四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:バイレファンキ

また欧州・アジアに戻る予定ですが、しばらく音楽世界旅行は中南米に向かいたいと思います。中南米音楽については僕自身それほど精通しているわけではなく、世の中にはもっと詳しい人もいます。そこで、テクノ〜エレクトロ的中南米音楽を中心に紹介して行きます。その中でも、先ずはアイドル的センスもあるラテン系ガールズから。

「Saori@destinyで学ぶバイレファンキ」でも書いたバイレファンキ(またはバイリファンキ)。ファンキカリオカとも言われるブラジル産のジャンルですが、先日、ブラジル人と音楽の話していて、「バイレファンキとかいいですね」と言ったら、日本人からその言葉が出る事自体が意外だという反応をされました。たぶん、サンバとかボサノヴァとか言う事を期待されていたのでしょう。

バイレファンキは急に起こったムーヴメントではなく、ブラジルでは1970年代にすでに始まっていました。もともとは音楽ジャンルというよりもパーティの呼称としてそう呼んでいました。1980年代終盤に頭角を現したDJ Marlboro(タバコの銘柄ですね)がバイレファンキの立役者とされています。同時に、バイレファンキは貧困層向けというイメージがあったり、犯罪組織が利用しようとしたりと、ブラジルでも偏見と闘ってきました。良識のあるアーティスト達の努力の結果だと思いますが、90年代半ば以降、バイレファンキは徐々に市民権を得ていきます。その象徴的な出来事として、ペルラ(Perlla)ちゃんを紹介。

リオのファヴェーラ(ブラジルのゲットー)に居た事もあるペルラちゃんは、前述のDJ Marlboroにデモテープを渡し、彼がラジオでエアプレイしたところ、反響を得て、デビューとなりました。彼女は来日していますが、日本でバイレファンキのショーをした初めてのアーティストとされています(裏は取っていませんが・・・)。ペルラちゃんの「Tremendo Vacilao(ためらい)」は、DJ Marlboloが選曲したファンキ系コンピレーション『Bem Funk Brasil』(2006年)に収録されていますが、シングルとしてもブラジル国内で1位となりました。



Bem Funk BrasilBem Funk Brasil
アーティスト:Various Artists
販売元:Som Livre
(2006-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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同年、ペルラちゃんは、DJ Marlboloのプロデュースによりデビュー・アルバム『Eu Vou』(2006年)をリリース。日本盤も出ており、帯には「ファンキカリオカ界のスーパーアイドル」と紹介されています。確かにコアなバイレファンキやファンキカリオカとは違います。MPB(Musica Popular Brasileira=ブラジルの流行歌)にファンキ的な要素が入っていると言う方がいいでしょう。ファンキ歌謡でしょうかね。タイトル曲の「Eu Vou(踊りにいかせて)」は、「エルボー(肘)」って空耳で聴こえますが、これがなかなか癖になるポップなファンキ。Caetano Velosoのカヴァー曲「Totalment Demais」は、ブラジルのTVドラマ「Cobras e Lagartos」の挿入歌です。



エウ・ヴォウエウ・ヴォウ
アーティスト:ペルラ
販売元:JAPAN TRADITIONAL CULTURES FOUDATION(V)(M)
(2007-06-21)
販売元:Amazon.co.jp
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翌年には『Mais Perto』(2007年)もリリースしていますが、近々サード・アルバムの予定もあるようです。

Mais PertoMais Perto
アーティスト:Perlla
販売元:Deckdisc Brasil
(2007-10-01)
販売元:Amazon.co.jp
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worldwild2010アイドルの楽曲に果敢に民族音楽を取り入れるという意味で、All AboutでもインタヴューしたSaori@destinyの『WORLD WILD 2010』は、ちゃんと評価されるべきだと声を大にして言いたいです。アルバム曲の中でもバイレファンキ度が高いタイトル曲「WORLD WILD 2010」は、その象徴と言えましょう。Talking Heads に代表される80年代ニューウェイヴも積極的に民族音楽を取り入れてきました。それは現在のエレクトロにも言える事です。アイドルの場合、民族音楽と言っても、中華系、中近東系、ジャマイカ系(スカ、レゲエ、ダブ)くらいなら結構ありますが、バイレファンキのような都会の民族音楽というのはなかなかありません。Saoriちゃんを聴いて、バイレファンキを知る・・・本来の目的はさておき、素晴らしいじゃないですか!


バイレファンキって何?と疑問の方もおられると思いますので、調べてみました。ブラジルではファンキカリオカと呼ばれるブラジル産ゲットーベース。ヒップホップを通過してマイアミベースがブラジルに南下して花開いたダンスミュージック。ブラジルのリオにはゲットーのような地域もあり、その様な文化背景があるのでしょう。

アメリカ人DJ、Diploが発掘したバイレファンキ代表選手が、ブラジル出身のBonde Do Role。彼らの「Solta O Frango」は、バイレファンキの代表曲として選んでおきます。



Bonde Do Roleとも仲がよく、彼らのリミックス仕事もしているCSS(実は、僕はこっちの方がもともと好きなんですけど)もブラジル出身。それほどバイレファンキ度が高いバンドではないですが、ブラジルの重要バンドなので「Let's Make Love and Listen to Death From Above」を紹介します。



バイレファンキの知名度を上げた一番の功績は、M.I.A.。バイレファンキ度が高い「Bucky Done Gun」を聴いてみてください。先ほど、紹介したDipoloもM.I.A.とは公私とも関わっております。ちなみに、M.I.A.の公式ページで見られる最近公開された「Born Free」のPVが限りなく残忍でヤバいです。



coconutfmAtom HeartことSenor Coconutも、ラテンクラブ系を選曲した『SENOR COCONUT presents COCONUT FM』(2005年)で、レゲトン、クンビアに混じって、バイレファンキをセレクトしています。


バイレクトロとはエレクトロがバイレファンキを取り込んだジャンルです。エレクトロファンキは、バイレファンキをやるブラジルの人達がエレクトロを取り入れた場合を指すらしい。日本のバイレクトロの先駆者、TIGARAHちゃんはYMOにも絡めて、次回へ持ち越します。

WORLD WILD 2010WORLD WILD 2010
アーティスト:Saori@destiny
販売元:D-topia Entertainment
発売日:2010-04-14
おすすめ度:5.0
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Coconut FMCoconut FM
アーティスト:Se���or Coconut
販売元:Essay Recordings
発売日:2005-09-27
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