四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

このところ、共産テクノ系ネタばかり書いていたのですが、たまには趣向を変えます。今回はRetrowave!

Satellite YoungがSXSW 2017で海外公演を果たし、満を持してデビューアルバム『Satellite Young』を4月5日にドロップしました。

satelliteyoung

SATELLITE YOUNG
SATELLITE YOUNG
2017-04-05



Satellite Youngのメンバー(草野絵美ちゃん、ベルメゾン関根さん)には、2015年7月にAll Aboutでインタビューをしています。現在は、自称サイボーグのテレヒデオさんが加入し、トリオとなっています。

80年代をギークにするサテライトヤング (All About)

「歌謡エレクトロ」といった形容もされるSatellite Youngですが、彼らはRetrowaveの正当なる継承者であり、日本においてはその第一人者とも言えます。彼らの魅力を理解してもらうために、まず「Retrowaveとは何か?」について解説させてください。

2000年代初期、80年代のエレクトロポップやニューウェイヴに影響を受けたエレクトロクラッシュというムーヴメントがNYCを中心に起こり、イギリス、ドイツ、フランスなどにも広がっていきました。エレクトロクラッシュはディスコパンクへと繋がったり、その後のエレクトロ勃興の前兆であったとも言えます。

エレクトロクラッシュとは? (All About)

これらの動きが一息ついた2000年代終盤に、VARELIEというエレクトロ集団が現れました。彼らはフランスを拠点としています(カルフォルニアにも支部がある)。当時、Kitsune、Ed Bangerなどのレーベルがフランスにありましたが、VALERIEはBLOG、イベントから派生したフランス西部に位置するナント発のカルチャー集団だったのです。レトロフューチャーなビジュアル、溢れる80年代への愛…前述のレーベルのようなオシャレ感とは一線を画す、80年代的ダサかっこよさが魅力! 代表的なバンドは、Anoraak、College、Minitel Roseなど。VALERIEからのコンピ集『Valerie and Friends』(2009年)にリリースされています。彼らは当時The New 80’sとも呼ばれていました。

VALERIE〜フレンチエレクトロ集団 (All About)
VALERIE〜THE NEW 80’S (All About)

この辺りが起点となって、Retrowave(Synthwaveという呼称もよく使われる)が誕生し、現在も脈々と続いています。二つの映画を紹介しましょう。

2011年に公開された映画『Drive』は、Retrowave度が高いサウンドトラックになっており、Collegeなども参加しています。主演男優は、映画『La La Land』で注目を浴びたRyan Gosling。

College feat. Electric Youth - A Real Hero


もう一つは、奇想天外SF痛快アクション映画『Kung Fury』! カンフー達人の警察官である主人公は、ナチス軍団を率いるヒットラーを撲滅するために時空の旅に出ます。テレヒデオさんのような人も登場します。サウンドトラックはテロップでいちいち丁寧に解説されており、スウェーデンのRetrowaveアーティスト、Mitch Murderが手がけたもの。映画はフルでYouTubeで観れます!

KUNG FURY Official Movie


Satellite YoungはそのMitchとコラボをしているんです。やはり通じるものがあるのでしょう。

Satellite Young & Mitch Murder - Sniper Rouge


アルバム『Satellite Young』から改めて感じるのは、彼らは音楽集団でありつつも、カルチャー集団なのだと。それらはサウンドでだけでなく、歌詞、ビジュアル、コスチューム、全ての世界観から来るものです。それらが全て繋がって、Retrowaveであり、The New 80’sなんだと。同時に80年代には存在しなかったテクノロジーが彼らの表現を支えています。その代表例がディープラーニングを生かした「Dividual Heart」のPVでしょう。

Dividual Heart


最後に僕のお気に入りは、愛車でのドライブデートに最適な「フェイクメモリー」と「AI Threnody」です。


リアルでSatellite Youngを体験したい方、5月14日(日)、阿佐ヶ谷ロフトAにてトーク&ライヴがあります!

