四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

僕がモスクワのグリンカ中央音楽博物館を訪れた際、テルミンと並んで展示されていたのが、エクヴォディン(Экводин:一番左)とANS(АНС:右側の大きなタンス)シンセサイザーです。

museum


エクヴォディンは、1936年に開発され、ソ連初のシンセサイザーとされています。前回登場したヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин)も使っていました。

1958年に開発されたANSシンセサイザー を使ったミュージシャンとして有名なのが、エドゥアルド・ アルテミエフ(Эдуард Артемьев)。ANSが使われた彼の代表作は、1972年のソ連SF映画『Солярис(惑星ソラリス)』のサウンドトラック。テーマ曲であるバッハの「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」は、映画の感動のラストシーンを飾りました。

Solaris [12 inch Analog]
Edward Artemiev
Ais
2013-07-18





英国では、Psychic TVのメンバーだった、Coilの二人が、その名もずばり『ANS』(2004年)というタイトルでボックスセットをリリースしています。

Ans
Coil
Threshold House
2006-12-04

世界初の有人宇宙飛行を成し遂げたのは、ユーリイ・ガガーリン(Юрий Гагарин)。宇宙でミシェーリンの音楽が頭の中で流れたと言うほど、ガガーリンは彼のファンでした。

ヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин)は、「Popcorn」以外にもカヴァーをしています。「Последний год в школе(学校最後の年)」という曲がありますが、これは舟木一夫の「高校三年生」のカヴァー。



これも『Easy USSR part 1: 60-70’s』に収録されていますが、続編『Easy USSR part 2: 70-80’s』もあります。

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こちらはオリジナル曲で、ミシェーリン楽団の中でもコンセプト的にもテクノポップ度が高い「Упрямый робот(不屈のロボット)」。


本Blogは2013年3月3日より休止していましたが、本日より再開します。

拙著『共産テクノ ソ連編』が3月に発売されるにあたって、書籍で扱った共産テクノ系アーティストたちを動画を中心に紹介していきます。こじつけっぽいですが、「共産テクノ部」の「部」はブログの「ブ」です。

また、『共産テクノ』は、『デスメタルアフリカ』に続くパブリブからの第2弾となる音楽研究書であり、社会評論社が出版してきた「共産趣味インターナショナル」のVOL 5でもあります。

四方宏明さん執筆の『共産テクノ』を出版します!(パブリブ)

「共産テクノって何?」と不審に思われる方は、こちらを読んでみてください。

共産テクノ序章〜共産テクノとは何ぞや?

まず最初の話題は、テクノポップのルーツとも言われる「Popcorn」。Garshon Kingsleyのよる1969年の作品ですが、1972年にHot Butterによって全世界的にヒットしました。



ソ連にも「Popcorn」のカヴァーは存在します。1979 年のヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин) の楽団によるもの。



ミシェーリンの楽曲を集めたCD『Easy USSR part 1』でも最後を飾っています。

Easy USSR Vol.1
V Mescherine
Sony Classics

まだLana Del Reyを知らなかった時、最初「Video Games」というタイトルを見て、これはテクノっぽいだろうから聴いてみようとした所、当初の目的は忘れて、この曲に惚れ込みました。なんだか忘れていたアメリカの憂いが伝わってきました。自らのジャンルをサドコア(Sad Core)と公言するだけあって、泣けます。

ボーン・トゥ・ダイ ザ・パラダイス・エディションボーン・トゥ・ダイ ザ・パラダイス・エディション [CD]
アーティスト:ラナ・デル・レイ
出版: ユニバーサル インターナショナル
(2012-11-14)




前回紹介したThe Young Professionalsは、Lana Del Reyの「Video Games」のカヴァーもしています。ジャンル的にはかなり離れている二組ですが(Lana Del ReyのRemixには結構エレクトロなのもありますけど)、原曲にスピード感を持たせ、見事なエレクトロポップ化をしています。公式クリップではありませんが、ピンボールの映像もはまっています。

videogames-typ




Lana Del Reyに戻って、もう一つ、好きなのが、「Diet Mountain Dew」。作り込んでいないトラックで、「Video Games」と同様クリップも手作り感が溢れています。でも、圧倒的なノスタルジアにひれ伏します。



Lana Del ReyとThe Young Professionalsには、ともに来日して欲しい!

