四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ:共産テクノ > ソ連 - ロシア

パブリブからの新刊本、衣笠太朗さんが書かれた『旧ドイツ領全史』を紹介します。音楽系のテーマが多いパブリブですが、このような研究者によるアカデミックなテーマも得意分野です。あとがきを読んでみると、パブリブの編集者の濱崎さんからの依頼はもともと、「旧ドイツ領ガイドブック」だったらしい。出だしの「歴史観光ガイド」からガイドブック的な要素ももちろんあるのですが、帯にあるように「そこはなぜドイツになり、そしてドイツでなくなったのか?」を解き明かしている歴史本です。

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旧ドイツ領全史: 「国民史」において分断されてきた「境界地域」を読み解く (旧領土スタディーズ)

資料としても大変価値がある内容ですが、これは個人的にも興味深いテーマです。僕の娘はここ数年ベルリンに在住しており、『共産テクノ 東欧編』の執筆の際は、ドイツおよび東欧諸国を訪れる機会が幾度がありました。例えば、歴史観光ガイドでも紹介されているポーランドのポズナニを訪れた際、ここは昔ドイツ帝国の一部だったとかを知るわけですが、この本でそのぼんやりとしたものがはっきりしてくるのです。同じく造船業で栄えたグダニスクもかってはドイツ領であった。この地は、ワレサ率いる連帯の運動が始まった地としても有名です。

陸続きの国境がない日本人にとってはなかなか実感が湧かないのですが、国境特に飛び地は好奇心がそそられます。バルト三国が独立した結果、ロシアの飛地となったカリーニングラード州。ここもかってドイツ領だったわけです。多くの領土は国家の都合のいい解釈で成り立っていることが見えてきます。ちなみにプーチン大統領の元妻のリミュドラは、ここの出身です。余談ですが、カリーニングラード州には、Комитет охраны тепла(熱のための委員会)というUB40のような共産レゲエ・バンドがいます。



しばらくの間は難しいですが、この本で予習した後、バルト三国経由でカリーニングラード州を訪れたいもんです。

2018年11月4日、オリャことオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)について書きました。「新譜をリリースしたよ!」とオリャからVKを通じて連絡があり、彼女にショート・インタビューをしました。

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デビュー時のオリャ

—オリャ、お久しぶりです。お元気ですか?

オリャ:とても元気です。前回(2018年)お話をしてから、多くの変化がありました。

—この2、3ヶ月コロナウィルスは全世界に拡散されました。ロシアでは1日1万人を超える感染者が出た日もあったと聞いています。ロシアの現在の状況はどうですか? どのように日々過ごしているのですか?

オリャ:はい、ウィルスは、他の地域を同様にロシアでも猛威を奮っています。現在は、減少傾向が見えてきており、日々の感染者は1万人を割っています。ロシアではとても厳しい規制があります。外出は生活物資を買うためだけに限られ、マスクと手袋を着用しなくてはいけません。1週間に2回だけ外出できるパスがもらえます。違反した場合、7000円程度の罰金が課されます。オフィス、保育園、食料品店とレストラン以外のショップは休業しており、全てのコンサートやイベントは中止となりました。基本的にみんな、家にいるか、ダーチャのような郊外にいます。

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完全武装のオリャ

—日本もまだ緊急事態宣言が本格的に解除されていませんが、ロシアの状況も良くなることを祈ります。話は変わりますが、新譜『Color Dreams』のリリースおめでとうございます! ここには、新曲、最近リリースしたシングル曲、それらの新しいリミックスなどが収録されていますね。長い沈黙の後、この2、3年、あなたはとてもアクティブに活動をしているようですが、何がその変化をもたらしたのですか?

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Color Dreams

Apple Musicでも聴けます!
Color Dreams

オリャ:はい、新譜は私にとって素晴らしい長く待ち望んだ喜びです。きっかけは、ビオ(Био)で活動することに再度誘われて、ちょうど時間があったので、了承したからです。まずは、アルバム『Automobiles (Автомобили)』を出すことをオファーしてくれました。現在は、私自身も曲を作り、アレキサンドル・ヤコフレフがアレンジをしてくれています。その結果が今回のアルバムです。

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最近のライヴ

—アルバムの中で最も気に入ったのが、「動物の魂(Звериная душа)」。とってもキュートです。歌詞の意味は分かりませんが、タイトルがとても興味深いです。何について歌ったのですか?

