四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ: エストニア

7月の6日から9日まで、エストニアの歌と踊りの祭典があった歌の原で、Ollesummerというロックフェスがありました。去年は、Scissor SistersやCalvin Harrisも出ていたようですが、今年は目玉であったThe Cranberriesがドタキャン。Royksoppが来る別のフェスもあったのですが、1週間ずれていたので断念。やはり辺境のロックフェスにもぜひ行ってみようと、初日に再び歌の原へと。歌の原の前には海が広がっています。
olle0


ステージは、メインステージ(Postimehe Lava)以外にもラウンジやカラオケ用の場所も含めて合計7つあります。Estrella Lavaというサブステージで、HU?というエストニアにしては珍しいニューウェイヴなバンドが登場。
olle1


ヴォーカルの女性の名前はHannaliisa Uusmaというのですが、その頭文字をとってHU?という名前になっています。こちらは、「Absoluutselt」のTVでの収録。


記念に後にCD『HU2』も購入。
hu2


ラウンジでは、旧ソ連圏では幅を利かせているPlayboy主催のビキニギャル・コンテストなんてのも。カメラを持った男性が多いのは、万国共通。あ、僕もだけど・・・
olle2


正式な呼び名は分からないのですが、細長いビルのてっぺんからロープ下りなんかも出来ます。バンジージャンプできる所もありました。
olle3


世界中どこのロックフェスにもいると思われる異常にノリのいいおっさん。
olle4


まだ明るい11時から始まったメインステージでのトリは、UKからやって来たKiller Queen! Queenのトリビュート・バンドです。
olle5


よく見えないので、フレディ役のアップ画像を見てください。流石に「Killer Queen」を歌う時は厳しかったですが、かなりオリジナルに忠実に歌唱。ブライアン・メイのギター・ワークも忠実にコピー。
olle6


いつかロックフェス辺境ツアーなんていうのをやってみたい。

北欧(ノルディック)というと、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー(この3カ国でスカンディナヴィア)、フィンランド、アイスランドの5カ国を指します。エストニアは通常、北欧の仲間には入らず、旧ソ連圏であり、バルト三国に一国とされています。でも、今回エストニアを訪れた印象としては、エストニアは文化的には北欧圏でいいのではないかと。素朴な北欧、物価の安い北欧です。同じバルト三国よりも人種、言語的にもフィンランドに近いです。

酒井景都さんが中田ヤスタカ氏とCOLTEMONIKHA(コルテモニカ)というユニットをしていましたが、そのモチーフまたは彼女の服飾ブランドでもあったCOLKINIKHA(コルキニカ)は、架空の北欧の国。エストニアにぴったりではないでしょうか?

エストニアの首都タリンは、旧市街(Old Town)が世界遺産に指定されている中世の趣を残した街。展望台が街を見下ろせば、まるで模型で作られたお伽の世界。
tallinn3


ストリートにもとても風情があります。
tallinn1


街には城壁や見張り塔などがいっぱい。
tallinn2


バスで20分くらいのところにあるエストニア野外博物館にはのどかな世界が広がります。博物館には民族衣装をまとったおばあちゃんがとっても絵になります。観光客も年配の方が多い。
tallinn4


旧市街で見つけたDM BAAR(エストニア語でBAARとはBAR)の看板。
tallinn5


DMとはなんとDepeche Mode。こんな所にDepeche Modeのマニアがいるとは! まだ早すぎて、バーには人が居ませんでしたが、中をのぞいてみると・・・
tallinn6

2011年7月1日から7月3日まで3日間、「第11回青年の歌と踊りの祭典(11th Youth Song and Dance Celebration)」が、エストニアの首都、タリン郊外の歌の原(Lauluvaljak)で行われました。エストニア語では「maa ja ilm」と呼ばれます。2009年には5年に1度の本チャンの「歌と踊りの祭典」が行われているので、これは青年版ということでしょう。規模は十分大きかったですが・・・


歌と踊りの祭典は、ユネスコの無形文化遺産にも指定され、1988年の祭典はエストニア、いや世界にとって重要なものでした。まだ、ソ連の支配下にあったエストニアにて、歌の原には約30万人が集結し、当時まだ御法度であったエストニア語で歌が歌われ、その後1991年のエストニア独立へと導いたと言われます。これは「歌う革命」と呼ばれます。

僕がタリンに到着したのは、7月2日の夜。日本からの最短欧州ルートとされる、フィンエアに乗れば日本(僕は関空から)から約9時間半でヘルシンキに到着。ヘルシンキからはフィンエアの乗り継ぎ便でタリンまで約30分。高速船に乗っても2時間もかからずタリンに到着。エストニアってどこ?って思われる方も多いでしょうが、意外と近いのです。

