四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:タイ山岳民族

タイの六大山岳民族には入っていませんが、結構見かけたのはパロン族(Palaung)。パラウン族と表記されることもあります。タイには約17,000人在住していますが、多くは、ミャンマーのシャン州、中国の雲南省におり、一時は、ミャンマーにタウンペン王国を築いたという話もあります。パロンはビルマ語由来で、中国ではドアン族(昂族)と呼ばれています。アジア全体で30万人くらいの人口。

言語は、オーストロアジア語族の中のモン・クメール語派となるパロン語で、語族的に他の山岳民族と離れています。
ありがとうございます=ロオッ・ミー

最初にパロン族に会ったのは、チェンマイ郊外メーリムのエレファントキャンプ。そこで。僕はガイドさんにタイ人を見つけて、美人リサーチのためのインタヴューをしていたのですが、偶然食堂で働いていた女の子(19歳)がパロン族だと。ちょっと、Perfumeのあ〜ちゃんに似ていました。

エレファントキャンプで会ったパロン族の女子
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同じメーリムの首長族の村に行った際も、子供連れのパロン族に会いました。彼女も割と日本人にもいそうな顔立ちです。

メーリムの首長族の村にいたパロン族の母娘
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ガイドさんがわざわざ探してくれたチェンダオのパロン族の村にも、車で場所を尋ねながら到着しました。以前は他の民族も住んでいた区域のようですが、現在はパロン族だけの集落になったようです。

チェンダオのパロン族の村
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衣装の特徴は、赤がベースになったストライプ模様のロンジー。シンプルですが、なかなか味わいのあるパターンです。

チェンダオのパロン族の村にいた女性たち
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あまり観光客が来ることもないような村なのですが、高床式の住居でおしゃべりをしていると、おばあちゃんがおもむろにプラスチックの袋から数点のお土産物を見せてくれました。ロンジーにも使われている生地で作られたおばあちゃんが手縫いしたバッグとペットボトル入れ(2つ)、スカーフ2点を300バーツ(約900円)で購入。

チェンダオのパロン族の村の家族
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こちらはミャンマーの映像ですが、パロン族の歌。



ミャンマーから脱出してタイ北部にやって来たパロン族について書かれた本。

The Palaung in Northern ThailandThe Palaung in Northern Thailand
著者:Michael C. Howard
販売元:Silkworm Books
(2002-03)
販売元:Amazon.co.jp

カレン族は、山岳民族全体の約半分を占めています(チェンライ山岳民族博物館のビデオによる)。タイには44万人くらい住んでいて、民族問題を抱えるミャンマーでは350万人くらいいます。ミャンマーに関する本も結構読みましたが、カレン族は頻繁に登場します。

同時にタイの山岳民族の中でもツーリズム的に重要な存在。

日本のテレビでもよく紹介しているのは、首長族としても知られるカレン族の支族の支族である3万人程度いるパダウン族。「パダウン」は「長い首」という意味。ツーリスト向けの村では、他の民族がどうせパダウン族のところでお土産を買うんでしょとちょっと妬まれる存在。この首輪で首が長くなる訳ではなく、肩が下がるだけです。超なで肩と行った方がいいでしょう。また、首輪は2、3年に一度、その道の専門家が取り替えてくれます(二つ目の写真では広がった首輪を僕が持っています)。

メーリムの首長族の村にいたパダウン族
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タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性と首輪
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リングをしていないパダウン族と思われる女性に「どうして首輪をしていないの?」と訊いてみると、「妊娠してから嫌になってやめた」と言っていました。

メーリムの首長族の村
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メーリムの首長族の村にいた子供たち(たぶんパダウン族)
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タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性たち
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ちなみに男性はリングをしておらず、カラフルなチョッキがトレードマーク。柄はPaul Smithのような現代風から伝統柄まであるそうです。

タートンの首長族の村にいたパダウン族の男性
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また、カヨー族もリングを装飾に使いますが、耳たぶの特大ピアスとひざ下・足首に使っています。ちなみに未婚の女性は基本白のトップスのようですが、子供の場合その限りではないのかと。

メーリムの首長族の村にいたカヨー族
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タートンの首長族の村にいたカヨー族
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エレファントキャンプの象使いの男性たちは、みんなカレン族(どの支族か知りません)。