オリャ:その曲は、完璧なチョイスです! 気に入ってくれて嬉しいです。現在、この曲のリミックスを制作しており、まもなく、次のシングルとして「動物の魂」をリリースする予定です。この曲は、動物と植物の世界について、地球上の美しい自然のすべてについて、どれほどそれらを愛し、慈しみ、学ぶべきかついて歌いました。銀の時代(19世紀最後から20世紀初期にかけてのロシアにおける詩の黄金時代)の二つの古典的な詩から、一節を取り出し、ミックスしました。オシップ・マンデリシュターム(Осип Мандельштам)とコンスタンチン・バリモント(Константин Бальмонт)からの引用です。これらは同じテーマを持ち、うまく組み合わせられました。

—アルバムとは別に新しいミュージックビデオ「Автомобили System Eta Future Bass Remix」もリリースされていますね。あなたのデビュー曲はFuture Bassサウンドに変身し、アニメーションとしてビジュアライズされています。ロシアでは日本のアニメも人気があると聞きます。ソ連時代に日本のアニメを見るチャンスはあったのですか? 好きな日本のアニメはありますか?

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Автомобили System Eta Future Bass Remix



オリャ:ロシアに「愛好者の狭い輪ですごく知られた」という慣用句があります。広くは知られていないけど、とても独占的な物に対して使います。多分、アニメにはこの表現が当てはまります。日本のアニメはちょうど私にとってこの状態です! 漫画、アニメ、コスプレなどこういう世界を作っていることに感銘を受けました! 人々はこう言った若者文化を気に入っているのでしょう。でも、ロシアのテレビではほとんど放映されません。素晴らしい漫画もありましたが、ごくわずかです。多くのものは完全に子供向けです。これはおかしいと思います。ホラー映画や血に飢えたファイターの支配よりもキュートな漫画やアニメを見る方がいいです。アニメはもっと幅広く受け入れられるべきです。このような状況が是正されて、System Etaのミュージックビデオの制作者がこのアニメの方向でやっていくことを真摯に望んでいます。ソ連時代、日本の漫画やアニメが紹介されることはほとんどありませんでした。唯一覚えているのは、とっても怖かった怪物の映画です。

—オリャ、ありがとう。これからの活動も楽しみにしています。あなた自身をモチーフにしたアニメを是非作ってください。

本日は、『共産テクノ 東欧編』ではなく『共産テクノ ソ連編』のお話をします。




ロシア語のFacebookとも言える通称、VK(ヴェーカー)と言われるフ コンタクテ(ВКонтакте)を共産テクノの情報収集のために数年使っています。1ヶ月ほど前、オリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)から友達申請がありました。最初は誰か分からなかったのですが、写真を見ると、見覚えがあります。ソ連版Depeche Modeとロシアン・ウィスパーの記事でも書いたアンニュイな女子(当時)です。


もう一度、彼女の名曲「Автомобили (自動車)」を貼っておきます。



すっかり忘れていたのですが、僕はVKで彼女に関するグループ(コミュニティみたいなファンの集まり)に加入していて、彼女は「私のファンなら歓迎よ」という感じで、そのグループに入っている人に申請をしていたのです。彼女に「君のことを書籍でも本ブログでも書いたよ!」と情報を送ってみると、とても喜んでくれました。

オリガは現在も活動中! 現在もお綺麗です。こちらは新しいバージョンの「自動車」のライヴです。



色々やり取りをしていると、ちょうど彼女はアルバム『Автомобили (Expanded Edition)』をリリースしたとのこと。VKでMaschina Recordsのマクシム・コンドラシオフという人にコンタクトし、PayPalで€24(送料・手数料込み)を払って、手に入れたのがこれです!

