四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ:共産テクノ > ソ連 - リトアニア

ソ連では、フランス産のスペースディスコ・バンド、Spaceが人気を博し、その影響下で、スペースディスコ系バンドが少し遅れて80年代に現れました。ラトビアののゾディアック(Зодиак)と並び、ソ連でのスペースディスコの先駆者と言えるのが、リトアニアのArgoです。

彼らの1980年のデビュー作『Discophonia(ディスコフォニア)』は、手を抜いたのではないでしょうが、A1、A2…B1、B2…と全く素っ気のない曲名となっています。しかしながら、その内容は侮れません。フュージョンが変異したような独自のディスコグルーヴ感に溢れています。「A1」をDOMMUNEの「共産テクノ特集」でかけた時も宇川さんがえらく反応してくれました。

Discophonia




Argoは3枚のアルバムを残しましたが、3枚目の『Žemė L(ランドL)』(1986年)では、ディスコ路線から、電子民謡路線へとシフトしています。ジャケットには、リトアニアが生み出したシンセサイザー、「Vilnius-5」と思われる写真が写っています。

Žemė L




さらに一つ補足を。リトアニアの作家・詩人、ヴィンタス・クレヴェ(Vincas Krėvė)がリリースした2曲入りアルバム『Milžinkapis(古墳)』(1982年) でも、楽曲部分はArgoが演奏しており、実質、Argoのアルバムと数えてもいいでしょう。

Milžinkapis


テイスティス・マカチナス(Teisutis Makačinas)は、リトアニア音楽院(現在はリトアニア音楽演劇アカデミー)を卒業後、音楽理論と作曲を教える教授となりました。1972 年にリリースされた『T. Makačino Estradiniai Kūriniai (T. マカチナスの色々な作品)』のジャケットからは、いかにも教授という風貌が窺えます。

T. Makačino Estradiniai Kūriniai


クラッシック畑の彼が1982年に突然放った共産テクノ・アルバムが、『Disko Muzika(ディスコミュージック)』オープンリールをモチーフにしたジャケットも、メカニカルでかっこいい。多分、ラトビアのZodiac(Зодиак )にインスパイアされた(実際に彼のインタヴューでそのことにも触れています)スペースディスコ。

Disko Muzika




彼は現在77歳でご健在のようで、2015年の取材記事で『Disko Muzika』への再評価に対し「若者たちが私の音楽に興味を持ってくれて、嬉しい」と答えています。

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