. 踊れない(戸)(戸ヤ)
04. 上海特急
05. キネマの夜(ハ)
06. ナルシスティック(ハ)
07. その絵を踏むな
08. ベッドルーム・クィーン
09. 戒厳令(ゲ)(捏)
10. メモアール

(ゲ)ゲルニカ
(戸)戸川純
(戸ヤ)戸川純とヤプーズ
(泉)泉水敏郎
(捏)捏造と贋作

ポール:8 1/2版の「踊れない」は、完全にテクノポップだと思います。DEVOっぽい、痙攣リズムのテクノ。こりゃもうたまらんチ会長です。戸川純さんヴァージョンも、基本的なアレンジは同じなんですけどね。いやしかし、これは今聞いても卒倒するほどカッコいい。当時聴いてたら、発狂してたかもしんない。もうめちゃめちゃ好き。

先生:また出ましたね、たまらんチ会長(笑)! こちらは、「上海特急」の当時の映像です。近田春夫さんが司会しています。



ポール:近田さんは「ハッカニブンノイチ」って紹介してますね。これ、泉水氏も上野氏もいませんねぇ。2人が脱退した後の映像なんですね。サックスも入って、Roxy Musicぽい。久保田氏の衣装とか髪型とか、もうパンクの名残はなくて、モダンポップ系になってますね。YouTubeにある8 1/2の映像は、他に「ロッカーズ」の「シティー・ボーイ」とこれと、その2曲だけですかね。音源だけならいくつかあるようですが。

先生:「戒厳令」はニューウェイヴだけれど、クラシック的フレーズも出てくる上野さんらしい曲。これは、ゲルニカでもやっていますね。2ヴァージョンあって、『電離層からの眼差し』に収録の方は、ドイツ語で歌ったもろクラシカルなアレンジ。

ポール:デモヴァージョンは、モロにゲルニカの1stのあの感じで好きですね。重厚なドイツ語ヴァージョンも、とんでもなく素晴らしいですが。よくあんなアレンジが出来るもんです。確かにご指摘のように、途中でクラシックぽいメロディーが出てきますね。モーツァルトかバッハか…。聴いたことあるような感じなんですけど、わかんないなぁ。悔しい。そういえば「戒厳令」は、捏造と贋作の1stアルバムでもカヴァーしていましたね。上野氏らしい、ゲルニカ風味のアレンジでした。あと「マネキン人形」も採り上げてますよ。こちらは、8 1/2ヴァージョンを再構築したような、スペイシーなシンセのSEが飛び交うナイスなカヴァーでした。

先生:捏造と贋作は一度だけ、ライヴを見ました。『メモアール』のCDのセルフライナーノーツで泉水さんが、ハッカに在籍した久保田真吾さんと鈴木智文さんが結成したプライスというバンドは、高橋幸宏さんのプロデュースでレコーディングが予定されていたのに、お蔵入りになったのが残念です。プライスは、当時、『テクノ・ボーイ』というムックがあって、そこにも載っていたんです。

technoboy

テクノ・ボーイ (1980年) (ゴールデン・カラーアクション)
販売元:双葉社
発売日:1980-08
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ポール:プライスには、戸川さんヴァージョンの「母子受精」をアレンジした国本佳宏さんがいたんですよね。あのアレンジは素晴らしいので、プライスがちゃんと世に出てれば、国本氏の作曲編曲した曲がたくさん聴けたかも、と思うと残念でなりませぬ。それと、ばるぼら氏の著書「NYLON100%〜80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流」に載ってた久保田氏のインタヴュー記事によると、幸宏氏がプライスに関わったのは2曲だけで、あとはアルファのスタジオで録音したデモばっかり残ってるみたいです。久保田氏も「勿体ない。今出せばいいのにね。出していいんだったら、勝手にインディーズで出しちゃうんだけどね」なんて言ってますから、どなたか久保田氏に、正式にリリースのオファーをして欲しいです。

