四方宏明の“音楽世界旅行” [共産テクノ部]

四方宏明の“音楽世界旅行” [共産テクノ部]

EASTECHNO:『共産テクノ 東欧編 (共産趣味インターナショナル)』の発売を記念して、共産テクノの動画を中心に紹介!

ゲルニカ

11月 13日

【テクノポップ対談】懐かしのゲルニカの「スイートキッス」CM

先生:ハルメンズ→8 1/2→野宮真貴と行きましたが、ここではハルメンズにも関連するゲルニカについて語り合いましょう。

ポール:とりあえずメンバー紹介させていただきます。まずヴォーカルの戸川純さん。当時は女優のタマゴで8 1/2のファン。自ら作った上野耕路氏のファンクラブのただひとりの会員でした。ハルメンズが解散し、予定していたPhewのプロデュースも坂本教授に奪われ、さてこれからどうしようと思っていた時、久保田慎吾氏に聞かされたテープに入っていた、戸川さんが歌う「蘇州夜曲」に衝撃を受け、戸川さんをこのユニットに誘った張本人、上野耕路氏。作曲とすべての演奏を担当。そして、作詞とアートワーク、あとコンセプトメーカー的な役割も担っていたと思われる太田螢一氏の3人。太田氏の名前で思い出すのは、坂本教授が「サウンドストリート」で「オオタキ・エイイチじゃないですよ、オオタ・ケイイチですからね」と言っていたことですね。妙に耳に残ってます。

先生:ポールさん、記憶めちゃくちゃいいですね! ゲルニカの動画を探してみたんですが、結構出てきます。高橋幸宏・細野晴臣両氏がゲルニカを紹介するという貴重な動画があります。これはゲルニカとして初TV出演だったようで、戸川純ちゃん以上に上野耕路氏がどう見ても挙動不審。「蘇州夜曲」をちょっとだけやって、「復興の唄」へと・・・いや、戦後を思い出します。



ポール:この番組、リアルタイムで見てましたよ。たしか同じ番組でホストが違う回もあったと思うんですが、そっちは盛り上がってるんですよ、普通にワーッて。でも細野さんと幸宏氏のときは、客席が妙に静かで、異様な雰囲気でした。正直、見ててつらかったような記憶があります。というか、どう受け止めていいかわからなかったのかもしれないですね。笑っていいのかいけないのか。ギャグっぽいことやっても、ドッとウケるわけでもないし、ドヨドヨ〜…と周りを気にしつつ笑う感じというか。誰かが「YMOのライヴは職員室に行く感じ」と言ってた人がいましたが、それに近いのかもしれない。上野氏のしゃべり方は、『音版ビックリハウス ウルトラサイケビックリパーティー』のときと一緒ですね。あれは作ったキャラじゃなかったんだな。

先生:現在、ゲルニカのカヴァーした「蘇州夜曲」は、CD Box『GUERNICA IN MEMORIA FUTURI 〜ゲルニカ20周年記念完全盤〜』(2002年)に収録されていますが、このBoxは家宝にしたいです。ゲルニカの3枚のアルバム『改造への躍動』(1982年、)『新世紀への運河』(1988年)、『電離層からの眼差し』(1989年)に未発表音源も含めたまさにゲルニカの集大成です。

GUERNICA IN MEMORIA FUTURI~ゲルニカ20周年記念盤~GUERNICA IN MEMORIA FUTURI~ゲルニカ20周年記念盤~
アーティスト:ゲルニカ
販売元:インペリアルレコード
(2002-12-04)
販売元:Amazon.co.jp
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ポール:僕の持ってるのは、もうプラケースになってる再プレス盤のやつでした。それでも入手困難でしたね。ライヴとかデモ音源とかリハーサル音源まで入ってて、素晴らしいですね。

先生:これが出る前、「蘇州夜曲」聴きたさにCRAGALE RECORDSからの『NEO POPS 1982』というCD(CD-R)を買いました。これは夢音で行われたライヴ録音テープをCD-R化したもので、トイレットペーパーのパッケージがジャケです(笑)。

neopops1982


ポール:あの三軒茶屋のインディーズ系レコード屋、FUJIYAMAのページに載ってますね。

先生:シングルになった『銀輪は唄う』はちゃんとPVもあるんですね。当時、見た覚えがないのですが、作詞作曲編曲、演奏、歌唱、映像、全てにおいて完璧と言える作品だと思います。ただ、懐メロっぽい曲を作ってみたとかいうレベルではなく、聴く者を時代に吸い込む力がありますね。

ginrinwautau




ポール:このシングル、最初に聞いたときは「あれ、シンセじゃないのか〜」と、ちょっとガッカリした覚えがありますね。でも、今でもデモテープをそのままレコード化してしまった『改造への躍動』(歌は録音し直してあるそうです)に対して、「やっぱり新録したかった」と言う上野氏が、本当にやりたかったことはこっちなんでしょうね。よく神保町に行く自分にとっては、B面「マロニエ読本」のほうが好きだったりします。歌詞がまたいいんですよ。