エレファントキャンプの象使い
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全ての支族を収録した訳ではないですが、民族は以下のように分類されます。
赤カレン族=カレニー族(Karenni)
  > パダウン族(Padaung)=首長族=カヤン族(Kayan)[自称]
> カヨー族(Kayaw)=ブエ族(Bwe)=耳長族
白カレン族(White Karen)
> スゴー族(Sgaw)*
> ポー族(Pwo)*
*白カレン族に入れない研究者もいる
- 黒カレン族(Black Karen)

どうして首をあそこまで長くするのか? これには諸説あります。古い資料ですが、『世界の民族11(東南アジア大陸部)』(1979年、平凡社)によると・・・
(1) 首の長くした後、首輪を外すと自分で支えられなくなる。もし、女性が不貞を行った場合、首輪を外す事によって罰則的効果を生み出すという説。よって首輪は貞操の象徴。
(2) 首輪は装飾的意味合いもあるが、そして富と地位の象徴となる。首輪をつけた女性は高く評価される。
(3) パダウン族の発祥地には虎が多かった。女性を虎から守るため、虎に首を噛まれないように防具としてつけるようになった。
他にも、他の民族に奇異に見せる事によって、女性の略奪を防ぐなどがあります。

(1)については、首輪を長くしていて外している女性もおり、医学的にも肩が下がっているだけなので、罰則的効果については、僕は疑問です。また、とても長いのはかなりのお年の人だから、その心配もあまりないのでは? 貞操の象徴的意味はあるかもしれませんが・・・

(3)はなんだか物語的な後付け感がありますね。

同時に、首を長くする事が、現時点では自分たちの観光収入源となっている事も確かなので、由来ではないにしろ、今やっている理由としてはあるでしょう。

習慣としてして出来上がったものの理由の解明は難しいですが・・・今回現地で何度も彼女たちを見ていて、感じた事ががあります。首が長く見える首輪というのは、とても過剰な装飾で、その民族でない人には、最初は奇妙に見えるのかもしれません。基本、人間は、人間としての共通の美意識を共有しつつ、見慣れないものには抵抗を感じます。しかし、何度も見ているうちに、仲間(族)意識をもって文化的価値観な共有をしていく事で、それが美しいという感覚に変わるのではないかと。例えば、紫の服を来たパダウン族の女性、元々美人ですが、何度も見ていると、長く見える首となで肩は美の自己主張ではないかと感じるようになりました。

タートンの首長族の村にいたパダウン族の女性
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パンクスやゴス系のファッション・髪型なども現代における過剰の美学なのかと。

National Geographicのパダウン族に関する動画



エコツーリズムの民族誌―北タイ山地民カレンの生活世界エコツーリズムの民族誌―北タイ山地民カレンの生活世界
著者:須永和博
販売元:春風社
(2012-10-29)
販売元:Amazon.co.jp


「遺された者こそ喰らえ」とトォン師は言った: タイ山岳民族カレンの村で「遺された者こそ喰らえ」とトォン師は言った: タイ山岳民族カレンの村で
著者:吉田 清
販売元:晶文社
(2012-04-06)
販売元:Amazon.co.jp

リス族(傈僳族)は中国の雲南省から四川省にも住む少数民族ですが、タイにも38,000人程度おり、中国、ミャンマー、インド北部も合わせると120万人くらいはいると思われます。リスとは高貴な人という意味。リス族は、山岳民族の中でも清潔好きで、美男美女が多い事で知られています。なんだか名前も衣装も可愛くて、親近感が湧きます。

リス族は、中国・チベット語族のチベット・ビルマ語族のリス語を話します。ラフ族のラフ語に最も近いとのこと。
こんにちは=ア・コエ・チャ
ありがとう=ブー・ムー・ショー(良い響き)

リス族の村に訪れた際、村にはほとんど人がいませんでした。もともとアニミズムを信仰していた人たちですが、村にはキリスト教の教会がありました。

メーサロンのリス族村の教会
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赤と緑のクリスマスを思わせる飾り付けもされています。

メーサロンのリス族村
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やっぱり、辛いものが好きなのでしょう、唐辛子が干されています。

メーサロンのリス族村
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大人の艶やかな衣装を来たリス族に会えなかったのが残念ですが、アカ族の市場にリス族の子供たちが、アームバンドやバッグを行商に来ていました。僕は赤いリスっぽいアームバンドを20バーツ(60円)購入。別の子たちが来て、「僕はもう買ったよ」というと、「私のはまだ買っていない!」となかなかの商売人。リス族のトレードマークの飾り紐いっぱいの平べったい帽子は、子供が冠っても超カワイイ! 将来イケメンになりそうな男の子の衣装もオシャレー。リス族の過剰ファッション、きゃりーぱみゅぱみゅの原型を感じます。

