四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2011年07月

北欧のアーティストは、その人口の少なさの割にはポップミュージック業界では活躍している印象があります。もちろん、スウェーデンのABBAの影響でそのような印象が根づいている部分もあるでしょうが、特にそのメロディーに惹かれ、北欧ポップが好きな日本人は多いです。スウェーデンが筆頭に来て、a-haやRoyksoppのノルウェーも頑張っている。デンマークはちょっとマイナーだけど、Gangwayとかいいバンドいます。そんな中、フィンランドはちょっと後れを取っている感があります。

紅一点のIisa Pajulaがヴォーカル、Mikko PykariとMikko Rissanen(何故か同じ名前)の男性からなるRegina(フィンランド語ではレギナと読む)という3人組がフィンランドにいます。Reginaというと、Madonnaがデビューした頃、Madonna路線だったアメリカのソロシンガーを思い出します。スウェーデンやノルウェーのアーティストのほとんどが、英語で歌唱し、世界のマーケットをターゲットにしているのに対し、前回紹介したPMMPと同じく、Reginaもフィンランド語で歌っています。

1年ほど前に中古で見つけた日本盤CDなのですが、Reginaの『Katso maisemaa(カツォ・マイセマア)』(2006年;フィンランドでは2005年にリリース)というデビュー・アルバムを購入しました。
カツォ・マイセマアカツォ・マイセマア
アーティスト:レジーナ
販売元:フィルターレコード
(2006-08-23)
販売元:Amazon.co.jp
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タイトルの意味は「See The Landscape」。ジャケは如何にも北欧という佇まい。PVが無いのが残念ですが、「Tokio」という文字通り東京を歌った曲があります。


Reginaは現在も活動しており、それ以降も以下のアルバムをリリースしています。残念ながら、それ以降日本盤はリリースされず、フィンランド盤はAmazon.co.jpでもHMVでも売っていません。でも、1stと2ndはiTunesで買えます。

『Oi miten suuria voimia!』(2007年)
oimiten

『Puutarhatrilogia』(2009年)
『Soita mulle』(2011年)

2ndからPVが製作された「Paras aika vuodesta (The best time of year)」がお薦め。フィンランド語で歌っているせいもあるでしょうが、北欧の哀愁が漂いつつ、無国籍感溢れる不思議なエレクトロポップ(Elektropop)。

今回の北欧旅行、エストニアがどちらかというと僕にとっての主役だったのですが、トランジットだったフィンランドのヘルシンキにも滞在しました。旅行に行く前にその国に関する本を読むというのが僕の習慣です。堀内都喜子さん著『フィンランド豊かさのメソッド』を読んでいると、フィンランド人は酒飲みが多いという話がありました。
フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453))
著者:堀内 都喜子
販売元:集英社
(2008-07-17)
販売元:Amazon.co.jp
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実際に実証するまでには至らなかったのですが(あっ、でも、エストニアであったロックフェスで話したフィンランド人はかなり酔っぱらっていた)、もしからしたら、そうなのかもと思わせるPVを発見。


このPVは、フィンランドのシングル・チャートで2003年に1位となったPMMPによる「Rusketusraidat (Tan Lines)」。ヨッパライの超迷惑なおねえちゃん二人は、Paula Vesala(金髪)とMira Luoti(黒髪)。3人のバックアップ・ミュージシャンもいますが、この二人がフロントとして目立ちまくっています。PMMPとはABBAをもじったようですが、Paula、Mira、Mira、Paula・・・二人の名前を二回使うと言う反則技に出ています。とにかく、このPV、二人のハチャメチャぶりが笑えますから、ぜひ最後のオチの部分まで見てください。まぁ、しらふでもハチャメチャなのかもしれませんけど・・・

ポップでちょっとパンクなPMMP、本国ではかなり人気があるみたいで、このPV曲が収録された1stアルバム『Kuulkaas enot!』(2003年)より5枚のアルバムをリリースしています。子供にも人気があるらしく、さしずめフィンランドのPuffyみたいな存在なのでしょうかね。
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フィンランド人に酒飲みが多いかについてはさらなる調査が必要かと思われますが、普段どちらかというと温厚な感じのフィンランド人、お酒を飲むとより弾けて見えるのかもしれません。