先生:この曲が使用された「スイートキッス」のCMは見覚えがあります。ゲルニカのようなマニアックな志向のユニットがCMに使われたのは画期的です。この時代、セブンアップ飲料という会社名ですね。



ポール:これ、リアルタイムでは見た覚えがないんです。ただ、¥ENレーベルのファンクラブ「¥EN友会」に入ってまして、そのファンクラブのイベントで¥ENひるがた会(¥ENゆうがた会に当選しなかった人たちのための追加公演)ていうのがあったんですよ。そこでビデオ上映会があって、そのとき初めて見たような記憶がありますね。上野氏のアップのとき、客席で笑いが起こってました。

先生:ゲルニカの3枚のアルバム、やはり、¥ENからリリースされた1st『改造への躍動』が時代的にもテクノ度一番高いですね。2nd以降のオーケストラ・アレンジも好きですが・・・

改造への躍動(紙ジャケット仕様)改造への躍動(紙ジャケット仕様)
アーティスト:ゲルニカ
販売元:Sony Music Direct
(2006-02-22)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


ポール:『改造への躍動』は、リアルタイムで買いましたよ。でも当時小学5年生ぐらいで、何だかよくわからなかったんです。前例がなかったですし。でも抵抗もなかったですけどね。「カフェ・ド・サヰコ」はテクノっぽくてすぐ好きになりましたね。しかし、1stをリリースした1982年当時の3人の年齢、戸川さんが21歳、上野氏が22歳、太田氏が25歳、ってなんなんでしょう。上野氏はもっと年上かと思ってたんですけど、戸川さんのひとつ上だったんですね。22歳であんなものすごい曲書いてたなんて、とんでもないっスねぇ。2ndと3rdも濃くて好きですけど、思い入れも含めて1stがいちばん好きですね。

先生:ゲルニカって、大好きなんですけど、同時に聴き過ぎると、精神的にふっと落ち込んでしまいそうな魔力がありますね。「潜水艦」とか(笑)。当然、それも含めてゲルニカの良さだと思うんですけど。

ポール:2ndと3rdは特に、鑑賞するような感じでかしこまって聴いちゃうような、堅苦しさがありますね。1stとの違いはなんなんでしょうね。戸川さんがうまくなりすぎたからかな?

先生:最後に、ゲルニカの公式サイトを紹介しておきます。太田螢一氏のアートワークも含め、カッコいいサイトです。

ポール:おぉ。「サウンドール」に載ってた太田氏の連載漫画を思い出しますね。いやー、好きですね、太田氏の気持ち悪良いイラストは。ヒカシューの『うわさの人類』とか、少年ホームランズ『少年ホームランズ』、やぎ『IL NEIGE』それぞれのジャケ、みんな好きです。一度見たら頭から離れないインパクト。戸川さんがゲルニカに対して「まったく後継者がいない」と言ってましたけど、太田さんの画風もそうですよね。まったく独特。
10月 2日

【テクノポップ対談】8 1/2に戻ってみましょう

先生:第1回のハルメンズに続いて、その母体となった8 1/2(ハッカ)について話しましょう。ハッカからは、上野耕路さんと泉水敏郎さんがハルメンズに加入していったわけですが、かなりメンバーチェンジがあったバンドです。後に野宮真貴さんとPortable Rockを結成する鈴木智文さんも後期ハッカに在籍していました。

ポール:実は8 1/2はかなり後追いなんですよ。恥ずかしいことに、映画「星くず兄弟の伝説」を見て、主演の久保田氏の存在感に圧倒されてファンになって、それから聴いたという感じなんです。だから、ハルメンズも戸川純さんも聴いた後ですでに知ってる曲がほとんどだったんで、「オリジナルはこんな感じだったのか」と確認しながら聴いたという感じです。

先生:泉水敏郎さんのWINKというバンドが母体となって、8 1/2に改名されましたが、これはフェリーニの映画のタイトルですね。

ポール:ずっと「ハチトニブンノイチ」と読んでましたよ。でも、フェリーニの映画の内容に衝撃を受けて、というより字面的に感覚で選んだんじゃないかな、と勝手に思ってますけど・・・記号っぽくてかっこいい。

先生:東京ロッカーズ系のコンピレーション『東京ニュー・ウェイヴ79'』には、「マネキン人形」「暗い所へ」「シティー・ボーイ」の3曲が収録されています。パンク系とされていますが、シークエンサーを使ったり、上野耕路さんのキーボードなど、独特の世界観を生み出していましたね。

東京ニュー・ウェイヴ79東京ニュー・ウェイヴ79
アーティスト:オムニバス
販売元:Pヴァインレコード
発売日:2002-01-25
おすすめ度:5.0
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07. マネキン人形(捏)
08. 暗い所へ(ハ)
09. シティー・ボーイ

ポール:「シティー・ボーイ」は、映画「ロッカーズ」でもやってますけど、個人的にはそっちの方が好きですね。まぁ映像のインパクトも含めてですけど。上野氏のグニョグニョなシンセがもう、最高。アルバムの方の3曲は録音もいいし、入門編としてオススメです。

