四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2012年09月

7月20日から7月27日まで、ウクライナの首都キエフに行ってきました。この旅行を計画するにあたって、僕が実現させたかったのは、ウクライナポップのアーティストたちへの取材。もちろん、僕にはウクライナ・コネクションなるものはありません。なければ、自分で作るしかないと、僕の好きなアーティストがいるmamamusicとMoon Recordsにメールをしてみたところ、なかなかの好感触。日本人としては、どうやら僕が初取材をしたようです。

avocado1ウクライナのセクシーエレクトロポップ・ユニットとして孤軍奮闘するNikitAは、数あるアーティストの中でも、会いたかった人たち。結成時は、ダーシャ・アスタフエヴァ(Даша Астафьева) とアルミヤー(А.Р.М.И.Я)の元メンバーだったユーリャ・カヴタラヂャエ(Юлия Кавтарадзе)と二人だったNikitA。現在は、ダーシャを中心に新加入のアナスタシヤ・クメイコ(Анастасия Кумейко)とЮлия Бричковская(ユーリャ・ブリチコフスカヤ)の3人になっています。よって、Dasha Astafieva & NikitAと表記されることもあります。

3人体制での最初の曲は、「Avocado」。

AvocadoAvocado
販売元:mamamusic
(2012-08-30)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらがティーザー。いたずらっこNikitA。



クリップはロシア語版と英語版がありますが、英語版を紹介しておきます。アボガド・ダンス!



僕がキエフに行く前に、ダーシャが丸坊主になったのを知り、なんでだろうと思っていたのですが、このクリップに秘密が隠されています。さらに詳しい話は、All Aboutのインタヴューをぜひ読んでください。

セクシーなだけではないNikitAにインタヴュー (All Aboutテクノポップ)

性懲りも無く、 アインシュタイン・ガールズ(Девушки Эйнштейна)の続きと行きましょう。

彼女たちの第2弾クリップは、「Балерины (Ballerina)」。はい、みなさん、白鳥の湖のようなバレリーナの格好。羽根のようなつけまつげをしています。娘にきゃりーぱみゅぱみゅもしていたと教えてもらいましたが、全世界的にこの羽まつける、流行っているのでしょうかね。



ChinkongというDJとのコラボ曲「Дискотека」では、ラッパーになって、暴れまくっています。



einsteingirls今回紹介するのはロシアの3人組。ロシア語では、ジェヴューシュキ・エインシュテインナ(Девушки Эйнштейна)。ジェヴューシュキは「ガールズ」、エインシュテインナは「アインシュタインの」となりますから、アインシュタイン・ガールズ(Einstein Girls)。

メンバーは、背の高い方のブロンドのオクサーナ・ウスチナヴァ(Оксана Устинова)、ショートカットのリタ・チェルマカヴァ(Рита Челмакова)、背の低い方のブロンドのナターシャ・ヴァラクシナイ(Наташе Вараксиной)。ユニットの名前は賢そうなのですが、外見的にはビッチな感じ。いや、外見だけで判断していけません。

ビッチだな〜と思いつつ、彼女たちのデビュー曲「Сука」(2011年)ってどんな意味か調べてみると・・・「ビッチ」です。やはり僕の直感もまんざらでもない。女の子同志が延々と接吻をし続け、最後に平手打ちというマニア向けのクリップです。



2012年に新たにサウンドアレンジも変えてリリースされたクリップでは、反省したのか、ワンダーウーマンのような格好をした三人が登場。しかし、男性がいじめられるクリップってロシア・ウクライナには多い気がします。