メーサロンの市場で行商をするリス族の子供たち
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タイのリス族についてうまくまとめられた動画を見つけたので、貼っておきます。

ラフ族(拉祜族)は、タイ人はムソー族とも呼ぶようです。どうしても英語のRoughを連想してしまいがちですが、Lahuです。タイにいるのは、約10万人で、中国、ミャンマー、ラオス、ベトナムにもラフ族はおり、全体で70万人くらい。

ラフ語は、アカ語、リス語と同じくチベット・ビルマ語族。アカ族やリス族も含めた共通語としての役割もはたしてきました。
こんにちは=チェ・シャア・ラ
ありがとう=オ・ボ・ウジャー

ラフ族はいくつかの支族に分かれます。赤ラフ族、黒ラフ族、黄ラフ族、白ラフ族、シェレラフ族など・・・支族分裂を繰り返し、もっといるという記述もあります。それらは衣装から判断がつく場合もあるようですが、服装の近代化にともない必ずしもその判別は容易ではありません。メーリムの首長族の村では、 袖口やスカートの裾が赤色の 伝統的衣装をまとった赤ラフ族と思われる女性がいました。じゃ、「他の色の支族は?」と言われると、分かりません。今回訪れたラフ族の市場や村落でも、ほとんど伝統的衣装は見かけませんでしたから。おばあちゃんのズボンは赤ラフっぽいですけど。

メーリムの首長族の村のラフ族
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メーカチャンのラフ族の市場にいた少女
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タートンのラフ族の村のおばあちゃん 
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タートンの赤ラフ族の村には学校があり、幼稚園から小学生と思われる子供たちが勉強に励んでいました。先生は、33人の生徒がいると説明してくれましたが、二人の男の子は教室から抜け出し、無邪気にフリーダムを満喫し遊んでいました。他の民族もそうでしたが、普通の子供たち(行商やツーリスト村でないという意味)は民族衣装ではなく、普通の格好。ここの学校がそうだかはわかりませんが、ガイドさんによれば金曜日は民族衣装の日となっている学校があるとのこと。

タートンのラフ族の村
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タートンのラフ族の村の学校
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タートンのラフ族の村の学校
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タートンのラフ族の子供
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タートンのラフ族の村の学校の商店
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もっといろんなラフ族の衣装が見たかったです。検索していると、タイのメーサイで新年のお祝いをするラフ族のホカホカの映像が見つかりました。やはり、ハレの日だけあって、民族衣装がほとんど。



こちらは、ラフ族の歌(Lahu Song)で検索すると、かなりのカラオケ映像のようなものが出てきます。と言っても、女の子がちゃんと歌っているんですけど。これを見ながら、女の子と歌うのでしょうか? 1分38秒くらいでアップになるバックダンサー女子が可愛いです。しかし、地名らしい名前(Mong Hsat)は、ミャンマーのシャン州ですね。まぁ、山岳民族には国境という観念は希薄だということでお許しください。



ラフ族の昔話―ビルマ山地少数民族の神話・伝説 (叢書 知られざるアジアの言語文化)ラフ族の昔話―ビルマ山地少数民族の神話・伝説 (叢書 知られざるアジアの言語文化)
著者:チャレ
販売元:雄山閣
(2008-04)
販売元:Amazon.co.jp

モン族は、Hmongと綴り、Monでは別のクメール系のモン族(ミャンマー、タイに在住)になるので注意しましょう。混同をさけるためにフモン族と表記されることもあります。タイではメオ族と呼ばれることもありますが、蔑称的意味合いもあるようです。たぶん、ミャオ族(語感からもメオ族に近い)は漢民族が使う呼び名で、中国では苗族と書き、中国の雲南省あたりからタイへ流入。また、モン族はミャオ族の支系とされています。タイには約15万人に住んでいますが、アジア(中国、ベトナム、ラオス、タイなど)に1000万人くらい住んでおり(統計によって差があります)、少数民族とは呼べないレベルの人口。 また、アメリカ、フランスなどに移住したモン族もいます。

モン族の話すモン語(ミャオ語)は、前回紹介したヤオ族が話すミェン語(ヤオ語)と同じ、中国・チベット語族の中のミャオ・ヤオ語族となります。民族的には語族からも近いのでしょうが、全然違う言葉にみえます。
こんにちは=ニャー・ドゥジョング
ありがとう=ウォアジャオ

