四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:カヴァー曲

スペインのLa Casa Azul、ブラジルのPato Fuに続く、世界の渋谷系として、イタリアのVIP200およびVIP200のメンバーのソロ・プロジェクト、Doktor Zoilを紹介します。

日本盤もリリースされているDoktor Zoilの『RiviERA BOOGiE』(2003年)、なんとなくおしゃれなジャケ(ジャケ写はDoktor Zoilではなくモデルさんでしょう)に魅せられて買ってしまったのですが、まるでイタリアの野宮真貴がいないPizzicato Fiveというか、つまり小西康陽のようなラウンジ色が強いGroovyエレクトロポップ。同じ時期のcapsuleと併用してもいいと思います。「Besame Mucho」などのカヴァー曲もやっていますが、日本盤のみ収録の沢田研二のテクノ歌謡「TOKIO」カヴァーが意外でよし。「TOKIO」ってイタリア語だから、親近感あったのかなぁ?

リビエラ・ブギリビエラ・ブギ
アーティスト:ドクター・ゾイル
販売元:Rambling Records
(2003-12-03)
販売元:Amazon.co.jp
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「TOKIO」は、イタリアのTam Tam Recording Studioアーティストの日本企画アルバム『Re-design』(2005年)にも収録されています。おしゃれジャケですね〜。

Re-designRe-design
アーティスト:オムニバス
販売元:Rambling Records
(2005-08-03)
販売元:Amazon.co.jp
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Doktor Zoilが活動するVIP200は、『PSICOEROTICA』(2002年)でデビューしていますが、VIP200の方はラウンジミュージック(映画ムード音楽と言った方がいいかも)。Pizzicato Five好きが高じてか、VIP200としては、野宮真貴の『miss maki nomiya sings』(2000年)にアレンジで参加しています。

サイコエロティカサイコエロティカ
アーティスト:VIP 200
販売元:Rambling Records
(2002-01-23)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらは、VIP200によるモトローラの携帯電話のCM。

ファナ・モリーナの次は、同じくアルゼンチンのロリ・モリーナ(Loli Molina)ちゃん。別にロリとファナに血縁関係はありませんが、ファナがロリ・モリーナを2007年のブエノスアイレス・フォーク・フェスティバルに招待しています。ブエノスアイレスは、人口300万人を超えるアルゼンチンの首都。近郊部を含めると1300万人となる世界でもトップクラスの都市圏です。タンゴ、フォルクローレくらしか音楽的イメージがないのですが、アルゼンチン音響派以外にもきっといろいろなシーンがあるのではないかと・・・一度、訪れてみたいです。

彼女のデビュー・アルバムは、『Los Senderos Amarillos』(2008年)。

Los Senderos AmarillosLos Senderos Amarillos
アーティスト:Loli Molina
販売元:Bmg
(2008-11-24)
販売元:Amazon.co.jp
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「Hasta El Mar」などを聴いてみると、ファナと比べあくまでもアコギを主体とした歌モノとしてのポップです。それ以上に、ロリだから、ロリータ・ヴォイスとまでは言いませんが、エンジェル・ヴォイスは彼女の武器でしょう。



面白いのは、Culture Clubの「Karma Chameleon(カーマは気まぐれ)」のカヴァーを試みている事。オリジナルは、Culture Clubの最大のヒットとなり、全米1位になった唯一の曲ですが、シンプルながら原曲の良さを伝えるカヴァーです。

ハロウィンソング特集は、ほとんどコス特集となってしまいましたが、気分を変えてクリスマスソング特集をしましょう。

誰もが知る古くからのクリスマスソング「きよしこの夜」や「もろびとこぞりて」は、共に18世紀に作られた曲です。クリスマスソングは国内外問わず流行歌にも多いですが、上手くいけば、毎年のように流れる定番曲となります。商業的にという意味だけでなく、アーティスト自ら作った曲が、単に消費されず、毎年のように流れるというのは作った本人にとっても誇れる事でしょう。同時にクリスマスソングの定番になるだけの曲を作るのは至難の業です。90年代以降もクリスマスソングは発表され続けていますが、定番と呼ばれる曲の多くは80年代以前です。Mariah Careyの「恋人たちのクリスマス」(1994年)は例外的で、90年代以降の多くの曲はファン投票的に人気があるかもしれないけど、定番とまではなかなかいかないです。