automobile


当時のオリジナル曲が5曲にリミックス曲、彼女が活動したБиоの曲を加えて、全部で18曲。オリガ・ヴァスカニヤーンのファンにとって待望かつマスト・アイテムです(笑)。

ちょっと曲が少ないですが、Bandcampでもデジタルアルバムが買えます。「ディスコ狂のソヴィエト女王(The soviet queen of disco-frenzy)」と紹介されています。

CD共にポストカードも送られてきました。『ソ連編』でも書いたオーガニック・レディこと、アルガニーチスカヤ・リェヂ(Органическая Леди)と90年代に活動したらしいディー・ブロンクスとナタリ(Ди БРОНКС и НАТАЛИ)の二組です。両者とも強力なルックスです。また、ブログでも書いてみます。

organiclady

後で説明しますが、オリガ・ヴァスカニヤーンです。
Автомобили



ソ連の共産テクノを考察していると、Kraftwerkからの影響が窺える人たちが多いですが、もう一つがDepeche Mode。ちなみにDepeche Modeのロシア語表記は、「Дереш Мод」。1986年にモスクワで結成されたビオコンストルクトル (Биоконструктор)もそんなバンドの一つ。バンド名は、「生物のデザイナー」を意味しますが、バンド名をタイトルにした曲を聞いてみれば、やっぱりDepeche Mode好きが伝わります。



ビオコンストルクトルは、ビオ(БИО)とテフノロギヤ(Технология)という二つのバンドに分裂しました。ビオだけだと、なんだかヨーグルトみたいです。テフノロギアの「Нажми на кнопку(ボタンを押す)」は、さらにDepeche Mode度がアップします。ジャケットもそうでしょ! ちなみにテフノロギアは90年代以降もロシアで人気を博しました。

Нажми на кнопку




意外なる発見は、ビオコンストルクトルの中心メンバーのたアレクサンドル・ヤコヴレフ
(Александр Яковлев)の奥さんになったオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)。彼女はビオのメンバーとしても活動しましたが、「Автомобили(自動車)」というフレンチ・ウィスパーいやロシアン・ウィスパーと呼びたいテクノポップを残しています。なんだか共産主義の終焉を感じるクリップです。

これまで紹介したバンドにもレゲエ・スカの影響を受けたバンドは結構いました。Браво(ブラーヴォ)、ストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)、そしてPoliceの影響もうかがえるフォルム(Форум)など。寒いソ連と熱いジャマイカには大きな距離感がありますが、ソ連では意外とレゲエが受け入れられていました。

1990年にはソ連のレゲエ集『Soviet Reggae Since 1977』というコンピが編集されています。共産レゲエです。Mixcloudで聴けますが、多くのバンドはエストニア出身です。

Soviet Reggae Since 1977


その中にも収録されているのが、エストニア語で「竜巻」を意味するトルナード(Tornaado)。英語なら「トルネード」です。意識したわけではないでしょうが、メンバーのルックスはマリオとルイージを思わせます。収録されている「Seitse(7)」は、Kraftwerkの「The Model」または「Das Model」のカヴァーです。テクノポップ的なところは残しつつも、レゲエ風に仕上がっています。



もう一つ、共産レゲエ。「熱のための委員会」を意味するカミチェート・アフラーヌィ・テョープラ(Комитет Охраны Тепла)という、到底一度では覚えれないバンド名。バルト海に面していますが、こちらは、ロシアの飛び地、カリーニングラード出身です。

Зубы



先日のDOMMUNEでご一緒させてもらった大嶋さんが運営しているサイトが、「しまおー別館」。世界中のポップスを紹介されていますが、特にロシア・ウクライナには詳しいです。

大嶋さんが紹介したして、僕が(そして多分見ていた方も)ノックアウトされたのが、Ya Maha(ロシア語だと「Я Маха」)の「Снегурочка(乙女)」(2008年)。タイトルからかなり逸脱した、現代ロシア的タガが外れた感いっぱいの過激な動画です。



