前回は、コンピューターというお題でフランスのアイドル、France Gallの話をしましたので、今回は日本のアイドルの話をしましょう。コンピューターがテーマで、テクノポップで、アイドルが歌っているという全ての条件を見事にクリアした曲は、Perfumeの「コンピューター・シティ」(又は「コンピューター・ドライビング」)と伊藤さやかの「オ・ネ・ガ・イ スーパーコンピューター」! 後者は、彼女のデビュー・シングル『天使と悪魔(ナンパされたい編)』(1982年)のカップリング曲です。

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B面曲でありながらも、特筆すべき点がこの曲にはいくつかあります。1982年頃は日本のメーカーがスーパーコンピューターへ本格的に参入した時期ですが、そんなことはどうでもいいのです。先ずはタイトル。1982年と言えば、忌野清志郎+坂本龍一の「い・け・な・い ルージュマジック」が流行った年です。このシングルが発売されたのは、2月で、本曲は5月なので、表記方法については「オ・ネ・ガ・イ」は「い・け・な・い」へのオマージュとも取れます。

歌詞の内容を考察すると、アイドルによくある自己紹介ソングです。では、何をスーパーコンピューターにお願いしているのでしょう? ボーイフレンドです。これは、もしかして、前回お話したFrance Gallの元祖テクノポップ曲「Der Computer Nr. 3」へのオマージュなのか! そうであって欲しい。

コンピューターからは外れますが、伊藤さやかはアニソンとしても素晴らしい曲を残しています。それは、『恋の呪文はスキトキメキトキス』(1982年)。これは、アニメ「さすがの猿飛」のオープニング曲。



ちなみに森下くるみは『恋の呪文はベラマンチョ』(2003年)、小倉優子は『オンナのコ オトコのコ』(2004年)のカップリングとして「恋の呪文はパパピプパ」を歌っています。後者は、小西康陽作品です。



話が逸れましたが、それ以上に素晴らしいのが、カップリングされたエンディング曲「恋のB級アクション」。両曲とも小林泉美先生。「うる星やつら」での仕事の方が有名ですが、個人的にもとても好きな彼女の作品です。一時、彼女はPalais Schaumburg等にもいたドイツのミュージシャン、Holger Hillerと結婚していました。



伊藤さやかに戻りましょう。以前、中古本屋で偶然、彼女の告白本『日出処(ひいずるところ)〜不良時代の申し子』を見つけ、購入しました。装丁とタイトルからもヤンキー光線が出ています。1985年に出版されたこの本で、彼女は不良時代を激白し、高らかにロック宣言をしているのです。

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日出処(ヒイズルトコロ)―激白宣言書
著者:伊藤 サヤカ
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ところが、2008年に行われた渡辺末美さんによるロング・インタヴューで、彼女自ら、「あの本にはゴーストライターがいた、3分の1は嘘」と答えています。それ自体はそれほど驚く事ではないし、批判するつもりもないです。僕が言いたいとすれば、「伊藤さやかの初期の曲は十分“ロック”だった」と。

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アーティスト:伊藤さやか
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