イスラエルのアーティスト、今まで脇役的に紹介した事はあるのですが、今回主役として紹介したいのは、The Young Professionals。略称として、TYP。Ivri Lider(背が高い方)とJohnny Goldsteinの2人組。Ivriの方は既にイスラエルでは有名なソロアーティスト。Johnnyはプロデューサー。ユダヤ人は頭いいという印象がありますが、二人ともヤッピー(Young Urban Professionals)っぽい。

『9am to 5pm, 5pm to Whenever』(2012年)というタイトルもビジネスマンって感じのデビュー・アルバムをリリース。男性版Clientって感じですかね。

9 Am to 5 Pm 5pm to Whenever9 Am to 5 Pm 5pm to Whenever
アーティスト:Young Professionals
販売元:Casablanca
(2012-07-03)
販売元:Amazon.co.jp


9 Am to 5 Pm 5pm to Whenever (Deluxe Edition)9 Am to 5 Pm 5pm to Whenever (Deluxe Edition)
アーティスト:Young Professionals
販売元:Polydor
(2012-06-26)
販売元:Amazon.co.jp


アルバムに収録され、シングルになっているのが、「TYP D.I.S.C.O.』。タイトルでピンと来る人は、ディスコマニアかDaft Punkのファン。「D.I.S.C.O.」は、1979年にリリースされたフランスのOttawanの定番ディスコ曲。曲を書いた一人は、Daniel Vangarde。彼は、Daft PunkのThomas Bangalterのお父さん。

disco




こちらは、LGBT (レズビアン・ゲイ・バイセクシャル・トランスジェンダー)をサポートするクリップ。


たまには流行ものについて書きましょう。「江南スタイル」の次みたいに紹介されている、最近人気急上昇中のダンス動画「The Harlem Shake」はご存知でしょうか? こちらが、何故か全身タイツのオリジナル版。



これを見て、作られたのがTSCS版。オリジナルより再生回数が多い! この腰抜けダンスは、NYのハーレムがルーツらしい。



「The Harlem Shake」という曲自体は、NYブルックリン出身のエレクトロ系のアーティストのBaauerによるもの。エレクトロ系と言ってもいろいろありますが、Diploとかに近い。

harlemshake


その後、解りやすいダンスの展開も手伝って、様々なヴァージョンが作られて、増殖中。いろんなのを集めたコンピレーション。



本日公開されたタイのアイドルレーベル、KamiKaze版もここに紹介しておきます。


The Cureというイギリスのバンドをご存知でしょうか? ご存知でない人でも、彼らの「Close To Me」(1985年)を知っている人は多いでしょう。ゴスっぽい外見ですが、この曲なんかはとってもポップで一度聴いたら耳から離れません。



イギリスの曲ですが、ウクライナ人に「このクリップ知っている?」って教えてもらったのが、Lady Sovereignの「So Human」(2009年)。



聴いてもらえればわかりますが、これがもうほぼ「Close To Me」。Lady Sovereignは、所謂グライム(Grime)系。いや、解ったような事を書いていますが、実はあまり知りません。調べてみると、イーストロンドンで始まったUKガラージにヒップホップ、レゲエ、ドラムンベースの要素が加わったミクスチャーサウンドと言った感じの解説が普通なされています。

『DIVA』という雑誌で、「Her first gay interview」とか受けていますので、彼女はレズビアンみたい。確かにトムボーイっぽい。

ladysovereign


ジグソージグソー
アーティスト:レディー・ソヴァリン
販売元:BMG JAPAN Inc.
(2009-08-26)
販売元:Amazon.co.jp

cleopatraルーマニア続けましょう。と、言っても今回紹介するのは、モルドバ共和国出身のクレオパトラ・ストラタン(Cleopatra Stratan)。モルドバは、旧ソ連から独立したウクライナとルーマニアに挟まれた人口360万人程度の小国。モルドバ人はほぼルーマニア人と考えてもよく、クレオパトラちゃん家族は、現在、ルーマニアに住んでいます。「恋のマイアヒ」のO-Zoneもモルドバ出身ですが、レーベルも同じくCat Music。

