四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

今回、『共産テクノ』を執筆するにあたって、色々な人たちに情報を提供していただきました。その中でもヤロスラフ・ゴドィナ(Ярослав Годына)さんというウクライナの雑誌編集者の方には、アーティストの発掘に多大な助言をしてもらいました。今日は、彼に教えてもらった共産テクノの真打とも言えるバンドを紹介します。

ソ連には国営レーベル「メロディヤ」から作品を発表したメジャーな人たちとテープアルバムを中心に地下出版を続けたアンダーグラウンドな人たちがいます。アンダーグラウンド・シーンにおいての共産テクノの開拓者とも言えるのが、ラトビアのゼルテニエ・パストニエキ(Dzeltenie Pastnieki)。長くて、覚えにくいので、略称、DzPで呼びます。

彼らのデビュー作『Bolderājas dzelzceļš(ボルデラーヤス鉄道)』は、テープアルバムとして1981年に地下出版されました。2作目は『Man ļoti patīk jaunais vilnis(僕はニューウェイヴが大好き)』(1982 年)では、タイトルからもニューウェイヴへの憧憬が伝わります。僕の一押しは、4作目のアルバム『Vienmēr klusi(常に静かに)』(1984年)収録の物憂げさに溢れる「Milžu cīņa(巨人は戦う)」。TBSラジオでも流した曲です。

Vienmēr klusi




DzPのリーダーのイングス・バウシュケニエクス(Ingus Baušķenieks)の奥さんとなるのが、エディーテ・バウシュケニエセ(Edīte Baušķeniece)。彼女はDzPの曲「Mana kafejnīca ir salauzta(私のカフェはやっていない)」をカヴァーして、PVまで作っています。こちらも80年代的アンニュイさに溢れています。

Klusais okeāns


現在のベラルーシは、僕が世界地理を勉強していた頃はソ連内の白ロシアとして習いました。ヴェラスィ(Верасы)は、白ロシアを代表する、ヴィア(ВИА)と呼ばれる歌謡楽団。彼らは80年代初期にディスコ歌謡的な方向に行きましたが、1987年に発表された『Музыка для всех(すべてのための音楽)』が変な作品なのです。アコギと写ったジャケを見る限り、到底共産テクノには見えません。15曲入りのこのアルバム、9曲まではごく普通のヴィア的な内容。しかし、残りが突然変異を起こしています。まるで反乱のようです。

Музыка для всех


11曲目の「Полет(飛行)」は、テクノポップと言っても遜色がありません。



続く、「Аэробика(エアロビクス)」では、共産テクノのサブジャンルとも呼べるスポーツテクノとなっています。



こういう意外かつ健気な努力を見つけると、嬉しいものです。

ソ連ではスペースディスコ系バンドが多いですが、ウクライナにもいます。彼らの名は、ディスプレイ(Дисплей)。スペースディスコとロックが折衷のようなサウンドで、バンド形態でしたが、最後は夫婦にのみが残りました。

彼らの「Робот - суперчеловек(ロボット=スーパーマン)」をソ連初のテクノポップと呼ぶ人もいます。デビュー・アルバム『Волна перемен(変化の波)』に収録されているのが、これです。コンセプトもKraftwerk然としたロボ声もテクノポップと呼んでもいいでしょう。しかし、この作品は1985年なので、ソ連初というのはちょっと言い過ぎかなと。しかし、よく調べてみると、この曲は1982年にAPCという名前だった頃、演奏されていたのです(VKで聴けます)。ただ、この時点のアレンジは、テクノポップというよりもディスコポップ。

Волна перемен




2枚目の『Дисплей(ディスプレイ)』からの「Динамо(ディナモ)」は、ウクライナのサッカーチーム、FCディナモ・キエフのアンセムソングです。それほどテクノではないですが、ちょっとレゲエっぽいリズム。

