四方宏明の“音楽世界旅行”〜Around the world

世界中のテクノポップ〜ニューウェイヴ系音楽を紹介。

タグ:渋谷系

昨日の話ですが、アーバンギャルドが参戦した初春音演会(心斎橋JANUS)に行ってきました。その日、海外出張から帰って来たばっかりだったのですが、行ってよかったと感じた実りのあるライヴでした。先ずは、オープニングを務めた野佐怜奈ちゃんを紹介。

アルバム『don’t kiss , but yes』が昨年の10月にリリースされ、ここに収録されている「嘘つきルージュ」が超ストライクで耳から離れません! 透き通るような声質が素晴らしい。楽曲も高浪慶太郎プロデュース(云わずと知れたex-Pizzicatoの人ですが、彼のユニットが2008年にリリースしたarcorhymeの2枚のアルバムも大好きです)で、アルバム曲は、Pizzicatoとキノコホテルが共演したようなモンド渋谷系・・・すいません、こんな表現しかできないですが、マジで褒めています。ちなみにシングル『ランブルスコに恋して』は、キノコホテルのマリアンヌ東雲がゲスト。昨日のライヴでもキノコホテルのイザベル=ケメ鴨川 がサポート。



DON'T KISS, BUT YESDON'T KISS, BUT YES
アーティスト:野佐怜奈
販売元:EMISSION ENTERTAINMENT
(2012-10-10)
販売元:Amazon.co.jp


僕の中では突然現れた彼女ですが、困惑させられました。野佐怜奈というのは、本名なのかどうか知らないですが、もうひとつ、ノーサレーナというグループがいます。歌っているのは、どう見ても彼女。こちらのグルーヴィー歌謡も素敵。



GIRLS SAZANAMI BEAT! VOL.5GIRLS SAZANAMI BEAT! VOL.5
アーティスト:VA (オムニバス)
販売元:サザナミ・レーベル
(2013-02-09)
販売元:Amazon.co.jp


さらに僕を混乱させるのは、響レイ奈という存在。彼女は昭和歌謡。



そして、彼女は、その名はスペイドでRubyとしても2009年まで活動してました。これはお話をさらに伺いたい。

野佐怜奈
ノーサレーナ
響レイ奈

これまで世界中の渋谷系を紹介してきましたが、タイにもあります。もちろん、ここで言う渋谷系は必ずしも渋谷に結びつくとは限りませんし、渋谷系と呼ばれた人たちがルーツとした音楽の同様に影響を受けただけの場合もあります。でも、たぶん、渋谷系が好きな人は多分好きだろうと思われる音楽です。サウンドも重要ですが、デザイン、ファッションも重要な要素となります。

タイの渋谷系と呼ばれるのが、La Ong Fong。タイ人に訊いてみると、皆が知っているレベルではなく、音楽好きの人は知っているという感じでした。活動歴は長く、1996年にアルバム『Volume 1』でデビューし、2011年に『Wind-Up City』で6年ぶりに4枚目をリリースし、ファンを喜ばせました。

Wind Up City [CD]Wind Up City [CD]
アーティスト:La Ong Fong
販売元:Spicydisc / GMM
(2011-05-13)
販売元:Amazon.co.jp
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PVを二つ紹介します。
「Arai (What?)」は、サウンド的にもヴィジュアル的にもピチカート系まっしぐら。



「Ruk Perd Puey (Openly Love)」は、ちょっとキリンジっぽくて素敵。PVはコミカルですが、おしゃれさも兼ね備え、日産のPAOがPVに登場するのが個人的に嬉しかったりする。

前回紹介したアルゼンチンのModular、スペインの渋谷系の代表と言えるLa Casa Azulなどをリリースしているレーベルが、Elefant Records。ここから新しく現れたPapa Topoは、スペイン出身のAdria ArbonaとPaulita Demaizからなる男女ユニット。