Satellite Young
 TalkGIG

Satellite Young Official Site

1週間ほど前の話ですが、クリスマス(12月25日)に「ソ連ナイト〜ソ連にクリスマスは存在しない2〜 」を新しく渋谷に移転した「東京カルチャーカルチャー」で開催しました。おかげさまで、満員御礼となり、ご来場および共演の方々、誠にありがとうございました。

イベントの様子はTogetterでまとめられています。

「共産テクノ」としては三回目のトークをしましたが、今回は「疑惑の共産テクノとX’MAS編」となりました。「疑惑の共産テクノ」については「共産テクノ番外編:ソ連のパクリ疑惑黒歴史」をご参照ください。

さて、2016年に共産テクノ的に一つ記念となる曲を選びたいと思います。『共産テクノ ソ連編』の出版前にこの曲がリリースされていたら、インリン・オブ・ジョイトイとともに番外編として紹介したかった曲です。

上坂すみれの「恋する図形 (cubic futurismo)」であります!
共産テクノ的にコンセプト、タイトル、サウンド、歌詞、コスチューム、全ての角度からアヴァンギャルドに完璧です。「共産テクノ」のテーマ曲にしたいほどです。






楽曲提供をしたのは、YMOの遺伝子を引き継いだTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND。10年ほど前にAll Aboutでインタヴューをしました。

この曲は最初「cubic futurismo」というタイトルのみでしたが、上坂が戸川純の「図形の恋」へのオマージュとして、「恋する図形」が加わったのです。 Ураааааааа(万歳)!!!

「ソ連カルカル7」にご来場の方々、ありがとうございました。

2回目となる「共産テクノ」では、「共産歌姫」について語ります。テクノな視点で女帝からアイドルまで、ロシア、ウクライナ、そして火星まで!

…こんな紹介文で6組の共産歌姫を紹介ました。

1. ソ連の最高権力歌姫・・・アーラ ・ プガチョワ(Алла Пугачёва)

2. ウクライナには美魔女な歌姫・・・ソフィーヤ・ロタール(София Ротару)

3. ウズベクにはファンキー歌姫・・・ナタリヤ・ヌルムハメドヴァ(Наталья Нурмухамедова)

4. ソ連領火星のエキセントリック歌姫・・・ジャンナ・アグザラワ(Жанна Агузарова)

5. 共産フレンチウィスパー歌姫・・・オリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)
*この曲におそろし庵のカーチャが反応してくれて、自動車を擬人化した歌詞を解説してくれました。

6. ウクライナのアイドル&エロス歌姫姉妹・・ルーシャ(Руся)&ナターシャ・カラリョーヴァ(Наташа Королёва)

ほとんどの歌姫たちについてはすでに書いていますが、ウクライナの歌姫姉妹についてはまだなので書きましょう。

まずは姉のルーシャ。「Русалонька(人形姫)」では民族衣装が似合う隣のお姉さんタイプ。



デビュー曲「Жёлтые тюльпаны(黄色いチューリップ)」では妹のナターシャはまだ初々しさが残りますが、エロスの将来性がすでに垣間見れます。



2013年にはウクライナとロシアという二つの国で生きることになった姉妹は、「Рейс Киiв - Москва(キエフ=モスクワ便)」という曲を発表しました。この後、皮肉にも姉妹それぞれの国は泥沼の紛争になってしまいました。

Москва


遅ればせながら、7月9日の「『共産テクノ』出版記念 トークイベント〜フォノテーク講座第一回」にご来場の方々ありがとうございました。

「スポーツテクノ」を中心に講座を行ったのですが、その中で一番の反響があったのが、Franek Kimono(フラネク・キモノ)です。このジャケット、めちゃインパクトあります、というかあり過ぎ。

Franek Kimono


見た目はオッサンです。でも、音楽的にはテクノディスコ系ニューウェイヴ。白塗りなのは、ニューロマンティックスに感化されたのでしょうか? グループの名前はFranek Kimonoですが、オッサンの名前はPiotr Fronczewskiで演劇系の俳優らしい。他に3人のメンバーがいます。空手着をまとい、「Kimono」からしても日本文化も大好きと勝手に想像しています。1983年にBruce Leeをこよなく愛する彼は、中華テクノディスコ「King Bruce Lee Karate Mistrz(ブルース・リーは空手マスター)」で注目を浴びました(どのくらいかは知らないけど)。



そして翌年の1984年に放ったエアロビクス曲は、「Gimnastyka Aerobic(エアロビクス体操)」。意外と、オッサンは、スポーツテクノを極める肉体派なんです。しかも、オッサンはダンディズムがわかる男。



鉄のカーテンの向こう側にこんなオッサンがいたとは、驚きです!