Дисплей




サッカーもスポーツ、そしてエアロビクスもソ連では重要な体力増強のためのスポーツでした。ディスプレイはエアロビクスのためのスポーツテクノも手がけていますが、これはまた今度、特集します。

後で説明しますが、オリガ・ヴァスカニヤーンです。
Автомобили



ソ連の共産テクノを考察していると、Kraftwerkからの影響が窺える人たちが多いですが、もう一つがDepeche Mode。ちなみにDepeche Modeのロシア語表記は、「Дереш Мод」。1986年にモスクワで結成されたビオコンストルクトル (Биоконструктор)もそんなバンドの一つ。バンド名は、「生物のデザイナー」を意味しますが、バンド名をタイトルにした曲を聞いてみれば、やっぱりDepeche Mode好きが伝わります。



ビオコンストルクトルは、ビオ(БИО)とテフノロギヤ(Технология)という二つのバンドに分裂しました。ビオだけだと、なんだかヨーグルトみたいです。テフノロギアの「Нажми на кнопку(ボタンを押す)」は、さらにDepeche Mode度がアップします。ジャケットもそうでしょ! ちなみにテフノロギアは90年代以降もロシアで人気を博しました。

Нажми на кнопку




意外なる発見は、ビオコンストルクトルの中心メンバーのたアレクサンドル・ヤコヴレフ
(Александр Яковлев)の奥さんになったオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)。彼女はビオのメンバーとしても活動しましたが、「Автомобили(自動車)」というフレンチ・ウィスパーいやロシアン・ウィスパーと呼びたいテクノポップを残しています。なんだか共産主義の終焉を感じるクリップです。

先ずは、このジャケットを見て欲しい。これぞ、スポーツテクノ!

Pulse 4


アルゼンチンのEl Club de la Computadora(コンピュータ・クラブ)による『Pulse 4』というアルバム。2014年にリリースされ、Bandcampでなんとフリーダウンロードできます



モスクワで取材できたアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)のお二人が、スポーツテクノの元祖です。

共産主婦はスポーツテクノでエアロビクス!

この「スポーツ&ミュージック」シリーズが好きすぎると思われる人たち(Nicolas Marino, Facundo Barrera & Luciana Sayanes)による謎のプロジェクトです。オマージュ具合が凄まじい。

ソ連の元国営レーベル、メロディヤ(Мелодия)は現在も存在していますが、Facebookではメロディヤ自身によって、今までの「スポーツ&ミュージック」シリーズに加え、この『Pulse 4』が並べられています。

Sports & Music


是非、今後もスポーツテクノを極めて欲しいものです。

今日は、エストニアの苦労人バンド、マハヴォック(Mahavok)です。シングルデビューを1984年にしたものの、エストニアでは人気のあった女性ボーカリスト、マリュー・リャニク(Marju Lanik)のバックバンド的存在なり、1986年にアルバム『Südame laul(心の歌)』を発表。

Südame laul




リャニクに代わって、加入したのは、カレ・カウクス(Kare Kauks)。彼女の加入でエレクトロ度もアップします。ハチマキが似合う女性と言えば、「Physical」時代のOlivia Newton John、そして日本ならスターボーですが、エストニアなら、カウクスです。アルバム『Mahavok(マハヴォック)』は1988年ですから、かなり遅れてきたハチマキ女子ですが…

Mahavok




これまで紹介したバンドにもレゲエ・スカの影響を受けたバンドは結構いました。Браво(ブラーヴォ)、ストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)、そしてPoliceの影響もうかがえるフォルム(Форум)など。寒いソ連と熱いジャマイカには大きな距離感がありますが、ソ連では意外とレゲエが受け入れられていました。

1990年にはソ連のレゲエ集『Soviet Reggae Since 1977』というコンピが編集されています。共産レゲエです。Mixcloudで聴けますが、多くのバンドはエストニア出身です。

