四方宏明の“音楽世界旅行” [共産テクノ部]

四方宏明の“音楽世界旅行” [共産テクノ部]

SOVIETECHNO:『共産テクノ ソ連編 (共産趣味インターナショナル) 』の発売を記念して、共産テクノの動画を中心に紹介!

60'sリヴァイヴァル

10月 20日

サンプリングネタとなったThe Maisonettes

The Maisonettesというグループをご存知でしょうか? エレクトロポップと言っていいでしょうが、The Buggles、New Musik等にも通じる、The Beatlesを継承するモダンポップと60年代キッチュを兼ね備えています。Rah Bandが好きな人にもお勧めです。と言っても、女性が主役ではなく、女性はバックボーカルだけなので、ガールポップの系譜からは外れてしまいますけど。そんなことはどうでもいいほど、The Maisonettesはノスタルジックに素晴らしい。

彼らの代表曲は、モータウンmeetsテクノポップな「The Heartache Avenue」(1983年)。英国では7位というスマッシュヒットとなりましたが、同時に一発屋的な認識もされています。でも、他の曲の出来が悪い訳では決してなく、ただヒットしなかっただけです。でも、この時代、英国のシングルチャートというのは、素晴らしい曲がいっぱいだったと・・・ バックコーラスとしてPVにも登場する二人のおねえちゃん(ジャケにもちゃんと写っています)もメンバーなのですが、彼女達は歌に問題があったため、実際のスタジオレコーディングでは別の女性が歌いました。ここはやはり、ルックス重視ですかね。



リードヴォーカルのLol Masonは元City Boyという英国モダンポップ系のバンド出身。「10ccを凌ぐとさえいわれる都会派ロック」が日本での売り出し文句でした。City Boyもコーラス重視だったので、その部分はThe Maisonettesにも引き継がれたようです。

「The Heartache Avenue」は後にUKのヒップホップ系のグループ、Roll Deepによって「The Avenue」というタイトルで2005年にサンプリングされています。サンプリングと言っても、The Maisonettesの「The Heartache Avenue」の上にラップを被せただけに聴こえます。名曲再発掘としては評価しますが、これで、英国11位っていうのは、如何なものかと・・・



彼らの集大成とも言える『Heartache Avenue: The Very Best of the Maisonettes』(2004年)には、他にもBeatlesっぽい「Lessons In Love」、60’sな「Where I Stand」、泣かせるバラード「Roni Come Home」など一発屋なんて呼ばせたくない名曲を残しています。

The Heartache Avenue: The Very Best of the MaisonettesThe Heartache Avenue: The Very Best of the Maisonettes
アーティスト:Maisonettes
販売元:Cherry Red UK
(2004-05-11)
販売元:Amazon.co.jp
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10月 19日

マリのピンクのラヴ・ソング

Tracy Ullmanと負けず劣らず、60'sリヴァイヴァル系歌姫の中で好きなのがMari Wilson。トレードマークは、ビーハイヴ(ハチの巣)。ビーハイヴは、アメリカのニューウェイヴ・バンド、The B-52'sのトレードマークでもありますが、このヘアスタイルがB-52ストラトフォートレス爆撃機のノーズの部分に似ているため、B-52という呼び方もされていました。ビーハイヴは、「ティファニーで朝食を」のAudrey Hepburn、60年代の歌姫Dusty Springfieldなど、60'sキッチュの象徴でした。Mari Wilsonのビーハイヴは本物で、The B-52'sのはかつららしいです。

Mari Wilsonは奇才Tot Taylor(正確には彼のお兄さん)が設立した60'sキッチュなCompact Organizationからデビュー。Pizzicato Fiveの小西康陽氏もCompactの会員でした。Compactからは、『A Young Person's Guide To Compact』(1982年)というレーベル・コンピレーションがリリースされています。元々のLPは2枚組ですが、後に1枚にまとめたCDも英国盤と日本盤(WAVE)がリリースされました。この2枚のCDは微妙に収録曲や曲順が違います。

青少年のためのコンパクト・オーガニゼーション入門 (輸入盤 帯・ライナー付)青少年のためのコンパクト・オーガニゼーション入門 (輸入盤 帯・ライナー付)
アーティスト:VARIOUS ARTISTS
販売元:LTM
発売日:2007-08-25
おすすめ度:5.0
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彼女が1982年にリリースした「Just What I Always Wanted(マリのピンクのラヴ・ソング)」は、英国で8位というスマッシュヒットとなりました。邦題は意味不明なほどにクリエイティヴ! この曲は、Teddy Johnsonが書いたものですが、プロデューサーはNew MusikのTony Mansfield。5分を超える12インチ・ヴァージョンもありますが、この時代のものは、インスト部分が長いエクステンド・ヴァージョンに過ぎません。まぁ、それはさておき、この曲は、Mariのソウルフルなヴォーカル、ベースとなったモータウンサウンド、Tonyの絶妙なテクノポップなアレンジが、三位一体となった名曲です。