7月の6日から9日まで、エストニアの歌と踊りの祭典があった歌の原で、Ollesummerというロックフェスがありました。去年は、Scissor SistersやCalvin Harrisも出ていたようですが、今年は目玉であったThe Cranberriesがドタキャン。Royksoppが来る別のフェスもあったのですが、1週間ずれていたので断念。やはり辺境のロックフェスにもぜひ行ってみようと、初日に再び歌の原へと。歌の原の前には海が広がっています。
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ステージは、メインステージ(Postimehe Lava)以外にもラウンジやカラオケ用の場所も含めて合計7つあります。Estrella Lavaというサブステージで、HU?というエストニアにしては珍しいニューウェイヴなバンドが登場。
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ヴォーカルの女性の名前はHannaliisa Uusmaというのですが、その頭文字をとってHU?という名前になっています。こちらは、「Absoluutselt」のTVでの収録。


記念に後にCD『HU2』も購入。
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ラウンジでは、旧ソ連圏では幅を利かせているPlayboy主催のビキニギャル・コンテストなんてのも。カメラを持った男性が多いのは、万国共通。あ、僕もだけど・・・
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正式な呼び名は分からないのですが、細長いビルのてっぺんからロープ下りなんかも出来ます。バンジージャンプできる所もありました。
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世界中どこのロックフェスにもいると思われる異常にノリのいいおっさん。
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まだ明るい11時から始まったメインステージでのトリは、UKからやって来たKiller Queen! Queenのトリビュート・バンドです。
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よく見えないので、フレディ役のアップ画像を見てください。流石に「Killer Queen」を歌う時は厳しかったですが、かなりオリジナルに忠実に歌唱。ブライアン・メイのギター・ワークも忠実にコピー。
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いつかロックフェス辺境ツアーなんていうのをやってみたい。

北欧(ノルディック)というと、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー(この3カ国でスカンディナヴィア)、フィンランド、アイスランドの5カ国を指します。エストニアは通常、北欧の仲間には入らず、旧ソ連圏であり、バルト三国に一国とされています。でも、今回エストニアを訪れた印象としては、エストニアは文化的には北欧圏でいいのではないかと。素朴な北欧、物価の安い北欧です。同じバルト三国よりも人種、言語的にもフィンランドに近いです。

酒井景都さんが中田ヤスタカ氏とCOLTEMONIKHA(コルテモニカ)というユニットをしていましたが、そのモチーフまたは彼女の服飾ブランドでもあったCOLKINIKHA(コルキニカ)は、架空の北欧の国。エストニアにぴったりではないでしょうか?

エストニアの首都タリンは、旧市街(Old Town)が世界遺産に指定されている中世の趣を残した街。展望台が街を見下ろせば、まるで模型で作られたお伽の世界。
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ストリートにもとても風情があります。
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街には城壁や見張り塔などがいっぱい。
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バスで20分くらいのところにあるエストニア野外博物館にはのどかな世界が広がります。博物館には民族衣装をまとったおばあちゃんがとっても絵になります。観光客も年配の方が多い。
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旧市街で見つけたDM BAAR(エストニア語でBAARとはBAR)の看板。
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DMとはなんとDepeche Mode。こんな所にDepeche Modeのマニアがいるとは! まだ早すぎて、バーには人が居ませんでしたが、中をのぞいてみると・・・
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2011年7月1日から7月3日まで3日間、「第11回青年の歌と踊りの祭典(11th Youth Song and Dance Celebration)」が、エストニアの首都、タリン郊外の歌の原(Lauluvaljak)で行われました。エストニア語では「maa ja ilm」と呼ばれます。2009年には5年に1度の本チャンの「歌と踊りの祭典」が行われているので、これは青年版ということでしょう。規模は十分大きかったですが・・・


歌と踊りの祭典は、ユネスコの無形文化遺産にも指定され、1988年の祭典はエストニア、いや世界にとって重要なものでした。まだ、ソ連の支配下にあったエストニアにて、歌の原には約30万人が集結し、当時まだ御法度であったエストニア語で歌が歌われ、その後1991年のエストニア独立へと導いたと言われます。これは「歌う革命」と呼ばれます。

僕がタリンに到着したのは、7月2日の夜。日本からの最短欧州ルートとされる、フィンエアに乗れば日本(僕は関空から)から約9時間半でヘルシンキに到着。ヘルシンキからはフィンエアの乗り継ぎ便でタリンまで約30分。高速船に乗っても2時間もかからずタリンに到着。エストニアってどこ?って思われる方も多いでしょうが、意外と近いのです。

最終日となる7月3日の9時ごろから、タリン市内から歌の原までパレードは始まります。街路にはパレードを見守る人達が集まり、艶やかな民族衣装で数え切れない集団が次々と行進して行きます。パレードには男性も居ましたが、やはり女性の民族衣装の美しさに目が惹かれてしまいます。
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午後からは、歌の原に人々は集結。市内からバスに乗って、20分くらいで歌の原に到着。
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野外スタジアムは人で埋め尽くされています。観客も多いですが、ステージの演者の多さ(写真の上部割は演者)にも圧倒されます。
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後ろを向くと、人、人、人。
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エストニアは136万人程度の小国ですが、自国の文化をこの祭典を通じて守り、それを楽しむ気持ちが伝わるとても貴重な体験となりました。

皆さん、変な髪型のシンガーと言えば、誰を思い浮かべるでしょう?