Soviet Reggae Since 1977


その中にも収録されているのが、エストニア語で「竜巻」を意味するトルナード(Tornaado)。英語なら「トルネード」です。意識したわけではないでしょうが、メンバーのルックスはマリオとルイージを思わせます。収録されている「Seitse(7)」は、Kraftwerkの「The Model」または「Das Model」のカヴァーです。テクノポップ的なところは残しつつも、レゲエ風に仕上がっています。



もう一つ、共産レゲエ。「熱のための委員会」を意味するカミチェート・アフラーヌィ・テョープラ(Комитет Охраны Тепла)という、到底一度では覚えれないバンド名。バルト海に面していますが、こちらは、ロシアの飛び地、カリーニングラード出身です。

Зубы



アムステルダムに行くということで、紹介してもらったミュージシャン、OMFO名義で活動するGerman Popovさんの家にお邪魔しました。OMFOとは「Our Man From Odessa」の略、つまりソ連(現在のウクライナ)のオデッサ出身なのです。彼自身もスプートニクとしてソ連時代に活動していたということなので、共産テクノの生き証人でもあります。

OMFOの代表作の一つが、「Trans Balkan Express」……タイトルから想像できると思いますが、バルカンビートの「Trans Europe Express」です!

Trans Balkan Express
OMFO
Essay Recordings
2005-04-05





OMFOの作品からも共産テクノ的スペースディスコ感が窺えます。その名も「Shepherd Disco」! Atom Heartが共同プロデュースとして参加。

We Are the Shepherds
OMFO
Essay Recordings
2006-12-05





彼に戴いたオムニバス『Omnipresence』(2003年)には、OMFOに加えて、Zodiac(Зодиак)の「Zodiac」が収録されています。

Omnipresence


ソ連内の小国、ラトビアが放ったスペースディスコ・バンド、Zodiacが放ったメガヒット・アルバム『Disco Alliance』からです。Amazonで買える稀有な共産テクノ作品。

Disco Alliance
Zodiac
Gala Records
2007-11-13





拙著『共産テクノ』でもそのあたりを書いていますが、ソ連にスペースディスコ系が多いのは、やはりフランスのSpaceからの影響も多大にあったことを確認しました。

先日のDOMMUNEでご一緒させてもらった大嶋さんが運営しているサイトが、「しまおー別館」。世界中のポップスを紹介されていますが、特にロシア・ウクライナには詳しいです。

大嶋さんが紹介したして、僕が(そして多分見ていた方も)ノックアウトされたのが、Ya Maha(ロシア語だと「Я Маха」)の「Снегурочка(乙女)」(2008年)。タイトルからかなり逸脱した、現代ロシア的タガが外れた感いっぱいの過激な動画です。



歌っているのは、マーシャ・マカローヴァ(Маша Макарова)は、メガポリス(Мегаполис)と「Где цветы? (花はどこへ行った)」をカヴァーしています。YMOのカヴァーもありますね。こちらは打って変わって渋いエレクトロニカ。

Солнцеклёш




ここまでは、ソ連崩壊後の話ですが、共産テクノとしてのメガポリスの「Москвички(モスクワっ娘)」からは、ペレストロイカ以降のソ連の風が吹きます。なかなか切なくていい曲。


昨晩は、DOMMUNEで『共産テクノ』5時間SPを濱崎さん、大島さんと3人でいたしました。たくさんの方々に見ていただいたようで、Togetterにてツイートがまとめてあります(濱崎さん、ありがとう!)。

昨日も紹介しましたスポーツテクノについて書きます。『共産テクノ ソ連編』のための取材目的で昨年の夏、モスクワを訪問しました。そして、スポーツテクノの先駆者となったアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)に会うことができたのが一番の収穫でした。日本からの訪問者を快く迎えてくれた本当にお二人には感謝をしたいです。

この二人がチームを組むことになったのが、『Ритмическая гимнастика (リズミック体操)』(1984 年)。エアロビクスのことです。アンドレイ曰く、「ほとんどのソ連の女性達はテレビのそばでジャンプしていました(笑)。」

