四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2016年02月

「共産テクノ」という語感に魅かれるというコメントを頂いており、嬉しいです。同時に「それは何なんだ?」というのも当然の疑問だと思います。詳しくは拙書で解説していますが、「共産テクノ」とは、「冷戦時代にソ連を中心とした共産主義陣営で作られていたテクノポップ〜ニューウェイヴ系の音楽」と定義しています。同時にその周辺にある音楽も紹介したので、実質的にはもうちょっと広いですが……

ツェントル(Центр)は、少なくとも初期においては、テクノポップと言うよりも荒削りなガレージパンクっぽいバンドでした。

ツェントルのリーダー、ヴァシリー・シュモフ(Василий Шумов)のソロ作『My District』(1986年)は、かなりテクノ化しています。

mydistrict




アルバムのラストを「Kasparyan - Stingray Wedding Song(USA-USSR)」は米ソ友好ソングであり、Kraftwerk の「The Model」(関係のないドイツだけれど……)へのオマージュも試みました。

ツェントルは現在も活動をしており、こちらは最新リリースとなる「Доллар побил абсолютный исторический максимум(ドルは記録的最高値を更新)」と、弱いロシア・ルーブルについての曲を発表しています。

本日、パブリブにて『共産テクノ』の表紙と内容に一部が公開されました!

『共産テクノ』が完成! 中身をお見せします。

すごい思い入れを感じるロシア・アヴァンギャルドな装丁となっております。

sovietechno


そこでも一部紹介されていたコーラ・ベルドィ(Кола Бельды)は、ハバロフスク近郊で生まれたナナイ族。多民族国家と言えば、アメリカ合衆国を思い浮かべますが、ソ連もそして現在のロシアも立派な多民族国家です。

2


ぜひ見て欲しいのが、シュールを極めた「Ханина Ранина!( ハニーナ・ラニーナ!)」の動画。1968年に発表されたこの曲は、ミュージックビデオと呼んでもいい出来ですが、同じく1968 年に公開されたソ連時代の映像『Город и песня(都市と歌)』を借用して、完成させたもの。もちろん、この時代、テクノポップという概念は存在しませんが、ボヨーン・ボヨーンと鳴る口琴がシンセサイザーのような役目を担っており、勝手に「口琴テクノ」と呼んでいる作品です。



こんなリミックスも存在します。


映画音楽で続けましょう。アレクサンドル・ザチェピン(Александр Зацепин) は多くの映画音楽を手がけましたが、1981 年のアニメ『Тайна третьей планеты(邦題:第三惑星の秘密/英題:The Mystery of the Third Planet)』は、スペースエイジポップとしてオススメです。西側ではテクノポップ・ニューウェイヴ全盛期ですが、こちらはSci-Fi的ラウンジミュージック。

Тайна третьей планеты




ちょっとミニマル系になったリメイクなんかもあります。


僕がモスクワのグリンカ中央音楽博物館を訪れた際、テルミンと並んで展示されていたのが、エクヴォディン(Экводин:一番左)とANS(АНС:右側の大きなタンス)シンセサイザーです。

museum


エクヴォディンは、1936年に開発され、ソ連初のシンセサイザーとされています。前回登場したヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин)も使っていました。

1958年に開発されたANSシンセサイザー を使ったミュージシャンとして有名なのが、エドゥアルド・ アルテミエフ(Эдуард Артемьев)。ANSが使われた彼の代表作は、1972年のソ連SF映画『Солярис(惑星ソラリス)』のサウンドトラック。テーマ曲であるバッハの「イエスよ、わたしは主の名を呼ぶ」は、映画の感動のラストシーンを飾りました。

Solaris [12 inch Analog]
Edward Artemiev
Ais
2013-07-18





英国では、Psychic TVのメンバーだった、Coilの二人が、その名もずばり『ANS』(2004年)というタイトルでボックスセットをリリースしています。

Ans
Coil
Threshold House
2006-12-04

世界初の有人宇宙飛行を成し遂げたのは、ユーリイ・ガガーリン(Юрий Гагарин)。宇宙でミシェーリンの音楽が頭の中で流れたと言うほど、ガガーリンは彼のファンでした。

ヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин)は、「Popcorn」以外にもカヴァーをしています。「Последний год в школе(学校最後の年)」という曲がありますが、これは舟木一夫の「高校三年生」のカヴァー。



これも『Easy USSR part 1: 60-70’s』に収録されていますが、続編『Easy USSR part 2: 70-80’s』もあります。

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こちらはオリジナル曲で、ミシェーリン楽団の中でもコンセプト的にもテクノポップ度が高い「Упрямый робот(不屈のロボット)」。


本Blogは2013年3月3日より休止していましたが、本日より再開します。

拙著『共産テクノ ソ連編』が3月に発売されるにあたって、書籍で扱った共産テクノ系アーティストたちを動画を中心に紹介していきます。こじつけっぽいですが、「共産テクノ部」の「部」はブログの「ブ」です。

また、『共産テクノ』は、『デスメタルアフリカ』に続くパブリブからの第2弾となる音楽研究書であり、社会評論社が出版してきた「共産趣味インターナショナル」のVOL 5でもあります。

四方宏明さん執筆の『共産テクノ』を出版します!(パブリブ)

「共産テクノって何?」と不審に思われる方は、こちらを読んでみてください。

共産テクノ序章〜共産テクノとは何ぞや?

まず最初の話題は、テクノポップのルーツとも言われる「Popcorn」。Garshon Kingsleyのよる1969年の作品ですが、1972年にHot Butterによって全世界的にヒットしました。



ソ連にも「Popcorn」のカヴァーは存在します。1979 年のヴィチスラーフ・ミシェーリン(Вячеслав Мещерин) の楽団によるもの。



ミシェーリンの楽曲を集めたCD『Easy USSR part 1』でも最後を飾っています。

Easy USSR Vol.1
V Mescherine
Sony Classics

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