僕はやはりA Flock Of Seagullsのマイク・スコア(Mike Score)ですね。彼らの代表曲とは言い難いですが、「Space Age Love Song」のPVでは一番変な、いや奇抜な、いや個性的な髪型が決まっています。アメリカのTVドラマ「Friends」、映画「Pulp Fiction」「The Wedding Singer」でもネタになったりするぐらいですから・・・


最近なら、やはりLady Gaga様。先日の「徹子の部屋」でも髪型に対するこだわりを語っておられました。確かにその文脈では黒柳徹子さんはうってつけの相手。

Винтаж (Vintage)のPV「Микки (Mickey)」(2010年)も負けていません。カモメヘアに対抗して、Annaちゃんの髪型がミッキーマウスに! Annaちゃんによると、この曲はミッキーではなく、マイケル・ジャクソンに捧げた曲だそう。ちなみにVintageは、マイケル・ジャクソンとマドンナに影響を受けたらしいです。でも、地毛ではなくカツラのようで、残念。これ、誰か地毛でやってほしい!


こんなのがディズニーランドに居たら、いいのになぁ〜。

Винтаж (Vintage)のアルバム『SEX』(2009年)からもう1曲「Ева (Eva)」を紹介しましょう。エヴァって人名のようですが、調べてみると、Ева Польна (Eva Pol'na)という歌手に捧げた曲と言う事が分かりました。

いったい誰なんだと調べてみると、サンクト・ペテルブルグ(旧レニングラード)生まれの35歳。現在はソロ活動をしていますが、Гости из будущего (Visitors From The Future)というユニットでЮрий Усачёв (Yuri Usachev)と二人で活動していました。
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PV「Беги от Меня (Run Away From Me)」(1999年)は、「Eva」の元ネタです。


現在のEvaはこの頃よりかなり貫禄がついて迫力があります。

さて、肝心のVintageの「Eva」のPVは、ボサノヴァ調で始まる曲でEvaらしき人も登場。でも、入浴シーンやお着替えシーンなどAnnaちゃんのセクシー・シーンが満載となっています。どうしてそうなるのか、脈絡がさっぱり分からない・・・


しかしながら、この曲はロシアで2009年に一番流れた曲だとの事。

Винтаж(Vintage)のメンバーについてさらに掘り下げていきましょう。シンガーのАнна Плетнев (Anna Pletnev)は、意外と芸歴が長く、子持ちの33歳、2度目の結婚。ちなみに2度目の旦那さんはロシアの有力薬品メーカーの共同オーナー。こういうパターンが多いですね、旧ソ連圏は。

Лицей(Lyceum;「High School」という意味)というギャルバンで1997年から2005年まで活動していました。このグループは1991年に結成され、High Schoolという名前にも関わらず、メンバーを変えつつも現在まで存続している長寿バンド。Annaが在籍した比較的最近の曲「Двери открой(Doors Open)」(2004年)では、ギター二人にベース一人の編成で歌っています。現在では、全然High Schoolというイメージはありません。


Vintageとしては『Криминальная любовь (Criminal Love)』(2007年)と『SEX』(2009年)という2枚のアルバムをリリースしています。
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Annaちゃん、Vintage加入以降はセクシー路線に転換。Vintageとしてロシアで初の1位となった曲が「Плохая девочка (Bad Girl)」です。この曲に参加したのは、ロシアのTVシリーズ(昼メロ系)に出演する女優、Елена Корикова(Elena Korikova)です。
elena


現在、38歳のElenaですが、スラブ系のうっとりする超セクシー美人! ロシアのセクシー熟女の共演です。

本日紹介するグループは、ロシア発のВинтаж(Vintage)。2006年に結成されたグループで、現在のメンバーは、Anna Pletnev(シンガー)、Alexei Romanov(コンポーザー、ちなみに男性)、Svetlana Ivanova(ダンサー)の3人。2008年まではイギリス人のMiaというダンサーも在籍していました。

今までロシアとウクライナの特集をしていると、好むと好まざるに関わらず、セクシーPVが多い事に気づきます。Vintageも例外ではありませんが、VintageのYouTube内動画チャネルに「Sex (Megamix - Clip Fan)」という彼らのセカンド・アルバム『SEX』(2009年)からのタイトル曲「SEX」に合わせて作られた動画マッシュアップがあります。