本日紹介するアルバムの多くは、繋がっています。ムーンライダーズ(鈴木慶一さん)が、朝ドラとしては評価の高かった「ゲゲゲの女房」関連のリリースを2枚。ムーンライダーズの鈴木慶一さんがデビューに関わったハルメンズ+野宮真貴さん関連が5枚同時リリース。『21世紀さんsingsハルメンズ』に参加した浜崎容子さんのアーバンギャルドもニュー・アルバム『少女の証明』をリリースといった具合。

ハルメンズについては、「テクノポップ対談」で原曲について語り合いましたが、1stも2ndも、今回初公開となるボーナストラックが8曲追加されました。

『ハルメンズの近代体操+8』のボーナス曲は、“多重DEMO”。多重DEMOってあまり聞き慣れない言葉ですが、上野耕治さんのお母さんがやっていた千葉パリー美容専門学校で録った多重録音の未公開デモ曲です。ぜひ聴いてほしいのが、「アンドロイドな女〜1st多重DEMO、リズムボックス」。オリジナルよりも超テクノで、リズムボックスだけでなく、シンセもカッコいい。

ハルメンズの近代体操+8ハルメンズの近代体操+8
アーティスト:ハルメンズ
ビクターエンタテインメント(2010-10-20)
販売元:Amazon.co.jp
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『ハルメンズの20世紀+8』のボーナス曲は、スタジオライヴ。先ほどの学校での一発録りライヴ音源での初期衝動が体感できます。「あたしバージン」という未発表曲のリズムトラックもここだけで聴けます!

さらなる情報は、ハルメンズ生誕30周年記念 オフィシャル ホームページにてチェックしてください!

ハルメンズの20世紀+8ハルメンズの20世紀+8
アーティスト:ハルメンズ
ビクターエンタテインメント(2010-10-20)
販売元:Amazon.co.jp
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10月8日:アーバンギャルド『少女の証明』
10月13日:LOW IQ 01『MASTERPIECE MUSIC MAKES LOW IQ 01』
10月20日:ムーンライダーズ feat. 小島麻由美『ゲゲゲの女房のうた』CDS
10月20日:鈴木慶一『ゲゲゲの女房』OST
10月20日:ハルメンズ『ハルメンズの近代体操+8』再発+ボーナス
10月20日:ハルメンズ『ハルメンズの20世紀+8』再発+ボーナス
10月20日:野宮真貴『ピンクの心+2』再発+ボーナス
10月20日:サエキけんぞう&Boogie the マッハモータース『21世紀さんsingsハルメンズ』
10月20日:初音ミク『初音ミクsingsハルメンズ』
10月20日:キノコホテル『クラダ・シ・キノコ』
10月20日:DJハローキティ『DJ ハローキティ・イン・ザ・ミックス』
10月20日:80kidz『WEEKEND WARRIOR』
10月20日:Fantastic Explosion『RETURN OF FANTASTIC EXPLOSION 〜帰ってきたファンタスティック・エクスプロージョン』
10月27日:原田知世『Melting Sun & Ice Moon - Tomoyo Harada Live Tour 2010 eyja -』 DVD

「恋のマカレナ」に続いて、スペイン発のフラメンコポップとして大ヒットしたのは、Las Ketchupの「Asereje」です。別名「The Ketchup Song」。フラメンコポップとユーロディスコが合わさったような妙に癖になる曲。2002年の事ですから、まだ覚えておられる人もいるでしょう。メンバーは、Lola、Pilar、Lucia、Rocio からなる4人姉妹。僕は黒髪のLuciaちゃんが好きです。お父さんは、El Tomate(ザ・トマト)の名前で知られるフラメンコギタリスト、 Juan Munoz(ファン・ムネス)。トマトの娘だから、ケチャップという事みたいです。プチトマトじゃないんですね。最小年だったRocioは、お母さんの許しが出ず、大ヒット時点では一緒に活動していませんでした。PVは複数のヴァージョンがあるようです。



