四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:クンビア

前回のBomba Estereoでも紹介した電子クンビア・コンピ『Cumbia! Bestial』(2010年)にも収録されているMexican Institute of Sound略してMISについて書きます。

MISはカメリオ・ララ(Camilo Lara)のソロ・プロジェクトですが、凄いのはEMIメキシコの副社長という点。インディーレーベルなら分かるのですが、メジャーの副社長を務めながら、アーティスト活動。EMIメキシコ所属のアーティストはこんな凄い副社長がいるとかえってやりにくいのではないかと思ってしまいます。

MISのリリースはEMIではなく、Bomba Estereoと同じ、電子クンビア系レーベルとも言えるNacional Records。これまで、『Mejico Maxico 』(2006年)、『Pinata』(2007年)、『Soy Sauce』(2009年)と3枚のアルバムをリリース。

ソイ・ソースソイ・ソース
アーティスト:MIS(メキシカン・インスチチューテ・オブ・サウンド)
販売元:NACIONAL RECORDS/MUSIC CAMP, Inc.
(2009-04-19)
販売元:Amazon.co.jp
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MIS自体クンビアだけでなく、ラテン系エレクトロ(ニカ)と捉えていいと思いますが、『Soy Sauce』のオープニング・トラックは、「Cumbia」。これがユーモラスかつ洗練されていて、かっこいいんです。



2曲目の「Alocatel」は、『FIFA10 サウンドトラック』ともなっている脱力系ラテン・エレクトロ。副社長、素敵!



12曲目の「Sinfonia Agridulce」は、どっかで聴いた事があると思ったら、The Verveで有名になった「Bittersweet Symphony」(1997年)でした。MISはとぼけたカヴァーをしていますが、原曲はStaple Singersの「This May Be the Last Time」。風貌も含めて、さしずめ、メキシコのFPMって感じです。

では、本題の電子クンビア(デジタルクンビア)について話を進めましょう。2008年頃から注目され始めたこのジャンル、オランダ人のディック・エル・デマシアド(Dick El Demasiado)が電子クンビアの父とされており、2000年頃からコツコツと取り組んでこられたようです。彼の『Sus Cumbias Lunaticas y Experimentales』(2009年)はその集大成。

クンビア・ルナティカ/エクペリメンターレクンビア・ルナティカ/エクペリメンターレ
アーティスト:ディック・エル・デマシアド
販売元:utakata records
(2009-07-01)
販売元:Amazon.co.jp
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最近は、電子クンビアのコンピレーションも増えてきており、『Cumbia! Bestial』(2010年)では、コロンビアだけでなく、メキシコ、アルゼンチン、アメリカ、オーストラリアなどの世界の電子クンビアを選曲しています。

クンビア・ベスティアルクンビア・ベスティアル
アーティスト:オムニバス
販売元:BARRIO GOLD RECORDS/MUSIC CAMP, Inc.
(2010-09-12)
販売元:Amazon.co.jp
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このコンピにも収録されている、クンビアの故郷とも言えるコロンビア発の電子クンビア・バンドが、Bomba Estereo! コロンビアのクンビアとエレクトロを融合させた様式は、自らエレクトロトロピカルと呼んでいます。アルバム『Vol. 1 』(2006年)でデビューし、セカンド『Estalla』はアメリカではタイトルが『Blow Up』(2009年)と改名されリリース。

ブロウ・アップブロウ・アップ
アーティスト:ボンバ・エステーレオ
販売元:NACIONAL RECORDS/MUSIC CAMP, Inc.
(2009-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
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お勧めのトラックは、ずばり「Fuego」。単に電子化したクンビアではなく、エレクトロやレゲエ・ダブを昇華し、ディスコパンクなどにも通じる衝動があります。4人組ですが、いい意味で荒削りなリリアーナ(Liliana Saumet)という女性ヴォーカルも大事なポイント。どこにでもいそうなおねえちゃんという感じも良し。



2009年には来日していたようで、知っていたら見に行きたかった・・・

デジタルクンビアの方が一般名だと思いますが、響きが好きなので電子クンビアについてこれから書こうと思います。でも、その前にクンビアおよび日本に波及したクンビア歌謡の古い話をします。よって、中南米特集なのに日本です。クンビアはコロンビア生まれの「ズンチャズンチャ」の2拍子のビートを基調としたダンスミュージック。

その起源は古く、黒人が南米大陸にアフリカから来た19世紀後半と考えられています。実際に広まったのは1950年代以降で、1965年にはメキシコのカルメン・リベロ楽団による「赤いスカートのクンビア(La Pollera Colora)」がヒットします。



面白い事にその勢いは、同年日本にまで波及します。前述の「赤いスカートのクンビア」をカップリングした金井克子は「踊るクンビア娘」を、ラテン歌謡を多く歌った御影あい子も「クンビアをうたおう」、そして弘田三枝子は紅白歌合戦でも歌った「恋のクンビア」をリリースし、1965年はクンビア歌謡イヤーとなります。こんな時代でも、日本の歌謡界は世界のムーヴメントの中にいたのですね〜。確かにこの時代、ラテン歌謡なるものが、多かった気がします。僕自身、生まれてはいましたが、あまりにも幼少だったため、確かな記憶はありませんが。ボックスセット『激熱 ラテン歌謡 オーレ!』には、紹介したクンビア歌謡も収録したラテン歌謡の集大成です。

激熱 ラテン歌謡 オーレ!(CD)【演歌・歌謡曲 CD】【マラソンP10】
激熱 ラテン歌謡 オーレ!(CD)【演歌・歌謡曲 CD】【マラソンP10】


後で気が付いたのですが、弘田三枝子は、2006年に「恋のクンビア21」というセルフ・リメイクをMICO Loves CUMBIA BROS.名義で行っています。いや、40年経っても圧倒的なパワーを感じます。



恋のクンビア21恋のクンビア21
アーティスト:MICO Loves CUMBIA BROS.
販売元:コロムビアミュージックエンタテインメント
(2006-11-01)
販売元:Amazon.co.jp
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