クリスマスソングの定番としてまず挙げたいのが、洋楽ならWham!の「Last Christmas」(1984年)。当然、僕自身の世代感からなので、そうでない人もいるとは思いますが。当時は、第2次ブリティッシュ・インヴェイジョンと呼ばれた英国のアーティストに勢いがあった時期。そんな中、Wham!はニューウェイヴというよりも、ルックスも手伝ってホワイトソウル的アイドルでした。「Wham Rap (Enjoy what you do?)」(1982年)ではラップもしていました。

僕はこの「Last Christmas」のPVが大好きです。ドラマ仕立てになっており、ソバージュの彼女を巡る三角関係を描いています。Andrew Ridgeleyが今年の彼氏で、元彼のGeorge Michaelが去年のクリスマスに無邪気に雪合戦をしていた事を回想するという・・・哀しいラブソング。クリスマスソングに失恋や叶わぬ恋の歌が多いイメージにも一役買っています。



George Michael自身もセルフ・カヴァーしていますが、「Last Christmas」は定番と言えるだけあって、多くのカヴァー曲が存在します。アメリカン・アイドルならHillary Duff、Ashley Tisdale、Backstreet Boys、'N SYNCなど、ダンス系ならWhigfield、Yoo-Yoo、Cascada、Alcazar、The Cheetah Girlsなど、日本なら織田裕二、松田聖子、BoAやEXILEなどもカヴァーしています。

いくつか紹介しましょう。
日本で「Last Christmas」(1993年)でデビューした日米ハーフの女の子、Nadia Gifford。当時5歳ですが、これはずるい。



ドイツの着信メロのキャラ、Crazy Frogの「Last Christmas」(2006年)。



これはデビュー前だと思いますが、イギリスのエレクトロ歌姫、Little Bootsちゃんは他にもカヴァーを披露していました。



他、Darren Hayes(Savage Gardenヴァージョンもあり)、Billie Piper(スウェーデンの歌姫)、Erland Oye(Kings Of Convenience)、Volta Masters(ブレイク〜ハウス系)などがお勧めです。

スペインの次はどこにしようかなぁと考えていたんですが・・・オランダ王国にしましょう。オランダは1650万人くらいの人口。以前、よくヨーロッパ渡航の際、KLMに乗っていたので、アムステルダムは何度か行った事があります。オランダってHollandと言ったり、Nederlandと言ったり、Dutchと言ったり、呼び名が多いです。Dutchと言えば、「Double Dutch」。お笑いコンビの名前にもなっていますが、Malcolm McLarenの「Double Dutch」・・・これは二人のオランダ人ではなく、二本の縄を使った縄跳びの呼び名です。



話が妙な方向にそれましたので、戻します。オランダと言えば、古くは、「Venus」(1969年)や「Never Marry Railroad Man(悲しき鉄道員)」(1970年)等の世界的ヒットで知られるThe Shocking Blueが思い浮かびます。Ladytronの『Softcore Jukebox』というDJ Mixにも「Send Me A Postcard」が収録されていました。Shocking BlueなどのバンドはNederpopと呼ばれるらしいです。この「Venus」、意外にオランダ本国では最高位3位にしかならかなったのです。しかし、アメリカ、他の多くのヨーロッパ諸国では1位になっています。日本でもオリコン2位。



オリジナルの「Venus」のリミックスとしてお薦めなのが、『Soul Source REMIXED FEVERS』(2005年)に収録の福富幸宏さんによる「Venus (Yukihiro Fukutomi Remix)」です。

ソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズソウル・ソース・リミックスド・フィーバーズ
アーティスト:オムニバス
販売元:ビクターエンタテインメント
発売日:2005-03-02
おすすめ度:3.0
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その後、1977年にLipstiqueのディスコ系カヴァー等がありますが、再ブレイクは約17年後。そして、「Venus」は、1986年にユーロビート路線に乗っかったBananaramaによってカヴァーされ、再び大ヒットしました。これは、彼女達が初めてStock Aitken Watermanと組んだ最初の作品でした。ユーロビートの影響下にあった日本でも、長山洋子、黒沢ひろみ、荻野目洋子などが、Shocking BlueというよりもBananaramaヴァージョンの「Venus」カヴァーをしました。