ケチャップ娘がやってきた!ケチャップ娘がやってきた!
アーティスト:ラス・ケチャップ
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(2002-12-18)
おすすめ度:4.5
販売元:Amazon.co.jp
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タイトルの「Asereje」ってスペイン語っぽいですが、Google翻訳しても訳してくれません。歌詞にもある「Asereje ja de je de jebe tu de jebere・・・」というのは全くでたらめなスペイン語で、Sugarhill Gang の「Rapper's Delight」の歌詞がそう聞こえたという、大ヒット曲の割にはいい加減な感じがよろしいですね。「Rapper’s Delight」は初のラップ・シングルとされる有名曲で、あまりヒップホップに詳しくない人でも聴き覚えがあるかもしれません。Chicの「Good Times」のベースラインのフレーズが引用されており、同じく引用したと思われるBlondieの「Rapture」にも共通するものがあります。

この手の大ヒット曲は必ずと言っていいほど、日本では便乗組が出ます。期待を裏切らないですね~。ネーミングもスペイン語っぽくSOLTOMATINAが「フリフリ!~魔法のケチャップダンス~」というカヴァーをしています。Las Ketchupがいなかったら現れなかったユニットです。「スタコラサッサー」って歌うところが素敵(笑)。日本には珍しいラテン系アイドルユニットのBon Bon Blancoがカヴァーしてもよかったと思うんだけどな~。



フリフリ!~魔法のケチャップダンス~ (CCCD)フリフリ!~魔法のケチャップダンス~ (CCCD)
アーティスト:SOLTOMATINA
ソニーレコード(2003-01-22)
販売元:Amazon.co.jp
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スペインと言えば、フラメンコですね。元々はスペイン南部のアンダルシア地方に伝わる芸能です。本場で見たフラメンコは、思った以上に動きが激しく感動しました。でも、スペイン人に聞いたら、みんなフラメンコ踊るわけでもないようです。

今回紹介するのは、伝統的なフラメンコではなく、フラメンコのテイストを取り入れたスペイン発フラメンコポップ。スペインから世界的にヒットした曲としては、Los del Rioの「La Macarena(恋のマカレナ)」が有名です。「恋のマイアヒ」など困った時は、現代に「恋の〜」とつけてしまう安直なタイトル。日本語って便利ですね。大ヒットしたおかげで、中古で安く購入できます。

Shall we マカレナ?Shall we マカレナ?
アーティスト:ロス・デル・リオ
BMGビクター(1996-07-24)
おすすめ度:3.5
販売元:Amazon.co.jp
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Los del Rioは、1966年にデビューしたAntonio Romeo Monge とRafael Ruizのスペインのおっちゃん二人組。これだけ聞くと、あんまりヒットしそうにない。しかし、アメリカでも大ヒットし、ビルボード14週連続一位という記録的な偉業を達成。1993年リリースですが、実際にヒットしたのは1996年の事でした。アメリカでヒットしたのは、Bayside Boys Remixのヴァージョンで、おねえちゃんのセクシーダンスもそのヒットに貢献しました。やっぱり、困った時はおねえちゃん頼みです。Bayside Boys自体は、このマカレナ仕事以外それほど目立ったヒットというのは無いようです。



こちらは、1996年のクリスマス向けにリリースされた「Macarena Charismas」です。「Jingle Bell」などのX’masソングとマッシュアップしています。また、おねえちゃんが登場。



日本でも、リズム歌謡のサブセグメントとして、フラメンコを題材にしたもの(フラメンコ歌謡)が結構ありますが、西郷輝彦(最近Macコメンテイターとしてよく登場する)の「星のフラメンコ」をリミックスしておねえちゃんに踊ってもらったらどうでしょう?

