四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:スポーツテクノ

昨日は「ソ連カルチャーカルチャー6〜共産テクノとソ連戦車とおそロシ庵!」に出演しました。ご来場していてただいた方々、大変ありがとうございました。会場は満員御礼となり、Twitterトレンド入りもして、こんなニッチなテーマでも話題になるんだなぁと感心してしまいました。また、お喋りした方の中には、DOMMUNEや荻上チキ・セッション22で共産テクノ特集を聴いていただいたと言ってくださった方もいて、とても嬉しかったです。今回は、開演前と終演後のBGMも共産テクノ縛りで選曲させていただきました。

テーマは、「スペースディスコ」と「スポーツテクノ」でしたが、オープニングに使ったのは、「Плюс электрификация(電化を進めよ)」という1972年のソ連アニメです。
共産主義とはソビエト権力に全国的電化を加えたものである
というレーニンの言葉を引用でフィナーレを飾ります。プロパガンダの目的で作られたものですが、電化政策と電子楽器は初期のソ連では結びついており、そこで描かれる近未来の世界は共産テクノにも通じるものがあるから、選びました。すでに歴史が証明しているように、別に、共産主義を礼賛する意図はありません。



こちらの動画は、僕が確認した限りにおいて最も初期となるソ連製スペースディスコです。でも、誰が作った何という曲かが不明です。1978年という情報が正しければ、フランスのSpaceやアメリカのMecoの翌年となり比較的早くブームはソ連に伝播したと言えます。



会場から反響があったのが、アルゼンチンからのスペースディスコの継承者、El Club de la Computadora(コンピュータ・クラブ)です。ちょうど、当日の朝、メンバーのNicolas MarinoとFacundo BarreraからFacebookでコンタクトがあり、この話をしたらとても喜んでくれました。みなさん、アルゼンチンのスポーツテクノを応援してください!

El Club de la Computadora


元国営レーベルも認めたアルゼンチンよりスポーツテクノの継承者現る!

なお、「ソ連カルカル6」の様子はTogetterでまとめられています。

現在のベラルーシは、僕が世界地理を勉強していた頃はソ連内の白ロシアとして習いました。ヴェラスィ(Верасы)は、白ロシアを代表する、ヴィア(ВИА)と呼ばれる歌謡楽団。彼らは80年代初期にディスコ歌謡的な方向に行きましたが、1987年に発表された『Музыка для всех(すべてのための音楽)』が変な作品なのです。アコギと写ったジャケを見る限り、到底共産テクノには見えません。15曲入りのこのアルバム、9曲まではごく普通のヴィア的な内容。しかし、残りが突然変異を起こしています。まるで反乱のようです。

Музыка для всех


11曲目の「Полет(飛行)」は、テクノポップと言っても遜色がありません。



続く、「Аэробика(エアロビクス)」では、共産テクノのサブジャンルとも呼べるスポーツテクノとなっています。



こういう意外かつ健気な努力を見つけると、嬉しいものです。

ソ連ではスペースディスコ系バンドが多いですが、ウクライナにもいます。彼らの名は、ディスプレイ(Дисплей)。スペースディスコとロックが折衷のようなサウンドで、バンド形態でしたが、最後は夫婦にのみが残りました。

彼らの「Робот - суперчеловек(ロボット=スーパーマン)」をソ連初のテクノポップと呼ぶ人もいます。デビュー・アルバム『Волна перемен(変化の波)』に収録されているのが、これです。コンセプトもKraftwerk然としたロボ声もテクノポップと呼んでもいいでしょう。しかし、この作品は1985年なので、ソ連初というのはちょっと言い過ぎかなと。しかし、よく調べてみると、この曲は1982年にAPCという名前だった頃、演奏されていたのです(VKで聴けます)。ただ、この時点のアレンジは、テクノポップというよりもディスコポップ。

Волна перемен




2枚目の『Дисплей(ディスプレイ)』からの「Динамо(ディナモ)」は、ウクライナのサッカーチーム、FCディナモ・キエフのアンセムソングです。それほどテクノではないですが、ちょっとレゲエっぽいリズム。

Дисплей




サッカーもスポーツ、そしてエアロビクスもソ連では重要な体力増強のためのスポーツでした。ディスプレイはエアロビクスのためのスポーツテクノも手がけていますが、これはまた今度、特集します。

先ずは、このジャケットを見て欲しい。これぞ、スポーツテクノ!

Pulse 4


アルゼンチンのEl Club de la Computadora(コンピュータ・クラブ)による『Pulse 4』というアルバム。2014年にリリースされ、Bandcampでなんとフリーダウンロードできます



モスクワで取材できたアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)のお二人が、スポーツテクノの元祖です。

共産主婦はスポーツテクノでエアロビクス!

この「スポーツ&ミュージック」シリーズが好きすぎると思われる人たち(Nicolas Marino, Facundo Barrera & Luciana Sayanes)による謎のプロジェクトです。オマージュ具合が凄まじい。

ソ連の元国営レーベル、メロディヤ(Мелодия)は現在も存在していますが、Facebookではメロディヤ自身によって、今までの「スポーツ&ミュージック」シリーズに加え、この『Pulse 4』が並べられています。

Sports & Music


是非、今後もスポーツテクノを極めて欲しいものです。

昨晩は、DOMMUNEで『共産テクノ』5時間SPを濱崎さん、大島さんと3人でいたしました。たくさんの方々に見ていただいたようで、Togetterにてツイートがまとめてあります(濱崎さん、ありがとう!)。

昨日も紹介しましたスポーツテクノについて書きます。『共産テクノ ソ連編』のための取材目的で昨年の夏、モスクワを訪問しました。そして、スポーツテクノの先駆者となったアンドレイ・ラジオノフ&ボリス・チハミロフ(Андрей Родионов и Борис Тихомиров)に会うことができたのが一番の収穫でした。日本からの訪問者を快く迎えてくれた本当にお二人には感謝をしたいです。

この二人がチームを組むことになったのが、『Ритмическая гимнастика (リズミック体操)』(1984 年)。エアロビクスのことです。アンドレイ曰く、「ほとんどのソ連の女性達はテレビのそばでジャンプしていました(笑)。」

Ритмическая гимнастика




その後も二人はスポーツを大義に、「Спорт и музыка(スポーツと音楽)」シリーズとして、『Пульс 1 Музыкальный компьютер(パルス1 コンピュータ・ミュージック)』(1985 年)と僕が勝手に「スポーツテクノ」と呼んでいるジャンルを開拓します(その後も別のアーティストにより計4作品がリリースされました)。ソ連という制約のある環境の中で生まれた発明です。クリエイティビティは制限から生まれる好例です。「電子めざまし時計」はピコピコ感満載で、ジャケも一周回ってかっこいい。

Пульс 1 Музыкальный компьютер




彼らは、PCを使った音楽の先駆者でもあります。今で言う所のDTM! Yahama MSXを使った『512 KB コンピュータ音楽』も大ヒット!


512 Кбайт - Компьютерная музыка




彼らのインタヴューから、当時のソ連の音楽事情、特に国営レーベルでリリースすることとはどんなことなのかが読み取れます。

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