四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

2023年12月

2005年に稲見淳さんにAll Aboutでインタビュー記事を書きました。90年代初期にControlled Voltageというバンドで活動し、加藤賢崇さんがプロデュースしたオムニバス『トロイの木馬』(1993年)にも「Closed Eyes View」という曲で参加しています。元P-MODELの福間創さんもメンバーで、参加のきっかけについて以下のようなお話がありました。福間さんにもSoyuz Projectとしてインタビューさせてもらいましたが、残念なことに2022年に他界されました。

Controlled Voltageのライヴに 加藤賢崇さんがいらして、ライヴ後声をかけてくださったんです。「あのMemorymoogいくら?」って(笑)それがきっかけです。『トロイの木馬』発売記念ライブを最後に僕は Controlled Voltageを脱退しました。確か21〜22才の頃です。


稲見さんにインタビューした時に、Controlled Voltage結成のきっかけについてもお話しいただきました。

あのバンドは電子音楽だけどライヴ中心のバンドがやりたかったので、そういった編成(生ドラムがいるとかボーカリストがいるとか)を条件に結成しました。録音は一人ででも出来るし、それまで録音ならではのテープ編集やコラージュ的な作品を作っていましたが、とにかくバンドという形態でのエレクトロニックなものをやりたかったので、それがControlled Voltageとなりました。また、そのバンド以前の眠っている音源とかも何らかの形で発表できればと思っています。15年くらい前の音源ですが今聴くと結構おもしろいんですよね。


サウンドデザイナー稲見淳さん (All Aboutテクノポップ)
トロイの木馬 (Discogs)

2005年のインタビュー後、18年経ちましたが、ついにControlled Voltageの発掘音源がリリースとなり、今回、新たにリリースされた音源を聴く機会がありました。11月29日から通販を開始した3タイトルは以下となります。それぞれ192枚限定(デジタル配信はありません)となります。

Controlled Voltage『Mind Accelerator』
CV1

1993年にリリースされたカセットテープのスタジオ録音盤をリマスター。
クレジットされているメンバーは:
杉本敦
稲見淳
福間創
MASA
YMOで言うなら『BGM』あたり、Japan、Ultravoxにも繋がる英国の耽美的なニューウェイヴ的サウンド。稲見さんらしい緻密なシンセ音で構成されています。歌詞はすべて英語で、8曲目の「The End of 125」が刺さりました。ちなみにドラマーのMASAさんは、エレクトロポップのサイト「すきすきエレポ」を運営していたかっこいい女性です。

Controlled Voltage『Dust To Digital』
CV2

時期的には『Mind Accelerator』前の音源となりますが、カセットテープのデモ音源をリマスター。こちらの方がダンサブルかつインダストリアル色が強いです。

Controlled Voltage『Un Official Live Tapes』
CV3

古いハードディスクから発掘された1993年〜1994年にかけての音源と1992年のライヴ動画。

こちらから購入できます。

稲見さんによると、今回収録できなかった過去音源がまだあるらしく、過去音源2枚と稲見さん一人でのControlled Voltage名義の新譜のリリースも予定されています。

稲見さんとのインタビューにも出てきますが、2004年と2005年には今はなき上屋劇場(現在はハーバースタジオ)でKobe Underground Festivalが行われました。2005年にはAUTO-MOD with 稲見淳としての出演もありました。ゴシック色が強いが多彩な顔ぶれの、今も印象が残っているイベントです。もう18〜19年前のことかと思うと、時間が経つの早いなとため息混じりになります。

Kobe Underground Festival
Kobe Underground Festival 2004-2005 (Discogs)

パブリブから『ゴシックメタル・ガイドブック』が発売されました。〈世界過激音楽〉のシリーズとしてなんと19冊目! 濱崎編集長のメタル愛を感じます。とは言うものの、僕はゴシックメタルには全く詳しくないのです。紹介されているバンドの中で知っているのは、当時バカ売れしたEvanesceceくらい。そんなアウェイ感があるジャンルですが、目次の後に書かれた「ゴシックメタルの音楽的背景と血脈の探究〜ルーツと周辺ジャンル」を読み始めて、一気に親近感が湧いてきました。

gothicmetal





端的に言うと、ゴシックメタルはべヴィメタルをルーツとするものの、もう一つの重要なルーツはニューウェイヴ〜ポストパンクから派生したゴシック的なバンドにあるということです。こちらで紹介されているのは、Joy Division、Siouisie & the Banshees、Bauhaus、The Cure、The Sisiter of Mercy、The Mission、Killing Joke、Cocteau Twins、Dead Can Dance、All About Eve、Depeche Mode、The Cult、Christian Death、Fields of the Nephilim。この辺りになると、僕にも馴染み深いバンドが多く、先日参戦してきたロサンゼルスでの「DARKER WAVES FES」のラインアップともちょい被ります。New Orderとしてですが、Joy Divisionの名曲「Love Will Tear Us Apart」は聴けたし、見れなったけど、Christian Deathも出演していました。短いブームだったポジティヴパンク、ダークウェイヴ、コールドウェイヴ、ドリームポップ(耽美系)などのサブジャンルとも被ります。

著者の阿久津孝絋さんは、日本のヴジュアル系がきっかけとなり、このゴシックメタルへとのめり込んだと書かれており、巻末のコラム「ゴシックメタルとタグ付けされたヴィジュアル系バンドたち」で、ヴィジュアル系とゴシックメタルの関係についての考察をされており、面白かったです。

というわけで、ゴシックメタルの御三家のParadise Lost、Anathema、My Dying Brideあたりから聴いてみます。

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