来週から『共産テクノ』の続編のため、取材と称して、ドイツ(気分的には東ドイツ)とポーランドに行ってきます。このオッサンにもなんとか会いたったのですが、公式サイトらしきところからの情報でも、コンタクトするのは難しい模様・・・残念! ポーランドに行ったら、ポーランド人にFranek Kimonoについて尋ねてみよう。

昨日は「ソ連カルチャーカルチャー6〜共産テクノとソ連戦車とおそロシ庵!」に出演しました。ご来場していてただいた方々、大変ありがとうございました。会場は満員御礼となり、Twitterトレンド入りもして、こんなニッチなテーマでも話題になるんだなぁと感心してしまいました。また、お喋りした方の中には、DOMMUNEや荻上チキ・セッション22で共産テクノ特集を聴いていただいたと言ってくださった方もいて、とても嬉しかったです。今回は、開演前と終演後のBGMも共産テクノ縛りで選曲させていただきました。

テーマは、「スペースディスコ」と「スポーツテクノ」でしたが、オープニングに使ったのは、「Плюс электрификация(電化を進めよ)」という1972年のソ連アニメです。
共産主義とはソビエト権力に全国的電化を加えたものである
というレーニンの言葉を引用でフィナーレを飾ります。プロパガンダの目的で作られたものですが、電化政策と電子楽器は初期のソ連では結びついており、そこで描かれる近未来の世界は共産テクノにも通じるものがあるから、選びました。すでに歴史が証明しているように、別に、共産主義を礼賛する意図はありません。



こちらの動画は、僕が確認した限りにおいて最も初期となるソ連製スペースディスコです。でも、誰が作った何という曲かが不明です。1978年という情報が正しければ、フランスのSpaceやアメリカのMecoの翌年となり比較的早くブームはソ連に伝播したと言えます。



会場から反響があったのが、アルゼンチンからのスペースディスコの継承者、El Club de la Computadora(コンピュータ・クラブ)です。ちょうど、当日の朝、メンバーのNicolas MarinoとFacundo BarreraからFacebookでコンタクトがあり、この話をしたらとても喜んでくれました。みなさん、アルゼンチンのスポーツテクノを応援してください!

El Club de la Computadora


元国営レーベルも認めたアルゼンチンよりスポーツテクノの継承者現る!

なお、「ソ連カルカル6」の様子はTogetterでまとめられています。

ソ連では、フランス産のスペースディスコ・バンド、Spaceが人気を博し、その影響下で、スペースディスコ系バンドが少し遅れて80年代に現れました。ラトビアののゾディアック(Зодиак)と並び、ソ連でのスペースディスコの先駆者と言えるのが、リトアニアのArgoです。

彼らの1980年のデビュー作『Discophonia(ディスコフォニア)』は、手を抜いたのではないでしょうが、A1、A2…B1、B2…と全く素っ気のない曲名となっています。しかしながら、その内容は侮れません。フュージョンが変異したような独自のディスコグルーヴ感に溢れています。「A1」をDOMMUNEの「共産テクノ特集」でかけた時も宇川さんがえらく反応してくれました。

Discophonia




Argoは3枚のアルバムを残しましたが、3枚目の『Žemė L(ランドL)』(1986年)では、ディスコ路線から、電子民謡路線へとシフトしています。ジャケットには、リトアニアが生み出したシンセサイザー、「Vilnius-5」と思われる写真が写っています。

Žemė L




さらに一つ補足を。リトアニアの作家・詩人、ヴィンタス・クレヴェ(Vincas Krėvė)がリリースした2曲入りアルバム『Milžinkapis(古墳)』(1982年) でも、楽曲部分はArgoが演奏しており、実質、Argoのアルバムと数えてもいいでしょう。

