友利昴さんが書いた『エセ商標権事件簿』を読み終えました。前作『エセ著作権事件簿』の続編となる過激権利主張ケーススタディーズ Vol. 2となります。500ページ近くの分厚い本ですが、前作同様に面白くていっきに読めました。
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商標権の範囲は国によって異なるようですが、言葉以外にもロゴ、シンボル、デザイン、色彩、モーションマークなどの視覚的なもの、サウンドや触感に対しても認められるケースがあります。本書においてもさまざまな業界での事例が紹介されています。僕自身、割とニュースとか見ている方だと思うのですが、知らなかった事例がほとんどです。顛末も含めて、ちゃんと報道されないケースも多いので、こういう形でまとめられていることには、商標権の理解を深めたり、理不尽な訴えを牽制するためにも意義があると思います。

音楽業界に関わるものだけをとっても以下のようなものが挙げられています(権利を訴えた側→訴えられた側)。

矢沢永吉パチンコ店事件:矢沢永吉→平和、パチンコ店経営会社23社
クリスタルキング事件:ムッシュ吉崎→田中昌之
ピンク・レディーdeダイエット事件:ピンク・レディー→光文社
MISIA事件:MISIA→タカラトミー
ELLEGARDEN事件:ELLE→ELLEGARDEN
グッチ裕三事件:グッチ・ジャパン・ホールディングス→小学館
ペンパイナッポーアッポーペン事件:アップル→エイベックス、ピコ太郎
ザ・ローリング・ストーンズ ベロマーク事件:The Rolling Stones→Acid Black Cherry
ミッキーマウス事件:ディズニー・エンタープライゼズ→deadmau5

明らかに金銭目的の悪巧みから、ブランド価値を守るため、感情的になってしまったなどその動機はさまざまですが、市場の健全な発展を支え、消費者と事業者双方に利益をもたらすという商標権の目的から逸脱している主張も見られ、人間が持つ「独占欲」には気をつけないといけないなと再認識させられました。また、不幸にも訴えられる側になった場合、商標権に対する正しい理解をもとに非がないのであれば、毅然とした対応をすることも大事ですね。