Prik Thaiという女性ヴォーカルの5人組のバンドがいます。Prikとはタイ語で唐辛子。Prik Thaiとなるとコショウという意味になります。タイ人がいかにも好きそうなスローなバラード系の「Waen Gam (Karma)」という曲があります。Eaglesの「Hotel California」をタイポップ風にしたらこんなのになるのではというサウンド。これがドラマ仕立てになっており、PVは延々と9分以上続きます。それだけでは、別に興味は湧かないかもしれません。

theseries


さてこのドラマ、浮気性の男性と付き合う悲運のヒロインのドラマ。6分あたりで、このヒロインは女子トイレで咽び泣き。すると、彼氏と思われる男性が横のトイレに(なぜ、分かったかはPVを見てください)! そして、そこからさらに悲惨な状況に彼女は追い込まれて行きます。・・・その後は僕が解説するよりもPVを見ていただいた方がいいでしょう。日本人だったら、もっときれい事的表現で終わらす場面でしょう。



こちらは、「Waen Gam」のアンサーソングとなる「Mot Arom (Not In The Mood)」。悲劇のヒロインの復讐の番です。



タイ人の悲劇のドラマ好きが伝わる文化的にも貴重な作品です。

ミャンマーガールズを調べていて、他にも同様のグループはいるのだろうかと調べていて、出てきたのが、Tiger Girls。

「Ko Twayh Nay Pyi」はビルマ語で歌われているようで、内容は不明ですが(一部英語でDiscoとか歌っています)、クリップではトラクター、ホース、工具などの前で踊っており、ミャンマーのガテン系アイドルを目指しているのかと勝手に思ってしまいました。あ、でもよく見ると、ミャンマーガールズと顔が同じ!



ガテン系というのはこの曲だけで、「Ein Mat」は、エレガントに決めています。



ちなみにTiger Girlsとしても、アルバム『Year Of The Tiger Girls』を既にリリースしています。ミャンマー、いつか訪れて、ミャンマーガールズを見てみたいものです。

tigergirls

myanmargirls僕が学校で習った時は、まだビルマと呼ばれていたミャンマー。1962年の軍事クーデターより軍事政権が続き、2007年に民主化の動きが見え始め、2011年には、アウンサンスーチー女史の軟禁も解除されました。軍事政権時代に首都だったラングーンもヤンゴンに改名され、知らないうちに首都はネピドーに遷都されていました。長らく独裁国家として欧米諸国に制裁を受けてきたミャンマーですが、このところ、民主化にともなう経済発展も期待されています。同時に軍事政権によって改名されたことから、今もビルマの呼称が欧米のメディアでは使われる事も多いです。ここに解説があります。

そんな中、登場したのは、ミャンマー初のガールズグループとされるMe N Ma Girls(ここについてのより正確な情報は次回さらに解説)。仕掛人は、オーストラリアのダンサー、Nicole Mayさん。

既にアルバム『Mingalar Par』(驚くことにAmazonで買えます)もリリースしており、タイトル曲は、ミャンマーの民族衣装をまとった彼女たちが、「ミャンマーの女の子は、他の世界の女の子たちのよう」とあたかもミャンマーの夜明けをトライバルなヒップホップに乗せて歌っています。

MingalarparMingalarpar
販売元:Me N Ma Girls
(2012-01-08)
販売元:Amazon.co.jp
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「Liar!」は、遊園地で歌うK-POPに影響を受けたT-POPに影響を受けたような曲(笑)。



この動画はThe New York Timesによるミャンマーガールへのインタヴュー。以前と比べると自由化されたミャンマーですが、検閲はあるようで、歌の内容やコスチュームに苦労しているようです。「ホットになるように努力しるけど、セクシーすぎないように」と自粛しているようです。



このことだけで、ミャンマーの民主化レベルを計るのは危険ですが、ミャンマーガールズが自分たちの夢を叶えることを望むばかりです。

リェーナ・カーチナ(Лена Катина)とのコラボで紹介したBelanovaですが、なかなかいいバンドなので、紹介しておきます。中南米でエレクトロポップ系の人たちは、比率的にそれほど多くないのですが、時に好みのアーティストに出くわします。チリのハビエラ・メナ(Javiera Mena)ちゃんとかもその一つですが、今回はメキシコ。