さて、このクレオパトラちゃん、2002年生まれで、彼女の最大のヒット曲「Ghita(恋のギツァ)」(2006年)は、彼女が3歳の時に歌われたもの。アーバンギャルドのよこたんが好きな幼女です。ていうか、3歳児です。



ちなみにデビュー・アルバムのタイトルは、『La varsta de 3 ani(3歳という年齢で)』。日本盤はPony Canyonから2007年にリリースされています。

こちらは、比較的最近のクレオパトラちゃん。



恋のギツァ(DVD付)恋のギツァ(DVD付)
アーティスト:クレオパトラ
販売元:ポニーキャニオン
(2007-04-18)
販売元:Amazon.co.jp

elena東欧のポップについて触れる事がありますが、僕にとってはまだまだ未開の分野です。クロアチアのEli Eちゃん、有名どころでは、ルーマニアのアレスタことAlexandra Stan。同じくルーマニア出身の Elena Gheorghe(エレナ・ゲオルゲ)ちゃんを最近知りました。最初は、アレスタが売れたから、柳の下の泥鰌的存在なのかと、失礼な憶測をしていましたが、彼女は、2000年に音楽祭で優勝し、2009年ユーロヴィジョンのルーマニア代表に選ばれている、ルーマニアの国民的歌姫。

こちらが、ユーロヴィジョンで歌った「The Balkan Girl」。



彼女の最大のヒット曲となったがのが、「Disco Romancing」。基本、バルカンビートをあしらったユーロディスコ路線。



ちなみにセクシーなエレナちゃん、司祭の家に生まれたのが意外。

ディスコ・ロマンシングディスコ・ロマンシング
アーティスト:エレナ
販売元:avex trax
(2012-09-12)
販売元:Amazon.co.jp

前回、「Tigersushiという名前はクールなんでしょうかね」という発言をしましたが、そのクールさはひねくれていて、あえてアンクールなモチーフでクールさを逆説的に表現している確信犯だと考えています。

「何が言いたいのか?」と言われる方もおられるでしょうが、Tigersushiを主宰するJoakimによるクリップを見て頂ければ、ニュアンスは伝わるか、さらに混乱するかのどちらかでしょう。

こちらのクリップは、同じフランスのValerieという懐古主義的集団にも通じる「Forever Young」。音的にはチルウェイヴっぽくもあります。



脱力エレクトロな「Find A Way」。クリップ中盤から出てくるの女子はとってもかわいいのだけど、周りにいる他の人たちがなんか変。



Joakimのアルバム『Nothing Gold』は味があって、なかなかの名盤。

Nothing GoldNothing Gold
アーティスト:Joakim
販売元:Tigersushi France
(2011-10-25)
販売元:Amazon.co.jp

Tigersushiというフランスのレーベルがあります。ネーミング的にも同じフランスのKitsuneと近いものがあります(笑)。やはり、日本由来の名前はフランス人的にはfrais(クール)なんでしょうかね。ゼロ年代初め、そうエレクトロクラッシュが流行っていた頃からやっていました。

Tigersushiの主宰者は、Joakim。彼が率いるJoakim & The DiscoのメンバーでもあるJuan De GuillebonがやっているのがDyE。このDyEのミュージッククリップ「Fantasy」に注目。音は、エレクトロというよりもレトロ感があるエレクトロポップ。クリップにアニメを使っているなと思いつつ、どうしてこんなにYouTubeのヒット数があるのだろうと不思議に思っていました。中盤から、ちょっとエッチな男女のお話は、ホラーへと展開していきます。ギャー、怖い。



Taki 183Taki 183
アーティスト:Dye
販売元:Tigersushi France
(2011-07-19)
販売元:Amazon.co.jp



Moon Recordsは、1997年に設立されたウクライナの最大のレコード会社。山下達郎などがいた日本のMoon Recordsとは関係ありません。ゴルヤチイ・シャカラート(Горячий шоколад=Hot Choccolate)や元バイアグラのソロなども所属しています。僕がキエフに滞在した際、彼女達はキエフに居なくて、直接会ってインタヴューできなかったのが、このゴルヤチイ・シャカラート。でも、メールインタヴューは出来たので、All Aboutの方で「ウクライナ発、黒髪の熱いチョコレート」を掲載しています。