僕がチェンコンのモン族の村を訪れた時は、ちょうどクリスマスイブ。子供たちが、楽しそうにプレゼントのラッピングをしていました。

チェンコンのモン族の村(クリスマスプレゼントのラッピング)
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モン族はもともとアニミズムを信仰する民族ですが(玄関の飾りもその辺りから来るのでしょうかね)、キリスト教に改宗している人たちも多いようです。同時にヤオ族と同じく、中国的なものも感じました。

チェンコンのモン族の村(カトリック系施設)
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チェンコンのモン族の村(トウモロコシの飾り)
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ちょうど、モン族の渋いおじいさんが焼酎のようなお酒を瓶詰めしていて、少し飲ませてもらいました。土間にはたき火で鍋ですが、パラボラアンテナが混在し、新旧のミックススタイル。

チェンコンのモン族の村(焼酎をびん詰め)
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チェンコンのモン族の村(土間)
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チェンコンのモン族の村(パラボラアンテナ)
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チェンコンのモン族の村(子供たち)
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チェンコンのモン族の村(黒豚)
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チェンコンのモン族の村(歩いていた親子らしい二人)
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ちょうど、村の近くに自動車による移動式市場が来ており、観光客ではなく、村人たちが集まっていました。衣装がメインで、モン族によく見る丸いアップリケも単品で売っていました。特に派手系の民族衣装に当てはまると思われますが、伝統的な染め物を化繊の布地で代用した既製品が販売されています。民族衣装のユニクロ化? モン族デザインをあしらったジャージとかどうでしょう? 衣装によって、白モン族と青モン族に分かれるようですが、この辺りは今後の課題という事で。

チェンコンのモン族の移動市場
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チェンコンのモン族の移動市場
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チェンダオのモン族の市場
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チェンダオのモン族の市場
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実際に同じようなのを着ている人は見なかったのですが、モン族の衣装もなかなか艶やかです。こちらは2012年のMountain Lifestyle Showでのミス・モン族・タイランドの美女たちの踊りです。これ、見たーい!



アカ族にもありました、モン族もサイトがあります。
HMONGTHAILAND.COM

アカ族に続いてはヤオ族です。ヤオ族(中国では瑶族と表記)は、「人」という意味の自称ミェン族(Iu Mien)ですが、タイではヤオ族が一般的みたいです。中国雲南省あたりからタイへ流入。アジア全体(中国、ベトナム、ラオス、タイ)で、約310万人とされ、その多くは中国に住むが、タイには約44,000人が居住。

ミェン語(ヤオ語の方言とする場合もある)は、中国・チベット語族の中のミャオ・ヤオ語族で、モン族の話すミャオ語とは同じ語族に入る。
ありがとう=レン・チング
「こんにちは」と同義の言葉はないようですが、「ミン・ハイ・タイ」(どこへ行くの?)が挨拶代わりの言葉

ヤオ族を見たのは、観光客向けのチェンマイ近辺のメーリムの山岳民族村とメーサロンの山岳地帯のヤオ族の村。村の家屋は土間式で、玄関には果実が飾り付けられて、中国語で「合家平安」と「家内安全」のような張り紙がある所からも、中国文化や道教の影響が伺えます。同時に精霊を信じるアニミズムが彼ら古来の信仰。他の民族の集落でもよく見ますが、パラボラアンテナが設置されていたりもします。

メーサロンのヤオ族の村(合家平安)
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メーサロンのヤオ族の村(干し肉)
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メーサロンのヤオ族の村
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ヤオ族にはその衣装からいくつかの支族に別れるようですが、タイにいるのは一支族。メーリムの山岳民族村にいたヤオ族はターバンのような布(ンゴンペオ)を巻き、赤い襟巻き(ルイクワン)、そして美しい刺繍の入ったもんぺ(スカートの場合もあり)という華麗な装い。ちなみにチェンライの山岳民族美人コンテストでは、ヤオ族はよく優勝するらしいです。中国のヤオ族は必ずしも襟巻きをしていないので、タイに来た支族の衣装なのでしょう。 写真の女性は、 モンゴロイド系の顔立ちですが、しかし、カラーコンタクトをしている訳でもないのに瞳が亜麻色(かなり薄い茶色)でエキゾチック美人でした。彼女には、中央アジアのコーカソイド系の血も流れているのでしょうか?

