四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ: ブラジル

ヴァネッサ・パラディ(Vanessa Paradis)の「Joe Le Taxi」は、なかなか突っ込みがいある曲なので、続編です。前回紹介した日本人以外にも、Stereo Total(ドイツ・フランス)、Auria Pozzi(ドイツ)などがカヴァーしていますが、ここで3カ国の聴き慣れないカヴァーを紹介します。

先ずは、香港のプリシラ・チャン(陈慧娴)による中国語のカヴァー。彼女は日本で80年代にデビューしましたから、知っている人もいるかもしれません。



次はブラジルのAngelicaによるポルトガル語カヴァー「Vou de Taxi」。彼女、TVパーソナリティとしてもブラジルでは有名だそうですが、ロリータ光線が出ています(この時点で15歳くらい)。



最後に紹介するのは、ロシアのCatalina。ヴァネッサのオリジナルでは、タクシー運転手はあくまでもJoe。Joeは、パリで働くアフリカ系で、いつかアマゾンに行く事を夢見ている(だから、夢見るジョー?)。でも、このPVで運転しているのは、Catalina! Joeに似た人は、何故か後部座席???



joeletaxi-catalina



以前、「Saori@destinyで学ぶバイレファンキ」でバイレファンキの話をした時にちょっとだけ紹介した、Cansei de Ser Sexyについて。タイトルの「セクシーにうんざり(Got Tired of Being Sexy)」というビヨンセ(Beyonce)発言を由来とするブラジルはサンパウロ出身のバンド。みんなCSSって呼びます。

2003年に結成されたCSSは、メンバー交代もありますが、基本ガール・バンドって印象です。正確には、バンドの音楽的要であるアドリアーノ・シントラ (Adriano Cintra)君は男性。女子の中で一人男性で嬉しいのか、大変なのかと思ったりもするのですが、アドリアーノ君はゲイですから、みんなお友達って感じなのですかね。

リード・シンガーの通称Lovefoxxxちゃんの本名は、ルイザ・ハナエ・マツシタ。祖父母は日本人の日系3世。ハナエちゃんって、親近感が沸きますね。

現在まで、1st『Cansei de Ser Sexy』(2006年)と2nd『Donkey』(2008年)の2枚のアルバムがリリースされ、KSRからの日本盤もあります。サマソニ2007、フジロック2008、サマソニ2009とコンスタントに来日もしており、サマソニ2009の来日記念盤的なリミックス+未発売音源集『Donkey Party: Bate Cabelo』(2009年)もお勧めです。

カンセイ・ジ・セール・セクシー(デラックスエディション)カンセイ・ジ・セール・セクシー(デラックスエディション)
アーティスト:CSS
販売元:KSR
(2007-06-27)
販売元:Amazon.co.jp
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ドンキードンキー
アーティスト:CSS
販売元:ケイエスアール
(2008-07-09)
販売元:Amazon.co.jp
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ドンキーパーティー:バッチ・カベーロドンキーパーティー:バッチ・カベーロ
アーティスト:CSS
販売元:ケイエスアール
(2009-06-17)
販売元:Amazon.co.jp
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初期の面白い曲は、1stアルバムにボーナスとして収録されている「Meeting Paris Hilton」。ビヨンセ、パリス・ヒルトン・・・セレブが好きなのでしょうか? LCD Soundsystemの「Daft Punk Is Playing At My House」的なモチーフも感じます。

彼らの代表曲と言えば、1st収録の「Let's Make Love and Listen to Death from Above」ですが、Death from Above 1979というディスコパンク系バンドをネタにしています。ポルトガル語で歌っている曲もあるらしいですが、CSSは基本英語で歌唱、ブラジル的なルーツよりもディスコパンク的かつヘタウマ的魅力に溢れたバンドだと思います。Lovefoxxxちゃんのインタヴューでも、ブラジル音楽あまり聞かないって言っています。2nd収録の「Left Behind」も「Move」あたりでは、エレクトロ度が増し、洗練された感もありますが、やっぱりカッコいいCSS。