こちらは最新のPVとなる「Стены (Walls)」。今までセクシーさを強調した路線だったのですが、今回はちょっとシリアスな大人ムード。



このグループはメンバー交代が激しく、インタヴュー時点で、3人の内、2人のメンバーは交代し、残っているのは、 ヴィクトリヤ・カソヴァ(Виктория Косова)のみ。そして、現在ではさらに一人のメンバーが交代しましたが、まだ新しい曲は出してない模様。

こちらが最新メンバー。
hotchocolate3


でも、相変わらず、みんな髪の毛はブルーネット。そう、それで思いだしました。先日、ウクライナ人と話していたら、日本人はみんな髪の毛が黒いの?と聞かれてしまい、あ、やっぱり髪の毛の色がみんな一緒というのが逆に不思議なんだなぁと・・・

ちょっと間隔が空きましたが、アインシュタイン・ガールズ(Девушки Эйнштейна)に続き、ロシアのビッチ特集。いや、ビッチというのは、少なくとも僕の中では、侮蔑的意味はありません。ちょっと困ったちゃんではありますが、愛すべきビッチもいるわけです。

ロシアではありませんが、アメリカのドラマシリーズ「Don't Trust the B**** in apartment 23」などは、愛すべきビッチを描いた最たる作品でしょう。

過去にも紹介したSerebro(ロシア語ではСереброとなりますが、普通アルファベット表記となることが多いです)の「МАЛЬЧИК (BOY)」のクリップ。Serebroの三人、機内で暴れています。乗客にちょっかい出すは、胸ははだけるわ、パンツ丸見えだし・・・ 一応、非公式クリップとなっているようなのですが、事前に了解をとったのでしょうかね、さすがに・・・

serebro - boy




この人たち、ロシアではアイドル枠に入るのでしょうが、中途半端なパンクバンドよりパンクです。

久しぶりに中華圏です。台湾のエレクトロポップ・バンド、The Girl And The Robots(女孩與機器人)。紅一点の女子は、Riinちゃん。ロボットの方は、Jungle君と蛋君。バンド名から推測している部分も多いにあるのですが、RoyksoppがRobynちゃんをフィーチャリングした曲に、「The Girl And The Robot」(2009年6月リリース)という曲があります。こちらのバンドのデビューは2008年なので、偶然に近い名前になったのでしょう。中国語のサイトでは、Daft Punk的という形容もされています。

こちらは彼らの最新の曲「平行宇宙」。エレクトロニカ寄りのエレクトロポップ、ポップエレクトロニカとかいう言い方をしている人がいましたが、そんな感じ。



Phoenixの「Too Young」のカヴァーなんかもしているところ、なかなかいいセンスをしています。



実は、来日も決まっています。2月の旧正月月間に青山の「月見ル君想フ」では、台湾・沖縄系のアーティストをゲストに日台交流イベント「ROMANTIC TAIWAN」が開催されます。2月13日、14日には、The Girl And The Robotも登場します。

アルバム『平行宇宙』(2012年)
heikouchu


平行宇宙 - The Girl and the Robots

昨日の話ですが、アーバンギャルドが参戦した初春音演会(心斎橋JANUS)に行ってきました。その日、海外出張から帰って来たばっかりだったのですが、行ってよかったと感じた実りのあるライヴでした。先ずは、オープニングを務めた野佐怜奈ちゃんを紹介。

アルバム『don’t kiss , but yes』が昨年の10月にリリースされ、ここに収録されている「嘘つきルージュ」が超ストライクで耳から離れません! 透き通るような声質が素晴らしい。楽曲も高浪慶太郎プロデュース(云わずと知れたex-Pizzicatoの人ですが、彼のユニットが2008年にリリースしたarcorhymeの2枚のアルバムも大好きです)で、アルバム曲は、Pizzicatoとキノコホテルが共演したようなモンド渋谷系・・・すいません、こんな表現しかできないですが、マジで褒めています。ちなみにシングル『ランブルスコに恋して』は、キノコホテルのマリアンヌ東雲がゲスト。昨日のライヴでもキノコホテルのイザベル=ケメ鴨川 がサポート。