Tony Mansfieldがメインのプロデューサーとなって製作された『Showpeople』(1983年)では、他にも「Wonderful To Be With You」「Are You There With Another Girl?」「Beware Boyfriend」など他にも泣きそうにいい60’sキッチュなテクノポップが揃っています。

ショウ・ピープルショウ・ピープル
アーティスト:マリ・ウィルソン
販売元:バウンディ
発売日:2010-09-08
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90年代に入ってアルバム『Rhythm Romance』(1991年)をリリースしましたが、残念なことにエレクトロから離れジャズ寄りのスタンダードなサウンドとなりました。その後長らく活動を休止していましたが、『Dolled Up』(2005年) 、『Emotional Glamour』(2008年)とゼロ年代に復活を遂げています。
10月 18日

Susan Boyleになりきったりするお茶目なTracy Ullman

新しいシリーズを始めます。80年代、ニューウェイヴの時代に一つの傾向としてあったのが、60年代サウンド、特にガール・グループやキューティズ的なモノへの回帰現象がありました。60年代というのは、ボク自身、生息はしていましたが、小さすぎたので、あまり原体験としての記憶ありません。60年代はポップス黄金時代・・・なんとなく60年代的なモノへの憧れは潜在的にあったのでしょう。ということで、ここで扱うのは60年代のポップではなく、60年代への憧れを込めた80年代以降のポップだと解釈してください。80年代以降、現在においてもその流れを汲んだ音楽は脈々と続いています。

シリーズの初めを飾るのは、Tracy Ullmanです。MTV(いや、当時日本で見ていたのは、Sony Music TV)の時代にニューウェイヴ系に混じって、彼女の曲は流れていました。この手のリヴァイヴァルものは、それほどテクノでもニューウェイヴでもないのですが、同じ部類のものとして受け止められていた感があります。YMOを聴きつつも大瀧詠一を聴く気分。初めて、彼女の「They Don't Know(夢みるトレイシー)」(1983年)を聴いた時、なんて素敵な曲なんだろうと素直に感じました。PVがさらに素敵さに拍車をかけます。60’sキューティな装いのTracy。Bay City Rollersネタなども出てきます。青春時代とその後のやさぐれた感じも、流石喜劇女優のTracyはばっちり演じてくれます。終盤のドライヴのシーンでは、な、な、なんと、Paul McCartneyが彼氏役として登場します。まだ、若いですね〜Paul。



当時は知らなかったのですが、これはKirsty McCollが1979年にリリースしたカヴァー曲。こちらも本国、英国ではそこそこヒットしました(7位)が、Tracyのカヴァーは英国(2位)だけでなく、ビルボードチャートでも8位と大健闘。Tracyの方が、ドリーミーでPhil Spectorサウンド化しています。でも、ちょっとやるせないKirstyのヴァージョンも大好きですけどね。

意外なのですが、この「They Don't Know」をカヴァーした日本人は、BaBe。彼女達のデビュー・シングルとしてMichael Fortunatiのカヴァー曲『Give Me Up』(1987年)にカップリングされています。邦題は、「夢みるトレイシー」ではおかしいので、「哀しみは朝の雫のように」となっています。

話はTracyに戻します。英国で「They Don't Know」の前にリリースされたデビュー・シングル『Breakaway(涙のブレイク・アウェイ)』も全英4位とヒット。オリジナルはIrma Thomasの『Wish Someone Would Care』(1964年)のカップリングという渋いセンス。その後、Beryl Marsden、Jackie DeShannonなどもカヴァーしており、60年代への憧憬が如実に表れた曲です。



歌手Tracyのキャリアは2枚のアルバム『You Broke My Heart in 17 Places(夢みるトレイシー)』『You Caught Me Out(ハ〜イ! トレイシー)』(1983年)のみで、その後、複数のベスト・アルバムがリリースされています。

夢みるトレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)夢みるトレイシー(K2HD/紙ジャケット仕様)
アーティスト:トレイシー・ウルマン
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2006-03-15
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アーティスト:トレイシー・ウルマン
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発売日:2006-03-15
おすすめ度:4.0
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現在も英国人独特のちょっと毒のあるキャラクターで女優として活躍し、最近はなりきりSusan Boyleとかやっています(似てる〜)。日本のTracy Ullmanって誰だろう? 清水ミチコや友近あたりですかね。

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Hiroaki Shikata


四方宏明
テクノポップを中心としたレコード蒐集癖からPOP ACADEMYを1997年になんとなく設立。2001年よりAll Aboutにてテクノポップのガイドを担当してます。Twitterで更新のお知らせ中。

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