四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

カテゴリ: オランダ

アムステルダムに行くということで、紹介してもらったミュージシャン、OMFO名義で活動するGerman Popovさんの家にお邪魔しました。OMFOとは「Our Man From Odessa」の略、つまりソ連(現在のウクライナ)のオデッサ出身なのです。彼自身もスプートニクとしてソ連時代に活動していたということなので、共産テクノの生き証人でもあります。

OMFOの代表作の一つが、「Trans Balkan Express」……タイトルから想像できると思いますが、バルカンビートの「Trans Europe Express」です!

Trans Balkan Express
OMFO
Essay Recordings
2005-04-05





OMFOの作品からも共産テクノ的スペースディスコ感が窺えます。その名も「Shepherd Disco」! Atom Heartが共同プロデュースとして参加。

We Are the Shepherds
OMFO
Essay Recordings
2006-12-05





彼に戴いたオムニバス『Omnipresence』(2003年)には、OMFOに加えて、Zodiac(Зодиак)の「Zodiac」が収録されています。

Omnipresence


ソ連内の小国、ラトビアが放ったスペースディスコ・バンド、Zodiacが放ったメガヒット・アルバム『Disco Alliance』からです。Amazonで買える稀有な共産テクノ作品。

Disco Alliance
Zodiac
Gala Records
2007-11-13





拙著『共産テクノ』でもそのあたりを書いていますが、ソ連にスペースディスコ系が多いのは、やはりフランスのSpaceからの影響も多大にあったことを確認しました。

前回紹介したSPANKERSがリミックスをしていた事から偶然発見したんですが、僕の好きなセンスなので紹介します。オランダのWTF!の「Da Bop」。WTF!とは「What The Fuck!」という意味のスラングだと思われます。

Da BopDa Bop
アーティスト:Wtf
販売元:Kontor
(2012-06-12)
販売元:Amazon.co.jp


モノクロームでレトロな映像。モチーフはソ連っぽく、ロシア語で歌っています。オランダのチャートにも入った小ヒット。



これは元ネタがあって、それが渋い。1965年、ソ連時代に流行ったエディータ・ピエーハ(Эдита Пьеха)の「Наш сосед(うちのお隣さん)」という曲。ロシアでは有名な曲らしく、ロシアのおねえちゃん三人組、Fabrica(Фабрика)もカヴァーしています。



tenshinorakugaki日本では、 ダニエル・ビダル(Daniele Vidal)が1969年にカヴァーしたフレンチポップ版「天使のらくがき (Aime Ceux Qui T'aiment)」の方が知られているでしょう。日本語ヴァージョンを聴いていただきましょう。でも、歌詞はオリジナルからかけ離れた内容。

最近のオランダの話題を一つ。Perfume界隈では既に報告されていることなので、ご存じの方もいるとは思いますが、オランダねたとしては美味しいので書きます。

megacoolオランダのDoenja & Kidsのよる「Heel de wereld is van mij」という曲があります。CD+DVD盤『Mega Cool & Super Vet』に収録されており、これ自体がリリースされたのは、割と最近で2010年の5月。YouTubeにPVが公開されたのは、2009年11月。タイトルの意味は「全世界は私のものです」。その昔、The Broad Bandが「Internet Killed The Video Star」というThe Bugglesの「Video Killed The Radio Star(ラジオスターの悲劇)」をWeb上で公開していましたが、遅咲きのインタネットをテーマにした歌のようです。国名がいっぱい出てきたり、Googleじゃなくて「Googel」というのがPVに出てきたり(笑)。



歌っている人が、Doenjaさんだと思いますが、公式サイトに行くと、子供向けのエンタメ専門のような感じです。

解説する必要もないくらい、これはPerfumeの「チョコレイト・ディスコ」とサウンドが酷似しています。「これが正規のカヴァーなのかそうでないのか?」、また「それってどうなの?」と言う件については当事者にお任せしたいと思いますが、Perfumeの「チョコレイト・ディスコ」がオランダにまで影響を及ぼしたというのは面白い現象です。昔なら日本の曲が海外で認知されるのにはかなりの労力と時間がかかりました。今は、YouTubeなどで「全世界は私のもの」になるわけで・・・2 many dj'sとかがPerfumeをRadio Soulwaxにカッコよく入れてくれると嬉しいな〜と思う、今日この頃です。