Milžinkapis


テイスティス・マカチナス(Teisutis Makačinas)は、リトアニア音楽院(現在はリトアニア音楽演劇アカデミー)を卒業後、音楽理論と作曲を教える教授となりました。1972 年にリリースされた『T. Makačino Estradiniai Kūriniai (T. マカチナスの色々な作品)』のジャケットからは、いかにも教授という風貌が窺えます。

T. Makačino Estradiniai Kūriniai


クラッシック畑の彼が1982年に突然放った共産テクノ・アルバムが、『Disko Muzika(ディスコミュージック)』オープンリールをモチーフにしたジャケットも、メカニカルでかっこいい。多分、ラトビアのZodiac(Зодиак )にインスパイアされた(実際に彼のインタヴューでそのことにも触れています)スペースディスコ。

Disko Muzika




彼は現在77歳でご健在のようで、2015年の取材記事で『Disko Muzika』への再評価に対し「若者たちが私の音楽に興味を持ってくれて、嬉しい」と答えています。

前回紹介したDzPこと、ゼルテニエ・パストニエキ(Dzeltenie Pastnieki)には、ロベルツ・ゴブジンシュ(Roberts Gobziņš)というラトビア、そしてソ連初のラッパーがいました。彼はソロに転向後、西ドイツのWestBam にあやかり、EastBam名義で1990 年に『Aka Aka』をWestBam のLow Spiritからリリースしました。

Aka Aka




EastBamは、ソ連におけるDJ ならぬTJ(テープ・ジョッキーを意味する)の第一人者でもありました。
最近、カセットテープが見直されているようですが(梅田ロフトで『大ラジカセ展』開催中)、TJ の機材はオープンリールのテープレコーダー(Ross Markが定番)が使われ、なんとスクラッチなどもできました。こちらで、ラトビアでのTJについて解説がされています。



さすが地下出版としてのテープ文化が花開いたソ連ですね!

今回、『共産テクノ』を執筆するにあたって、色々な人たちに情報を提供していただきました。その中でもヤロスラフ・ゴドィナ(Ярослав Годына)さんというウクライナの雑誌編集者の方には、アーティストの発掘に多大な助言をしてもらいました。今日は、彼に教えてもらった共産テクノの真打とも言えるバンドを紹介します。

ソ連には国営レーベル「メロディヤ」から作品を発表したメジャーな人たちとテープアルバムを中心に地下出版を続けたアンダーグラウンドな人たちがいます。アンダーグラウンド・シーンにおいての共産テクノの開拓者とも言えるのが、ラトビアのゼルテニエ・パストニエキ(Dzeltenie Pastnieki)。長くて、覚えにくいので、略称、DzPで呼びます。

彼らのデビュー作『Bolderājas dzelzceļš(ボルデラーヤス鉄道)』は、テープアルバムとして1981年に地下出版されました。2作目は『Man ļoti patīk jaunais vilnis(僕はニューウェイヴが大好き)』(1982 年)では、タイトルからもニューウェイヴへの憧憬が伝わります。僕の一押しは、4作目のアルバム『Vienmēr klusi(常に静かに)』(1984年)収録の物憂げさに溢れる「Milžu cīņa(巨人は戦う)」。TBSラジオでも流した曲です。

Vienmēr klusi




DzPのリーダーのイングス・バウシュケニエクス(Ingus Baušķenieks)の奥さんとなるのが、エディーテ・バウシュケニエセ(Edīte Baušķeniece)。彼女はDzPの曲「Mana kafejnīca ir salauzta(私のカフェはやっていない)」をカヴァーして、PVまで作っています。こちらも80年代的アンニュイさに溢れています。

Klusais okeāns


現在のベラルーシは、僕が世界地理を勉強していた頃はソ連内の白ロシアとして習いました。ヴェラスィ(Верасы)は、白ロシアを代表する、ヴィア(ВИА)と呼ばれる歌謡楽団。彼らは80年代初期にディスコ歌謡的な方向に行きましたが、1987年に発表された『Музыка для всех(すべてのための音楽)』が変な作品なのです。アコギと写ったジャケを見る限り、到底共産テクノには見えません。15曲入りのこのアルバム、9曲まではごく普通のヴィア的な内容。しかし、残りが突然変異を起こしています。まるで反乱のようです。