ロリータ産出国と言えば、France Gall、Charlotte Gainsbourg、Lio(正確にはベルギー)、Vanessa Paradis、Aleeze等を擁するフランスです。厳密に言うと、映画ならフランス以外にもロリータ系女優は結構います。今回は、スペインのロリータ、Cathy Claret(キャシー・クラレ)を紹介。でも、Cathyの場合、スペインを活動拠点にしているものの、フランスに生まれ、ジプシーのごとく家族と共に各地を転々としてきたという意味では、純粋にスペインとは言い切れないですけどね。

『Cathy Claret(あなたに)』(1990年)は、ベルギーのCrepusculeからリリースされた彼女のファースト・アルバム。聴き所は、やはり2曲目のフレンチウィスパーmeetsボサノバ曲「Loli Lolita」。この曲は、2001年のカフェ系コンピ『Crepuscule For Cafe Apres-Midi』に収録されています。ロリータと言ったものの、彼女はこの時点で既に26歳。ジャケだけ見たら、16歳くらいに見えますもんね。しかも、多くの曲は彼女自身によるものですから、世間でロリータとされている人とは一線を画しています。

cathyclaret

あなたに
アーティスト:キャシー・クラレ
ビクターエンタテインメント株式会社(1990-03-21)
販売元:Amazon.co.jp
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このアルバムは中身が濃く、他にも語るべき曲があります。「Le Lundi Au Soleil(陽だまりの中の月曜日)」は、Claude Francois(クロード・フランソワ)の大ヒット曲のカヴァーです。この曲は、クロードのトリビュート・アルバム『CLO CLO Made In Japan』でも、サエキけんぞうさんがカヴァーしています。



「Porque, Porque(なぜ なぜ)」は、アルバム発売前の1986年にリリースされたシングルです。



この曲は、日本のフレンチウィスパー、早瀬優香子がアルバム『薔薇のしっぽ』で彼女自身の選曲としてカヴァーしています。

その後、Cathyはセカンド『SOLEIL Y LOCURA(風に抱かれて)』(1991年)をリリースし、現在も活動を続けています。

先生:ポール・フランクさんは、僕がPOP ACADEMYをやっていた時代に一番多くの投稿をしてもらった特派員ですね。当時は、マニュアルでコツコツともらった投稿を書きくわえる日々に明け暮れていました。

ポール:お久しぶりです。当時はいろいろ大変だったでしょうね。自分としては、なんとかPOP ACADEMYのページのお役に立ちたいと思い、自分の少ない知識をひけらかしていた時期です。上には上がいるということも知らずに。

先生:現在、「アイドル対談」というシリーズでテクノポップな香りがするアイドルについて対談しているのですが、もう一つ「テクノポップ」をテーマにシリーズ対談したいなと思い、対談相手は誰がいいかなと考えた所、やっぱりポールさんしかいないだろうと。

ポール:恐縮です。でも、YMOとそのファミリー以外のテクノポップはほとんどリアルタイムで経験していない後追い世代なんですけどね。当事者しか知らないトリビア的なことは出ませんが、音楽を聴いた上での感想程度ならば。

先生:いろんな切り口があるとは思いますが、先ずは日本の80年代テクノポップについて語り合いたいと思います。第1回は、10月20日に再発が決定しているハルメンズです。オリジナルの2枚にそして関連リリースが新譜として2枚出ます。野宮真貴の『ピンクの心』も同時発売。

ポール:何度目の再発かわからないほど出てますが、今回はボーナストラックが凄いですね。これは買わざるをえない。『ピンクの心』もボーナストラックが目玉ですね。

先生:サエキけんぞうさんにAll Aboutテクノポップでインタヴューした時に聞いたのですが、ハルメンズって特に意味がないんですよね。母体となる少年ホームランズと8 1/2(ハッカ)から離れる意図で、どこにもカテゴライズされない名前にしたかったというのが理由だそうです。ジョリッツというのも候補にあがっていたらしいです。