メーリムのヤオ族
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メーリムのヤオ族(もんぺ)
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ヤオ族の村では、お年寄りはターバンのようなものを冠っていましたが、普段着でした。次は、雲南省のヤオ族にも会ってみたいです。

メーサロンのヤオ族の村の人たち
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メーサロンのヤオ族の村のおばあちゃん
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これは、ヤオ族(ミェン族)の女性が伝統的な民謡を歌うクリップ。なんだかおばさんは照れていて、かわいい。



こんな本もあります。

ヤオ族の刺しゅう 文様に込められた祈りと移住の物語ヤオ族の刺しゅう 文様に込められた祈りと移住の物語
著者:訳者:坂口 里香
販売元:文芸社
(2011-02-15)
販売元:Amazon.co.jp

アカ族はタイに約25,000人いるとされますが、アジア(中国、ミャンマー、ラオス、ベトナム、タイ)では約45,000人。タイだけで約65,000人という統計もあり、この辺の数字は出典によってかなり変わりますので、あくまでも参考程度に。アカ族は、他の山岳民族と同じく、中国雲南省周辺からタイへ流入、ハニ族(中国では哈尼族と表記)と近縁であるとされていますが、アカ族自身は自らのアイデンティティを重んじているため、彼らは自らをハニ族とは考えていないでしょう。ハニ族全体としては約150万人と結構多い。

アカ族の言語は、中国・チベット語族の中のチベット・ビルマ語族のアカ語。
こんにちは=ガラ・ハドヨウ・ドムンニャ
ありがとう=グー・ロン・フーライマァル

アカ族は、タイ北部山岳地帯の集落、その近辺の市場、観光客向けのチェンマイ近辺のメーリムの山岳民族村にいますが、チェンマイのナイトバザールやミャンマー国境の街、タチレクでも土産物売りをしているのを見かけました。

メーリムの首長族の村のアカ族
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ミャンマー(タチレク)のアカ族
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アカ族の村の入り口は、写真にある彼らのアニミズムから来る日本の鳥居のような形の精霊の門(ロッコン)に守られています。

アカ族の村(精霊の門)
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残念ながら、彼らの村に夕方頃行った時は、ほとんどのアカ族はクリスマスのためか(多くはキリスト教に改宗)出払っていて、写真に映っている一人の女性だけしかいませんでした。家屋は高床式。

アカ族の村
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黒を基調とした衣装をまとい、銀色のアクセサリーでいっぱいの帽子がトレードマークとなっており、過剰の美学を追求するヘッドドレス。膝が少し出るくらいのミニスカートにぴったりのコーディネートのゲートルでオシャレにきめています。その帽子から判別できるアカ族の支族は以下となります。

アカ族の村にいたアカ族のゲートル
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ウロ・アカ族(Ulo Akha):ウロ=羽が付いたとんがり帽子
ロミ・アカ族(Loimi Akha):ロミ=銀の玉などで装飾された丸い兜のような帽子
パーミー・アカ族(Pamee Akha):銀の玉などで装飾された台形の兜のような帽子 

写真に写っているのは、ロミ系でしょう。他のアカ族も見たかったです。顔立ちは比較的目鼻立ちがはっきりしています。 しかしながら、僕が訪れたアカ族の市場では、フル装備の衣装のアカ族は居らず、普段着で布地を頭に巻いていました。

アカ族の市場
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アカ族の市場
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アカ族の市場
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アカ族の市場
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アカ族は年に2回、新年のお祭りを行い、ブランコ祭などという楽しそうなイベントもあるようで、一度それを狙って訪れたいものです。

一応、音楽ブログなので、最後にタイのアカ族の歌を聴いてください。チェンマイで買った山岳民族のCDの歌とは全然違うタイ歌謡みたいなアカ歌謡・・・



アカ族の音楽サイト

普段は音楽世界旅行として世界の音楽を紹介していますが、番外編として「民族世界旅行〜タイの山岳民族編」をしばらくやります。

2012年12月20日から僕は、タイ北部へと一週間ほど行ってきました。約1年をかけて進行中の美人リサーチ・プロジェクトのためでもあるのですが、かねてから山岳民族の村を訪ねたかったのです。若い頃、外国と言えば欧米のような意識が僕にもありましたが、僕の興味は辺境の地や旧共産圏を含めたそれ以外の国々へと変わってきました。現在、世界の国の数は195カ国ですが、民族の数で言えばもっとあります。民族の定義でその数は変わりますが、3,000を超える民族が世界には存在すると言われています。