最終日となる7月3日の9時ごろから、タリン市内から歌の原までパレードは始まります。街路にはパレードを見守る人達が集まり、艶やかな民族衣装で数え切れない集団が次々と行進して行きます。パレードには男性も居ましたが、やはり女性の民族衣装の美しさに目が惹かれてしまいます。
parade1

parade2


午後からは、歌の原に人々は集結。市内からバスに乗って、20分くらいで歌の原に到着。
bus


野外スタジアムは人で埋め尽くされています。観客も多いですが、ステージの演者の多さ(写真の上部割は演者)にも圧倒されます。
festival1


後ろを向くと、人、人、人。
festival2


エストニアは136万人程度の小国ですが、自国の文化をこの祭典を通じて守り、それを楽しむ気持ちが伝わるとても貴重な体験となりました。

ロシア・ウクライナといった旧ソ連圏では、セクシー・グループが一大勢力となっていますが、ここで疑問となるのは、エストニアにもその手のグループはいるのか? ウクライナのNikitAなどもエストニアでライヴ等をしているようですから、需要はあるはずです。

今回紹介するのは、カリニー(Kariny Joala)、モニカ(Monika Sjomgina)、グレテ(Grete Rammal)、カイリ(Kairi Sihi)から成るClick OKという4人組。エストニアは旧ソ連の中でも順応するのが早かったと思われ、1998年には『Lase lodvaks (Loosen Up)』というアルバムをリリースしています。
loosenup


「Oo on kuum (The Night Is Hot)」は、ラップ調なんだけれど、単なるディスコ・ソングには終わっていない不思議なエスニックな曲。


「Psuhhoterror (Psychoterror)」は出だしがEW&Fの「Boogie Wonderland」みたいなスクラッチとオケヒット連発の脱力ディスコに合わせて、4人のおねえちゃんが踊っています。場末のディスコ感が涙ぐましい。PV作る予算がなかったのですかねぇ〜。


ちなみに、一部のメンバーはBad Angelsというダンスユニットで活動しているようです。

エストニアのシンガーで日本でも知られている可能性があるのは、マーヤ(Maarja)。Marinaのエストニア語表記となりますから、それなりにポピュラーな名前なのでしょう。彼女のフルネームはMaarja-Liis Ilusで、同じ名前の元Vanila Ninja(ハードロック系)のMaarja Kiviと混同しないように注意しましょう。実際、マーヤも後にソロ・デビューした元Vanila Ninjaがマーヤと名乗った事に不快感を表明していたようです。ユーロビジョンには現在までエストニア代表として2回出場しています。

本国ではセカンド・アルバムにあたる『風をだきしめて(First In Line)』を1997年に日本盤としてリリース。タイトル曲「First In Line (風をだきしめて)」は、北欧のイメージがぴったりな爽やかなアコースティック・チューン。


森永の「カフェラッテ」のCMでは、マーヤの「A Need In My Life」が使われます。このCM、ウィノナ・ライダー(Winona Ryder)が出ていてる!


この曲を追加して『風をだきしめて+1』として1998年に再発されています。
風をだきしめて+1風をだきしめて+1
アーティスト:マーヤ
販売元:マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
(1999-05-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


日本特別盤としてミニアルバム『Heart』を1998年にリリース。北欧ならばという人選か、カジヒデキ「ハートじかけのオンガク」をカヴァーした「Sing With Your Heart」も収録。
heartHEART
アーティスト:マーヤ
販売元:マーキュリー・ミュージックエンタテインメント
(1998-11-26)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


彼女の公式サイトの更新は2010年1月で止まっていて、現在あまり活動されていないようです。

ゴスロリ少女のバイブル的存在の『不思議の国のアリス』。2010年にティム・バートン(Tim Burton)監督により映画からされましたが、映画にインスパイアされたイメージ・サウンドトラック『Almost Alice』にも当然のごとく、ケルリ(Kerli)ちゃんは収録されています。
Almost AliceAlmost Alice
アーティスト:オムニバス
販売元:AMC
(2010-04-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


正直、このサントラ自体は寄せ集め感があって、それほど高く評価できないのですが(それでも、ビルボード5位)、ケルリちゃんの「Tea Party」は努力の跡が見られます。


他、このサントラにはTokio Hotelの「Strange」のゲスト・ヴォーカルとしても参加しています。

ティム・バートンもファンである日本のゴスロリ代表の黒色すみれも『Alice In The Underground』という映画をモチーフにしたアルバムを出していました。こちらの方が映画の世界観としてはを共有しているのではないかと思いました。
ALICE IN THE UNDER GROUNDALICE IN THE UNDER GROUND
アーティスト:黒色すみれ
販売元:黒色すみれ
(2010-05-19)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ケルリ(Kerli)ちゃん、エストニア出身だけあって、ここまで5枚のシングルは本国エストニアで1位になっています。2007年にEP『Kerli』をリリース後、2008年にアルバム『Love Is Dead』をリリースし、エストニアで1位、アメリカのビルボードで126位となり、エストニア出身アーティストとしては初のビルボード200位以内を記録しました。
Love Is DeadLove Is Dead
アーティスト:Kerli
販売元:Island
(2008-07-08)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