渋谷系というより、空耳というという観点からぜひ聴いてほしいのが、彼らのファースト・シングル『Oso Panda』(2010年)。

osopanda


スペイン語で「Oso」は「熊」ですから、「パンダ熊」。まあ、日本人はパンダには熊とかベアってつけませんけどね。あんまり可愛くないパンダが登場しますが、キャッチーなサビの「Oso Panda」がどうしょうもなく、絶対的に「おっさんパンダ」に聴こえます。



Papa TopoはLa Casa AzulのGuille Milkywayが全面協力しているようで、センス的にも近いものがあります。

これまでもいくつかの海外の渋谷系っぽいアーティストを紹介してきましたが、特集を再開します。おさらいとして、今まで紹介したのは今回のも含めてこんなの

La Casa Azul(スペイン)
Pato Fu(ブラジル)
VIP200およびDoktor Zoil(イタリア)
My Little Airport(香港)

傾向としてラテン系が多い。じゃ、まずラテン系から行きましょう。今回、プッシュしたいのは、アルゼンチンのModular。アルゼンチンの首都、ブエノスアイレスで2000年に結成された5人組のバンド。Modularとは、Moogのヴィンテージ・シンセ、Modular Systemsから。渋谷系と言ってもサウンド的には多様ですが、彼らの場合、60年代サイケデリックなスペースラウンジとでも言いましょうか・・・アルゼンチン版Stereo Labと言った方が分かりやすいかな。

現在まで6枚のアルバムをリリースしていますが、5枚目のアルバム『Fantasias De Un Robot Psicodelico(ロボットのサイケデリックな空想)』(2009年)から「Playa Biquini(ビキニ・ビーチ)」のPVを見てください。60年代的美学に基づいたレトロフューチャーな世界観で統一されています。



Fantasias De Un Robot PsicodelicoFantasias De Un Robot Psicodelico
アーティスト:Modular
販売元:Elefant Spain
(2009-07-14)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらは、最新アルバム『Sinfonias Para Terricolas』(2011年)から「Zapatofono(靴の電話)」。基本的な世界観は同じ。あえて言えば、サイケデリックを強調。



Sinfonias Para TerricolasSinfonias Para Terricolas
アーティスト:Modular
販売元:Elefant Spain
(2011-11-01)
販売元:Amazon.co.jp
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アルゼンチンですが、スペインの名門インディポップ・レーベル、Elefant Recordsからリリースされているのも納得です。

今まで、スペイン、イタリア、ブラジルの渋谷系に通じる音楽性を持った人達について書いてきましたが、今回は割と近い香港です。香港には90年代はよく出張で訪れたのですが、最近はご無沙汰しています。

今回紹介するのは、Ah P (Lam Pang) とNicole (Nicole Au Kin-ying)の男女デュオ、My Little Airport。My Little Loverと名前は似ているけど、音楽性は全然違います。香港のベルセバ(Belle & Sebastian)とも呼ばれている彼らですが、確かにグラスゴー的な風情。脱力系ギターポップに、ローファイなエレポップが多いです。でも、どこか英語の発音とかは香港って感じで、タイトルも中国語が多く、不思議な世界を生み出しています。

最新アルバムは、日本盤もリリースされた『Poetics - Something Between Montparnasse and Mongkok』。フレンチ渋谷系みたいなジャケがかわいい。

Poetics - Something Between Montparnasse and Mongkok / ポエティックス-サムシング・ビトウィーン・モンパルナス・アンド・モンコックPoetics - Something Between Montparnasse and Mongkok / ポエティックス-サムシング・ビトウィーン・モンパルナス・アンド・モンコック
アーティスト:マイ・リトル・エアポート
販売元:Happy Prince / NATURE BLISS INC.
(2010-06-16)
販売元:Amazon.co.jp
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アルバムタイトルが長いのも今回が初めてではなく、Harbour Recordsから3枚。
『The OK Thing To Do On Sunday Afternoon Is To Toddle In The Zoo』(2004年)
『Because I Was Too Nervous At That Time』(2005年)
『We Can't Stop Smoking In The Vicious And Blue Summer』(2007年)

