四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:オリガ・ヴァスカニヤーン

2018年11月4日、オリャことオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)について書きました。「新譜をリリースしたよ!」とオリャからVKを通じて連絡があり、彼女にショート・インタビューをしました。

olga1990

デビュー時のオリャ

—オリャ、お久しぶりです。お元気ですか?

オリャ:とても元気です。前回(2018年)お話をしてから、多くの変化がありました。

—この2、3ヶ月コロナウィルスは全世界に拡散されました。ロシアでは1日1万人を超える感染者が出た日もあったと聞いています。ロシアの現在の状況はどうですか? どのように日々過ごしているのですか?

オリャ:はい、ウィルスは、他の地域を同様にロシアでも猛威を奮っています。現在は、減少傾向が見えてきており、日々の感染者は1万人を割っています。ロシアではとても厳しい規制があります。外出は生活物資を買うためだけに限られ、マスクと手袋を着用しなくてはいけません。1週間に2回だけ外出できるパスがもらえます。違反した場合、7000円程度の罰金が課されます。オフィス、保育園、食料品店とレストラン以外のショップは休業しており、全てのコンサートやイベントは中止となりました。基本的にみんな、家にいるか、ダーチャのような郊外にいます。

olga-mask

完全武装のオリャ

—日本もまだ緊急事態宣言が本格的に解除されていませんが、ロシアの状況も良くなることを祈ります。話は変わりますが、新譜『Color Dreams』のリリースおめでとうございます! ここには、新曲、最近リリースしたシングル曲、それらの新しいリミックスなどが収録されていますね。長い沈黙の後、この2、3年、あなたはとてもアクティブに活動をしているようですが、何がその変化をもたらしたのですか?

colordreams

Color Dreams

Apple Musicでも聴けます!
Color Dreams

オリャ:はい、新譜は私にとって素晴らしい長く待ち望んだ喜びです。きっかけは、ビオ(Био)で活動することに再度誘われて、ちょうど時間があったので、了承したからです。まずは、アルバム『Automobiles (Автомобили)』を出すことをオファーしてくれました。現在は、私自身も曲を作り、アレキサンドル・ヤコフレフがアレンジをしてくれています。その結果が今回のアルバムです。

olga-live

最近のライヴ

—アルバムの中で最も気に入ったのが、「動物の魂(Звериная душа)」。とってもキュートです。歌詞の意味は分かりませんが、タイトルがとても興味深いです。何について歌ったのですか?

オリャ:その曲は、完璧なチョイスです! 気に入ってくれて嬉しいです。現在、この曲のリミックスを制作しており、まもなく、次のシングルとして「動物の魂」をリリースする予定です。この曲は、動物と植物の世界について、地球上の美しい自然のすべてについて、どれほどそれらを愛し、慈しみ、学ぶべきかついて歌いました。銀の時代(19世紀最後から20世紀初期にかけてのロシアにおける詩の黄金時代)の二つの古典的な詩から、一節を取り出し、ミックスしました。オシップ・マンデリシュターム(Осип Мандельштам)とコンスタンチン・バリモント(Константин Бальмонт)からの引用です。これらは同じテーマを持ち、うまく組み合わせられました。

—アルバムとは別に新しいミュージックビデオ「Автомобили System Eta Future Bass Remix」もリリースされていますね。あなたのデビュー曲はFuture Bassサウンドに変身し、アニメーションとしてビジュアライズされています。ロシアでは日本のアニメも人気があると聞きます。ソ連時代に日本のアニメを見るチャンスはあったのですか? 好きな日本のアニメはありますか?

automobiles-futurebass

Автомобили System Eta Future Bass Remix



オリャ:ロシアに「愛好者の狭い輪ですごく知られた」という慣用句があります。広くは知られていないけど、とても独占的な物に対して使います。多分、アニメにはこの表現が当てはまります。日本のアニメはちょうど私にとってこの状態です! 漫画、アニメ、コスプレなどこういう世界を作っていることに感銘を受けました! 人々はこう言った若者文化を気に入っているのでしょう。でも、ロシアのテレビではほとんど放映されません。素晴らしい漫画もありましたが、ごくわずかです。多くのものは完全に子供向けです。これはおかしいと思います。ホラー映画や血に飢えたファイターの支配よりもキュートな漫画やアニメを見る方がいいです。アニメはもっと幅広く受け入れられるべきです。このような状況が是正されて、System Etaのミュージックビデオの制作者がこのアニメの方向でやっていくことを真摯に望んでいます。ソ連時代、日本の漫画やアニメが紹介されることはほとんどありませんでした。唯一覚えているのは、とっても怖かった怪物の映画です。