オランダの話からイギリスのBananaramaの話になってしまいました。Bananaramaは、その後Siobhan Fahey抜けて、一時新メンバーが加入していた時期があります。現在もKeren Woodward、Sarah Dallinの二人で活動しています。

「恋のマカレナ」に続いて、スペイン発のフラメンコポップとして大ヒットしたのは、Las Ketchupの「Asereje」です。別名「The Ketchup Song」。フラメンコポップとユーロディスコが合わさったような妙に癖になる曲。2002年の事ですから、まだ覚えておられる人もいるでしょう。メンバーは、Lola、Pilar、Lucia、Rocio からなる4人姉妹。僕は黒髪のLuciaちゃんが好きです。お父さんは、El Tomate(ザ・トマト)の名前で知られるフラメンコギタリスト、 Juan Munoz(ファン・ムネス)。トマトの娘だから、ケチャップという事みたいです。プチトマトじゃないんですね。最小年だったRocioは、お母さんの許しが出ず、大ヒット時点では一緒に活動していませんでした。PVは複数のヴァージョンがあるようです。



ケチャップ娘がやってきた!ケチャップ娘がやってきた!
アーティスト:ラス・ケチャップ
ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル(2002-12-18)
おすすめ度:4.5
販売元:Amazon.co.jp
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タイトルの「Asereje」ってスペイン語っぽいですが、Google翻訳しても訳してくれません。歌詞にもある「Asereje ja de je de jebe tu de jebere・・・」というのは全くでたらめなスペイン語で、Sugarhill Gang の「Rapper's Delight」の歌詞がそう聞こえたという、大ヒット曲の割にはいい加減な感じがよろしいですね。「Rapper’s Delight」は初のラップ・シングルとされる有名曲で、あまりヒップホップに詳しくない人でも聴き覚えがあるかもしれません。Chicの「Good Times」のベースラインのフレーズが引用されており、同じく引用したと思われるBlondieの「Rapture」にも共通するものがあります。

この手の大ヒット曲は必ずと言っていいほど、日本では便乗組が出ます。期待を裏切らないですね~。ネーミングもスペイン語っぽくSOLTOMATINAが「フリフリ!~魔法のケチャップダンス~」というカヴァーをしています。Las Ketchupがいなかったら現れなかったユニットです。「スタコラサッサー」って歌うところが素敵(笑)。日本には珍しいラテン系アイドルユニットのBon Bon Blancoがカヴァーしてもよかったと思うんだけどな~。



フリフリ!~魔法のケチャップダンス~ (CCCD)フリフリ!~魔法のケチャップダンス~ (CCCD)
アーティスト:SOLTOMATINA
ソニーレコード(2003-01-22)
販売元:Amazon.co.jp
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前回に引き続き、イタロディスコ特集。でも、今回は地下系ではありません。日本でも80年代中盤からのユーロビート・ブームの中、イタリアものも多く紹介されました。同時にユーロビートの日本語カヴァーも含めたJ-EURO(ユーロ歌謡、和製ユーロ)も登場しました。ユーロビート=イタロディスコではありませんが、後期イタロディスコの多くはユーロビートに入れてしまっていいと思われる状況を作っていました。実際、ユーロビートはヨーロッパだけでなく、アメリカ産のユーロビートなどもあって、ややこしい。

では、ここでイタロディスコ系(イタリア産ユーロビートと言った方が適切かも)の日本語カヴァーを本家と共に紹介しましょう。

イタリアのユーロビートの代表選手と言えば、Michael Fortunati。彼の代表曲「Give Me Up」(1986年)は今聴いてもバブリーな気分になります。マハラジャ、お立ち台、ボディコンに代表されるバブル景気というのは、バブル崩壊後に一般に認知された用語ですが、概ね、1986年から1991年頃までを指します。Michaelには当時のバブルに沸く日本がどのように映っていたのでしょうね。ちなみにジュリアナはバブル崩壊後。意外な事に彼が売れ始めたのは、イタリアではなくベルギーなんです。そして、日本での人気が突出したBIG IN JAPANの一人とも言えましょう。PVでは、やはりトレードマークのショルキーが出てきます。



「Give Me Up」は複数のシンガーによってカヴァーされていますが、Michaelの翌年に近藤智子と二階堂ゆかりから成るBaBeのカヴァーが一番有名でしょう。彼女達は、この曲のカヴァーでデビューを果たし、「夜のヒットスタジオDX」でMichaelと共演も果たしました。