ファースト・アルバムはElefant Recordsより『Zoo Is Sad, People Are Cruel』(2007年)改題され、リリースされています。Elefantは、スペインの渋谷系として紹介したLa Casa Azulのリリースをしているレーベル。

「浪漫九龍塘」はドリーミィなエレポップ。九龍塘(Kowloon Tong)は、香港の高級住宅地ですね。



Hong Kong Shue Yan Collegeでジャーナリストの勉強をしていただけあって、「北歐是我們的死亡終站(北欧は私たちが死ぬ終着駅)」「社會主義青年」「when the party is over, i miss my dear porn star(パーティーが終わり、僕は親愛なるポルノスターのことを想う)」など、ちょっとひねった題材の曲も多いです。

スペインのLa Casa Azul、ブラジルのPato Fuに続く、世界の渋谷系として、イタリアのVIP200およびVIP200のメンバーのソロ・プロジェクト、Doktor Zoilを紹介します。

日本盤もリリースされているDoktor Zoilの『RiviERA BOOGiE』(2003年)、なんとなくおしゃれなジャケ(ジャケ写はDoktor Zoilではなくモデルさんでしょう)に魅せられて買ってしまったのですが、まるでイタリアの野宮真貴がいないPizzicato Fiveというか、つまり小西康陽のようなラウンジ色が強いGroovyエレクトロポップ。同じ時期のcapsuleと併用してもいいと思います。「Besame Mucho」などのカヴァー曲もやっていますが、日本盤のみ収録の沢田研二のテクノ歌謡「TOKIO」カヴァーが意外でよし。「TOKIO」ってイタリア語だから、親近感あったのかなぁ?

リビエラ・ブギリビエラ・ブギ
アーティスト:ドクター・ゾイル
販売元:Rambling Records
(2003-12-03)
販売元:Amazon.co.jp
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「TOKIO」は、イタリアのTam Tam Recording Studioアーティストの日本企画アルバム『Re-design』(2005年)にも収録されています。おしゃれジャケですね〜。

Re-designRe-design
アーティスト:オムニバス
販売元:Rambling Records
(2005-08-03)
販売元:Amazon.co.jp
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Doktor Zoilが活動するVIP200は、『PSICOEROTICA』(2002年)でデビューしていますが、VIP200の方はラウンジミュージック(映画ムード音楽と言った方がいいかも)。Pizzicato Five好きが高じてか、VIP200としては、野宮真貴の『miss maki nomiya sings』(2000年)にアレンジで参加しています。

サイコエロティカサイコエロティカ
アーティスト:VIP 200
販売元:Rambling Records
(2002-01-23)
販売元:Amazon.co.jp
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こちらは、VIP200によるモトローラの携帯電話のCM。

スペインの渋谷系として、La Casa Azulを紹介しましたが、それよりも前から活動していたブラジルの渋谷系、Pato Fuについて書きます。

Pato Fuって不思議な名前です。猫のガーフィールドの技の名前は、Cat Fu(Kung Fuをもじったのでしょう)。それをさらにもじって、Pato(あひる)Fuとなりました。Pato Fuはリオでもサンパウロでもなく、ブラジル内陸部のベロ・オリゾンチで1992年に結成されました。

Pato Fuをブラジルの渋谷系として紹介していますが、ルーツとして影響を受けたのは、オス・ムタンチス(Os Mutantes)というブラジルのトロピカリズモ運動における重要バンド。1966年にデビュー時、ムンタチスは当時ブームだったサイケデリックロック色が強かったバンドです。

Pato Fuは1993年から現在まで9枚のスタジオ・アルバムをリリースしていますが、Pato Fuの代表作かつ渋谷系の色彩が強いアルバムが、『Isopor』(1999年)。

