去年の12月8日にControlled Voltageの発掘音源3枚について「Controlled Voltageの発掘音源」というタイトルで書きました。予告通り、残り3枚も出来上がりました。こちらは、今回の発掘活動に向けてのチラシとなります。なぜか、「#終活」とのタグが入っております。
今回、新たに発表された3作品の紹介に加えて、稲見淳さんご本人にも確認をし、これまで発表された作品を時系列に並べて、Controlled Voltageの軌跡を辿ってみました。
Controlled Voltage『USED UP AND EMPTY』
カセットテープでリリースしたライヴ音源5曲(1993年)にPCで観れる動画を加えたもの。動画は「USED UP AND EMPTY」というタイトルで、バンド的なControlled Voltageのサウンドとは方向性は違い、後半はアシッドハウス的な指向が見えます。
当時、Controlled Voltageはブラウン管のテレビ6台とかを持ち込んで、映像を投影してライヴをしていました。映像担当の野間靖さんがAmigaを使ってリアルタイムであらかじめ仕込んだ映像にエフェクトをかけたものなどを流していました。新曲をを作る際、稲見さんはデモ前のスケッチ的な音源を渡し、杉本敦さんがMacで画を描き、野間さんが映像を考えるという共同作業をやっていました。その過程で作られた楽曲や映像としてボツになったものが編集されたのが、「USED UP AND EMPTY」です。
しかし、ここからその後楽曲として完成したものもあり、冒頭のMacの画面のところは「LABYRINTH」、その次の花が開くようなCG(「USED UP AND EMPTY」のジャケに使っているもの)の曲は「4GATSU」に、ビデオ最後の、ゆがんだギアが流れていくようなCGの部分は「FREE WHEELS」という曲になりました。メンバー全員が80年代からCabaret Voltaireのファンだったこともあり、インダストリアル要素を好んでいましたが、ハウス路線もカッコいいということとなり、アシッドハウス的な要素が入っていきます。
Controlled Voltage『LOST AND FORGOTTEN+』
「+」がない『LOST AND FORGOTTEN』という過去スタジオ音源を編集した作品が2002年にC.U.E. Recordsからリリースされています。ここからの12曲中の8曲が今回の『LOST AND FORGOTTEN+』が収録されています。また、その元となったのは、XD FirstClass Networkからリリースされた『XD-Submit Vol.1』(1994年)〜『XD-Submit Vol.3』(1995年)です。
この8曲には、Controlled Voltageの音源に加えて、稲見さんの「X-DAY」、MASAさんの「SPOROPHYTE」、OBIさんの「EDEN」からなるソロ名義作品が含まれています。これらのソロ名義作品は、Controlled Voltageとして活動しながらも、メンバーの個性や趣向の違いを表現する意図もあったようです。
これら8曲のスタジオ音源に加えて、1994年のライヴ音源3曲、Controlled Voltage結成前の貴重な音源(最後の3曲)を加えて出来上がったのが、『LOST AND FORGOTTEN+』となります。ライヴ音源「O.F.-2」を含んだ最後の3曲は1987年頃で、まだControlled Voltageが結成されておらず、稲見野間ユニットという仮名義で不定期で録音とかをしていた時期です。ちなみに「O.F.-2」で野間さんは自作のエフェクター、リングモジュレーターを使ってギターでノイズを出し、稲見さんは、仕込んだ8トラック・オープンデッキのミックスと、2トラック・オープンデッキにテープを擦ってスクラッチ的なことをやっています。野間さんは実質的にはマルチメディアとしてのControlled Voltageのメンバーだったと言えるでしょう。
7曲目の「SEEK」はUltravox的疾走感があります。8曲目の「SPOROPHYTE」は、ドラマーのMASAさんのクレジットがあり、教授曲をイメージさせるインストルメンタル曲となっています。
Controlled Voltage『DIFFUSION』