Vintage自らに加え、既に紹介済みのバイアグラ、スヴェトラーナ・ロボダ、NikitAや懐かしいt.A.T.u.などのPVがエディットされて登場します。ファンが勝手に作ったマッシュアップではないかと推測しますが、これらはレーベルが違い、チャネルで堂々と公開してしまうところがやっぱりロシア・ウクライナだなぁと。

白夜の北欧に1週間ほど行っていたので、久しぶりの更新となります。また、北欧レポートは後日ということで、ウクライナ発SMSの続きです。

SMSは何を思ったのか、2008年に『Hits Of The 80's』というカヴァー・アルバムを出します。80'sと言えば、まだロシアもウクライナもほぼソ連時代です。ペレストロイカが始まったのが80年代後半なのですから。今のロシアは資本主義だけど、自由主義だと言い難いところがあります・・・ポップカルチャー的なモノに関しては自由、いや場合によっては自由すぎる国という印象です。
hitsofthe80s


当時は西側の音楽は、ソ連では幅広く自由に聴く事が出来なかったのでは思っていたのですが・・・でも、こんなカヴァーが出されると言う事は、やはり何らかの形で流通していたのでしょう。

選曲がなかなか面白いです。
基本、アメリカではなく、ヨーロッパ。ヨーロッパといってもイギリスよりも大陸、特にイタリア系ユーロビートやミュンヘン・ディスコなど。

イタリアの爆乳シンガー、Sandaraの「Boys」はそのPVの素晴らしさのあまり以前紹介しました。「One Way Ticket」は、ニール・セダカというよりもBonny Mの方かと。

01. Boys (Sandra)
02. Gimme! Gimme! Gimme! (ABBA)
03. You’re My Heart You're My Soul (Modern Talking)
04. Midnight (Arabesque)
05. Voulez – Vous Danser (Ricchi e Poveri)
06. Hands Up (Ottawan)
07. Sunny (Bobby Hebb)
08. You’re My Love (Patty Ryan)
09. Kalimba Di Luna (Tony Esposito)
10. Mama Maria (Ricchi e Poveri)
11. One Way Ticket (Bonny M)
12. Venus (Bananarama)

ここまで紹介したSMSの音源は、全て公式サイトより無料ダウンロードできます。やっぱりウクライナですね。

最後にSMSの最新アルバムとなる『Читай по губам(Read My Lips)』のタイトル曲のPVを見てください。セクシーというよりもアダルトな感じ。

ウクライナやロシアには3人組女子ユニットが多い事はこれまで書いてきた記事を読んで頂ければ、判ると思いますが、同時にメンバー・チェンジが頻繁に起こります。バイアグラしかり、スリーフキしかり、XSしかり。SMSもその例外ではありません。

これまでこんな感じでメンバーが交代しています。
マリナ(МАРИНА)
タティアナ(Татьяна)→ヴェロニカ(ВЕРОНИКА)
ラーナ(Лана)→アレキサンドラ(Анастасия)→ナスタヤ(НАСТЯ)

ということで、現在のメンバーは、唯一古参のブルーネットのマリナ、赤毛のヴェロニカとブロンドのナスタヤとなります。

セカンド・アルバムは、『Тело(Body)』(2006年)。
telo


ここで紹介すべきは、タイトル曲の「Тело(Body)」です。バイアグラを意識したのか、SMSという本来の趣旨に戻ったのか、ボンデージを意識したPV。スキンヘッドのごついおっさんは意外にバイオリンを弾いたりしています。


モスクワのステージでも歌番組の観客を前にボンデージ(笑)。結構、お客さんが入っています。

2004年に結成されたウクライナの3人組、SMSです。SMSとは携帯で使用するShort Message Serviceの略として使われていますが、たぶんそれが由来ではないかと思ったのですが・・・

ロシアのFacebookまたはmixiのようなサイト、в Контакте(フ・コンタクティェ)によれば、SMSとはSex Music Sportとの事。SMAPみたい(笑)。

2004年結成時のメンバーはブルーネットのマリナ(МАРИНА)とWブロンドのタティアナ(Татьяна)、ラーナ(Лана)の3人。この3人で、デビュー・アルバム『SMS format』(2004年)をリリース。
smsformat


「Любий, кохай мене (Love Me, Honey)」のPVで注目を浴びたようですが、これはロシア語ではなくウクライナ語で歌われています(違いがいまいち分かりませんけど)。ベッドでまくら投げするエロカワなクリップです。


「В мае (In May)」も同じアルバムに収録されていますが、メンバーが一人違いますね。セクシー度も高く、アダルトコンテンポラリーなディスコ・ナンバーでなかなかよろしい。

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