四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2012年04月

スカと言えば僕の世代だと、70年代終盤の英国で勃興した2トーン・ブーム。パンク〜ニューウェイヴ・ムーヴメントの延長線上にもありますが、The Specialis、Madness、The Beat、Selectorなどのバンドが活躍しました。当時、市松模様のシャツともThe SpecialsのTerry Hallなんかを意識しながら着ていた人もいたでしょう。

オリジナルスカは、60年代スカの故郷、ジャマイカで浸透をしました。僕の中では、スカはジャマイカ、そして英国というイメージなのですが、アメリカでもスカを取り入れたシンガーがいました。Annette Funicelloというイタリア系アメリカ人。ディズニーのマスコットガール出身の59年にデビューした歌手・女優。アイドル歌手の先駆けとも言えましょう。当時、Paul Ankaとの恋仲が話題となりました。

彼女のヒット曲としては、「Pineapple Princess」(1960年)が有名でしょうが、紹介したいのは、「Jamaica Ska」(1964年)。ガールポップ・シンガーが60年代にスカを歌っていたとは。侮れないアネット! これは、Bob Hopeと一緒にテレビで歌っている動画。



原曲は、ジャマイカのオリジナルスカのDesmond Dekkerによるもの。Specialsとコラボしているヴァージョンがあります。



そして、Annetteは、アメリカのスカ系ミクスチャー・バンド、Fishboneとコラボし、映画『Back To The Beach』(1987年)に登場! おばちゃんにはなっていますが、いなせな姉御って感じで素敵。



20th Century Masters: Best of20th Century Masters: Best of
アーティスト:Annette Funicello
販売元:Disney Int'l
(2007-02-06)
販売元:Amazon.co.jp
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The Supremesと言えば、「You Can’t Hurry Love(恋はあせらず)」。現在、SoftBankのCMで使われているので、若い人にもわかる曲。そう言えば、「青い山脈」をトリンドル玲奈が鼻歌したり、SoftBankは懐メロ路線です。話はそれますが、capsuleのツアーで、DJ中田ヤスタカがこの「青い山脈」の鼻歌リミックスを披露していました。業師です。



「Stop In The Name Of Love」と同様のチームにより、全米1位となっていますが、僕の世代では、Phil Colinsのカヴァーでこの曲を知った人も多いでしょう。彼のソロとしての初の全英1位曲でその後の活躍のきっかけとなりました。



The Supremesは、イタリア語版「You Can’t Hurry Love」として「L'amore Verra (Love Will Come)」もリリースしています。



それをカヴァーしたのが、イタリアのフェロモンあまり過ぎ肉食系美人、Nina Zilli。いや、このカヴァー、超セクシー。



Sempre Lontano-SlidepackSempre Lontano-Slidepack
アーティスト:Nina Zilli
販売元:Unive
(2010-08-17)
販売元:Amazon.co.jp
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前回のSandiiと同じパターンですが、高橋幸宏のソロアルバム『音楽殺人』もレコードがすり切れるほどというか、すり切れるまで聴きました。

音楽殺人音楽殺人
アーティスト:高橋ユキヒロ
販売元:キングレコード
(2009-03-25)
販売元:Amazon.co.jp
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テクノポップでありつつも、60年代的黄金ポップスの風格のある作品です。その風格を作り出している曲と言っても良いのが、「Stop In The Name Of Love」。



オリジナルは、Diana Rossがリードヴォーカルを務めるThe Supremes。そして、「Jimmy Mack」と同じMotownの制作チームHolland-Dozier-Hollandによる作品。1965年に発表されたこの曲は見事に全米1位となります。



アルティメイト・コレクションアルティメイト・コレクション
アーティスト:ダイアナ・ロス&シュープリームス
販売元:ユニバーサル インターナショナル
(2006-01-25)
販売元:Amazon.co.jp
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リミックス集もあります。

DIANA ROSS&THE SUPREMES REMIXESDIANA ROSS&THE SUPREMES REMIXES
アーティスト:オムニバス
販売元:ユニバーサル シグマ
(2007-06-27)
販売元:Amazon.co.jp
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この曲のカヴァーは海外にも数多く存在しますが、日本ではglobeもカヴァーしていますね。