Музыка для всех


11曲目の「Полет(飛行)」は、テクノポップと言っても遜色がありません。



続く、「Аэробика(エアロビクス)」では、共産テクノのサブジャンルとも呼べるスポーツテクノとなっています。



こういう意外かつ健気な努力を見つけると、嬉しいものです。

ソ連ではスペースディスコ系バンドが多いですが、ウクライナにもいます。彼らの名は、ディスプレイ(Дисплей)。スペースディスコとロックが折衷のようなサウンドで、バンド形態でしたが、最後は夫婦にのみが残りました。

彼らの「Робот - суперчеловек(ロボット=スーパーマン)」をソ連初のテクノポップと呼ぶ人もいます。デビュー・アルバム『Волна перемен(変化の波)』に収録されているのが、これです。コンセプトもKraftwerk然としたロボ声もテクノポップと呼んでもいいでしょう。しかし、この作品は1985年なので、ソ連初というのはちょっと言い過ぎかなと。しかし、よく調べてみると、この曲は1982年にAPCという名前だった頃、演奏されていたのです(VKで聴けます)。ただ、この時点のアレンジは、テクノポップというよりもディスコポップ。

Волна перемен




2枚目の『Дисплей(ディスプレイ)』からの「Динамо(ディナモ)」は、ウクライナのサッカーチーム、FCディナモ・キエフのアンセムソングです。それほどテクノではないですが、ちょっとレゲエっぽいリズム。

Дисплей




サッカーもスポーツ、そしてエアロビクスもソ連では重要な体力増強のためのスポーツでした。ディスプレイはエアロビクスのためのスポーツテクノも手がけていますが、これはまた今度、特集します。

後で説明しますが、オリガ・ヴァスカニヤーンです。
Автомобили



ソ連の共産テクノを考察していると、Kraftwerkからの影響が窺える人たちが多いですが、もう一つがDepeche Mode。ちなみにDepeche Modeのロシア語表記は、「Дереш Мод」。1986年にモスクワで結成されたビオコンストルクトル (Биоконструктор)もそんなバンドの一つ。バンド名は、「生物のデザイナー」を意味しますが、バンド名をタイトルにした曲を聞いてみれば、やっぱりDepeche Mode好きが伝わります。



ビオコンストルクトルは、ビオ(БИО)とテフノロギヤ(Технология)という二つのバンドに分裂しました。ビオだけだと、なんだかヨーグルトみたいです。テフノロギアの「Нажми на кнопку(ボタンを押す)」は、さらにDepeche Mode度がアップします。ジャケットもそうでしょ! ちなみにテフノロギアは90年代以降もロシアで人気を博しました。

Нажми на кнопку




意外なる発見は、ビオコンストルクトルの中心メンバーのたアレクサンドル・ヤコヴレフ
(Александр Яковлев)の奥さんになったオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)。彼女はビオのメンバーとしても活動しましたが、「Автомобили(自動車)」というフレンチ・ウィスパーいやロシアン・ウィスパーと呼びたいテクノポップを残しています。なんだか共産主義の終焉を感じるクリップです。

先ずは、このジャケットを見て欲しい。これぞ、スポーツテクノ!

Pulse 4


アルゼンチンのEl Club de la Computadora(コンピュータ・クラブ)による『Pulse 4』というアルバム。2014年にリリースされ、Bandcampでなんとフリーダウンロードできます



モスクワで取材できたアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)のお二人が、スポーツテクノの元祖です。

共産主婦はスポーツテクノでエアロビクス!

この「スポーツ&ミュージック」シリーズが好きすぎると思われる人たち(Nicolas Marino, Facundo Barrera & Luciana Sayanes)による謎のプロジェクトです。オマージュ具合が凄まじい。

ソ連の元国営レーベル、メロディヤ(Мелодия)は現在も存在していますが、Facebookではメロディヤ自身によって、今までの「スポーツ&ミュージック」シリーズに加え、この『Pulse 4』が並べられています。

Sports & Music


是非、今後もスポーツテクノを極めて欲しいものです。

今日は、エストニアの苦労人バンド、マハヴォック(Mahavok)です。シングルデビューを1984年にしたものの、エストニアでは人気のあった女性ボーカリスト、マリュー・リャニク(Marju Lanik)のバックバンド的存在なり、1986年にアルバム『Südame laul(心の歌)』を発表。