ポール:当時のテクノ〜ニューウェイヴ系に妙に多かった“ハ行”のバンド名なので、それだけでもう、たまらんチ会長です。パール兄弟というネーミングもそうですが、サエキさん特有の言語感覚ですね。どれも昭和のマンガ的な印象があるんです。それこそ手塚治虫とか。そういえば杉浦茂の絵をジャケットに使用してたこともありましたね。かっこつけてない名前なとこに惹かれます。

先生:以前も特派員として「僕にとってハルメンズはYMOと並ぶほど好き」とコメントされてましね。けろっぐ博士もハルメンズ大好きなんですが、具体的にハルメンズの魅力はどこにあるんでしょう?

ポール:コメントしてたこともすっかり忘れていましたが…もちろん今でも大好きです。最初はゲルニカから聴いて、「上野耕路氏がいたバンド」ということで後から聴いたので、上野氏のシンセばっかり追っかけて聴いてた気がします。「趣味の時代」のピアノなんか卒倒モンですし、「電車でGO」のサビのうしろで聴けるブワ〜て感じのシンセとか、面白いなぁ、気持ちいいなぁと思いました。「Q-Pダンス」でオッフェンバックの「天国と地獄」のメロディーを挿入したりとか、上野耕路氏のプレイに「クラシックを勉強した人」「音大を出た人」というのが見えて、で、そういう人がニューウェイヴをやってるとこが面白かったんですね。やっぱり坂本龍一氏が好きだったので、なんとなく共通する部分を感じて惹かれたのではないかなと思います。他にも、比賀江氏も卓越したギタリストというだけでなく、いい曲いっぱい書いてますし、全員がプレイヤーとしても、作詞作曲家としても凄いですよね。

先生:ここでハルメンズの曲がどれくらい他の人やユニットで歌われているか検証してみます。多くのハルメンズの曲は、母体となった少年ホームランズと8 1/2で既にレコーディングされています。今回同時リリースとなったサエキけんぞう&Boogie the マッハモータースと初音ミクでもカヴァーされましたが、戸川純関連のユニットを中心に結構ハルメンズの曲がカヴァーされているんですよね。カヴァーというよりも、戸川純ちゃんはハルメンズの意志を継いでいると言った方がいいかもしれません。

『ハルメンズの近代体操』(1980年)
ハルメンズの近代体操+8ハルメンズの近代体操+8
アーティスト:ハルメンズ
ビクターエンタテインメント(2010-10-20)
販売元:Amazon.co.jp
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01. 昆虫群(少)(戸)(戸ヤ)
02. 暗いところへ(8)
03. フリートーキング(戸ヤ)
04. 電車でGO(少)(戸ヤ)
05. モーター・ハミング(野)
06. ライフ・スタイル(泉)
07. キネマの夜(8)
08. リズム運動(泉)
09. 私ヤヨ(少)
10. レーダー・マン(戸)
11. アンドロイドな女(少)
12. ボ・ク・ラ パノラマ(ゲ)
*ボーナストラック8曲追加

『ハルメンズの20世紀』(1981年)

ハルメンズの20世紀+8ハルメンズの20世紀+8
アーティスト:ハルメンズ
ビクターエンタテインメント(2010-10-20)
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01. 趣味の時代
02. Q-P-ダンス
03. 焼ソバ老人(少)(パ)
04. アニメイション
05. 少年たち(8)
06. シングル・ハンドBOY
07. 幸福の未来
08. マスクト・パーティ
09. ジャングル都市(少)
10. お散歩
11. 春の嵐
12. ナルシスティック(8)
13. ゴールデン・エイジ
14. ふにゃふにゃサイボーグ(少)
15. 母子受精(戸)
16. マスタード
*ボーナストラック8曲追加

