「Der Kommissar(秘密警察)」というニューウェイヴ的ラップ曲をご存知でしょうか? 1981年にオーストリアのFalcoがヨーロッパでヒットさせたのがオリジナル。歌詞で使われたスラングから警察を警戒するコカインについての歌とされていますが、同時に東ドイツのシュタージ(秘密警察)を隠喩しているという説もあります。でもこの時点での日本盤シングルの邦題は「デア・コミッサー」。

Falco




1982年には、英国のAfter The Fireの英語カヴァーは1982年に米国ビルボードチャートで5位にまで食い込み、彼らの最大のヒットとなります。こちらの日本盤シングルで邦題は「秘密警察」となりました。

After The Fire




上記二つほどヒットしなかったものの、それ以外にも「秘密警察」のカヴァーが量産されました。

フランス在住の米国人で俳優でもあるMatthew Gonderによる「Der Kommissar」(1982年)。

Matthew Gonder




ノイエ・ドイチェ・ヴェレ系の女性シンガー、Suzy Andrewsのデビューアルバムに収録された「Der Kommissar」(1982年)。

SuzyAndrews




「Self Control」で有名なLaura Braniganは、歌詞を書き換えて「Deep in the Dark」としてシングルおよびアルバムに収録(1981年)。

Laura Branigan




面白いのが、イタロディスコ系のPink Projectによる「Der Kommissar」とTrioの「Da Da Da」をマッシュアップした(早い!)「Der Da Da Da」(1982年)。

Pink Project




その後もカヴァーをする人たちはいますが、注目に値するのが、ハンガリーのLajos Turiによる「A Felugyelő (ハンガリー語で同じ意味)」(1983年)。「秘密警察」のカヴァーについて書かれた記事は結構ありますが、この曲についてはほとんど語られていません。共産主義国であったハンガリーで、コカインにせよ、秘密警察にせよ、そのような匂いがする歌がリリースできたのは、驚きです。ハンガリーのリベラルな側面が窺える貴重な楽曲とも言えましょう。

LajosTuri