歌っているのは、マーシャ・マカローヴァ(Маша Макарова)は、メガポリス(Мегаполис)と「Где цветы? (花はどこへ行った)」をカヴァーしています。YMOのカヴァーもありますね。こちらは打って変わって渋いエレクトロニカ。

Солнцеклёш




ここまでは、ソ連崩壊後の話ですが、共産テクノとしてのメガポリスの「Москвички(モスクワっ娘)」からは、ペレストロイカ以降のソ連の風が吹きます。なかなか切なくていい曲。


昨晩は、DOMMUNEで『共産テクノ』5時間SPを濱崎さん、大島さんと3人でいたしました。たくさんの方々に見ていただいたようで、Togetterにてツイートがまとめてあります(濱崎さん、ありがとう!)。

昨日も紹介しましたスポーツテクノについて書きます。『共産テクノ ソ連編』のための取材目的で昨年の夏、モスクワを訪問しました。そして、スポーツテクノの先駆者となったアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)に会うことができたのが一番の収穫でした。日本からの訪問者を快く迎えてくれた本当にお二人には感謝をしたいです。

この二人がチームを組むことになったのが、『Ритмическая гимнастика (リズミック体操)』(1984 年)。エアロビクスのことです。アンドレイ曰く、「ほとんどのソ連の女性達はテレビのそばでジャンプしていました(笑)。」

Ритмическая гимнастика




その後も二人はスポーツを大義に、「Спорт и музыка(スポーツと音楽)」シリーズとして、『Пульс 1 Музыкальный компьютер(パルス1 コンピュータ・ミュージック)』(1985 年)と僕が勝手に「スポーツテクノ」と呼んでいるジャンルを開拓します(その後も別のアーティストにより計4作品がリリースされました)。ソ連という制約のある環境の中で生まれた発明です。クリエイティビティは制限から生まれる好例です。「電子めざまし時計」はピコピコ感満載で、ジャケも一周回ってかっこいい。

Пульс 1 Музыкальный компьютер




彼らは、PCを使った音楽の先駆者でもあります。今で言う所のDTM! Yahama MSXを使った『512 KB コンピュータ音楽』も大ヒット!


512 Кбайт - Компьютерная музыка




彼らのインタヴューから、当時のソ連の音楽事情、特に国営レーベルでリリースすることとはどんなことなのかが読み取れます。

明日(3月28日)19時よりDOMMUNEにてパブリブ Presents「共産テクノ / SOVIETECHNO【ソ連編】5HOURS!!!!!」です! 5時間いっぱい、しまおーさんとハマザキカクさんとおもしろ動画・音源を紹介いたします。

『共産テクノ』はamazonにも入荷しております。


今日は僕のいち推しの一つ、New Composers(Новые Композиторы)! Frank Zappaにも認められ、Brian Enoとコラボをした、ソ連のKraftwerk的存在です。

すでに紹介したキノ(Кино)との共作「This is Vasily」から行きましょう。リーダーのヴィクトール・ツォイは不在ですが、これが電子ニューウェイヴって感じで、かっこいいんです。

Start - Записи студии Яншива




「Именно сегодня и именно сейчас(まさに今日、まさに今)」は、サックスとシンセサイザーで作り上げた中毒性のあるグルーヴ感に溢れています。

『Именно сегодня и именно сейчас




1992年なので、ソ連崩壊後ですが、PVが素晴らしいので紹介します。Magnit & Boom Generation(PVはNew Composers名義)による「Tanz! Tanzevat!/Танц! Танцевать!(ダンス!ダンス!)」。Magnetは、ロッテルダム出身のBob StouteとNew Composersの共同プロジェクト。

Tanz! Tanzevat


数ある共産テクノの中でも一押しのバンドが、アヴィア(АВИА)。前回紹介した2トーン系として始まったストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)が分裂してできたバンドです。ジャケットからも窺えますが、アヴィアは総合芸術としての表現をモットーとし、ロシア構成主義やスターリン時代のアスリートのパレードの再現を行いました。