こちらは、稲見淳さんの一人ユニットとしての再始動したCV。偶然なのかもしれませんが、CVはCabaret Voltaire(スイスにあったキャバレーの名前にちなんでいる)の頭文字でもあります。稲見さんに確認したとろ、偶然ではなく、Cabaret Voltaireへのオマージュとのこと。以下、稲見さんからの回答です。
晩年に一人でCabaret Voltaireとしても活動していたRichard H. Kirkは、Muteから2020年にアルバム『Shadow Of Fear』、2021年に最終作となるドローン系の長尺曲『Dekadrone』『BN9Drone』を発表後、 同年9月に他界しました。稲見さんは彼への追悼も意味も込めて、このアルバムを一人で作ったとのことです。
さて、これまでの作品を録音時期を考慮して、時系列に追ってControlled Voltageの軌跡を整理してみましょう。
1987年〜1991年:CV結成前夜
Controlled Voltageはまだ結成されていませんが、稲見さんと映像担当の野間さんの二人で録音、ライヴを行っていました。『LOST AND FORGOTTEN+』の最後の3曲は1987年頃の活動の足跡となります。
1991年〜1992年:黎明期→4人体制
稲見さんは、ヴォーカルが必要ということで、まずは杉本さんと活動を始める。これを黎明期と考えると、『DUST TO DIGITAL』がこの時期の音源と考えられます。その後、ライヴ中心のバンドをやりたいということから、旧知のドラマー、MASAさんが加入します。
バンドは3人ではなく4人と考えていたところ、雑誌のメンバー募集でシンセオタクの福間さんの加入で4人となります。『UN OFFICIAL LIVE TAPES』に収録の1992年の動画「LIVE ELECTRONICS」や『USED UP AND EMPTY』のライヴ音源(「MICRO KERNEL」「INFORMAL」〜事情により杉本さんはライヴ欠席)では4人バンド体制となっています。
1993年〜1995年:4人体制→3人体制→4人体制
1993年のライヴ音源が収録された『MIND ACCELERATOR』では4人の名前がクレジットされています。
CVの「closed eyes view」が収録された、加藤賢崇さんがプロデュースしたオムニバス・アルバム『トロイの木馬』が1993年に発売。福間さん繋がりで進んだ企画でしたが、CVには未発表音源が無かったので、納品〆切の都合で、稲見さんが歌ったとのこと。
Controlled Voltage - closed eyes view (YouTube)
しかし、『トロイの木馬』リリース記念ライヴを最後に福間さんは脱退し、1994年にP-MODELに加入となります。3人体制となったControlled Voltageの音源は、『USED UP AND EMPTY』のライヴ音源1〜3曲(「MAMBO」「GRAYOUT」「4GATSU」)、『UN OFFICIAL LIVE TAPES』の頃です。MASAさんはスタンディングではなく、座ってドラムセットで叩くようになり、スネアは生ドラム、キックとタムのみシモンズ、そしてロートタムという複雑でPAミキサー泣かせのドラムセットを、同期バンドでクリック無しで叩く女性ドラマーはなかなかいなかったとのこと。かなり、研ぎすまされたというか、逆に精神的にもキツくなっていった時期との稲見さんの弁があります。
1994年に3人体制+映像担当の野間さんから、OBIさんが加わり、4人体制に戻ります。『USED UP AND EMPTY』ライヴ音源、『LOST AND FORGOTTEN+』のCVスタジオ音源+ライヴ音源(「O.F.-2」を除く)などで、この第2期4人体制のCVとなり、1995年まで活動をしました。
2024年:一人CV再始動
稲見さんが発掘音源のリリースに加えて、一人CVとして『DIFFUSION』で再始動を果たします。
彼らの作品から、CVは関西のニューウェイヴ・シーンで異彩を放っただけでなく、90年代に現れたインダストリアル・テクノ・ハウスなどの要素を吸収しながらも、英国的耽美系のニューウェイヴとして稀有な日本のバンドだったことが感じ取れます。
興味を持っていただいた方は、CAVE Studioを訪れてみてください。
今回、新たに発表された3作品の紹介に加えて、稲見淳さんご本人にも確認をし、これまで発表された作品を時系列に並べて、Controlled Voltageの軌跡を辿ってみました。