DON'T KISS, BUT YESDON'T KISS, BUT YES
アーティスト:野佐怜奈
販売元:EMISSION ENTERTAINMENT
(2012-10-10)
販売元:Amazon.co.jp


僕の中では突然現れた彼女ですが、困惑させられました。野佐怜奈というのは、本名なのかどうか知らないですが、もうひとつ、ノーサレーナというグループがいます。歌っているのは、どう見ても彼女。こちらのグルーヴィー歌謡も素敵。



GIRLS SAZANAMI BEAT! VOL.5GIRLS SAZANAMI BEAT! VOL.5
アーティスト:VA (オムニバス)
販売元:サザナミ・レーベル
(2013-02-09)
販売元:Amazon.co.jp


さらに僕を混乱させるのは、響レイ奈という存在。彼女は昭和歌謡。



そして、彼女は、その名はスペイドでRubyとしても2009年まで活動してました。これはお話をさらに伺いたい。

野佐怜奈
ノーサレーナ
響レイ奈

タイの六大山岳民族には入っていませんが、結構見かけたのはパロン族(Palaung)。パラウン族と表記されることもあります。タイには約17,000人在住していますが、多くは、ミャンマーのシャン州、中国の雲南省におり、一時は、ミャンマーにタウンペン王国を築いたという話もあります。パロンはビルマ語由来で、中国ではドアン族(昂族)と呼ばれています。アジア全体で30万人くらいの人口。

言語は、オーストロアジア語族の中のモン・クメール語派となるパロン語で、語族的に他の山岳民族と離れています。
ありがとうございます=ロオッ・ミー

最初にパロン族に会ったのは、チェンマイ郊外メーリムのエレファントキャンプ。そこで。僕はガイドさんにタイ人を見つけて、美人リサーチのためのインタヴューをしていたのですが、偶然食堂で働いていた女の子(19歳)がパロン族だと。ちょっと、Perfumeのあ〜ちゃんに似ていました。

エレファントキャンプで会ったパロン族の女子
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同じメーリムの首長族の村に行った際も、子供連れのパロン族に会いました。彼女も割と日本人にもいそうな顔立ちです。

メーリムの首長族の村にいたパロン族の母娘
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ガイドさんがわざわざ探してくれたチェンダオのパロン族の村にも、車で場所を尋ねながら到着しました。以前は他の民族も住んでいた区域のようですが、現在はパロン族だけの集落になったようです。

チェンダオのパロン族の村
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衣装の特徴は、赤がベースになったストライプ模様のロンジー。シンプルですが、なかなか味わいのあるパターンです。

チェンダオのパロン族の村にいた女性たち
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あまり観光客が来ることもないような村なのですが、高床式の住居でおしゃべりをしていると、おばあちゃんがおもむろにプラスチックの袋から数点のお土産物を見せてくれました。ロンジーにも使われている生地で作られたおばあちゃんが手縫いしたバッグとペットボトル入れ(2つ)、スカーフ2点を300バーツ(約900円)で購入。

チェンダオのパロン族の村の家族
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こちらはミャンマーの映像ですが、パロン族の歌。



ミャンマーから脱出してタイ北部にやって来たパロン族について書かれた本。

The Palaung in Northern ThailandThe Palaung in Northern Thailand
著者:Michael C. Howard
販売元:Silkworm Books
(2002-03)
販売元:Amazon.co.jp

カレン族は、山岳民族全体の約半分を占めています(チェンライ山岳民族博物館のビデオによる)。タイには44万人くらい住んでいて、民族問題を抱えるミャンマーでは350万人くらいいます。ミャンマーに関する本も結構読みましたが、カレン族は頻繁に登場します。

同時にタイの山岳民族の中でもツーリズム的に重要な存在。

日本のテレビでもよく紹介しているのは、首長族としても知られるカレン族の支族の支族である3万人程度いるパダウン族。「パダウン」は「長い首」という意味。ツーリスト向けの村では、他の民族がどうせパダウン族のところでお土産を買うんでしょとちょっと妬まれる存在。この首輪で首が長くなる訳ではなく、肩が下がるだけです。超なで肩と行った方がいいでしょう。また、首輪は2、3年に一度、その道の専門家が取り替えてくれます(二つ目の写真では広がった首輪を僕が持っています)。