テクノポップであり、ストレンジポップ。シングル『Урок русского языка(ロシア語レッスン)』では、文字通り「私は話す」「あなたは話す」「彼は話す」……等、ロシア語動詞の格変化が学べます。僕はロシア語の格変化には今でもついていけません。

Урок русского языка




ステージもロシア・アヴァンギャルド! 演劇的で素敵です。ちょっとMoonridersを思わせる曲調。



こちらはアヴィアのメンバーが並行して、他のメンバーと結成したノム( Н О М )という、ストレンジ度が高いバンド。東洋風ブルースという孤高の分野に挑戦しています。

Брутто




3月11日から16日の間、テキサス州オースティンであったSXSWに行ってきました。昨年はPerfumeが出たフェスです。インターアクティヴを目的に行った一応出張なんですが、Gary Numanのドキュメンタリー映画を観たり、DE DE MOUSE、水曜日のカンパネラ、Neon Bunnyなどのライヴ観戦をしたり、街全体がフェスになってる盛り沢山すぎるイベントでした。

音楽のセッションもあって、「No Future - 1976 and the Birth of Punk in the UK」というUKパンクについてのパネルディスカッションがとても面白かったです。一人のパネラーが、イギリスにおける、ティディーボーイズ、スキンヘッズ、パンクスといういわゆる不良の流れを話していました。その流れで、2トーンという白人と黒人によるムーヴメントに対してダイバーシティ的評価をしつつも、ナショナリズム的なスキンヘッズが2-トーンにも結びついているという、一見矛盾した関係についても言及していました。

前置きが長くなりましたが、前回のБраво(ブラーヴォ)も2トーンの影響化にありましたが、今回紹介するストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)も2トーンとしてスタートしました。デビュー作『Метаморфозы(メタモルフォーシス)』のジャケットももろ2トーン。「白鳥の湖」ネタも使ったスカです。

Метаморфозы




こちらは、Kraftwerkの「Trans-Europe Express」にインスパイアされたのかはわかりませんせんが、ストレンジなエレクトロポップへと変化していった「Трубопровод Уренгой -Помары - Ужгород(トランス・シベリアン・パイプライン)」。


現在のドイツにおいてオスタルギー(東ドイツに対するノスタルジー)という現象があります。日本版DVDもある『グッバイ、レーニン!』は、そんなオスタルギーをテーマにした映画です。

東ベルリンを訪ねて (All Aboutテクノポップ)

グッバイ、レーニン! [DVD]
ダニエル・ブリュール
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
2014-01-10



その映画でも流れるのが、Браво(ブラーヴォ)の「Старый Отель(Old Hotel)」です。2 トーンやThe Policeに影響された、ニューウェイヴ・レゲエです。

Браво




ブラーヴォの紅一点ヴォーカリストは、ジャンナ・アグザラワ(Жанна Агузарова)。火星出身だと言い張る、早すぎたLady Gagaのような人です。彼女は偽名を使ったパスポートを所持していていた罪状で半年に渡る強制労働を食らっています。

彼女がゲストヴォーカルとして参加したナチノイ・プロスペクト(Ночной Проспект)のアルバム『Гуманитарная жизнь(人道的生活)』(楽曲は「Проблемы(問題)」)もオススメです。オーストラリアのエレクトロ・バンド、Midnight Juggernautsも好きなソ連の曲としてあげています。

Гуманитарная жизнь


All Aboutテクノポップにて「耳だけでなく目でも楽しめる「共産テクノ」の世界(1)」という題で、伝説のニューウェイヴ・バンド、キノ(Кино)を紹介しました。

キノのサウンドエンジニアをしていたのが、アレクセイ・ヴィシュニャ(Алексей Вишня)。両性具有的な不思議な人。彼はソロとしても活動しており、アルバム『Сердце(ハート)』がチルウェイヴなのです。この曲は1987年なので、もちろんチルウェイヴという呼び名はないのですが。その中から、女の子が歌っているような曲(「Расческа(くし)」)を紹介します。