Controlled Voltage『USED UP AND EMPTY』
カセットテープでリリースしたライヴ音源5曲(1993年)にPCで観れる動画を加えたもの。動画は「USED UP AND EMPTY」というタイトルで、バンド的なControlled Voltageのサウンドとは方向性は違い、後半はアシッドハウス的な指向が見えます。
当時、Controlled Voltageはブラウン管のテレビ6台とかを持ち込んで、映像を投影してライヴをしていました。映像担当の野間靖さんがAmigaを使ってリアルタイムであらかじめ仕込んだ映像にエフェクトをかけたものなどを流していました。新曲をを作る際、稲見さんはデモ前のスケッチ的な音源を渡し、杉本敦さんがMacで画を描き、野間さんが映像を考えるという共同作業をやっていました。その過程で作られた楽曲や映像としてボツになったものが編集されたのが、「USED UP AND EMPTY」です。
しかし、ここからその後楽曲として完成したものもあり、冒頭のMacの画面のところは「LABYRINTH」、その次の花が開くようなCG(「USED UP AND EMPTY」のジャケに使っているもの)の曲は「4GATSU」に、ビデオ最後の、ゆがんだギアが流れていくようなCGの部分は「FREE WHEELS」という曲になりました。メンバー全員が80年代からCabaret Voltaireのファンだったこともあり、インダストリアル要素を好んでいましたが、ハウス路線もカッコいいということとなり、アシッドハウス的な要素が入っていきます。
Controlled Voltage『LOST AND FORGOTTEN+』
「+」がない『LOST AND FORGOTTEN』という過去スタジオ音源を編集した作品が2002年にC.U.E. Recordsからリリースされています。ここからの12曲中の8曲が今回の『LOST AND FORGOTTEN+』が収録されています。また、その元となったのは、XD FirstClass Networkからリリースされた『XD-Submit Vol.1』(1994年)〜『XD-Submit Vol.3』(1995年)です。
この8曲には、Controlled Voltageの音源に加えて、稲見さんの「X-DAY」、MASAさんの「SPOROPHYTE」、OBIさんの「EDEN」からなるソロ名義作品が含まれています。これらのソロ名義作品は、Controlled Voltageとして活動しながらも、メンバーの個性や趣向の違いを表現する意図もあったようです。
これら8曲のスタジオ音源に加えて、1994年のライヴ音源3曲、Controlled Voltage結成前の貴重な音源(最後の3曲)を加えて出来上がったのが、『LOST AND FORGOTTEN+』となります。ライヴ音源「O.F.-2」を含んだ最後の3曲は1987年頃で、まだControlled Voltageが結成されておらず、稲見野間ユニットという仮名義で不定期で録音とかをしていた時期です。ちなみに「O.F.-2」で野間さんは自作のエフェクター、リングモジュレーターを使ってギターでノイズを出し、稲見さんは、仕込んだ8トラック・オープンデッキのミックスと、2トラック・オープンデッキにテープを擦ってスクラッチ的なことをやっています。野間さんは実質的にはマルチメディアとしてのControlled Voltageのメンバーだったと言えるでしょう。
7曲目の「SEEK」はUltravox的疾走感があります。8曲目の「SPOROPHYTE」は、ドラマーのMASAさんのクレジットがあり、教授曲をイメージさせるインストルメンタル曲となっています。
Controlled Voltage『DIFFUSION』
こちらは、稲見淳さんの一人ユニットとしての再始動したCV。偶然なのかもしれませんが、CVはCabaret Voltaire(スイスにあったキャバレーの名前にちなんでいる)の頭文字でもあります。稲見さんに確認したとろ、偶然ではなく、Cabaret Voltaireへのオマージュとのこと。以下、稲見さんからの回答です。