アルバム『Love Is Dead』のジャケは、日本のゴスロリ少女にも受けそうな、ブライス系。日本のユニバーサル・ミュージックも「北国のレディー・ガガ!?」と紹介しています。でも、日本盤は出ていません。

このアルバムから2曲紹介しましょう。アルバム・タイトル曲でもある「Love Is Dead」のPVに登場するのは、年老いたケルリちゃん。こちらも2008年公開なのでどちらが先かわかりませんが、映画「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」のようにだんだん若返って行きます。子供にまではなりませんけど・・・


一番注目を浴びたと思われる「Walking On Air」では、アルバムのジャケを実写したようなゴスロリ・ワールド。サウンド的にはビョーク(Bjork )風エレクトロニカですが、Tommy heavenly6に近い描写です。

今回紹介するのは、ケルリ(Kerli)ちゃん。5000人程しか住んでいないエストニアの小さな町、エルヴァ(Elva)で生まれた現在24歳。まだ、生まれた時は、エストニアは独立しておらず、ソ連に属していましたが、当時の様子を彼女が語っています。「お金がなくてもクリエイティヴになれる」といい事を言っています。


彼女は、14歳の時、15歳が出場資格の最少年齢だった「Americal Idol」のバルト三国版「Baltic Song Contest Fizz Superstar」に年齢を偽って応募、そして優勝。それがデビューのきっかけとなるのですが、レーベルとの契約破棄などの問題もあり、ここまで来るのに紆余曲折がありました。

現在、KerliちゃんはIsland Def Jamとの契約し、アメリカを中心に活動していますが、彼女の最新シングルが『Army Of Love』。アメリカ・ビルボードのダンス・チャートでは見事に1位に輝いています。サウンドは、(古いですが)KC and the Sunshine Bandの「That's The Way」をエレクトロにしたみたい。PVのイメージからLADY GAGAみたいだとの意見もあるようですが、近未来型ゴスロリ少女(いや、おねえさんか?)として大成してほしいものです。
armyoflove

一度でいいから生で見たいと思っているのが、ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)。1956年に始まったヨーロッパの歌の祭典。ソ連が解体して以降、中欧、東欧、ソ連から独立した国々の参加も増えて、2011年ユーロビジョン参加国は43カ国。今年の開催地はドイツ・デュッセルドルフで、決勝は5月14日。
Eurovision Song Contest 2011Eurovision Song Contest 2011
アーティスト:Eurovision Song Contest 2011
販売元:EMI Import
(2011-04-26)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


2011年のエストニア代表は、ゲッター・ジャーニ(Getter Jaani)。エストニア語は判らないので、よみがなは自信なし。ちなみにGoogle翻訳をしてみると、「ジョン・ゲッターロボ」と訳されてしまいます(笑)。エストニアの首都、タリン生まれの18歳。エストニアの「Eesti otsib superstaari (Estonia is looking for a favourite song)」というアイドル・オーディション番組で認められ(途中で落ちたみたいですけど)、歌手デビュー。フルアルバム『Rockefeller Steet』を5月1日にリリース(Amazon.co.jpでMP3で購入できます)。
rockfellerstreet


ユーロビジョンでのエントリー曲は、「Rockefeller Street」。ケイティ・ペリー(Katy Perry)の「California Gurls」あたりを思わせる、最近のエレクトロを取り入れたアメリカン・アイドル路線です。


ケイティ・ペリーを知らない人のために、「California Gurls」のPVも参考資料として紹介しておきます。グラマーなバービーちゃん。

ロシア・ウクライナのポップについて調査をしてまいりましたが、この辺りで旧ソ連の他の国に探訪してみます。旧ソ連でありながらも、文化圏的には北欧と言えるバルト三国。バルト三国と言っても、エストニア、ラトビア、リトアニアとそれぞれ文化的背景は違うのですが、先ずは、バルト三国の中で一番北に位置するエストニア。

エストニアはバルト三国の中でも一番経済状況がよく、2011年にはクローンからユーロへの通貨移行を果たしました。あのSkypeを発明したのもエストニアで、国内ではWiFiが整備されたインターネット先進国。首都タリンには、フィンランドのヘルシンキから船で約2時間。

エストニアの音楽は一部の例外を除き、あまり日本には紹介されていませんが、僕の中でのエストニアのイメージにぴったりのユニットがいます。Ruth SelirandとJana TakelからなるPixie Twinsという女子デュオ。

2003年に『Valgus ja Varjud』というアルバムをリリース。
valgusjavarjud


アルバムのオープニング曲でもある、彼女達の代表曲は、「Raske Loobuda (Hard To Give Up)」。トラッドでどこか哀愁があってメロディアス・・・エストニアも北欧なんだなぁと思わせる曲です。他、アルバム収録曲にはドリミィー系エレクトロポップ曲も多し。


その後、エストニアのコンピ用に数曲発表しましたが、残念ながら、現在は目立った活動しておらず、これが唯一のアルバムとなります。

↑このページのトップヘ