四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ:共産テクノ > ソ連 - ラトビア

前回紹介したDzPこと、ゼルテニエ・パストニエキ(Dzeltenie Pastnieki)には、ロベルツ・ゴブジンシュ(Roberts Gobziņš)というラトビア、そしてソ連初のラッパーがいました。彼はソロに転向後、西ドイツのWestBam にあやかり、EastBam名義で1990 年に『Aka Aka』をWestBam のLow Spiritからリリースしました。

Aka Aka




EastBamは、ソ連におけるDJ ならぬTJ(テープ・ジョッキーを意味する)の第一人者でもありました。
最近、カセットテープが見直されているようですが(梅田ロフトで『大ラジカセ展』開催中)、TJ の機材はオープンリールのテープレコーダー(Ross Markが定番)が使われ、なんとスクラッチなどもできました。こちらで、ラトビアでのTJについて解説がされています。



さすが地下出版としてのテープ文化が花開いたソ連ですね!

今回、『共産テクノ』を執筆するにあたって、色々な人たちに情報を提供していただきました。その中でもヤロスラフ・ゴドィナ(Ярослав Годына)さんというウクライナの雑誌編集者の方には、アーティストの発掘に多大な助言をしてもらいました。今日は、彼に教えてもらった共産テクノの真打とも言えるバンドを紹介します。

ソ連には国営レーベル「メロディヤ」から作品を発表したメジャーな人たちとテープアルバムを中心に地下出版を続けたアンダーグラウンドな人たちがいます。アンダーグラウンド・シーンにおいての共産テクノの開拓者とも言えるのが、ラトビアのゼルテニエ・パストニエキ(Dzeltenie Pastnieki)。長くて、覚えにくいので、略称、DzPで呼びます。

彼らのデビュー作『Bolderājas dzelzceļš(ボルデラーヤス鉄道)』は、テープアルバムとして1981年に地下出版されました。2作目は『Man ļoti patīk jaunais vilnis(僕はニューウェイヴが大好き)』(1982 年)では、タイトルからもニューウェイヴへの憧憬が伝わります。僕の一押しは、4作目のアルバム『Vienmēr klusi(常に静かに)』(1984年)収録の物憂げさに溢れる「Milžu cīņa(巨人は戦う)」。TBSラジオでも流した曲です。

Vienmēr klusi




DzPのリーダーのイングス・バウシュケニエクス(Ingus Baušķenieks)の奥さんとなるのが、エディーテ・バウシュケニエセ(Edīte Baušķeniece)。彼女はDzPの曲「Mana kafejnīca ir salauzta(私のカフェはやっていない)」をカヴァーして、PVまで作っています。こちらも80年代的アンニュイさに溢れています。

Klusais okeāns


アムステルダムに行くということで、紹介してもらったミュージシャン、OMFO名義で活動するGerman Popovさんの家にお邪魔しました。OMFOとは「Our Man From Odessa」の略、つまりソ連(現在のウクライナ)のオデッサ出身なのです。彼自身もスプートニクとしてソ連時代に活動していたということなので、共産テクノの生き証人でもあります。

OMFOの代表作の一つが、「Trans Balkan Express」……タイトルから想像できると思いますが、バルカンビートの「Trans Europe Express」です!

Trans Balkan Express
OMFO
Essay Recordings
2005-04-05





OMFOの作品からも共産テクノ的スペースディスコ感が窺えます。その名も「Shepherd Disco」! Atom Heartが共同プロデュースとして参加。

We Are the Shepherds
OMFO
Essay Recordings
2006-12-05





彼に戴いたオムニバス『Omnipresence』(2003年)には、OMFOに加えて、Zodiac(Зодиак)の「Zodiac」が収録されています。

Omnipresence


ソ連内の小国、ラトビアが放ったスペースディスコ・バンド、Zodiacが放ったメガヒット・アルバム『Disco Alliance』からです。Amazonで買える稀有な共産テクノ作品。

Disco Alliance
Zodiac
Gala Records
2007-11-13





拙著『共産テクノ』でもそのあたりを書いていますが、ソ連にスペースディスコ系が多いのは、やはりフランスのSpaceからの影響も多大にあったことを確認しました。

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