Ритмическая гимнастика




その後も二人はスポーツを大義に、「Спорт и музыка(スポーツと音楽)」シリーズとして、『Пульс 1 Музыкальный компьютер(パルス1 コンピュータ・ミュージック)』(1985 年)と僕が勝手に「スポーツテクノ」と呼んでいるジャンルを開拓します(その後も別のアーティストにより計4作品がリリースされました)。ソ連という制約のある環境の中で生まれた発明です。クリエイティビティは制限から生まれる好例です。「電子めざまし時計」はピコピコ感満載で、ジャケも一周回ってかっこいい。

Пульс 1 Музыкальный компьютер




彼らは、PCを使った音楽の先駆者でもあります。今で言う所のDTM! Yahama MSXを使った『512 KB コンピュータ音楽』も大ヒット!


512 Кбайт - Компьютерная музыка




彼らのインタヴューから、当時のソ連の音楽事情、特に国営レーベルでリリースすることとはどんなことなのかが読み取れます。

明日(3月28日)19時よりDOMMUNEにてパブリブ Presents「共産テクノ / SOVIETECHNO【ソ連編】5HOURS!!!!!」です! 5時間いっぱい、しまおーさんとハマザキカクさんとおもしろ動画・音源を紹介いたします。

『共産テクノ』はamazonにも入荷しております。


今日は僕のいち推しの一つ、New Composers(Новые Композиторы)! Frank Zappaにも認められ、Brian Enoとコラボをした、ソ連のKraftwerk的存在です。

すでに紹介したキノ(Кино)との共作「This is Vasily」から行きましょう。リーダーのヴィクトール・ツォイは不在ですが、これが電子ニューウェイヴって感じで、かっこいいんです。

Start - Записи студии Яншива




「Именно сегодня и именно сейчас(まさに今日、まさに今)」は、サックスとシンセサイザーで作り上げた中毒性のあるグルーヴ感に溢れています。

『Именно сегодня и именно сейчас




1992年なので、ソ連崩壊後ですが、PVが素晴らしいので紹介します。Magnit & Boom Generation(PVはNew Composers名義)による「Tanz! Tanzevat!/Танц! Танцевать!(ダンス!ダンス!)」。Magnetは、ロッテルダム出身のBob StouteとNew Composersの共同プロジェクト。

Tanz! Tanzevat


数ある共産テクノの中でも一押しのバンドが、アヴィア(АВИА)。前回紹介した2トーン系として始まったストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)が分裂してできたバンドです。ジャケットからも窺えますが、アヴィアは総合芸術としての表現をモットーとし、ロシア構成主義やスターリン時代のアスリートのパレードの再現を行いました。

テクノポップであり、ストレンジポップ。シングル『Урок русского языка(ロシア語レッスン)』では、文字通り「私は話す」「あなたは話す」「彼は話す」……等、ロシア語動詞の格変化が学べます。僕はロシア語の格変化には今でもついていけません。

Урок русского языка




ステージもロシア・アヴァンギャルド! 演劇的で素敵です。ちょっとMoonridersを思わせる曲調。



こちらはアヴィアのメンバーが並行して、他のメンバーと結成したノム( Н О М )という、ストレンジ度が高いバンド。東洋風ブルースという孤高の分野に挑戦しています。

Брутто




3月11日から16日の間、テキサス州オースティンであったSXSWに行ってきました。昨年はPerfumeが出たフェスです。インターアクティヴを目的に行った一応出張なんですが、Gary Numanのドキュメンタリー映画を観たり、DE DE MOUSE、水曜日のカンパネラ、Neon Bunnyなどのライヴ観戦をしたり、街全体がフェスになってる盛り沢山すぎるイベントでした。

音楽のセッションもあって、「No Future - 1976 and the Birth of Punk in the UK」というUKパンクについてのパネルディスカッションがとても面白かったです。一人のパネラーが、イギリスにおける、ティディーボーイズ、スキンヘッズ、パンクスといういわゆる不良の流れを話していました。その流れで、2トーンという白人と黒人によるムーヴメントに対してダイバーシティ的評価をしつつも、ナショナリズム的なスキンヘッズが2-トーンにも結びついているという、一見矛盾した関係についても言及していました。