スペインの渋谷系として、La Casa Azulを紹介しましたが、それよりも前から活動していたブラジルの渋谷系、Pato Fuについて書きます。

Pato Fuって不思議な名前です。猫のガーフィールドの技の名前は、Cat Fu(Kung Fuをもじったのでしょう)。それをさらにもじって、Pato(あひる)Fuとなりました。Pato Fuはリオでもサンパウロでもなく、ブラジル内陸部のベロ・オリゾンチで1992年に結成されました。

Pato Fuをブラジルの渋谷系として紹介していますが、ルーツとして影響を受けたのは、オス・ムタンチス(Os Mutantes)というブラジルのトロピカリズモ運動における重要バンド。1966年にデビュー時、ムンタチスは当時ブームだったサイケデリックロック色が強かったバンドです。

Pato Fuは1993年から現在まで9枚のスタジオ・アルバムをリリースしていますが、Pato Fuの代表作かつ渋谷系の色彩が強いアルバムが、『Isopor』(1999年)。

ISOPOR (2008 edition)ISOPOR (2008 edition)
アーティスト:PATO FU
販売元:有限会社大洋レコード
(2009-01-14)
販売元:Amazon.co.jp
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その中でも日本語で歌唱した異色ナンバーが、「Made In Japan」。Pizzicato Five的なおしゃれサウンド、テクノポップ(フューチャーポップと言ってもいい)的なSF・ロボット的なモチーフを使いながらも、原爆と深刻なテーマを扱い、ある種日本贔屓的な意味合いも感じます。このあたりはやはり、紅一点ヴォーカルのフェルナンダ・タカイ(Fernanda Takai)が、日系ブラジル人であることにも関係しているのでしょう。顔を見ると、日本人以外の血も入っているのかとは思いますが・・・



最新アルバム『Musica de Brinquedo』(2010年)でも、日本語で歌っています。Pizzicato Fiveの代表曲、そして野宮真貴さん(フェルナンダとは共演もしています)のデビュー・アルバムにも収録されていた「ツイギー・ツイギー」を収録。タイトルどおり、「おもちゃの音楽」のような魅力がいっぱいです。

musicaMusica de Brinquedo
アーティスト:Pato Fu
販売元:Rotomusic
(2010-08-30)
販売元:Amazon.co.jp
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ブラジルを続けましょう。ペルラちゃんに続いて、ケリーちゃん。当時若干17歳だったケリー・キー(Kelly Key)は、2001年にアルバム『Kelly Key』でデビュー。アルバムはブラジル国内だけでミリオンセラー(当然チャート1位)となりました。

Kelly KeyKelly Key
アーティスト:Kelly Key
(2007-10-16)
販売元:Amazon.co.jp
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国内だけでなく、同じポルトガル語圏のポルトガル、スペイン語ヴァージョン(『Kelly Key en Espanol』)は翌年にリリースされ、アルゼンチンやチリでも成功を収めます。シングル「Baba」のPVでは、学校の先生を誘惑する魔性の女子高生を演じ、ブラジルのセックスアイコンとして登場しました。年齢的にはロリータと言ってもいいのかもしれませんが、十分大人の色気を感じます。



モデル出身のケリーちゃん、私生活でもセレブらしくゴシップも提供してくれています。プレイボーイ誌の表紙も飾りました。2度の結婚を経て、現在2児の母。最初の結婚相手は、ファンキ歌謡でデビューしたLatino。彼は「恋のマイアヒ」のポルトガル語カヴァーとかもやっていた人。

ケリーグッズなども販売されていたようですが、2005年のアルバム『Kelly Key』(どうして、デビュー・アルバムと同じタイトルなのでしょう?紛らわしい!)に収録の「Barbie Girl」・・・そう、北欧のユーロダンス・ユニット、Aquaの1997年のヒット曲カヴァーです。割と忠実なカヴァーですが、北欧のバブルガムに陽気なラテン系が入って、これがなかなかいいんです。