メーリムの首長族の村にいたパダウン族
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タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性と首輪
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リングをしていないパダウン族と思われる女性に「どうして首輪をしていないの?」と訊いてみると、「妊娠してから嫌になってやめた」と言っていました。

メーリムの首長族の村
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メーリムの首長族の村にいた子供たち(たぶんパダウン族)
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タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性たち
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ちなみに男性はリングをしておらず、カラフルなチョッキがトレードマーク。柄はPaul Smithのような現代風から伝統柄まであるそうです。

タートンの首長族の村にいたパダウン族の男性
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また、カヨー族もリングを装飾に使いますが、耳たぶの特大ピアスとひざ下・足首に使っています。ちなみに未婚の女性は基本白のトップスのようですが、子供の場合その限りではないのかと。

メーリムの首長族の村にいたカヨー族
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タートンの首長族の村にいたカヨー族
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エレファントキャンプの象使いの男性たちは、みんなカレン族(どの支族か知りません)。

エレファントキャンプの象使い
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全ての支族を収録した訳ではないですが、民族は以下のように分類されます。
赤カレン族=カレニー族(Karenni)
  > パダウン族(Padaung)=首長族=カヤン族(Kayan)[自称]
> カヨー族(Kayaw)=ブエ族(Bwe)=耳長族
白カレン族(White Karen)
> スゴー族(Sgaw)*
> ポー族(Pwo)*
*白カレン族に入れない研究者もいる
- 黒カレン族(Black Karen)

どうして首をあそこまで長くするのか? これには諸説あります。古い資料ですが、『世界の民族11(東南アジア大陸部)』(1979年、平凡社)によると・・・
(1) 首の長くした後、首輪を外すと自分で支えられなくなる。もし、女性が不貞を行った場合、首輪を外す事によって罰則的効果を生み出すという説。よって首輪は貞操の象徴。
(2) 首輪は装飾的意味合いもあるが、そして富と地位の象徴となる。首輪をつけた女性は高く評価される。
(3) パダウン族の発祥地には虎が多かった。女性を虎から守るため、虎に首を噛まれないように防具としてつけるようになった。
他にも、他の民族に奇異に見せる事によって、女性の略奪を防ぐなどがあります。

(1)については、首輪を長くしていて外している女性もおり、医学的にも肩が下がっているだけなので、罰則的効果については、僕は疑問です。また、とても長いのはかなりのお年の人だから、その心配もあまりないのでは? 貞操の象徴的意味はあるかもしれませんが・・・

(3)はなんだか物語的な後付け感がありますね。

同時に、首を長くする事が、現時点では自分たちの観光収入源となっている事も確かなので、由来ではないにしろ、今やっている理由としてはあるでしょう。

習慣としてして出来上がったものの理由の解明は難しいですが・・・今回現地で何度も彼女たちを見ていて、感じた事ががあります。首が長く見える首輪というのは、とても過剰な装飾で、その民族でない人には、最初は奇妙に見えるのかもしれません。基本、人間は、人間としての共通の美意識を共有しつつ、見慣れないものには抵抗を感じます。しかし、何度も見ているうちに、仲間(族)意識をもって文化的価値観な共有をしていく事で、それが美しいという感覚に変わるのではないかと。例えば、紫の服を来たパダウン族の女性、元々美人ですが、何度も見ていると、長く見える首となで肩は美の自己主張ではないかと感じるようになりました。

タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性
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パンクスやゴス系のファッション・髪型なども現代における過剰の美学なのかと。

National Geographicのパダウン族に関する動画



エコツーリズムの民族誌―北タイ山地民カレンの生活世界エコツーリズムの民族誌―北タイ山地民カレンの生活世界
著者:須永和博
販売元:春風社
(2012-10-29)
販売元:Amazon.co.jp