—オリャ、ありがとう。これからの活動も楽しみにしています。あなた自身をモチーフにしたアニメを是非作ってください。

本日は、『共産テクノ 東欧編』ではなく『共産テクノ ソ連編』のお話をします。




ロシア語のFacebookとも言える通称、VK(ヴェーカー)と言われるフ コンタクテ(ВКонтакте)を共産テクノの情報収集のために数年使っています。1ヶ月ほど前、オリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)から友達申請がありました。最初は誰か分からなかったのですが、写真を見ると、見覚えがあります。ソ連版Depeche Modeとロシアン・ウィスパーの記事でも書いたアンニュイな女子(当時)です。


もう一度、彼女の名曲「Автомобили (自動車)」を貼っておきます。



すっかり忘れていたのですが、僕はVKで彼女に関するグループ(コミュニティみたいなファンの集まり)に加入していて、彼女は「私のファンなら歓迎よ」という感じで、そのグループに入っている人に申請をしていたのです。彼女に「君のことを書籍でも本ブログでも書いたよ!」と情報を送ってみると、とても喜んでくれました。

オリガは現在も活動中! 現在もお綺麗です。こちらは新しいバージョンの「自動車」のライヴです。



色々やり取りをしていると、ちょうど彼女はアルバム『Автомобили (Expanded Edition)』をリリースしたとのこと。VKでMaschina Recordsのマクシム・コンドラシオフという人にコンタクトし、PayPalで€24(送料・手数料込み)を払って、手に入れたのがこれです!

automobile


当時のオリジナル曲が5曲にリミックス曲、彼女が活動したБиоの曲を加えて、全部で18曲。オリガ・ヴァスカニヤーンのファンにとって待望かつマスト・アイテムです(笑)。

ちょっと曲が少ないですが、Bandcampでもデジタルアルバムが買えます。「ディスコ狂のソヴィエト女王(The soviet queen of disco-frenzy)」と紹介されています。

CD共にポストカードも送られてきました。『ソ連編』でも書いたオーガニック・レディこと、アルガニーチスカヤ・リェヂ(Органическая Леди)と90年代に活動したらしいディー・ブロンクスとナタリ(Ди БРОНКС и НАТАЛИ)の二組です。両者とも強力なルックスです。また、ブログでも書いてみます。

organiclady

後で説明しますが、オリガ・ヴァスカニヤーンです。
Автомобили



ソ連の共産テクノを考察していると、Kraftwerkからの影響が窺える人たちが多いですが、もう一つがDepeche Mode。ちなみにDepeche Modeのロシア語表記は、「Дереш Мод」。1986年にモスクワで結成されたビオコンストルクトル (Биоконструктор)もそんなバンドの一つ。バンド名は、「生物のデザイナー」を意味しますが、バンド名をタイトルにした曲を聞いてみれば、やっぱりDepeche Mode好きが伝わります。



ビオコンストルクトルは、ビオ(БИО)とテフノロギヤ(Технология)という二つのバンドに分裂しました。ビオだけだと、なんだかヨーグルトみたいです。テフノロギアの「Нажми на кнопку(ボタンを押す)」は、さらにDepeche Mode度がアップします。ジャケットもそうでしょ! ちなみにテフノロギアは90年代以降もロシアで人気を博しました。

Нажми на кнопку




意外なる発見は、ビオコンストルクトルの中心メンバーのたアレクサンドル・ヤコヴレフ
(Александр Яковлев)の奥さんになったオリガ・ヴァスカニヤーン(Ольга Восконьян)。彼女はビオのメンバーとしても活動しましたが、「Автомобили(自動車)」というフレンチ・ウィスパーいやロシアン・ウィスパーと呼びたいテクノポップを残しています。なんだか共産主義の終焉を感じるクリップです。

↑このページのトップヘ