以前、Tracy UllmanやMari Wilsonの時に、60年代リヴァイヴァル的80年代ポップについて書きましたが、今回はその続きのようなもので、オリジナルも含めて紹介していきます。

YMOがブレイクして間もない1980年、Sandiiの『Eating Pleasure』は、僕がYMOと共にすり切れるほど聴いたアルバム。細野晴臣プロデュースのこのアルバム、テクノでありながらも、エスニックでかつファンキー。オープニングの「Idol Era」にはガッツーンとやられました。それ以外にも、高橋幸宏作の「Drip Dry Eyes」など名曲ぞろい。そして、この「Jimmy Mack」の秀逸すぎるカヴァー。



EATING PLEASUREEATING PLEASURE
アーティスト:サンディー
販売元:Sony Music Direct
(2006-09-13)
販売元:Amazon.co.jp
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Martha and the Vandellasによるオリジナルは、が1967年にモータウンから発表され、全米10位となりました。この曲は1964年にAnnette Beardが歌いレコーディングされましたが、ヴェトナム戦争のさなか、相応しくないとの配慮でモータウンはお蔵入りさせました。Jimmy Mackとは、ボーイフレンドの名前で、「Jimmy早く帰ってきて」と歌う恋いこがれる歌。



ClassicClassic
アーティスト:Martha Reeves & Vandellas
販売元:Spectrum Audio UK
(2009-04-07)
販売元:Amazon.co.jp
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なお、Sandiiがカヴァーした後にも、Sheena Easton、Laura Nyroなどがカヴァーしていますが、SandiiのカヴァーがR&Bの魂を失わず、昇華したという意味では一番評価できます。

Лера Кондра(リェーラ・コンドラ)の続きです。リェーラちゃん、Иракли(イラクリ)という男性シンガーとデュエットしていることが発覚(いや、そんなたいしたもんではないか)!イラクリ君、結構ロシアでは有名なようで、フルネームは、Иракли Пирцхалава(イラクリ・ピルチュハラワ)という日本人的には到底覚えられなさそうな苗字です。グルジア系で、1977年にモスクワで生まれました。

デュエット曲の「Вокруг земли (Around The Earth)」は壮大なタイトルが付いていますが、リェーラちゃんがギリギリの脱衣・シャワー・シーンと出血大サーヴィス。エレベーターでリェーラちゃんはイラクリ君と出会い、お互いにはにかみながら意識しあっています。エレベーターを降りると、当然、ダンスシーンとなり二人は仲よく踊りますが、これは実はリェーラちゃんの妄想だったという・・・イラクリ君、美味しい役を頂いています。



現時点で最新となるPV「Компас (Compass)」では、悪女、具体的には女強盗となって逃走するアメリカン・ロードムーヴィー。

FacebookのELLO TVでPVが「今まで見た中で一番美しいシンガー」とのコメント付きで紹介されていて、思わずクリックしてしまったのが、Лера Кондра(Lera Kondra、リェーラ・コンドラ)の「Бармен Саша (Bartender Sasha)」。「バーテンダー・サーシャ」、サーシャとは男性、女性、両方に使われる名前ですが、この場合は文脈からして、男性なのでしょう。こちらが、そのPVです。


  
今まで見た中で一番美しいとまでは言いませんが、確かにリェーラちゃん、水も滴る美女。バイアグラ(Виа Гра)のメンバーを募集していたら、合格確実って感じがします。PVもひとりバイアグラっぽい。ただ、気にいらないのは、やけにマッチョな男たち逆ハーレム状態で登場するところ。欧米のPVにも見られますが、マッチョダンサー・マーケットというのがあるのでしょうか? 個人的には美女とマッチョのパターン、排除運動したいくらいです(笑)。