「遺された者こそ喰らえ」とトォン師は言った: タイ山岳民族カレンの村で「遺された者こそ喰らえ」とトォン師は言った: タイ山岳民族カレンの村で
著者:吉田 清
販売元:晶文社
(2012-04-06)
販売元:Amazon.co.jp

リス族(傈僳族)は中国の雲南省から四川省にも住む少数民族ですが、タイにも38,000人程度おり、中国、ミャンマー、インド北部も合わせると120万人くらいはいると思われます。リスとは高貴な人という意味。リス族は、山岳民族の中でも清潔好きで、美男美女が多い事で知られています。なんだか名前も衣装も可愛くて、親近感が湧きます。

リス族は、中国・チベット語族のチベット・ビルマ語族のリス語を話します。ラフ族のラフ語に最も近いとのこと。
こんにちは=ア・コエ・チャ
ありがとう=ブー・ムー・ショー(良い響き)

リス族の村に訪れた際、村にはほとんど人がいませんでした。もともとアニミズムを信仰していた人たちですが、村にはキリスト教の教会がありました。

メーサロンのリス族村の教会
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赤と緑のクリスマスを思わせる飾り付けもされています。

メーサロンのリス族村
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やっぱり、辛いものが好きなのでしょう、唐辛子が干されています。

メーサロンのリス族村
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大人の艶やかな衣装を来たリス族に会えなかったのが残念ですが、アカ族の市場にリス族の子供たちが、アームバンドやバッグを行商に来ていました。僕は赤いリスっぽいアームバンドを20バーツ(60円)購入。別の子たちが来て、「僕はもう買ったよ」というと、「私のはまだ買っていない!」となかなかの商売人。リス族のトレードマークの飾り紐いっぱいの平べったい帽子は、子供が冠っても超カワイイ! 将来イケメンになりそうな男の子の衣装もオシャレー。リス族の過剰ファッション、きゃりーぱみゅぱみゅの原型を感じます。

メーサロンの市場で行商をするリス族の子供たち
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タイのリス族についてうまくまとめられた動画を見つけたので、貼っておきます。

ラフ族(拉祜族)は、タイ人はムソー族とも呼ぶようです。どうしても英語のRoughを連想してしまいがちですが、Lahuです。タイにいるのは、約10万人で、中国、ミャンマー、ラオス、ベトナムにもラフ族はおり、全体で70万人くらい。

ラフ語は、アカ語、リス語と同じくチベット・ビルマ語族。アカ族やリス族も含めた共通語としての役割もはたしてきました。
こんにちは=チェ・シャア・ラ
ありがとう=オ・ボ・ウジャー

ラフ族はいくつかの支族に分かれます。赤ラフ族、黒ラフ族、黄ラフ族、白ラフ族、シェレラフ族など・・・支族分裂を繰り返し、もっといるという記述もあります。それらは衣装から判断がつく場合もあるようですが、服装の近代化にともない必ずしもその判別は容易ではありません。メーリムの首長族の村では、 袖口やスカートの裾が赤色の 伝統的衣装をまとった赤ラフ族と思われる女性がいました。じゃ、「他の色の支族は?」と言われると、分かりません。今回訪れたラフ族の市場や村落でも、ほとんど伝統的衣装は見かけませんでしたから。おばあちゃんのズボンは赤ラフっぽいですけど。

メーリムの首長族の村のラフ族
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メーカチャンのラフ族の市場にいた少女
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タートンのラフ族の村のおばあちゃん 
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タートンの赤ラフ族の村には学校があり、幼稚園から小学生と思われる子供たちが勉強に励んでいました。先生は、33人の生徒がいると説明してくれましたが、二人の男の子は教室から抜け出し、無邪気にフリーダムを満喫し遊んでいました。他の民族もそうでしたが、普通の子供たち(行商やツーリスト村でないという意味)は民族衣装ではなく、普通の格好。ここの学校がそうだかはわかりませんが、ガイドさんによれば金曜日は民族衣装の日となっている学校があるとのこと。

タートンのラフ族の村
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タートンのラフ族の村の学校
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タートンのラフ族の村の学校
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タートンのラフ族の子供
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タートンのラフ族の村の学校の商店
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もっといろんなラフ族の衣装が見たかったです。検索していると、タイのメーサイで新年のお祝いをするラフ族のホカホカの映像が見つかりました。やはり、ハレの日だけあって、民族衣装がほとんど。



