四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:LaMovida

La Movidaから生まれたバンドとして一番成功し、また本国スペイン以外でも認められたのは、Mecano(メカーノ)です。Nacho CanoとJose Maria Cano兄弟に紅一点Ana Torrojaからなるドリカム状態。同名のバンドがオランダにも居ましたので、間違えないようにしましょう。名前からしてテクノなイメージを醸し出していますが、彼らがテクノなエッジを効かせていたのは、1枚目から3枚目あたりです。それ以降はラテンポップというジャンルで語った方がいいでしょう。ラテンポップと言った場合、スペインだけでなく、ラテンアメリカを含めたスペイン語及びポルトガル語圏のポップとなります。日本で有名なのは、Julio Iglesias(フリオ・イグレシアス)ですね。

Mecanoのデビュー盤となった『Mecano』(1982年)でお薦めなのは、「Me Cole En Una Fiesta」。Mecano好きの山根君曰く、「ハイスクール ララバイ」と「ラジオスターの悲劇」を足して2で割ったような名曲だと。ポップなメロディー、ピコピコなアレンジ、そして、キュートなAnaちゃんのヴォーカルに魅了されます。



Mecano (Reis)Mecano (Reis)
アーティスト:Mecano
Sony U.S. Latin(2005-08-23)
おすすめ度:5.0
販売元:Amazon.co.jp
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「Barco a Venus」を収録したセカンドの『Donde Esta El Pais De Las Hadas』(1983年)もほぼ同様の路線となりますが、サードの『Ya Viene el Sol』(1984年)では、Fairlight CMIを導入しました。注目したいのは、日本を題材にしてPVも制作された「Japon」。技術大国日本というイメージをインダストリアルなアレンジでサウンド化しています。可笑しいのは、3人とも学生服を着用している点。昔、Policeも学生服を着ていましたが、Anaちゃんにはセーラー服を着て欲しかった。このアルバムには、Thomas Dolbyも参加しています。



驚いたのは、ほとんどのMecanoのオリジナルアルバムが、現在Amazon.co.jpにて700円台で買えてしまいます。円高の影響なのでしょうか? Mecanoの全体像をつかむには、2枚組ベスト『Ana Jose Nacho』(1998年)というのもありますが、オリジナル(特に初期3枚)を買うのもこの値段ならありです。

Ana Jose NachoAna Jose Nacho
アーティスト:Mecano
Sony U.S. Latin(1998-03-24)
おすすめ度:4.0
販売元:Amazon.co.jp
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前回、お話したLa Movidaの続きとなりますが、スペインのニューウェイヴ界の女王として君臨したのが、Alaska(本名はOlvido Gara )。スペインでは『La Movida & Alaska』という伝記が出版されるほどの伝説の人物です。La Movidaは音楽だけでないとの話をしましたが、映画界に於いての最重要人物がPedro Almodovar(ペドロ・アルモドーバル)監督。彼の監督デビュー作『Pepi, Luci, Bom y otras chicas del monton(ペピ、ルシ、ボンとその他大勢の娘たち)』でBom役を演じたのが、Alaskaです。

彼女がNacho Canut 達と結成したのが、Alaska y Los Pegamoides。スペイン語で「y」は「&」と同義となりますから、Alaskaが主役的立場を務めるバンドです。「Horror en el Hipermercado」(1980年)はデビュー時のものですが、Ramonesっぽいパンクです。



1982年になってAlaska y Dinaramaに改名。『No es pecado』(1986年)のジャケのAlaskaは、Boy GeorgeとBow Wow WowのAnnabellaを足して2で割ったような感じになっています。ちなみにジャケでチェーンソーを抱えているように見えますが、実はチェーンソーではなく、枝切り機らしいです。

No Es PecadoNo Es Pecado
アーティスト:Alaska Y Dinarama
(2008-01-22)
販売元:Amazon.co.jp
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このアルバムに収録の「A Quien Le Importa」を聴いてみると、サウンドも方もよりダンス寄りとなり、ラテン風Pet Shop BoysかDead Or Aliveって感じです。



1990年になって、AlaskaはNachoと二人でFangoriaを結成。明らかにホラー映画に影響を受けた名前です。イタリアでもそうでしたが、スペインのニューウェイヴの人達も息が長く、現在も現役バリバリでムンムンです。Alaskaは他のアーティストとのコラボも行っており、Miguel Boseと「Amante Bandido」(2007年)をデュエット。Miguel Boseについては後日、触れる予定です。

イタリアは一段落したので、次は情熱の国、スペインです。70年代末から80年代にかけてニューウェイヴは全世界的ムーヴメントでした。イタリアにもあったし、札幌にもあったし、スペインにもありました。

スペインは西欧だから自由な国というイメージが一見ありますが、1975年までフランキスモと呼ばれたフランシスコ・フランコの独裁政権下にありました。正式に民主主義体制に移行したのは1978年で、その順調な移行から「スペインの奇跡」と呼ばれました。フランコ政権陥落後、スペインのユース・カルチャーは花開くわけです。そのムーヴメントをLa Movida Madrilena(日本語に訳すと「マドリッドの喧騒」)またはNueva Ola(ニューウェイヴ)と呼びました。これはマドリッドで起こった音楽だけでなく、芸術、映画、演劇などに渡る文化運動でした。音楽的には、ドイツにはNeue Deutsche Welle(ドイツのニューウェイヴ)があったように、スペインのニューウェイヴと呼んでもいいでしょう。

そのあたりの動きを捉えたコンピレーションの一つが、『La Otra Movida』。fnacというフランスやスペインで見かけるチェーンレコード店が製作したものです。ニューウェイヴ的な曲もありますが、オールドウェイヴ的ロックも含めてLa Movidaだったようです。やはり、独裁政権が長かった故、ポップカルチャー的にはタイムラグが起こり、混沌としてしまったのでしょう。

laotramovida


そんな状況下、スペインでもテクノポップと認識されているバンドが、Aviador Dro(正式にはEl Aviador Dro Y Sus Obreros Especializados)。ちなみにスペイン語で、テクノポップは「Tecno-pop」です。メンバーは後に減ったようですが、7人組の時代もあったようです。彼らの代表曲「Nuclear Si」(1983年)は、タイトルからして原子力に関する歌だと思われますが、Kraftwerkの「Radioactivity」あたりに通じる世界です。



「La television es nutritiva」(1982年)では、DEVOやPOLYSICSを思わせるユニフォームを纏い、ロボットのようなカクカクした動きがイカスぜ!



80年代からかなりの数のリリースをしていますが、2枚組CD『Todos Sus Singles Y EP's 1982-1998』では、彼らの80年代・90年代の音源を収録しています。これはスペインに行った際、買ったのですが、日本では手に入れにくいようです。

aviadordro


こちらはAmazon.co.jpにジャケ入りで唯一あったアルバム。

Confia En Tus MaquinasConfia En Tus Maquinas
アーティスト:Aviador Dro
Subterfuge
販売元:Amazon.co.jp
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