モスクワ出身のリェーラちゃん、まだロシア芸能界にデビューしたてで、あまり情報がありません。『XXL』誌の表紙でも貼っておきます。
xxl-lenakondra

The Knocksの回に、彼らのマッシュアップとして紹介したエリー・ゴールディング(Ellie Goulding)について書きましょう。エリーは、Skrillex君の「Summit」のゲストボーカルにも起用されている、25歳のイギリス人。また、Frankmusikのサポートで「Wish I Stayed」も歌っています。

彼女のデビューアルバム『Lights』(2010年)は、本国イギリスで見事に1位に輝きます。エレクトロ系のStarsmithが主たるプロデュースをやっている割には、外見的には、エレクトロディーヴァ的ではなく、楽曲もエレクトロ(ちょっとエレクトニカより)とアコースティックが折衷しています。美形だと思いますが、都会のクラブよりもイギリスの田園風景の方が似合う感じ。

こちらは『Lights』に曲を追加した強化盤『Bright Lights』。

Bright LightsBright Lights
アーティスト:Ellie Goulding
販売元:Polydor UK
(2010-11-30)
販売元:Amazon.co.jp
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この手が好きな僕の趣味もあるでしょうが、おしなべてアルバムの曲は粒ぞろい。「Lights」や「Starry Eyed」もいいのですが、「Under The Sheets」を紹介しておきます。



エレクトロではないですが、とにかく英国的で良いのが、エルトン・ジョンの「Your Song」のカヴァー。この曲、僕がまだ10代だった頃シングルを買った覚えがあります(涙)。

前回紹介したアレックス・ウィンストン(Alex Winston)のプロデューサーを務めたのが、NYブルックリンのBen "B-Roc" RuttnerとJames "JPatt" Pattersonの二人からなるThe Knocks。まだアルバムリリースがないのですが、イギリスのNME誌に20組の最も熱いプロデューサーの一組として選ばれています。

Heavy Roc Musicから、彼らのモータウン・ナンバーのエレクトロ系カヴァーやリミックスを収録したアルバム『The Same Old Songs』が無料配信されています。アレックスが歌う「Can’t Hurry Love(恋はあせらず)」は、僕的にはストライク! Phil Collinsもカヴァーをヒットさせましたが、オリジナルはThe Supremesですね。



thesameoldsongs


The Knocks、DJとしても2 many dj’s的センスを感じます。同じく無料配信されている『The Transplant』というシリーズでは、マッシュアップを含めたMix Tapeを制作していますが、『The Transplant II - The Edits』収録のマッシュアップをぜひ聴いてください。Ellie Gouldingの「Under The Sheets」とDaft Punkの「There’s Something About Us」のマッシュアップとかいい感じ。

オリジナルとしてデビューシングルの「Make It Better」。Foster The Peopleの「Pump Up Kicks」をリミックスしているThe Knocksですが、Fosterに近いものを感じます。



こちらは、モータウン魂のDaft Punkって感じの「Brightside」。アルバムが出るのが楽しみ!



The Knocks

アメリカに戻ります。今回紹介するのは、年齢24歳、デトロイト出身、現在NYで活動するアレックス・ウィンストン(Alex Winston)。

最近、魔女系とかが流行っているそうですが、イギリスのケイト・ブッシュ(Kate Bush)はその元祖。アメリカン・インディー系でありながらも、アレックスは魔女のオーラを出しています。ルックス的にもケイトっぽい。最近、アメリカとヨーロッパの境界線があいまいになってきました。

既に、『Sister Wife』(2011年)と『Velvet Elvis』(2011年)という2枚のEPをリリースしていますが、全然ヘヴィロックではないHeavyRocMusicから無料配信されたEPが『The Basement Covers』(2010年)。文字通り、カヴァーをしていますが、Old but Newな折衷の妙があります。

thebasementcovers


彼女のフルアルバム『King Con』(2012年)は、その集大成。オペラも含めて音楽の才があるアレックスの歌は、そのカヴァーのセンスからもうかがえる、どこか懐かしいけど今の音。おススメ曲は多いのですが、「Velvet Elvis」「Choice Notes」あたり。





King ConKing Con
アーティスト:Alex Winston
販売元:Cooperative Music
(2012-04-10)
販売元:Amazon.co.jp
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Alex Winston

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