(少)少年ホームランズ
(8)8 1/2
(野)野宮真貴
(ゲ)ゲルニカ
(戸)戸川純
(戸ヤ)戸川純とヤプーズ
(ヤ)ヤプーズ
(泉)泉水敏郎
(パ)パール兄弟

ポール:泉水敏郎氏のソロ・アルバム『Life Style』では、「ライフ・スタイル」と「リズム運動」を採り上げています。後者は戸川純さんがリード・ヴォーカルで、泉水氏はコーラスだけですが。また、「焼ソバ老人」は、パール兄弟がライヴで採り上げていました。ライヴ盤『ブートレグだよ』や、先日リリースされたパール兄弟の紙ジャケCDのボーナストラックで聴けます。

lifestyle


先生:ハルメンズの中で僕が特に好きなのは、「電車でGO」と「リズム運動」かな。「電車でGO」の歌詞はニヤッとしてしまいます。でも、本当に電車で歌詞の通りやったら捕まります。戸川純ヴァージョンも「ごうぅぅぅ」と言う部分はエクスタシーを感じます。ポールさんのお気に入りは?

ポール:『ハルメンズの20世紀』の冒頭の3曲ですね。「趣味の時代」、「Q-Pダンス」、「焼ソバ老人」。他のどこを探してもこんなサウンドはないと思います。あと、それに続く4曲目「アニメイション」。これを友人宅でかけたとき、途中で曲調がガラッと変わる部分がありますが、あそこで友人が急にスピーカーのほうを振り向いて「えっ?」と驚いたのを見たときは快感でした。

先生:ハルメンズって、キモカワの先駆者だと思います。同時に歌詞もサウンドも奥が深い。じゃ、今日はこの辺で。次はハルメンズの母体の一つだった8 1/2について語りましょう。

Miguel Bose(ミゲル・ボセ)は、Ana Torrojaと同じく、トニマンがプロデュースしたスペインの歌手です。Anaとは違い、La Movidaではなく、スペイン芸能界の出身です。イタリアの女優を母親に、スペインの闘牛士を父親にもつセレブな家庭に育ちました。1971年に俳優を始め、1975年に歌手に転向します。日本でも、シングル『Give Me Your Love』というシングルを1980年に出しています。ちょうど同じ時期にスペインでヒットしたのが、「Morir de Amor」。さしずめ、スペインの王子様のようなアイドル的風格が漂います。



『XXX』(1987年)はトニマンがプロデュース、キーボード、ギター、プログラミングしています。元Naked EyesのRob Fisherもキーボード、プログラミングで参加。この時期になると、「The Eighth Wonder」のPVをみても、アイドルというよりもちょっとワイルドになってきています。トニマンによるスペイン歌手のプロデュースとしては、Ana Torrojaよりも10年くらい早いです。MiguelがAnaに、「トニマンいいよ」って紹介したんでしょうかね?



XXX (Spanish)XXX (Spanish)
アーティスト:Miguel Bose
Warner Music Latina(1989-07-20)
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2000年には、スペインのスーパースターの夢の共演と言ってもいい、コンサート・ライヴCD『Girados』をリリースしています。先に紹介した「The Eighth Wonder」のタイトルを変えた「Duende」などからは、スペインでの二人の人気が伺えます。



GiradosGirados
アーティスト:Miguel Bose
Warner Music Latina(2000-10-24)
販売元:Amazon.co.jp
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前回はMecanoについて書きましたが、Mecanoは1993年に停止します(正式な解散は1998年)。Cano兄弟はソロへと、Ana Torroja(アナ・トローヤ)は休養に入ります。休養を終えたAnaは、1997年にTony Mansfieldのプロデュースによりソロとしてのデビュー作『Puntos Cardinales』をリリース。Tony Mansfieldは日本ではトニマンの愛称で親しまれ、テクノポップを語る上では欠かせない人です。New Musikとして活動し、数々のプロデュースを行い(その中にはa-haの「Take On Me」の初期作も含まれる)、高橋幸宏などとも親交がありました。トニマンについてはまた別の機会にじっくり語りたいです。