Сердце




ソ連崩壊後ですが、大変興味深い作品『Виагра для Путина - проект Полит. Техно(プーチンのためのバイアグラ - プロジェクト政治テクノ)』(2003 年)があります。プーチン、エリツィン、ゴルバチョフなどの歴代大統領、ソ連に亡命した元日本共産党員の袴田陸奥男を父に持つ有能女性政治家として知られるイリーナ・ハカマダなどのボイスをサンプリングし、政治テクノをコンセプトとしています。日本でのムネオハウスが2002年の現象であっただけに、そのシンクロ具合に驚きます。ヴィシュニャがムネオハウスを知っていたのか、偶然なのかは謎です。

Виагра для Путина


フォルム(Форум)というバンドは、第2期のエレクトロクルブ(Электроклуб)に吸収されてきました。リードヴォーカリストのヴィクトール・サルティコーフ(Виктор Салтыков)は、ソロとしても活動しましたが、この時期、マレットヘアがトレードマークとなっていました。エレクトロクルブの2枚目のアルバム『Электроклуб-2』(1989年)のジャケットとそこからの動画で検証してください。ヴォーカリスト以上に、後方のパーカッションとベースの人のマレット度が絶妙です。

Электроклуб-2




マレットヘアについては、Wikipediaの解説を参照していただきたいですが、「中欧、東欧では今でもマレットにする若者が多くいると言われる」という記述もあります。確かに東ドイツの共産テクノにもマレットヘアの人がいました。

『共産テクノ ソ連編』は、Amazonではまだ予約受付中ですが、すでに販売していただいているリアルの本屋さんもあります。

すでに購入された方からも、Twitterでつぶやいていただいています。感謝!

3月9日の都築響一さんのメールマガジン「ROADSIDES’ weekly」で『共産テクノ』の取材記事が掲載されました。わざわざ、神戸の自宅まで来ていただきました。「類書なし」の孤独なトップランナーと言っていただき、感謝!

ロシアに行った際、現地の音楽業界の人に「ソ連時代のテクノポップを調べている」というと「なぜだんだ?」と怪訝な顔をする人もいます。「例えば?」と訊かれて、答えるのが、今回のフォルム(Форум)です。そうすると、割と「僕も好きだよ」みたいな反応があります。

Белая ночь


フォルム以前に活動していた共産テクノ・バンドはありますが、メジャーな存在としてフォルムは知られています。

代表曲は、哀愁のテクノポップ「Белая ночь(白夜)」。のちに分裂したメンバーが作ったバンド名にもなりました。



コンセプト的にもテクノポップど真ん中なのが、「Компьютер(コンピュータ)」。がんぱっている感が大好きです。



本日から、『共産テクノ ソ連編』は本屋に並び始めたようです。Amazonへの入荷はもう少しかかるみたいです。

ここまでユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский)が関わった作品を紹介しました。彼の自伝的映画と思われる『Здравствуй мальчик Бананан(ハロー、バナナボーイ)』(1990 年)があり、チューマ(ЧЮМА)の「Doctor Change」(1989 年)という作品が公開されています。チューマは、チルナフスキーとマトヴェイ・アニーチキン( Матвей Аничкин)は二人の頭文字を並べたもの。The Art of Noiseを目指したのだろうか?



アニーチキンは、70年代末から「ヤングの声」を意味するマラディ・ガラサー(Молодые Голоса) という今で言う所のソフトロック系バンドで活動し、その後、クルイズ(Круиз)というハードロック系バンドで活動。なのに突然、チルナフスキーと突然テクノ化するという柔軟というか節操のなさが面白いです。

В разгаре лета



ソ連製歌謡曲「Миллион алых роз( 百万本のバラ)」を歌ったアーラ・プガチョワ(Алла Пугачёва) と言えば、知っている人もいるでしょう。1987 年の加藤登紀子によるカヴァーが、日本でもヒットしました。ソ連を代表する女王的存在の歌手です。

前回登場したユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский)も、プガチョワの作品を手がけています。チルナフスキーがプガチョワのためにを提供した「Робинзон(ロビンソン)」は、テクノ歌謡と言ってもいい出来。「百万本のバラ」と真逆に位置にいる曲もこなすのは流石、女王です。