そもそも、Voltage Controlledとか、Controlled Voltageというのは、昔からのアナログシンセの使い方で初歩から使う言葉なんですが、僕らは電圧制御されているんだ(Kraftwerkのロボットなイメージ)とか、シンセ機材すごいぞ的なメディア操作も狙っていますが、Cabaret Voltaireからのオマージュです。まずはバンド名を決めないと、カセット作っても営業も出来ないので、シンセ使いの自分としても、もう、これでいこうと思ったと思います。あんまり深く考えず、他の名前とかも候補はなかったんですが、今頃になっても憶えてくれている人たちがいてびっくりしています。
晩年に一人でCabaret Voltaireとしても活動していたRichard H. Kirkは、Muteから2020年にアルバム『Shadow Of Fear』、2021年に最終作となるドローン系の長尺曲『Dekadrone』『BN9Drone』を発表後、 同年9月に他界しました。稲見さんは彼への追悼も意味も込めて、このアルバムを一人で作ったとのことです。
さて、これまでの作品を録音時期を考慮して、時系列に追ってControlled Voltageの軌跡を整理してみましょう。
1987年〜1991年:CV結成前夜
Controlled Voltageはまだ結成されていませんが、稲見さんと映像担当の野間さんの二人で録音、ライヴを行っていました。『LOST AND FORGOTTEN+』の最後の3曲は1987年頃の活動の足跡となります。
1991年〜1992年:黎明期→4人体制
稲見さんは、ヴォーカルが必要ということで、まずは杉本さんと活動を始める。これを黎明期と考えると、『DUST TO DIGITAL』がこの時期の音源と考えられます。その後、ライヴ中心のバンドをやりたいということから、旧知のドラマー、MASAさんが加入します。
バンドは3人ではなく4人と考えていたところ、雑誌のメンバー募集でシンセオタクの福間さんの加入で4人となります。『UN OFFICIAL LIVE TAPES』に収録の1992年の動画「LIVE ELECTRONICS」や『USED UP AND EMPTY』のライヴ音源(「MICRO KERNEL」「INFORMAL」〜事情により杉本さんはライヴ欠席)では4人バンド体制となっています。
1993年〜1995年:4人体制→3人体制→4人体制
1993年のライヴ音源が収録された『MIND ACCELERATOR』では4人の名前がクレジットされています。
CVの「closed eyes view」が収録された、加藤賢崇さんがプロデュースしたオムニバス・アルバム『トロイの木馬』が1993年に発売。福間さん繋がりで進んだ企画でしたが、CVには未発表音源が無かったので、納品〆切の都合で、稲見さんが歌ったとのこと。
Controlled Voltage - closed eyes view (YouTube)
しかし、『トロイの木馬』リリース記念ライヴを最後に福間さんは脱退し、1994年にP-MODELに加入となります。3人体制となったControlled Voltageの音源は、『USED UP AND EMPTY』のライヴ音源1〜3曲(「MAMBO」「GRAYOUT」「4GATSU」)、『UN OFFICIAL LIVE TAPES』の頃です。MASAさんはスタンディングではなく、座ってドラムセットで叩くようになり、スネアは生ドラム、キックとタムのみシモンズ、そしてロートタムという複雑でPAミキサー泣かせのドラムセットを、同期バンドでクリック無しで叩く女性ドラマーはなかなかいなかったとのこと。かなり、研ぎすまされたというか、逆に精神的にもキツくなっていった時期との稲見さんの弁があります。
1994年に3人体制+映像担当の野間さんから、OBIさんが加わり、4人体制に戻ります。『USED UP AND EMPTY』ライヴ音源、『LOST AND FORGOTTEN+』のCVスタジオ音源+ライヴ音源(「O.F.-2」を除く)などで、この第2期4人体制のCVとなり、1995年まで活動をしました。
2024年:一人CV再始動
稲見さんが発掘音源のリリースに加えて、一人CVとして『DIFFUSION』で再始動を果たします。
彼らの作品から、CVは関西のニューウェイヴ・シーンで異彩を放っただけでなく、90年代に現れたインダストリアル・テクノ・ハウスなどの要素を吸収しながらも、英国的耽美系のニューウェイヴとして稀有な日本のバンドだったことが感じ取れます。
興味を持っていただいた方は、CAVE Studioを訪れてみてください。