Südame laul




リャニクに代わって、加入したのは、カレ・カウクス(Kare Kauks)。彼女の加入でエレクトロ度もアップします。ハチマキが似合う女性と言えば、「Physical」時代のOlivia Newton John、そして日本ならスターボーですが、エストニアなら、カウクスです。アルバム『Mahavok(マハヴォック)』は1988年ですから、かなり遅れてきたハチマキ女子ですが…

Mahavok




これまで紹介したバンドにもレゲエ・スカの影響を受けたバンドは結構いました。Браво(ブラーヴォ)、ストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)、そしてPoliceの影響もうかがえるフォルム(Форум)など。寒いソ連と熱いジャマイカには大きな距離感がありますが、ソ連では意外とレゲエが受け入れられていました。

1990年にはソ連のレゲエ集『Soviet Reggae Since 1977』というコンピが編集されています。共産レゲエです。Mixcloudで聴けますが、多くのバンドはエストニア出身です。

Soviet Reggae Since 1977


その中にも収録されているのが、エストニア語で「竜巻」を意味するトルナード(Tornaado)。英語なら「トルネード」です。意識したわけではないでしょうが、メンバーのルックスはマリオとルイージを思わせます。収録されている「Seitse(7)」は、Kraftwerkの「The Model」または「Das Model」のカヴァーです。テクノポップ的なところは残しつつも、レゲエ風に仕上がっています。



もう一つ、共産レゲエ。「熱のための委員会」を意味するカミチェート・アフラーヌィ・テョープラ(Комитет Охраны Тепла)という、到底一度では覚えれないバンド名。バルト海に面していますが、こちらは、ロシアの飛び地、カリーニングラード出身です。

Зубы



アムステルダムに行くということで、紹介してもらったミュージシャン、OMFO名義で活動するGerman Popovさんの家にお邪魔しました。OMFOとは「Our Man From Odessa」の略、つまりソ連(現在のウクライナ)のオデッサ出身なのです。彼自身もスプートニクとしてソ連時代に活動していたということなので、共産テクノの生き証人でもあります。

OMFOの代表作の一つが、「Trans Balkan Express」……タイトルから想像できると思いますが、バルカンビートの「Trans Europe Express」です!

Trans Balkan Express
OMFO
Essay Recordings
2005-04-05





OMFOの作品からも共産テクノ的スペースディスコ感が窺えます。その名も「Shepherd Disco」! Atom Heartが共同プロデュースとして参加。

We Are the Shepherds
OMFO
Essay Recordings
2006-12-05





彼に戴いたオムニバス『Omnipresence』(2003年)には、OMFOに加えて、Zodiac(Зодиак)の「Zodiac」が収録されています。

Omnipresence


ソ連内の小国、ラトビアが放ったスペースディスコ・バンド、Zodiacが放ったメガヒット・アルバム『Disco Alliance』からです。Amazonで買える稀有な共産テクノ作品。

Disco Alliance
Zodiac
Gala Records
2007-11-13





拙著『共産テクノ』でもそのあたりを書いていますが、ソ連にスペースディスコ系が多いのは、やはりフランスのSpaceからの影響も多大にあったことを確認しました。

先日のDOMMUNEでご一緒させてもらった大嶋さんが運営しているサイトが、「しまおー別館」。世界中のポップスを紹介されていますが、特にロシア・ウクライナには詳しいです。

大嶋さんが紹介したして、僕が(そして多分見ていた方も)ノックアウトされたのが、Ya Maha(ロシア語だと「Я Маха」)の「Снегурочка(乙女)」(2008年)。タイトルからかなり逸脱した、現代ロシア的タガが外れた感いっぱいの過激な動画です。



歌っているのは、マーシャ・マカローヴァ(Маша Макарова)は、メガポリス(Мегаполис)と「Где цветы? (花はどこへ行った)」をカヴァーしています。YMOのカヴァーもありますね。こちらは打って変わって渋いエレクトロニカ。

Солнцеклёш




ここまでは、ソ連崩壊後の話ですが、共産テクノとしてのメガポリスの「Москвички(モスクワっ娘)」からは、ペレストロイカ以降のソ連の風が吹きます。なかなか切なくていい曲。