このアルバムに収録され、シングルもリリースされた「A Contratiempo」は、スペインではシングルチャート1位となり、アルバムも1位になっています。これは、Bette Midlerの「Bottomless」のスペイン語カヴァー。テクノポップというよりもラテンポップのバラードと言った方がいい曲ですが、原曲と聴き比べてみると、やっぱりトニマン的アレンジが効いています。他、トニマンらしさが感じられる曲としては「Tal Para Cual」もお勧めです。



Puntos CardinalesPuntos Cardinales
アーティスト:Ana Torroja
RCA Intl(1997-08-12)
販売元:Amazon.co.jp
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この後、Andres LevinとArto Linsayがプロデュースに参加した2作目『Pasajes de un Sueno』(1999年)からは、「Ya No Te Quiero」もヒットしました。その後もコンスタントにリリースをし、現在まで活動を続けています。

Anaはもう50歳の大台に乗っていますが、老けませんね。そして、2010年9月21日には新作『Sonrisa』をリリース! 2作目と同じAndres Levinのプロデュースですが、タイトル曲の「Sonrisa」は軽快なアップテンポな曲に仕上がっています。



sonrisa

Sonrisa
アーティスト:Ana Torroja
(2010-09-21)
販売元:Amazon.co.jp
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La Movidaから生まれたバンドとして一番成功し、また本国スペイン以外でも認められたのは、Mecano(メカーノ)です。Nacho CanoとJose Maria Cano兄弟に紅一点Ana Torrojaからなるドリカム状態。同名のバンドがオランダにも居ましたので、間違えないようにしましょう。名前からしてテクノなイメージを醸し出していますが、彼らがテクノなエッジを効かせていたのは、1枚目から3枚目あたりです。それ以降はラテンポップというジャンルで語った方がいいでしょう。ラテンポップと言った場合、スペインだけでなく、ラテンアメリカを含めたスペイン語及びポルトガル語圏のポップとなります。日本で有名なのは、Julio Iglesias(フリオ・イグレシアス)ですね。

Mecanoのデビュー盤となった『Mecano』(1982年)でお薦めなのは、「Me Cole En Una Fiesta」。Mecano好きの山根君曰く、「ハイスクール ララバイ」と「ラジオスターの悲劇」を足して2で割ったような名曲だと。ポップなメロディー、ピコピコなアレンジ、そして、キュートなAnaちゃんのヴォーカルに魅了されます。



Mecano (Reis)Mecano (Reis)
アーティスト:Mecano
Sony U.S. Latin(2005-08-23)
おすすめ度:5.0
販売元:Amazon.co.jp
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「Barco a Venus」を収録したセカンドの『Donde Esta El Pais De Las Hadas』(1983年)もほぼ同様の路線となりますが、サードの『Ya Viene el Sol』(1984年)では、Fairlight CMIを導入しました。注目したいのは、日本を題材にしてPVも制作された「Japon」。技術大国日本というイメージをインダストリアルなアレンジでサウンド化しています。可笑しいのは、3人とも学生服を着用している点。昔、Policeも学生服を着ていましたが、Anaちゃんにはセーラー服を着て欲しかった。このアルバムには、Thomas Dolbyも参加しています。



驚いたのは、ほとんどのMecanoのオリジナルアルバムが、現在Amazon.co.jpにて700円台で買えてしまいます。円高の影響なのでしょうか? Mecanoの全体像をつかむには、2枚組ベスト『Ana Jose Nacho』(1998年)というのもありますが、オリジナル(特に初期3枚)を買うのもこの値段ならありです。

Ana Jose NachoAna Jose Nacho
アーティスト:Mecano
Sony U.S. Latin(1998-03-24)
おすすめ度:4.0
販売元:Amazon.co.jp
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