前置きが長くなりましたが、前回のБраво(ブラーヴォ)も2トーンの影響化にありましたが、今回紹介するストランヌィ・イーグリィ(Странные Игры)も2トーンとしてスタートしました。デビュー作『Метаморфозы(メタモルフォーシス)』のジャケットももろ2トーン。「白鳥の湖」ネタも使ったスカです。

Метаморфозы




こちらは、Kraftwerkの「Trans-Europe Express」にインスパイアされたのかはわかりませんせんが、ストレンジなエレクトロポップへと変化していった「Трубопровод Уренгой -Помары - Ужгород(トランス・シベリアン・パイプライン)」。


現在のドイツにおいてオスタルギー(東ドイツに対するノスタルジー)という現象があります。日本版DVDもある『グッバイ、レーニン!』は、そんなオスタルギーをテーマにした映画です。

東ベルリンを訪ねて (All Aboutテクノポップ)

グッバイ、レーニン! [DVD]
ダニエル・ブリュール
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
2014-01-10



その映画でも流れるのが、Браво(ブラーヴォ)の「Старый Отель(Old Hotel)」です。2 トーンやThe Policeに影響された、ニューウェイヴ・レゲエです。

Браво




ブラーヴォの紅一点ヴォーカリストは、ジャンナ・アグザラワ(Жанна Агузарова)。火星出身だと言い張る、早すぎたLady Gagaのような人です。彼女は偽名を使ったパスポートを所持していていた罪状で半年に渡る強制労働を食らっています。

彼女がゲストヴォーカルとして参加したナチノイ・プロスペクト(Ночной Проспект)のアルバム『Гуманитарная жизнь(人道的生活)』(楽曲は「Проблемы(問題)」)もオススメです。オーストラリアのエレクトロ・バンド、Midnight Juggernautsも好きなソ連の曲としてあげています。

Гуманитарная жизнь


All Aboutテクノポップにて「耳だけでなく目でも楽しめる「共産テクノ」の世界(1)」という題で、伝説のニューウェイヴ・バンド、キノ(Кино)を紹介しました。

キノのサウンドエンジニアをしていたのが、アレクセイ・ヴィシュニャ(Алексей Вишня)。両性具有的な不思議な人。彼はソロとしても活動しており、アルバム『Сердце(ハート)』がチルウェイヴなのです。この曲は1987年なので、もちろんチルウェイヴという呼び名はないのですが。その中から、女の子が歌っているような曲(「Расческа(くし)」)を紹介します。

Сердце




ソ連崩壊後ですが、大変興味深い作品『Виагра для Путина - проект Полит. Техно(プーチンのためのバイアグラ - プロジェクト政治テクノ)』(2003 年)があります。プーチン、エリツィン、ゴルバチョフなどの歴代大統領、ソ連に亡命した元日本共産党員の袴田陸奥男を父に持つ有能女性政治家として知られるイリーナ・ハカマダなどのボイスをサンプリングし、政治テクノをコンセプトとしています。日本でのムネオハウスが2002年の現象であっただけに、そのシンクロ具合に驚きます。ヴィシュニャがムネオハウスを知っていたのか、偶然なのかは謎です。

Виагра для Путина


フォルム(Форум)というバンドは、第2期のエレクトロクルブ(Электроклуб)に吸収されてきました。リードヴォーカリストのヴィクトール・サルティコーフ(Виктор Салтыков)は、ソロとしても活動しましたが、この時期、マレットヘアがトレードマークとなっていました。エレクトロクルブの2枚目のアルバム『Электроклуб-2』(1989年)のジャケットとそこからの動画で検証してください。ヴォーカリスト以上に、後方のパーカッションとベースの人のマレット度が絶妙です。