昨晩は、DOMMUNEで『共産テクノ』5時間SPを濱崎さん、大島さんと3人でいたしました。たくさんの方々に見ていただいたようで、Togetterにてツイートがまとめてあります(濱崎さん、ありがとう!)。

昨日も紹介しましたスポーツテクノについて書きます。『共産テクノ ソ連編』のための取材目的で昨年の夏、モスクワを訪問しました。そして、スポーツテクノの先駆者となったアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)に会うことができたのが一番の収穫でした。日本からの訪問者を快く迎えてくれた本当にお二人には感謝をしたいです。

この二人がチームを組むことになったのが、『Ритмическая гимнастика (リズミック体操)』(1984 年)。エアロビクスのことです。アンドレイ曰く、「ほとんどのソ連の女性達はテレビのそばでジャンプしていました(笑)。」

Ритмическая гимнастика




その後も二人はスポーツを大義に、「Спорт и музыка(スポーツと音楽)」シリーズとして、『Пульс 1 Музыкальный компьютер(パルス1 コンピュータ・ミュージック)』(1985 年)と僕が勝手に「スポーツテクノ」と呼んでいるジャンルを開拓します(その後も別のアーティストにより計4作品がリリースされました)。ソ連という制約のある環境の中で生まれた発明です。クリエイティビティは制限から生まれる好例です。「電子めざまし時計」はピコピコ感満載で、ジャケも一周回ってかっこいい。

Пульс 1 Музыкальный компьютер




彼らは、PCを使った音楽の先駆者でもあります。今で言う所のDTM! Yahama MSXを使った『512 KB コンピュータ音楽』も大ヒット!


512 Кбайт - Компьютерная музыка




彼らのインタヴューから、当時のソ連の音楽事情、特に国営レーベルでリリースすることとはどんなことなのかが読み取れます。

明日(3月28日)19時よりDOMMUNEにてパブリブ Presents「共産テクノ / SOVIETECHNO【ソ連編】5HOURS!!!!!」です! 5時間いっぱい、しまおーさんとハマザキカクさんとおもしろ動画・音源を紹介いたします。

『共産テクノ』はamazonにも入荷しております。


今日は僕のいち推しの一つ、New Composers(Новые Композиторы)! Frank Zappaにも認められ、Brian Enoとコラボをした、ソ連のKraftwerk的存在です。

すでに紹介したキノ(Кино)との共作「This is Vasily」から行きましょう。リーダーのヴィクトール・ツォイは不在ですが、これが電子ニューウェイヴって感じで、かっこいいんです。

Start - Записи студии Яншива




「Именно сегодня и именно сейчас(まさに今日、まさに今)」は、サックスとシンセサイザーで作り上げた中毒性のあるグルーヴ感に溢れています。

『Именно сегодня и именно сейчас




1992年なので、ソ連崩壊後ですが、PVが素晴らしいので紹介します。Magnit & Boom Generation(PVはNew Composers名義)による「Tanz! Tanzevat!/Танц! Танцевать!(ダンス!ダンス!)」。Magnetは、ロッテルダム出身のBob StouteとNew Composersの共同プロジェクト。

Tanz! Tanzevat


数ある共産テクノの中でも一押しのバンドが、アヴィア(АВИА)。前回紹介した2トーン系として始まったストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)が分裂してできたバンドです。ジャケットからも窺えますが、アヴィアは総合芸術としての表現をモットーとし、ロシア構成主義やスターリン時代のアスリートのパレードの再現を行いました。

テクノポップであり、ストレンジポップ。シングル『Урок русского языка(ロシア語レッスン)』では、文字通り「私は話す」「あなたは話す」「彼は話す」……等、ロシア語動詞の格変化が学べます。僕はロシア語の格変化には今でもついていけません。

Урок русского языка




ステージもロシア・アヴァンギャルド! 演劇的で素敵です。ちょっとMoonridersを思わせる曲調。



こちらはアヴィアのメンバーが並行して、他のメンバーと結成したノム( Н О М )という、ストレンジ度が高いバンド。東洋風ブルースという孤高の分野に挑戦しています。

Брутто




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