少数民族、先住民族、山岳民族・・・僕は民族学の権威でもなんでもなく、また現地にとけ込んだ訳でもなく、ひとときのエキゾチズムに浸るため民族観光をしただけです。でも、各民族がもつ伝統、風習、音楽、ファッションを含めた文化を感じ取って、根気よく情報を整理していこうと考えています。

今回訪れたタイには六大山岳民族として、カレン族、モン族、アカ族、ラフ族、ヤオ族、リス族がいます。他にも、今回、村を訪れることの出来たパロン族や狩猟系超少数民族として知られるムラブリ族のような山岳民族もいます。 また、その中には支族もあったり、名称もまちまちだったり、呼称の元となる言語で変わったり、ややこしい。少数民族に限った事ではありませんが、自称と他称は同一とは限らないです。日本に昔から住む民族も、古くは倭人そして大和民族、日本民族、日本人(厳密には民族としての呼称ではない)などの呼称があり、外国ではそれぞれの言語でジャパニーズ、イポーンスキ、イープンなど微妙に変化します。

タイでは、総称としてチャオ・カオ(山地民)という言葉が使われることもあるようですが、蔑称ととられる場合もあり、よりニュートラルな山岳民族(英語でHilltribes)という呼称を使います。まぁ、呼ばれる側としては、「各民族違うので一緒にするな」と言われればその通りなのですが・・・

今回は、チェンマイではチェンマイ・ハッピートラベル、そして山岳民族および国境線ではJ. Travelにお世話になりました。山岳民族に関する行程はこんな感じです。

1) エレファントキャンプ(Elephant Camp)@メーリム(Mae Rim)
2) 首長族の村(Long Neck Karen Village)@メーリム(Mae Rim)
カレン首長族、白カレン族、ラフ族、パロン族、ヤオ族
3) ラフ族の市場(Lahu Market)@メーカチャン(Mae Kachan)
4) チェンマイ山岳民族博物館(Chiang Mai Tribal Museum)@チェンマイ郊外ランナー公園周辺
5) チェンライ山岳民族博物館(Chiang Rai Hilltribe Museum)@チェンライ市 by C & C (Cabbages & Condoms)
6) モン族の村(Hmong Village)@ キウカン、チェンコン(Kiu Khang, Chiang Khong) 
7) オピウム博物館(Opium Museum)@ゴールデントライアングル
8) ヤオ族の村(Yao Village)@パドゥア、メーサロン(Padua, Mae Salong)
9) アカ族の村(Ulo-Akha Village)@ チアンジャーサイ、メーサロン(Jiang Jia Sai, Mae Salong)
10) 首長族・パロン族・カヨーの村(Long Neck Padaung, Kayaw & Palaung Village)@バーンパタナー、タートン(Baan Pattana, Thaton)
11) 赤ラフ族の村(Red Lahu Village)@パクイ、タートン(Pakui, Thaton)
12) モン族の市場(Hmong Market)@チェンダオ(Chiang Dao)
13) パロン族の村(Palaung Village)@チェンダオ(Chiang Dao)

先ずは博物館の話からしましょう。山岳民族博物館としては、チェンマイとチェンライにありますが、最初に訪れたチェンマイの博物館は現在休園。2011年に火事で一部を焼失。残った資料は県庁にあると博物館の門あたりにいたおじさんから聞いたのですが、閲覧可能かもわからないので、行きませんでした。

チェンマイ山岳民族博物館(現在休園)
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チェンライの方の博物館はそれほど大きくありませんが、各民族の衣装や道具などが展示されていました。

チェンライ山岳民族博物館
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民族衣装の展示(モン族、モン族、ラフ族、ラフ族、?)
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民族衣装の展示(アカ族、アカ族、ヤオ族、ヤオ族)
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民族衣装の展示(リス族、リス族)
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お勧めはゴールデントライアングルのポイントに位置するオピウム博物館。ここは僕が宿泊したインペリアル・ゴールデントライアングル・リゾートから歩いても3分というロケーション。メコン川隔てて左手にミャンマー、右手にラオスが望めます。ラオス側には中国語の表示がある金ぴかのちょっと趣味の悪いカジノが見えます。

タイよりメコン川を挟んでミャンマー(左)とラオス(右)を望む
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博物館には当然、オピウム、すなわち芥子(けし)に関するアヘンの吸引器などの展示物、そして芥子の栽培に切っても切れない山岳民族に関する展示もあります。

オピウム博物館(芥子の絵)
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オピウム博物館(アヘンの吸引機)
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次は、集落や野外市場で見かけたそれぞれの山岳民族についてさらに書いていきます。

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