Электроклуб-2




マレットヘアについては、Wikipediaの解説を参照していただきたいですが、「中欧、東欧では今でもマレットにする若者が多くいると言われる」という記述もあります。確かに東ドイツの共産テクノにもマレットヘアの人がいました。

前述のフォルム(Форум)の「Улетели листья(葉が飛んだ) 」を含んだ盗作疑惑曲についてはAll Aboutで書きました。決して、正義感で糾弾するつもりはありません。あくまでも当時の社会現象として捉えて頂ければ幸いです。

この曲は、ウクライナを代表する歌姫、ソフィーヤ・ロタール(София Ротару)が、1987年のアルバム『Монолог о любви(愛のモノローグ)』でカヴァーしています。ジャケットでの髪型も逆立っています!

Монолог о любви




こちらの「Театр(シアター)」の方が楽曲的にはニューウェイヴ。



80年代日本でも石川セリ、太田裕美、藤真利子などはニューウェイヴ化していましたが、それに近いノリなんでしょう。

『共産テクノ ソ連編』は、Amazonではまだ予約受付中ですが、すでに販売していただいているリアルの本屋さんもあります。

すでに購入された方からも、Twitterでつぶやいていただいています。感謝!

3月9日の都築響一さんのメールマガジン「ROADSIDES’ weekly」で『共産テクノ』の取材記事が掲載されました。わざわざ、神戸の自宅まで来ていただきました。「類書なし」の孤独なトップランナーと言っていただき、感謝!

ロシアに行った際、現地の音楽業界の人に「ソ連時代のテクノポップを調べている」というと「なぜだんだ?」と怪訝な顔をする人もいます。「例えば?」と訊かれて、答えるのが、今回のフォルム(Форум)です。そうすると、割と「僕も好きだよ」みたいな反応があります。

Белая ночь


フォルム以前に活動していた共産テクノ・バンドはありますが、メジャーな存在としてフォルムは知られています。

代表曲は、哀愁のテクノポップ「Белая ночь(白夜)」。のちに分裂したメンバーが作ったバンド名にもなりました。



コンセプト的にもテクノポップど真ん中なのが、「Компьютер(コンピュータ)」。がんぱっている感が大好きです。



本日から、『共産テクノ ソ連編』は本屋に並び始めたようです。Amazonへの入荷はもう少しかかるみたいです。

ここまでユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский)が関わった作品を紹介しました。彼の自伝的映画と思われる『Здравствуй мальчик Бананан(ハロー、バナナボーイ)』(1990 年)があり、チューマ(ЧЮМА)の「Doctor Change」(1989 年)という作品が公開されています。チューマは、チルナフスキーとマトヴェイ・アニーチキン( Матвей Аничкин)は二人の頭文字を並べたもの。The Art of Noiseを目指したのだろうか?



アニーチキンは、70年代末から「ヤングの声」を意味するマラディ・ガラサー(Молодые Голоса) という今で言う所のソフトロック系バンドで活動し、その後、クルイズ(Круиз)というハードロック系バンドで活動。なのに突然、チルナフスキーと突然テクノ化するという柔軟というか節操のなさが面白いです。

В разгаре лета



ソ連製歌謡曲「Миллион алых роз( 百万本のバラ)」を歌ったアーラ・プガチョワ(Алла Пугачёва) と言えば、知っている人もいるでしょう。1987 年の加藤登紀子によるカヴァーが、日本でもヒットしました。ソ連を代表する女王的存在の歌手です。

前回登場したユーリイ・チルナフスキー(Юрий Чернавский)も、プガチョワの作品を手がけています。チルナフスキーがプガチョワのためにを提供した「Робинзон(ロビンソン)」は、テクノ歌謡と言ってもいい出来。「百万本のバラ」と真逆に位置にいる曲もこなすのは流石、女王です。



さらに、この曲は「Superman」というタイトルになり、スウェーデンのチャートで1 位になりました。

Superman

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