四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2012年07月

タイのアイドル系はひとまず休んで、ちょっと違う領域に踏み込みましょう。日本しかり、韓国しかり、アジアには演歌的なジャンルが存在します。タイにおいては、それにあたるのが、ルークトゥン(ลูกทุ่ง)。意味は「稲田の息子」・・・ざっくり言えば、農村向けの歌謡曲です。

この分野についてはまだまだ勉強不足ですが、ルークトゥンとして流行った曲を聴いてみると、これがなかなか面白い。Fon Silartというルークトゥン系歌手による「Bin LaDin」。日本の演歌や古い歌謡曲に通じるものもありますが、同時にアジア圏なんだけど、テーマのせいもあるでしょうが、中近東的な感じます。タイトルはあのアルカイダの司令官、911同時多発テロ事件の首謀者とされるウサーマ・ビン・ラーディン。日本の演歌でこのようなテーマを歌うのは考えにくいですね。歌詞が分かる人がおられたら、ぜひ教えて欲しいです。



タイのCDショップに行った際、店員さんにこの曲が入ったCDが欲しいと聞いてみたんです。タイトルを言った所、(??)って反応だったので、「ビンラーディン♪」と軽く歌った所、分かってくれましたが、残念ながら在庫なしでした。

やはりタイではアイドルグループ・ブームなのか、KamiKaze以外のレーベルもこの領域に力を入れてきています。mono musicはアイドル専門レーベルではありませんが、そこから出てきたのが、Candy Mafia。なかなかタイらしいネーミングです。

candymafia彼女達の「Alzheimer」(2010年)は、凄いタイトル(アルツハイマー)ですが、なかなか出来た曲です。ここ2回ほどK-POP化するT-POPを紹介しましたが、この曲もその路線ですね。




g20同じ、mono musicからは、お姉さん格のちょっぴりセクシーなG-Twentyも紹介。「Magic Hour」はスッチーコスっぽいですが、実はスッチーっぽいハンバーガーショップの制服でした。




タイのCDショップでは、特にアイドル系は売り切りのようで、見つからないものを多かったですが、今回紹介した2枚のCD(DVD付き)は店頭に並べられていました。

Neko Jumpの「諦めないわ!(Girls on top)」がK-POPっぽい事については既に書きましたが、いいサンプルを見つけました。

タイ語が分からない僕の力不足で、細かい事は不明ですが、Beauty Gという新しい4人のガールグループがいます。KamiKazeでなく、RS傘下のOle Melody Gというレーベルです。彼女達のデビュー曲「Crazy Girl Crazy」のPVを見てください。



偶然、YouTubeでBeauty Gの「Crazy Girl Crazy」feat. After Schoolのリミックスを見つけたのですが(もちろん、そんなものは公式にありません)、After Schoolの「Ah!」を見て、なるほどと。



sweedKamiKazeレーベルからの2010年にデビューしたSwee:Dですが、2011年に入り学業を優先するため、グループとしての活動を休止中。 メンバーは(ジャケ写左から)Min、Pim、Jinnyですが、みんな女子大生。PimちゃんとJinnyちゃんは、最も古い歴史を誇る国立大学、チュラロンコーン大学。さしずめ、タイの東大。大学名はチュラーロンコーン大王(ラーマ5世)に由来します。ちなみにSweet VacationのMayちゃんも同校出身です。Minちゃん負けていません。二人は、名門タマサート大学。こちらは、タイの京大的ポジション。ちなみに、Jinnyちゃんは、KamiKazeでの活動を続行しています。どうでもいい事ですが、Pimちゃんが一押しです。

Swee:Dの「Harm (Stop It!)」では、K-POPお得意のフックソングをT-POPに取り入れています。お尻を振るところも可愛い。単純にエレクトロディスコ歌謡として聴いても、なかなか楽しめます。PV終盤はタイでは定番と言えるエンドロールになっていますので、最後まで見てください。

アイドルの宝庫、KamiKaze続きます。2005年にデビューし、アルバムも8枚も出しているベテラン・アイドル、Four-Mod。FFKと同じく、メンバーのチューレン(ニックネーム)を繋げて出来ています。というか、FFKがFour-Modを見習ったと言うべきでしょう。

iamfour-mod最新のPV「จีบได้แฟนไม่รัก (I love the pleats)」を見ると、ガーリーな方がFourちゃんで、ショートヘアーのキリッとした方がModちゃんです。ちなみにアルバム名は『I AM Four-Mod』・・・二人だから『We ARE Four-Mod』でないのかとツッコミたくなります。渋谷系を意識したアイドル曲のようで、どことなくおしゃれでいい感じ。 あえて言えば、タイのバニラビーンズ。どうでもいい事ですが、Modちゃんの方が好みです。



Teaserの変顔(PCで画像加工しただけですけど)も楽しい。意味も無く笑える。



今回紹介した曲は含まれていませんが、Neko Jumpと同じく、Four-Modも日本盤がリリースされています。

four modー 1st Album 日本語解説付four modー 1st Album 日本語解説付
アーティスト:Four Mod
販売元:bmi
(2008-05-15)
販売元:Amazon.co.jp
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loveaholic通称FFK、Faye Fang Kaewの名前は3人の女子のチューレンを並べたもの。Faye(妹;ジャケ真ん中)とFang(姉;ジャケ右端)は姉妹。この姉妹に混じるデカいKaew(ジャケ左端)の男子キャラが、このグループを面白くしています。Perfumeで言えば、のっちキャラですが、さらに男らしい。どうでもいい事ですが、僕はFayeが気に入りました。