ISOPOR (2008 edition)ISOPOR (2008 edition)
アーティスト:PATO FU
販売元:有限会社大洋レコード
(2009-01-14)
販売元:Amazon.co.jp
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その中でも日本語で歌唱した異色ナンバーが、「Made In Japan」。Pizzicato Five的なおしゃれサウンド、テクノポップ(フューチャーポップと言ってもいい)的なSF・ロボット的なモチーフを使いながらも、原爆と深刻なテーマを扱い、ある種日本贔屓的な意味合いも感じます。このあたりはやはり、紅一点ヴォーカルのフェルナンダ・タカイ(Fernanda Takai)が、日系ブラジル人であることにも関係しているのでしょう。顔を見ると、日本人以外の血も入っているのかとは思いますが・・・



最新アルバム『Musica de Brinquedo』(2010年)でも、日本語で歌っています。Pizzicato Fiveの代表曲、そして野宮真貴さん(フェルナンダとは共演もしています)のデビュー・アルバムにも収録されていた「ツイギー・ツイギー」を収録。タイトルどおり、「おもちゃの音楽」のような魅力がいっぱいです。

musicaMusica de Brinquedo
アーティスト:Pato Fu
販売元:Rotomusic
(2010-08-30)
販売元:Amazon.co.jp
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All About テクノポップにて「BACK TO THE エイプリルズ」というエイプリルズのインタヴュー記事を昨日掲載しましたが、そこでも話題となったLa Casa Azulを紹介します。

Elefant Recordsからリリースされた『Modapop』(2003年)というスペインのインディーポップ系コンピレーションがあります。スペイン語で「Moda」は「ファッション」という意味ですから、おしゃれポップみたいな意味でしょう。ジャケからもスペインの渋谷系みたいな内容を期待した人もいるかと思います。全体的にはアコースティック、ギターポップ、エレクトロポップが混合していますが、渋谷系というのは大体当たっていると思います。その中で聴いた事がある名前はその時点では、Camera Obscuraくらいでした。その中で、特に渋谷系的だと思ったのが、La Casa Azul(「青い家」という意味)というバンド。60年代的で、ちょっとピコピコしていて、胸キュンで、とにかくカワイイのです。「Vamos a volar」なんかは、シティーポップを経由した渋谷系っていう感じです。

Modapop: Fantasia VeraniegasModapop: Fantasia Veraniegas
アーティスト:Various Artists
販売元:Elefant / Dln
発売日:2004-06-29
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La Casa Azulはバンドと言いましたが、実質上、プロデューサーと名乗っているGuille Milkywayのソロ・プロジェクトで、バンドメンバーはアンドロイドのような存在のようです。La Casa Azulの代表的なヒット曲として、絶対的におススメなのが、アルバム『La Revolucion Sexual』(2007年)にも収録されているタイトル曲「La Revolucion Sexual」。60年代的モチーフにしたテクノポップ x ギターポップmeetsユーロディスコに仕上げた名曲です。おバカなんだけれど、泣けるメロディーという変幻自在のポップは、日本人受けする事間違いなし。っていうか、怪しい日本語も出てきて、きっと日本のポップカルチャーが大好きなんでしょう。



Revolucion SexualRevolucion Sexual
アーティスト:La Casa Azul
販売元:Elefant Spain
発売日:2007-11-20
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日本のエイプリルズのアルバム『Back To The Future Music』(2009年)にも、La Casa Azulのカヴァー「La Nueva Yma Sumac」が、収録されています。オリジナルは前述の『La Revolucion Sexual』の1曲目です。僕はあまりのハマり具合に最初、エイプリルズのオリジナルだとばかり思っていました。La Casa Azulのアルバムを先ず買うのであれば、『La Nueva Yma Sumac』(2009年)をお薦めします。これには、「La Revolucion Sexual」のオリジナルに別ヴァージョン(日本語で歌ってるのもあり)、同じく「La Nueva Yma Sumac」のオリジナルにエイプリルズのヴァージョンなど、La Casa Azulの美味しいところが楽しめます。



La Nueva Yma SumacLa Nueva Yma Sumac
アーティスト:La Casa Azul
販売元:Elefant
発売日:2009-10-26
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