さらに、この曲は「Superman」というタイトルになり、スウェーデンのチャートで1 位になりました。

Superman

表紙はまだ掲載されていませんが、『共産テクノ』、Amazonで予約できるようになりました。

四方 宏明
パブリブ
2016-04



前回登場したユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский)は、ソ連の共産テクノのキーマンともいえる存在。YMOのメンバーがテクノポップ系アーティストの枠を超えて楽曲を提供したように、チルナフスキーも同じような役割を担っていました。

彼が関わった楽曲の中でも、僕が愛してやまないのが、ナタリヤ・ヌルムハメドヴァ(Наталья Нурмухамедова) によるエレクトロファンク歌謡「Малиновый сироп(ラズベリー・シロップ)」です。ウズベク(現在のウズベキスタン)出身のヌルムハメドヴァのキャラもいい。なんだか、大阪のおばちゃんっぽいエネルギーを感じる。この曲でみんな振り付けを完コピして踊って欲しいです。

Малиновый сироп


サミズダートとは、発禁となった書籍や音楽を複製し、地下流通させた出版物を意味します。多くのロックアルバムはテープアルバムとして地下流通し、ダビングされた二次加工物が出回りました。共産テクノにおけるサミズダートの金字塔と呼べるのが、チルナフスキー=マテツキー・プロジェクト(Чернавский - Матецкий Проджект )による『Банановые острова(バナナ諸島)』(1983年)です。

マルチトラック録音機は普及していなかった当時のソ連で、このアルバムは、ジャケ写にもあるハンガリー製の2トラック録音機「STM」を使い、限りないテープの切り貼りによってつくられた人力テクノの傑作です。「Я робот(私はロボット)」のPVは、近未来感に溢れています。

Банановые острова




メンバーの一人、ユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский) は、数多くの共産テクノ系作品に関わっていますが、それらについてはさらに紹介していきます。

『共産テクノ ソ連編』の表紙を飾るシンセサイザーは、ソ連製のポリヴォクス(Поливокс)。性能は保証の限りではありませんが、なんだかレトロでかっこいい。映画『エレクトロ・モスクワ』にも登場し、ポスターにも使われています。

Elecktro Moskva




映画には、レフ・テルミン(Лев Термен)も登場しますが、ツェントル(Центр)にも在籍していたナチノイ・プロスペクト(Ночной Проспект)のアレクセイ・ボリソフ(Алексей Борисов)は、電子楽器の入手がいかに困難であったかを語ってくれます。ナチノイ・プロスペクトは結構難解な作品も作っていますが、。アレクサンドル・バラバシェフ(Александр Барабашев) とコラボした『Привет, Москва! (こんにちは、モスクワ!)』(1987 年)はレトロな哀愁を感じるエレクトロポップとしてオススメです。

Привет, Москва!




「共産テクノ」という語感に魅かれるというコメントを頂いており、嬉しいです。同時に「それは何なんだ?」というのも当然の疑問だと思います。詳しくは拙書で解説していますが、「共産テクノ」とは、「冷戦時代にソ連を中心とした共産主義陣営で作られていたテクノポップ〜ニューウェイヴ系の音楽」と定義しています。同時にその周辺にある音楽も紹介したので、実質的にはもうちょっと広いですが……

ツェントル(Центр)は、少なくとも初期においては、テクノポップと言うよりも荒削りなガレージパンクっぽいバンドでした。

ツェントルのリーダー、ヴァシリー・シュモフ(Василий Шумов)のソロ作『My District』(1986年)は、かなりテクノ化しています。

mydistrict




アルバムのラストを「Kasparyan - Stingray Wedding Song(USA-USSR)」は米ソ友好ソングであり、Kraftwerk の「The Model」(関係のないドイツだけれど……)へのオマージュも試みました。

ツェントルは現在も活動をしており、こちらは最新リリースとなる「Доллар побил абсолютный исторический максимум(ドルは記録的最高値を更新)」と、弱いロシア・ルーブルについての曲を発表しています。

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