MOってなんだと思われたかもしれませんが、これから説明します。80年代、オランダにニューウェイヴ・シーンが存在したのか調べてみたけど、いまいち分かりません。オランダのMecano(スペインのMecanoと同名のバンドですが、彼らの方が早かったと言っています)のメンバー、Tejo Boltenさんとやりとりした時、あったと言っていますから、あったのでしょう。

mo何故か、日本盤もリリースされているオランダのバンド、The MOというのがいます。現在、「テクノポップ対談」をしているポール・フランクさんに教えてもらったバンドなのですが、これが素晴らしくツボにハマります。The MOとしてファースト・アルバム『MO』(1981年)にBack Doorというレーベルからリリースされました。日本でも『タンゴ・ポップ』というタイトルでPolystarからリリースされました。最初、原題も「Tango Pop」だと思って、探してみましたが、何も出てこない。

The MOの『MO』というアルバムを探すのは、あまりにも語数が少なすぎて、ネットでは難題となります。タンゴ・ポップっていうタイトルですが、それほどタンゴっぽいわけでなく、たぶんバスーン奏者がいることから日本で、「じゃ、タンゴ・ポップで行きましょう」という軽いノリで決まったのだと思います。シングルとしてもリリースされた「Fred Astaire (Just A Summer Love Affair)」は、変てこなリズムなんだけど、癖になるひねくれポップ。



haha2セカンド『Ha Ha! The Sound Of Laughing(マジカル・ポップ)』(1983年)の時点では、The MOからMOになります。でも日本盤ではリンダ&MOとなります。これもたぶん、「MOだけだと、短すぎてインパクトないからリンダをつけよう」と軽いノリで、バンド名変えちゃったのでしょうか? いいのか、そんなことで? メンバーはドラムのHarm Bieger以外の3人は全て総入れ替え!

ここからはポール・フランクさんの発言を引用します。

曲を書いている人もヴォーカルも以前と違うのに、ほとんど同傾向のサウンド(歌声も近い雰囲気)とメロディーのセンス。なぜに。ファースト以上に転調ばかりのメロディー・ラインには、とにかく驚かされます。しかもポップ。特に「ADSR」(シンセ用語のAttack Decay Sustain Releaseのことでしょう)という曲や「Human Race Put On Display」という曲はすごく好きな曲。オススメです。


ひねくれポップの金字塔「ADSR」は名曲なのでぜひ聴いてほしいですが、「Cheese」(何故か邦題は「マジカル・ポップ」)も日本人好みのメロディーの胸キュン・チューン。

スペインの次はどこにしようかなぁと考えていたんですが・・・オランダ王国にしましょう。オランダは1650万人くらいの人口。以前、よくヨーロッパ渡航の際、KLMに乗っていたので、アムステルダムは何度か行った事があります。オランダってHollandと言ったり、Nederlandと言ったり、Dutchと言ったり、呼び名が多いです。Dutchと言えば、「Double Dutch」。お笑いコンビの名前にもなっていますが、Malcolm McLarenの「Double Dutch」・・・これは二人のオランダ人ではなく、二本の縄を使った縄跳びの呼び名です。



話が妙な方向にそれましたので、戻します。オランダと言えば、古くは、「Venus」(1969年)や「Never Marry Railroad Man(悲しき鉄道員)」(1970年)等の世界的ヒットで知られるThe Shocking Blueが思い浮かびます。Ladytronの『Softcore Jukebox』というDJ Mixにも「Send Me A Postcard」が収録されていました。Shocking BlueなどのバンドはNederpopと呼ばれるらしいです。この「Venus」、意外にオランダ本国では最高位3位にしかならかなったのです。しかし、アメリカ、他の多くのヨーロッパ諸国では1位になっています。日本でもオリコン2位。



オリジナルの「Venus」のリミックスとしてお薦めなのが、『Soul Source REMIXED FEVERS』(2005年)に収録の福富幸宏さんによる「Venus (Yukihiro Fukutomi Remix)」です。

ソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズ
アーティスト:オムニバス
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2005-03-02
おすすめ度:3.0
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その後、1977年にLipstiqueのディスコ系カヴァー等がありますが、再ブレイクは約17年後。そして、「Venus」は、1986年にユーロビート路線に乗っかったBananaramaによってカヴァーされ、再び大ヒットしました。これは、彼女達が初めてStock Aitken Watermanと組んだ最初の作品でした。ユーロビートの影響下にあった日本でも、長山洋子、黒沢ひろみ、荻野目洋子などが、Shocking BlueというよりもBananaramaヴァージョンの「Venus」カヴァーをしました。



オランダの話からイギリスのBananaramaの話になってしまいました。Bananaramaは、その後Siobhan Fahey抜けて、一時新メンバーが加入していた時期があります。現在もKeren Woodward、Sarah Dallinの二人で活動しています。

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