YMOもそうでしたが、和風も含めたオリエンタリズムというのは、80年代テクノポップの一つの重大要素でした。もちろん、日本のテクノポップにおけるオリエンタリズムの方向性は、日本人が純日本的メロディーを奏で、日本の心を歌うというストレートなものではありません。それじゃ、演歌になってしまいます(まぁ、テクノ演歌というのもアリなんですけど)。

それは、西洋人の視点からのエキゾチシズム(異国趣味)だったと思います。メロディーにはペンタトニック・スケール(5音音階)が多用され、必ずしも和ではなく、中華も他のアジア的テイストも、一括りだったと思います。時には、エキゾチシズムのフィルターで増幅した西洋人の勘違い的アジア感覚も含めて。YMOの中でもその傾向は、教授により顕著に見られました。他にも、矢野顕子さん、一風堂、P-MODEL(大陸的)、チャクラ、山口美央子さん(「恋は春感」)など、オリエンタリズムを感じる作品が多かったのが、80年代テクノポップ・シーンです。これは日本のアーティストに限ったわけではなく、YMOとも親交のあったJAPANなどにもその傾向は見られました。

8月8日の「Music Lovers」でTV初公開となった新曲「VOICE」を紹介する際、赤坂泰彦さん(元・東京JAP)は、「チャイナテイストを取り入れた・・・」と。確かによく聞いてみると、中華風とまでは言えないけど、要所要所でアッパーなポップスでありつつも、オリエンタリズム(ペンタトニック)が見え隠れします。日産のCMの時には見えてこなかったらびやかさの中にもわびさびを感じさせます。



中田ヤスタカさんの「love the world」もよく聞くと、教授の「Ballet Mechanique」風だったり、デビュー当時のcapsuleの「さくら」「粉雪」などはオリエンタル路線でしたから、その素地は十分あったのでしょう。「さくら」のPVに登場の中田さんは、トランシーバーを持って、本当に電池食べていそうです。



それ以上に、注目したいのはカップリングの「575」。俳句というモチーフは完全に死角でした。Perfumeとしては初のラップとなりましたが、最近のエレクトロの流れからしても、ラップは別に先進的ではないです。J-ポップでもラップはごく一般的な手法となっています。でも、この五七五というオリエンタルな曲調でありつつも、サビ以降に展開するラップには実験の精神を感じます。

僕の対談相手としてよく登場する、けろっぐ博士は『巷では教授の「戦メリ」風だと言われているけど、Aira Mitsukiの「サイエンス・ミュージック」とほぼ重なる』と主張しています。彼は「575」が流れるiidaのCMを「サイエンス・ミュージック」(『Airaの科学CD』に収録)の曲差し替えて、それを実証する試みを真剣に行っています。



また、「会いたい」「会えない」という歌詞からは西野カナちゃんの影響が伺えます・・・というのは冗談ですが。別に「575」に元ネタがあると言いたい訳では全くありません。先日の√thummの記事でも書きましたが、オリエンタル及び和風テクノというのが、もしかしたら静かな流れなのかなぁ・・・と。

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