バンドのメンバーは、紅一点のDenisse Guerrero(1980年生まれ)とRicardo ArreolaとEdgar Huertaの男性二人。2003年にデビュー・アルバム『Cocktails』をリリース。その後もメキシコでは、シングルが1位になったり、アルバムのセールスもまずまずのようです。

前回紹介したリェーナとのコラボ曲「Tic-Toc」は、5枚目の最新アルバムとなる『Sueno Electro II』(2011年)に収録されています。このアルバムからの聞き所は、「Mariposas」。ちょっとNew OrderやStuart Priceっぽいせつな系エレクトロポップ。Stuart Priceで思いだしましたが、彼がリェーナをプロデュースしたらいいのになぁ。



Sueno Electro IISueno Electro II
アーティスト:Belanova
販売元:Universal Latino
(2011-09-06)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらは、Cola-Colaとのタイアップによるロンドン五輪ソング「Unete Al Movimiento」。



ライヴも楽しそう!

ヴェールカおばさんこと、ヴェールカ・セルヂューチカ( Верка Сердючка; Verka Serduchka)の続編です。ヴェールカおばさんは、今回はジャーマンメタルに挑戦。



これは、ドイツのインダストリアル・メタル系Rammsteinの代表曲とも言える「Du hast」、「You have」という意味です。ヴェールカおばさんのレコード会社の人によると、Rammsteinはウクライナでも人気があると。でも、これは単なるカヴァーではないのです。キエフでヴェールカのスタジオに伺い、この曲について聞いてみたところ、実はメッセージソング。オレンジ革命時代、ウクライナが西と東に意見が分かれてしまった際、西(民族衣装を来た人たち)と東(ヘルメットをかぶった人たち)が再び一つになることを祈り、出来た曲。

こちらはRammsteinのオリジナル。



僕はメタル系には正直強くないのですが、このバンドは、Kraftwerkの「The Model」をカヴァーしているので、知っていました。



このお話も含めて、「ウクライナのシンデレラおばさん〜ヴェルカ」(All About)にてインタヴュー記事がありますので、ぜひ読んでください。

以前、ミニ・チルウェイヴ特集みたいな感じでアメリカを中心にいくつかのバンドを紹介しましたが、その中でもひと際光っていたのが、Chairlift。facebookでMatsumiさんからこのクリップを教えてもらって、見た所、ビックリ!



「I Belong In Your Arms」は、アルバム『Something』(2012年)に既に収録されている、日本語ヴァージョン「あなたの腕で抱かれたい」なのですが、これが半端でない。所謂、Police、Beach Boysなど外国人が歌う日本語ソング(全曲および部分的に)は、数多くありますが、やはり付け焼き的なもの。これを歌っているCaroline Polachekちゃんの場合、なんの先入観も持たないで、クリップを見ないで聴いてみれば、日本人が歌っていると思ってしまいます。調べてみると、彼女は小さな頃(いつ頃で何年くらいかは不明)、日本に住んでいたようです。とてもお綺麗なのですが、どこかエキセントリックな魅力があります。ナチュラルな脇の下にも主張を感じます。ISH PICKで掲載されたステージ衣装(?)も凄い!

歌詞の日本語訳は、Juri Onukiというクレジットがあります。多分、この方ではないかと推測しています。

なお、この曲は、9月12日発売のChairliftの『SOMETHING - SPECIAL JAPAN EDITION』にも収録されます。

SOMETHING - SPECIAL JAPAN EDITIONSOMETHING - SPECIAL JAPAN EDITION
アーティスト:CHAIRLIFT
販売元:YOUNG TURKS/OCTAVE-LAB
(2012-09-12)
販売元:Amazon.co.jp
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7インチ盤のジャケも素敵!

ibelongtoyourarms7


I Belong in Your Arms (Japanese Version) - Something

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