四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

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タイの2大レーベルは、Grammy GMMとRSです。RSとは正式名、RS Public Company Limited。以前の社名、RS Promotionという呼称が今でも使われる事も多いようです。RSはもともとの社名だったRose Soundの略。設立されたのは、1976年とかなり古く、ジュークボックスとカセットテープのビジネスから総合エンターテインメントへと業態を広げています。RSには複数のレーベルがあり、その中でもアイドルに特化したのが、KamiKazeです。前回紹介したNeko JumpもKamiKaze所属。

先日、バンコクに行った際にKamiKazeのレーベルの方とお会いしてさらに話を聞くアポをとったのですが、残念ながら延期となりました。気を取り直して、さらにKamiKazeの解説をします。

こちらのPVは、Four-Mod、Neko Jump、FFK、Knomjean等のKamikazeのアイドルを総動員して集合型ユニット、All Kamikazeの「Ruk Chun Reak Wah Tur (Calling for your love)」。



KamiKazeという名前はどちらかと言えば、パンク系またはヘビメタ系というイメージで、タイのアイドル系レーベルの名前というのは不思議な現象。本来、神風とは、日本人にとっては元寇の際に勝利した日本に由来する「思いがけない幸運に恵まれる」という意味。「神風が吹く」という表現が一般的です。同時に、神風特攻隊という言葉からは、「身の危険を省みない攻撃」という意味にもなります。特に外国ではそちらの意味で使われる事の方が多いでしょう。

PVには、38秒あたりでKnomjeanちゃんが歌う場面で、旭日旗(きょくじつき)も登場します。イメージとして旭日旗は軍国主義、ヤンキー、LOUDNESSのジャケって感じなのですが、元は日本の陸軍の軍旗として考案されたものです。同時に祝事にも使われ、朝日新聞(大阪支社)の社旗のデザインモチーフでもあります。

lengthKnomjeanちゃんのデビュー作『ขนมจีน (Length)』のジャケも旭日旗ですから、彼女の歌う場面に旭日旗が出てきても不思議ではありません。KamiKazeというレーベル名や旭日旗には、政治的意味は無いと考えます。日本のメタファーとして使っただけでしょう。また、タイが単純に超親日派とまで解釈しませんが、タイと日本の歴史的関係から、それらに絶対的な負のイメージはないのでしょう。

こちらも同様の形態で発表された「Ruk Tur Tuk Winar Tee (Every Minute)」。タイ人は、BPMが遅いバラードが好きなのが分かります。



bestofkamikazeこちらは、2007年から2011年までのKamiKazeレーベルの代表曲を集めた2枚組ベストCD。上記のAll KamiKazeの曲も収録しています。

デビュー時代から、アキバ系アイドルのイメージで売り出したNeko Jumpですが、「Clap your Sunday」(2010年)でも、アキバ系もチーフをふんだんに使い、その路線を堅実に保持しています。でも、サウンド的にトランスする必要は感じません。



シングルもありますが、購入するのなら、PVも入ったアルバム『化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~』(2010年)の方をお勧めしておきます。

化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~(DVD付)化粧品売リ場ハ ドコデスカ? Neko Jump日本デビュー1周年記念盤~ふたりいっしょに抱きしめたい!ビジュアルコレクション~(DVD付)
アーティスト:Neko Jump
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ジャケ的には、こちらのベスト・アルバム『BKK to NRT』(2010年)も捨てがたい。ちなみにバンコクに先日行ってきたのですが、大型CDショップは減っており、CDを買うのに結構苦労しました。タイのCDは基本、売り切りのリリースが多いようで、Neko JumpのCDも僕が行ったショップの店頭にはありませんでした。

BKK to NRTBKK to NRT
アーティスト:Neko Jump
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ところが、直近の2012年の「諦めないわ!(Girls on top)」のPVを見てみると、大きくイメージチェンジ。サウンドもヴィジュアルもちょっとセクシーなK-POP系となっています。やはり、タイでも人気のK-POP、日本でも受け入れられるK-POPという計算なのでしょうか?

たぶん、現時点でタイのシンガーとしては一番日本で認知度が高いと思われるのが、Neko Jump。名前からしても、日本を意識しています。所属もタイの最強アイドル系レーベル、RSのKamiKaze。KamiKazeについてはまた後ほど解説します。

タイ人は本名が長過ぎるので、みんなチューレン(ニックネーム)で紹介しますが、ヌーイ(意味はバター)とジャム(そのまま)の現在22歳の双子姉妹ユニット。タイでのデビューは2006年で、『Poo』で2009年に日本上陸しています。アニメ『あにゃまる探偵キルミンずぅ』のオープニング曲にも使用されたこの曲、日本のアイドル曲を下敷きにタイ化したような感じ。

実は、この曲に関しては驚きの発見がありました。こちらが、ショート・ヴァージョンですが、日本向けに作られたPV。歌は日本語版(邦題「プー〜カニさんの悪夢〜」)もあります。偶然の一致でしょうが、なんだかパッツンの方はかしゆか風。



あにゃまる探偵キルミンずぅOP&ED主題歌「Poo/Chuai Mad Noi」あにゃまる探偵キルミンずぅOP&ED主題歌「Poo/Chuai Mad Noi」
アーティスト:Neko Jump
販売元:キングレコード
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注目は、こちらのタイで2007年に発売されたデビュー・アルバム収録のオリジナル・ヴァージョン「Poo」のPV。冒頭の部分、日本語でしゃべる男性の声が入っています。実は、これを聴いた時、あれ、聴き覚えがある声(!)と感じました。実は以前講演をお願いして以来、懇意にさせていただいている、坂井直樹さん。日産Be-1、PAO、Figaroなどの開発にも関わってこられた方で、慶應義塾大学SFC教授もされています。ご本人にも確認をとったところ、ラジオ収録の語りのようで、間違いないようです。ちなみに坂井さんは、この事については今までご存知ではありませんでした。まったく意外な所で繋がりました。

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