現在まで、6枚のスタジオ・アルバム(2011年に新作がリリース予定)、4枚のコンピレーション(確認した分だけですが・・・)、1枚のライヴ・アルバムとブラジルでは結構な人気アイドルのケリーちゃんですが、音楽的にはR&Bっぽいポップからバブルガムなダンスポップ。でも、どこかブラジリアン・ガールの力強さを感じる日本にはいないタイプですね。

また欧州・アジアに戻る予定ですが、しばらく音楽世界旅行は中南米に向かいたいと思います。中南米音楽については僕自身それほど精通しているわけではなく、世の中にはもっと詳しい人もいます。そこで、テクノ〜エレクトロ的中南米音楽を中心に紹介して行きます。その中でも、先ずはアイドル的センスもあるラテン系ガールズから。

「Saori@destinyで学ぶバイレファンキ」でも書いたバイレファンキ(またはバイリファンキ)。ファンキカリオカとも言われるブラジル産のジャンルですが、先日、ブラジル人と音楽の話していて、「バイレファンキとかいいですね」と言ったら、日本人からその言葉が出る事自体が意外だという反応をされました。たぶん、サンバとかボサノヴァとか言う事を期待されていたのでしょう。

バイレファンキは急に起こったムーヴメントではなく、ブラジルでは1970年代にすでに始まっていました。もともとは音楽ジャンルというよりもパーティの呼称としてそう呼んでいました。1980年代終盤に頭角を現したDJ Marlboro(タバコの銘柄ですね)がバイレファンキの立役者とされています。同時に、バイレファンキは貧困層向けというイメージがあったり、犯罪組織が利用しようとしたりと、ブラジルでも偏見と闘ってきました。良識のあるアーティスト達の努力の結果だと思いますが、90年代半ば以降、バイレファンキは徐々に市民権を得ていきます。その象徴的な出来事として、ペルラ(Perlla)ちゃんを紹介。

リオのファヴェーラ(ブラジルのゲットー)に居た事もあるペルラちゃんは、前述のDJ Marlboroにデモテープを渡し、彼がラジオでエアプレイしたところ、反響を得て、デビューとなりました。彼女は来日していますが、日本でバイレファンキのショーをした初めてのアーティストとされています(裏は取っていませんが・・・)。ペルラちゃんの「Tremendo Vacilao(ためらい)」は、DJ Marlboloが選曲したファンキ系コンピレーション『Bem Funk Brasil』(2006年)に収録されていますが、シングルとしてもブラジル国内で1位となりました。



Bem Funk BrasilBem Funk Brasil
アーティスト:Various Artists
販売元:Som Livre
(2006-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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同年、ペルラちゃんは、DJ Marlboloのプロデュースによりデビュー・アルバム『Eu Vou』(2006年)をリリース。日本盤も出ており、帯には「ファンキカリオカ界のスーパーアイドル」と紹介されています。確かにコアなバイレファンキやファンキカリオカとは違います。MPB(Musica Popular Brasileira=ブラジルの流行歌)にファンキ的な要素が入っていると言う方がいいでしょう。ファンキ歌謡でしょうかね。タイトル曲の「Eu Vou(踊りにいかせて)」は、「エルボー(肘)」って空耳で聴こえますが、これがなかなか癖になるポップなファンキ。Caetano Velosoのカヴァー曲「Totalment Demais」は、ブラジルのTVドラマ「Cobras e Lagartos」の挿入歌です。



エウ・ヴォウエウ・ヴォウ
アーティスト:ペルラ
販売元:JAPAN TRADITIONAL CULTURES FOUDATION(V)(M)
(2007-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
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翌年には『Mais Perto』(2007年)もリリースしていますが、近々サード・アルバムの予定もあるようです。

Mais PertoMais Perto
アーティスト:Perlla
販売元:Deckdisc Brasil
(2007-10-01)
販売元:Amazon.co.jp
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