先生:唯一のCDリリースとなる『メモアール』は、上野さんの母親の美容学校で録音されたものですから、音質は荒いですが、かえって初期衝動を感じます。現在、廃盤ですね。

ポール:CDの方は持ってないんですよ〜。買っときゃよかったな。いつか、ちゃんとした形で音源をまとめてCDでリリースしてほしいですよ。ブリッジかどこか、出してくれないかな…。

先生:ハルメンズで対談でも同じことをしましたが、ハッカの曲でハルメンズがやっていない曲も、後にゲルニカと戸川純ちゃんによって再録されています。「踊れない」はいかにも元ネタありって60年代的曲なんですが、戸川純ヴァージョンの方がお馴染みでしょう。

メモアールメモアール
アーティスト:8 1/2
販売元:テイチク
発売日:1995-11-22
おすすめ度:4.5
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01. 少年たち(ハ)
02. ジュリーのお願い
03. 踊れない(戸)(戸ヤ)
04. 上海特急
05. キネマの夜(ハ)
06. ナルシスティック(ハ)
07. その絵を踏むな
08. ベッドルーム・クィーン
09. 戒厳令(ゲ)(捏)
10. メモアール

(ゲ)ゲルニカ
(戸)戸川純
(戸ヤ)戸川純とヤプーズ
(泉)泉水敏郎
(捏)捏造と贋作

ポール:8 1/2版の「踊れない」は、完全にテクノポップだと思います。DEVOっぽい、痙攣リズムのテクノ。こりゃもうたまらんチ会長です。戸川純さんヴァージョンも、基本的なアレンジは同じなんですけどね。いやしかし、これは今聞いても卒倒するほどカッコいい。当時聴いてたら、発狂してたかもしんない。もうめちゃめちゃ好き。

先生:また出ましたね、たまらんチ会長(笑)! こちらは、「上海特急」の当時の映像です。近田春夫さんが司会しています。



ポール:近田さんは「ハッカニブンノイチ」って紹介してますね。これ、泉水氏も上野氏もいませんねぇ。2人が脱退した後の映像なんですね。サックスも入って、Roxy Musicぽい。久保田氏の衣装とか髪型とか、もうパンクの名残はなくて、モダンポップ系になってますね。YouTubeにある8 1/2の映像は、他に「ロッカーズ」の「シティー・ボーイ」とこれと、その2曲だけですかね。音源だけならいくつかあるようですが。

先生:「戒厳令」はニューウェイヴだけれど、クラシック的フレーズも出てくる上野さんらしい曲。これは、ゲルニカでもやっていますね。2ヴァージョンあって、『電離層からの眼差し』に収録の方は、ドイツ語で歌ったもろクラシカルなアレンジ。

ポール:デモヴァージョンは、モロにゲルニカの1stのあの感じで好きですね。重厚なドイツ語ヴァージョンも、とんでもなく素晴らしいですが。よくあんなアレンジが出来るもんです。確かにご指摘のように、途中でクラシックぽいメロディーが出てきますね。モーツァルトかバッハか…。聴いたことあるような感じなんですけど、わかんないなぁ。悔しい。そういえば「戒厳令」は、捏造と贋作の1stアルバムでもカヴァーしていましたね。上野氏らしい、ゲルニカ風味のアレンジでした。あと「マネキン人形」も採り上げてますよ。こちらは、8 1/2ヴァージョンを再構築したような、スペイシーなシンセのSEが飛び交うナイスなカヴァーでした。

先生:捏造と贋作は一度だけ、ライヴを見ました。『メモアール』のCDのセルフライナーノーツで泉水さんが、ハッカに在籍した久保田真吾さんと鈴木智文さんが結成したプライスというバンドは、高橋幸宏さんのプロデュースでレコーディングが予定されていたのに、お蔵入りになったのが残念です。プライスは、当時、『テクノ・ボーイ』というムックがあって、そこにも載っていたんです。

technoboy

テクノ・ボーイ (1980年) (ゴールデン・カラーアクション)
販売元:双葉社
発売日:1980-08
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ポール:プライスには、戸川さんヴァージョンの「母子受精」をアレンジした国本佳宏さんがいたんですよね。あのアレンジは素晴らしいので、プライスがちゃんと世に出てれば、国本氏の作曲編曲した曲がたくさん聴けたかも、と思うと残念でなりませぬ。それと、ばるぼら氏の著書「NYLON100%〜80年代渋谷発ポップ・カルチャーの源流」に載ってた久保田氏のインタヴュー記事によると、幸宏氏がプライスに関わったのは2曲だけで、あとはアルファのスタジオで録音したデモばっかり残ってるみたいです。久保田氏も「勿体ない。今出せばいいのにね。出していいんだったら、勝手にインディーズで出しちゃうんだけどね」なんて言ってますから、どなたか久保田氏に、正式にリリースのオファーをして欲しいです。
プロフィール

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Hiroaki Shikata


四方宏明
テクノポップを中心としたレコード蒐集癖からPOP ACADEMYを1997年になんとなく設立。2001年よりAll Aboutにてテクノポップのガイドを担当してます。Twitterで更新のお知らせ中。

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