現在も現役で活動するMichaelですが、2010年1月18日には「SMAP×SMAP」に出演し、「Give Me Up」を共に熱唱。日本での全国ツアーもやっているようです。

GIVE ME UP-COMPLETE BEST OF MICHAEL FORTUNATI-GIVE ME UP-COMPLETE BEST OF MICHAEL FORTUNATI-
アーティスト:マイケル・フォーチュナティ
Independent Label Council Japan(IND/DAS)(M)(2008-04-02)
販売元:Amazon.co.jp
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KeaneというUKのスリーピース・バンドをご存知でしょうか? 『Hopes And Fears』 (2004年)、『Under the Iron Sea』(2006年)、『Perfect Symmetry』(2008年)という3枚のアルバムをリリースし、全てのアルバムが全英1位を成し遂げています。彼らのデビュー・シングル「Somewhere Only We Know」は、ピアノを基調にしたUKバンドらしい泣きも入ったメロディアスな曲。音楽雑誌なら、『CROSSBEAT』や『snoozer』とかに出てくるバンドです。



thenighttrainそんな彼らが、4枚目としてリリースしたのが、8曲入りミニアルバム『The Night Train』。またもや、全米1位。何故僕がそんな事を書いているか? YMOの「以心電信」をカヴァーしたからです。しかも、日本のバイレクトロの先駆者的存在、TIGARAHをフィーチャリングして! カヴァーはメインのソングライターのTom Champlinのアイデアですが、リードヴォーカルのTim Rice-Oxleyが「以心電信」に関してインタヴューに答えています。




日本人がKeaneのような大物バンドのヴォーカルとして起用されるのは、素直に嬉しいですね。慶応出身の才女、TIGARAH(虎という意味らしい)は、バイレファンキの本場、ブラジルに2003年単身で乗り込み、その後、L.A.でも活動を経てデビュー。MySpaceのインタヴューでは、「和製M.I.A.と呼ばれていたけど、最近は和製Lady Gagaと呼ばれるの・・・」と流暢な英語でインタヴューに応えていました。おおお、和製Lady Gagaをマジで目指してほしいものです。

tigarah2009年の4月にミニアルバム『TIGARAH!』をリリース。1曲目の「Space Travel」は、New Orderの「Blue Monday」ネタでニタリとします。同曲のリミックス曲「Space Travel RMX」はDoes It Offend You, Yeah? というバンドの Morgan Quaintance のDaft Punk風リミックス。ミニアルバムの曲は、「Supa Gurl RMX」を除いてヴァージョン違いもありますが、フルアルバムに収録されています。これだけでミニアルバムに価値が出ています。




thefunkeira続いて8月にフルアルバム『The Funkeira goes BANG!』というなかなか早いペース。やはり一押しは、闘う女に相応しい「Girl Fight」でしょう。女子プロレスのリング入場曲に誰か使ってください。『ジョジョの奇妙な冒険ストーンオーシャン』が映画化されたりしたら、主題歌にも使えそう。


話をKeaneに戻しましょう。『The Night Train』 というアルバムは、「以心電信」が入っているから買ったというのが本音ですが、僕が持っているKeaneのイメージを遥かに凌駕するものでした。「以心電信」の英語ヴォーカル部分はTim、日本語部分はTIGARAH。TIGARHAの歌唱は彼女のソロと比べると意図的にフラットです。テクノポップ的な部分も残しつつ、Keaneサウンドに上手く仕上げています。他の曲も、彼らの今の気分なのか、エレクトロやヒップホップ的な要素も取り混ぜて、いい意味で折衷的な哀愁のUKロックが楽しめます。7曲目「My Shadow」のイントロがどうしても「ロッキーのテーマ」に聴こえます(笑)。

ザ・ナイト・トレイン-夜行列車-ザ・ナイト・トレイン-夜行列車-
アーティスト:キーン
販売元:ユニバーサル インターナショナル
発売日:2010-05-12
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TIGARAH!TIGARAH!
アーティスト:TIGARAH
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発売日:2009-04-10
おすすめ度:4.0
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The Funkeira goes BANG!The Funkeira goes BANG!
アーティスト:TIGARAH
販売元:ユニバーサル・シグマ
発売日:2009-08-05
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