こちらは、ラフ族の歌(Lahu Song)で検索すると、かなりのカラオケ映像のようなものが出てきます。と言っても、女の子がちゃんと歌っているんですけど。これを見ながら、女の子と歌うのでしょうか? 1分38秒くらいでアップになるバックダンサー女子が可愛いです。しかし、地名らしい名前(Mong Hsat)は、ミャンマーのシャン州ですね。まぁ、山岳民族には国境という観念は希薄だということでお許しください。



ラフ族の昔話―ビルマ山地少数民族の神話・伝説 (叢書 知られざるアジアの言語文化)ラフ族の昔話―ビルマ山地少数民族の神話・伝説 (叢書 知られざるアジアの言語文化)
著者:チャレ
販売元:雄山閣
(2008-04)
販売元:Amazon.co.jp

モン族は、Hmongと綴り、Monでは別のクメール系のモン族(ミャンマー、タイに在住)になるので注意しましょう。混同をさけるためにフモン族と表記されることもあります。タイではメオ族と呼ばれることもありますが、蔑称的意味合いもあるようです。たぶん、ミャオ族(語感からもメオ族に近い)は漢民族が使う呼び名で、中国では苗族と書き、中国の雲南省あたりからタイへ流入。また、モン族はミャオ族の支系とされています。タイには約15万人に住んでいますが、アジア(中国、ベトナム、ラオス、タイなど)に1000万人くらい住んでおり(統計によって差があります)、少数民族とは呼べないレベルの人口。 また、アメリカ、フランスなどに移住したモン族もいます。

モン族の話すモン語(ミャオ語)は、前回紹介したヤオ族が話すミェン語(ヤオ語)と同じ、中国・チベット語族の中のミャオ・ヤオ語族となります。民族的には語族からも近いのでしょうが、全然違う言葉にみえます。
こんにちは=ニャー・ドゥジョング
ありがとう=ウォアジャオ

僕がチェンコンのモン族の村を訪れた時は、ちょうどクリスマスイブ。子供たちが、楽しそうにプレゼントのラッピングをしていました。

チェンコンのモン族の村(クリスマスプレゼントのラッピング)
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モン族はもともとアニミズムを信仰する民族ですが(玄関の飾りもその辺りから来るのでしょうかね)、キリスト教に改宗している人たちも多いようです。同時にヤオ族と同じく、中国的なものも感じました。

チェンコンのモン族の村(カトリック系施設)
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チェンコンのモン族の村(トウモロコシの飾り)
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ちょうど、モン族の渋いおじいさんが焼酎のようなお酒を瓶詰めしていて、少し飲ませてもらいました。土間にはたき火で鍋ですが、パラボラアンテナが混在し、新旧のミックススタイル。

チェンコンのモン族の村(焼酎をびん詰め)
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チェンコンのモン族の村(土間)
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チェンコンのモン族の村(パラボラアンテナ)
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チェンコンのモン族の村(子供たち)
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チェンコンのモン族の村(黒豚)
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チェンコンのモン族の村(歩いていた親子らしい二人)
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ちょうど、村の近くに自動車による移動式市場が来ており、観光客ではなく、村人たちが集まっていました。衣装がメインで、モン族によく見る丸いアップリケも単品で売っていました。特に派手系の民族衣装に当てはまると思われますが、伝統的な染め物を化繊の布地で代用した既製品が販売されています。民族衣装のユニクロ化? モン族デザインをあしらったジャージとかどうでしょう? 衣装によって、白モン族と青モン族に分かれるようですが、この辺りは今後の課題という事で。

チェンコンのモン族の移動市場
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チェンコンのモン族の移動市場
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チェンダオのモン族の市場
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チェンダオのモン族の市場
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実際に同じようなのを着ている人は見なかったのですが、モン族の衣装もなかなか艶やかです。こちらは2012年のMountain Lifestyle Showでのミス・モン族・タイランドの美女たちの踊りです。これ、見たーい!



アカ族にもありました、モン族もサイトがあります。
HMONGTHAILAND.COM

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