2007年にデビューしたこのグループ、最新の「Loveaholic」を聴いてみると世界がフラットになっていることを実感します。T-POPをちょっとエレクトロ風味にしたというよりも、ダブステップ全開のK-POP風エレクトロを歌うT-POPアイドル。PVも変で、病院のシーンだと思ったら、人民服で突然踊り出す。これは生で見てみたい。



KamiKazeは日本の手法を取り入れたのか、シャッフルユニットの生産にも積極的です。FFKのFayeが加入したSeven Days。各々が曜日担当で、FayeはFaye Sunday。「ภาวะโลก LUV」はかなりテクノ歌謡しています。「ภาวะโลก」を翻訳すると「地球温暖化」!



今回紹介した曲は収録されていませんが、2011年のアルバム『Ladies & Gentlemen』は、Amazon.co.jpでも購入できます。

Ladies & GentlemenLadies & Gentlemen
アーティスト:Faye Fang Kaew (FFK)
販売元:RS
(2011-02-15)
販売元:Amazon.co.jp
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タイの2大レーベルは、Grammy GMMとRSです。RSとは正式名、RS Public Company Limited。以前の社名、RS Promotionという呼称が今でも使われる事も多いようです。RSはもともとの社名だったRose Soundの略。設立されたのは、1976年とかなり古く、ジュークボックスとカセットテープのビジネスから総合エンターテインメントへと業態を広げています。RSには複数のレーベルがあり、その中でもアイドルに特化したのが、KamiKazeです。前回紹介したNeko JumpもKamiKaze所属。

先日、バンコクに行った際にKamiKazeのレーベルの方とお会いしてさらに話を聞くアポをとったのですが、残念ながら延期となりました。気を取り直して、さらにKamiKazeの解説をします。

こちらのPVは、Four-Mod、Neko Jump、FFK、Knomjean等のKamikazeのアイドルを総動員して集合型ユニット、All Kamikazeの「Ruk Chun Reak Wah Tur (Calling for your love)」。



KamiKazeという名前はどちらかと言えば、パンク系またはヘビメタ系というイメージで、タイのアイドル系レーベルの名前というのは不思議な現象。本来、神風とは、日本人にとっては元寇の際に勝利した日本に由来する「思いがけない幸運に恵まれる」という意味。「神風が吹く」という表現が一般的です。同時に、神風特攻隊という言葉からは、「身の危険を省みない攻撃」という意味にもなります。特に外国ではそちらの意味で使われる事の方が多いでしょう。

PVには、38秒あたりでKnomjeanちゃんが歌う場面で、旭日旗(きょくじつき)も登場します。イメージとして旭日旗は軍国主義、ヤンキー、LOUDNESSのジャケって感じなのですが、元は日本の陸軍の軍旗として考案されたものです。同時に祝事にも使われ、朝日新聞(大阪支社)の社旗のデザインモチーフでもあります。

lengthKnomjeanちゃんのデビュー作『ขนมจีน (Length)』のジャケも旭日旗ですから、彼女の歌う場面に旭日旗が出てきても不思議ではありません。KamiKazeというレーベル名や旭日旗には、政治的意味は無いと考えます。日本のメタファーとして使っただけでしょう。また、タイが単純に超親日派とまで解釈しませんが、タイと日本の歴史的関係から、それらに絶対的な負のイメージはないのでしょう。

こちらも同様の形態で発表された「Ruk Tur Tuk Winar Tee (Every Minute)」。タイ人は、BPMが遅いバラードが好きなのが分かります。



bestofkamikazeこちらは、2007年から2011年までのKamiKazeレーベルの代表曲を集めた2枚組ベストCD。上記のAll KamiKazeの曲も収録しています。

デビュー時代から、アキバ系アイドルのイメージで売り出したNeko Jumpですが、「Clap your Sunday」(2010年)でも、アキバ系もチーフをふんだんに使い、その路線を堅実に保持しています。でも、サウンド的にトランスする必要は感じません。



シングルもありますが、購入するのなら、PVも入ったアルバム『化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~』(2010年)の方をお勧めしておきます。

化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~(DVD付)化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~(DVD付)
アーティスト:Neko Jump
販売元:キングレコード
(2010-12-22)
販売元:Amazon.co.jp
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ジャケ的には、こちらのベスト・アルバム『BKK to NRT』(2010年)も捨てがたい。ちなみにバンコクに先日行ってきたのですが、大型CDショップは減っており、CDを買うのに結構苦労しました。タイのCDは基本、売り切りのリリースが多いようで、Neko JumpのCDも僕が行ったショップの店頭にはありませんでした。

BKK to NRTBKK to NRT
アーティスト:Neko Jump
販売元:キングレコード
(2010-05-12)
販売元:Amazon.co.jp
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ところが、直近の2012年の「諦めないわ!(Girls on top)」のPVを見てみると、大きくイメージチェンジ。サウンドもヴィジュアルもちょっとセクシーなK-POP系となっています。やはり、タイでも人気のK-POP、日本でも受け入れられるK-POPという計算なのでしょうか?

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